Ghost in the Doll   作:恵美押勝

57 / 57
ど~も恵美押勝です。もうこの小説を投稿してから3年が経つんですね。早いもんですわ
これからも頑張って投稿しますので応援よろしくお願いします。それでは本編をどうぞ!


Mission14.骨董品の舞う空~タカの目~

『…なるほど、お前達は今“スカンダ・インターナショナル”の基地に保護されているという状況なんだな』

『はい、基地…といえば基地なのですが。クルーガーさんはこの組織については知っていたのですか?』

『…うむ、我々は対空戦力に欠けていた。といっても戦術人形を開発するIOP社と提携していれば当たり前の話ではあるがな。故に我々は航空兵器を主として取り扱っているスカンダ・インターナショナルと結ぶことにした。』

『しかしPMC同士の提携とは条約に触れる恐れがあるのでは…』

『確かにお前の言う通りだ。だがそれに関してはお前が気にすることではない』

『つまり、言えないということですね』

『どう捉えるかはお前の自由だ。ともかくご苦労だった…報告などはヘリアンにするように。以上だ』

通信端末を切るとノックの音が聞えた。入るように促すと見知らぬ男性と、女性が入ってきた

「君がM4A1だな」

「そうですけど…失礼ですが貴方は?」

「ホークアイだ」

「貴方がホークアイでしたか、そちらの方は?」

「初めまして、私はクオリアと申します」

「こちらこそ初めまして。それで私になにか用ですか?」

「あぁ、これからグリフィンと我々スカンダを混ぜてちょっとした会議を行うことになってね。会議室まで案内しろと言われたものだから…」

「会議ですか」

「今回の作戦について話しておくべきことが山ほどあるからな、それに見せたいものがある」

「…分かりました。会議に参加させていただきます。」

「案内しよう。ついてきてくれ」

扉から出て殺風景な通路を歩きながらM4はホークアイに尋ねる

「指揮官の容態は大丈夫なのでしょうか?」

「それに関しては俺らは何も知らない。俺達が着陸したころには君たちはもう降りていたからな」

「そうですか…」

「心配しないでください。ここには最先端医療が備わっています、戦術人形を治すための工廠もここにはありますからお仲間さんもすぐに直してくれますよ」

「クオリアさん…」

M4は素子の無事を願い、歩き続ける。ふとホークアイの顔を見ると気になる物があった

顔を合わせた時にはじろじろと見てはいなかったがこうして再び見てみると左目に眼帯のようなものが付いているのだ

「どうしたそんなに俺の顔を見て…あぁ、そうかそりゃ気になるよな」

「申し訳ありません、初対面の人の顔をじろじろ見るだなんて…」

「いや構わない。気になるのも仕方ない…もっともこれのおかげで君たちは助かったと言うべきだな」

「ではそれは一体…」

「丁度いい、会議までまた少し余裕があるから少し寄り道しよう」

そういうとホークアイは階段を降りるように促し降りてみるとここまで歩いた通路とは少し違う匂いが鼻腔端子をくすぐり顔を上げてみると多種多様な戦闘機が目に入った。そしてその中にはあの時ヘリコプターに向かってきたお皿付きの戦闘機がいた

「あの戦闘機が気になりますか?」

「えぇ、あれはレドームと言うんでしたっけ?しかし翼の下にもミサイル…には見えないものが付いているのですが」

「あれは私達が搭乗するF-14D改、通称スーパートムキャットと言います」

「トムキャット…私も名前は聞いたことがあります。アメリカにおいて戦闘機の代表的な存在だとか。しかしそれはレドームはついていなかったような…」

「そうだ、こいつはAWACSとしての役割が求められているのさ。F-14は従来の戦闘機と比べるとレーダーの範囲が広くてな実際イランじゃミニAWACSとして使われていた時代もあったらしい。だが素のトムだと戦場で運用するには性能が足りないということで付け加えられたのがこのレドームだ」

「…ではあの両翼の下にある筒状のものは?」

「こいつは、超長距離中型光学加速兵装。まぁ平たく言えばレーザーガンだな。君たちのヘリが攻撃を受けそうな所を援護したのはこいつだ」

「そんなものを積んでいるのですか…しかしこんな兵器を搭載した戦闘機、聞いたこともありませんが」

「そりゃそうだ。このスーパートムキャットはスカンダ独自の改造しか加えていない正真正銘のワンオフ機だからな。」

「自衛が出来るAWACS、それがこのスーパートムキャットのコンセプトです」

さらに彼女が言うにはこの機体は万が一鉄血が独自の航空兵器を保持した際、そのデータを記録し持ち帰る機体が求められたことが発端でありその機体は人間の常識が通用しない存在に対して対処するために機動力と攻撃力を並立させることを求められた。しかし新しい戦闘機を一から作るのは困難なことでありスカンダはあくまでもPMCで潤沢な資金はない。

そこで従来の戦闘機を改造することが決定されその結果このスーパートムキャットが出来たという

「ではレーザーガンというのは…?」

「敵はなるべくこちらに接近しないうちに仕留めたいだろ?こいつも元々はそういう風に設計されていたわけなんだが大戦でバカスカ核を使うもんだから大分マシになったとは言えEMPが酷い。中近距離のミサイルは当たるんだが遠距離になるとまるで当たらない。ロックは出来てもミサイルの回路が狂っちまうんだ」

「だからレーザーを使ったと、WW3以降、超遠距離から攻撃出来る兵器は光学兵器に頼る必要があった…確かに正規軍の兵器には光学兵器を採用しているのもあると聞いています」

「そうだ。しかし現在の光学兵器は一度発射されると一定時間放射され続けるんだがこいつは放射は一瞬で終わり実弾兵器と同じ感覚で攻撃が行える。」

「しかし現在の技術ではその技能を搭載するのにはこのサイズが精一杯でした。小型化が進んだ現代の戦闘機ではこれを搭載するとバランスが乱れる心配があり戦闘機としては少し大型のF‐14が改造元として採用されたのはこのこともありました。完成したはいいのですが運用するにはおおよそ戦闘機では行わない遠距離からの無誘導による攻撃…つまり狙撃が行う必要がありそれはこれまで戦闘機パイロットが経験したことのない戦いを強いられることになります」

「そこで活躍するのが俺、特に俺のこの右目というわけだ」

そういうとホークアイの眼帯のような右目が展開しレンズが伸び出てきた。ホークアイが話すには電脳をCADC(セントラル・エア・データ・コンピュータ)とガンカメラに接続する。そして自身の目にはガンカメラの映像と共にレーダーが捕らえた物体が赤色の線をした“□”として映る。

「そしてCADCのデータを元に機首の角度やスピードといったのをクオリアに伝え修正を重ねて目標に向けて発射する。というような流れだがこの一連の流れを可能にしているのが俺の目、“タカの目”だ。」

そう言うと彼は“タカの目”のレンズを収納しカバーを閉じた

「俺は元狙撃手でこの目を使って仕事をしてきたんだが職場が国ごと無くなった所をスカンダに拾ってもらったというわけだ。」

まぁ俺もまさか戦闘機に乗って狙撃を任されるなんて夢にも思わなかったがな、と笑うようにつぶやくと彼は歩き出した。格納庫を出る前に様々な戦闘機を見てそのたびにホークアイとクオリアが簡単な説明をしてくれたがM4は戦闘機に関しての知識はからっきしでありまた興味も無かったため彼らの説明がその電脳にはあまり残らなかった。

そして格納庫を出てしばらく歩くとホークアイが立ち止まり扉を開けた。中に入るように促され入室するとそこは会議室であった。テーブルの周りに座っている人間を見渡すとバトーや李、川崎といった指揮官たちやパイロットスーツを着た人間が椅子に座っていた。座席を見ると3席しか残っていない、どうやらM4達は最後に来たようだ。

「これで全員出席したようだな」

そう言うと銀髪の女性が立ち上がりホワイトボードの前に立ち、2人のパイロットスーツを着た人間を見ると人差し指をクイクイと動かし呼んだ。

「グリフィンの諸君、初めまして。アタシがスカンダ・インターナショナルの第一戦術飛行部隊“ウォー・ミュージアム”の司令官のヴァルキリーだ。こうして集めたのには諸君らに話したいこと、そして見せたいものがあるからだ。まぁテーブルにおいてある紅茶でも飲みながらゆっくりと話をしよう」

そういうとヴァルキリーはティーポットを傾けカップへと注いだ、途端に紅茶の良い香りがM4の鼻腔端子をくすぐる。自室で飲むような安物でもなくスプリングフィールドで飲むものよりも良い香りがするのは天然の茶葉を使っているのだろう。合成の食材が並ぶ現在において天然物は高級品だ。それを惜しみなく外部の人間や部下に振舞うのは我々との財力の違いをアピールしてイニシアチブを取るためなのだろうか、とM4は訝しんだが我ながら随分と捻くれた考えをするようになった思い目の前に置かれたもう一つのティーポットに手を取り紅茶を入れた。

「さて、我々スカンダ・インターナショナル、スカンダとはヒンドゥー教における軍神のおとであり仏教では韋駄天と呼ばれる。我々は、表向きは戦争博物館を運営する会社として2度の大戦やそれ以降に作られた兵器の展示をしているが…実際はグリフィンの諸君が見たように改装して実戦に使えるようにしている。いくらPMCといえど戦闘機の保持はそう簡単には認められんし正規軍の連中に目を付けられると面倒だからな。まぁ仮に正規軍の連中に目を付けられてもこんなベトナム戦争の頃に作られたような骨董品中の骨董品を脅威とは見なさんだろうが…」

ヴァルキリーが紅茶を飲むとプロジェクターの電源が入りいくつかの戦闘機の写真が映った。これが“ウォー・ミュージアム”の保有する戦闘機のようだ

・F‐14D改

・RF4EJ

・A‐4

・F‐5

・Su-22

「さて、こんなところでアタシらの紹介を終えようかね。さて、ここからが本題だ。シュペルター、オージェ。例のものを」

そう呼ばれた2人は彼女からリモコンを受け取るとプロジェクターの前に立ち3枚の写真を写した。航空機の上部らしいものが見えていたが引きからの写真ではっきりとしたことは分からない。最後の一枚は全体が灰色で染まっておりどのような写真か判別が不可能だ

「初めまして、RF4EJのフライトオフィサのオージェです。この写真は私達の機体のカメラが映したものです」

「キャプテンのシュペルターだ。映っているのは爆撃機と見られるがもっと鮮明なものを撮ろうとして高度を下げると向こうが急に高度を上げてきた。こっちが避けて姿勢を立て直したころには奴は戦闘空域を離脱していた。」

「その時に撮ったのがこの3枚目の写真です。ですがとてもじゃないがこれは使い物にはならない。なのでこの1、2枚目で判別する必要があるのですが…グリフィンの皆様はどう思われますか?」

そう言われて写真をよく見てみるがM4には皆目見当がつかない。分かるのはこれが飛行機の形をしているということだけだ。だが飛行機にしてはまるで三角形のような形している珍しい形の飛行機だと思った

「こいつは恐らくTu‐22Mじゃねぇか?」

発言したのはバトーだった。

「あの翼は明らかに可変翼だ。爆撃機でその機能を搭載してるのはアメリカのB‐1かロシアのTu‐160か22ぐらいだが写真を見る限りこの爆撃機はかなり角ばったデザインをしている。そうなるとTu‐22ぐらいしか思いつかねぇぜ。ランサーとブラックジャックは機首から翼にかけて滑らかな線でデザインされているからな」

「確かバトーさん、でしたか。おっしゃる通り我々もこの写真に写る爆撃機はバックファイアと睨んでいます。」

「だが連中は何だってロシアの爆撃機を使ってるのか分からんのだ。特にこいつは体形してからもう何年も経っている代物だ。多くは軍が持っているし、ウクライナの航空博物館で3台ほど展示していたらしいがその博物館は42年の内戦で破壊されちまった。これだけ入手困難な爆撃機が何故、鉄血が使っているのか。」

「爆撃機なんて戦闘機よりも入手は難しいだろ?どうなんだ司令官さんよ?」

「確かに難易度だけなら爆撃機の方に軍配が上がる。当然その維持費も馬鹿にならん。私達が戦闘機だけでちゃんとしたAWACSを保持していないのにもそういう理由がある」

そして次の問題ですが、と言いながらオージェがプロジェクターに別の写真を投影した。

「これは離脱する時に撮影したものを拡大、鮮明化したものになります。我々を追跡中のAegisと見られますが、これに関してはスカイホークが撃破しました。問題なのはコイツには通常のものには見られないパーツが付いているのです。」

次にさらに拡大、鮮明化した写真が投影された。そこにはAegisの背中にコブのようなものが付いているのがM4は気になった

「まだ残骸を回収出来ていないのではっきりとしたことは分かっていませんがグリフィンのヘリが襲われた時に落下中の敵にプロペラのような十字状のパーツが付いているのが見えたとAWACSから報告が来ています。それのおかげか落下スピードがゆっくりで狙いやすかったとか・・・」

「まるでMk82の高抵抗フィンのようなものが付いてやがる。平たく言えば落下傘が付いているんだからな、そりゃ爆撃機から落下されても無傷で着地して戦闘が出来るわけだ」

「つまり鉄血は空挺使用に自身の兵器を改造した、そういうことですかオージェさん」

「その可能性は高いと思われます」

「だが妙なことが一つある。」

「妙なこととは何ですか?ヴァルキリーさん」

「元々Aegisは正規軍が作った兵器だ。それを強奪したのが鉄血のなんだが・・・最近、正規軍が一部の機体を対象とした改造計画を立案していることが報告された」

まさか、とM4は考えた

「お嬢ちゃんの想像通りだ。連中、空挺使用に改造することを計画しているのさ」

「まさか、また盗まれたのでは」

「いや、正規軍は現在、空戦に力を入れていない。この計画もまだ立案されたにすぎず具体化はしていないのが現状のはずだ。」

「しかし現実には空挺使用が運用されている…それも航空戦力を保持していなかったはずの鉄血で。おかしいとは思いませんか、ヴァルキリーさん。何故莫大な費用、入手困難な一昔前の爆撃機を鉄血は保持しさらには正規軍が構想段階でしかない空挺使用のAegisを持っているのか…まさか正規軍と鉄血の間には何らかの接点があるのではないでしょうか」

「アンタの考えていることはクレイジーそのものだ。世間一般からすれば陰謀論として唾棄されるものだろう。だが」

「だが?」

「正規軍が本腰を入れずに鉄血を排除せず一PMCに一任しているのもアンタの仮説が正しければ納得がいく。奴らの物量、そして兵器をもってすれば少数精鋭の

鉄血なんて半日もせずとも崩壊するはずだ。それをしないってのは何等かの理由があるってわけだ」

「…しかし仮に繋がっているのであれば正規軍には何の得が。」

「正規軍をもってしても抑えられない“何か”があり、その“何か”から自分達の身を守るために、あるいはグリフィンと鉄血の戦いは正規軍にとって自分達の兵器の実験場にすぎず、新兵器テストのために互いの利益になるように密約を交わした、もしくは最初から繋がっているなどはなく鉄血が保持しているAIについてのデータの中に連中にとって喉から手が出るほど欲しいものがあり、それを見つけることが出来るのはグリフィン及びIOPの人間だけであるため一任しているのか。はたまた今あげているのとは別の理由か、それとも全部か。正規軍は沢山の派閥から成り立ってる。思想が統一されている軍隊じゃないのさ」

いずれにしても、とヴァルキリーは話を続ける

「鉄血が航空戦力を保持した今、懸念すべきは“核攻撃”だ。確かにEMPの影響で精確な核攻撃は不可能となり崩壊液の存在は核の恐怖を無きものとしてしまった。だがその破壊力が無くなったわけではない。連中が爆撃機に核を搭載し生き残った都市に投下しないと誰が断言出来ようか。フィクションのようだった鉄血は着実に人類の存続を脅かそうとしている。もはや人類が無視していい存在ではない。だからこそ鉄血は討たなきゃいけない。我々、“ウォー・ミュージアム”とグリフィンの手によって」

彼女は興奮気味に話し終わると紅茶をもう一杯飲むためにティーポットに手を伸ばした。

M4もおかわりをしようと手を伸ばすと天井にあるスピーカーからノイズ音が聞こえ手が止まった

『…S09地区戦線基地の皆様、まもなく目的地に“到着”いたします』

「やれやれもう着いちまったかい。聞いての通りだ、当基地…いや“当艦”はもうすぐでアンタらの基地に到着する予定だ。ホークアイ、ちゃんと基地の人間にアタシらが来ることは伝えんだろうね」

「伝えましたよ。…向こうは俺を変人扱いしてきましたが」

ホークアイが淡々と話しているとM4の通信機からコール音が鳴った

「失礼します」

応答すると甲高い女性の叫び声が耳に入った。慌ててインカムを耳から離し、近づける

「カリーナさん、どうしました?」

「え、M4A1さん!い、今基地に何か大きいものが接近してます!何かに長い板が付いていてまるで“空母”みたいです!!」

2062年、某月某日、『地上空母ガイア』はS09地区戦線基地に到着した。その巨体が近づくのをカリーナは何度も頬をつねって見ていた

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。