自分語りもアレなんで、本編をどうぞ
ヘリの風がなびくヘリポート、そこで11体の人影がいた。
「Vector.Zas.スコーピオン.スプリングフィールド.そしてGrG36…よし全員揃ったな」
「全員集まったよー!ちゃんとダミー人形も連れて来た!」
「ダミー人形…この基地じゃこれを使って任務をするのは初めてね」
「こういうのもおかしな話かもしれませんけど自分自身の同一存在が隣にいるってあまり気持ちがいい感触ではありませんね…」
「そういう思考は捨てることね、スプリングフィールド。私達は機械、ワンオフの人形じゃなく大量生産品なのよ?どれだけ同一存在がいてもおかしいことではないわ。」
「…Zas.スプリングフィールド、今はそういう話をしてる時間じゃありませんわ。ご主人様の前ですよ」
「…G36、すまないがその“ご主人様”ってのはどうも調子が狂うからやめてくれ。さて、これから軽く今回の作戦内容について話すから全員私の脳の中に入れ」
人形全員が目を閉じて素子の電脳内に意識を入り込ませる。(この時これまでのように有線ではないのはこの時だけ素子の電脳を暗号付きで一時的に開放しており人形たちはその暗号を利用することで侵入できるからだ)
電脳空間に入った人形達は思わず周りを見渡す
「わ、少佐の電脳内思っていたよりも情報量が多いね」
「スコーピオン、人の記憶を軽々しく見るな。焼き切るわよ」
「オー怖い怖い、すいませんでしたっと」
「まったく...それじゃ本題に入るぞ。今回の相手は鉄血のハイエンドモデル“スケアクロウ”の破壊だ。….ハイエンドモデルってやつは完全に人、人形、重機を殺害、破壊するために作られた人形だ。現代の技術を惜しみなく注ぎ込まれたボディの耐久性はお前たち以上、勿論攻撃力もお前らを上回る」
そう言うと素子は電脳内に一つの画像を映し出した
「…このツインテールの人形、これがスケアクロウね」
「たしかこいつを銃器じゃなくタレット型の小型衛星を武器にしてるんだっけ」
「ええそうよ。ハイエンドモデルの電脳処理能力を普通のやつよりも上だからできる芸当ね」
「それでどう処理するつもりですかご主人様?」
「対処法としては単純で衛星を落とすか機能を停止させればいいわ」
「機能を停止と言うとEMPグレネードを使うの?」
「と言いたいんだけど恐らく無理だと思うわ。鉄血のことだし電磁パルス対策はしているでしょうからね」
「じゃあ撃ち落とすしかないと…そのために私が編成されたわけですか」
「その通りだスプリングフィールド。私達が敵の基地に突入してスケアクロウを探す、そして先頭になったらお前はいち早く衛星を打ち落としてくれ。衛星さえなくなればただの案山子だからな
「了解しました。」
「よし、それじゃ全員出撃するぞ!」
ヘリコプターが目標基地の4キロ程手前に着き11体の人影が続々とロープを伝い降りていく。
「全員降りたな。スプリングフィールドは座標T-47にある狙撃ポイントに先行して待機、
残りは私と共に基地まで進むぞ」
作戦開始、と言い素子らは駆け出した
『カリーナ、今回の作戦は弾薬を大量に消費するから補給便を何時でも出せるようにして頂戴』
『分かりました!少佐ご武運を!』
電脳通信を切り暫くすると哨戒中のダイナゲート部隊とRipper3体を発見した。だがこの道は遮蔽物がない一本道。交戦は避けられない
「少佐!」
「応戦するぞ!スコーピオン!」
「勝負は先手必勝!」
スコーピオンが焼夷手榴弾をダイナゲート部隊に投げ込み爆発、炎上する。突然の交戦に対応できるほど一般鉄血人形の電脳は優れていない。成すすべもなく野犬共は半分以上が焼肉になり切り裂き魔の一体も巻き添えを食らい体を焦がした。破壊には至らなかったが右足の機能が完全に停止しており戦力にならないことは火を見るよりも明らかだった。
ここでようやく応戦に出る残りの鉄血兵達だったが….
「遅い…!」
Vectorが反撃の暇を与えず発砲し2体のRipperが破壊された。ダイナゲート部隊もGr36やZasによって全滅。先ほど焼夷手榴弾の巻き添えを食らったRipperが辛うじて動く左手で素子を狙うがその視界は素子のサブウェポン“セブロm5”の5.45×18mm弾によって黒く塗りつぶされた
…この間僅か15秒の出来事であった
「またセブロ社の?少佐セブロが好きなの?」
「公安時代に支給されて代物だからな、使い慣れてるんだ」
と、Vectorの質問に答えながら素子は比較的原型を保っているRipperの電脳に侵入した
(よし、まだ電脳は生きているな。…このピリピリする感覚、記憶野に侵入したわね。ここに侵入してしまえば基地の全体図をダウンロードするなんて造作もないな)
基地は前回襲撃した基地よりも2倍ほど大きく塀で囲まれ基地本部の様な建物も見えた。
(やはり前回の基地とは段違いだな、流石はハイエンドモデルがいる基地というべきか。まずは砲台を春さんに撃破してもらって….ん?)
地図を眺めている最中、突如として熱い何かが下からこみ上げてくる感触がした
(これは…攻勢防壁か!前回のと違う!)
熱さが彼女の側に完全に来る前に彼女は急いで接続ケーブルを抜いた。途端にRipperの頭部が爆ぜた。攻勢防壁が作動したのだ
「散れっ…!」
素子はそんな様子を気にする余裕もなく全員に大声で伝えた。散った次の瞬間、彼女らが集まったいた場所に銃撃が上から降ってきた
「ちっ…!」
素子は飛びながらセブロC-25の銃口を上に向けて発砲した。弾は素子らに向かって発砲した物体へと命中し堕ちた
「この小型衛星…“スカウト”ですか!」
「でもあの小隊にはこいつはいなかったよ!」
「敵はこちらをとらえたようだぞ!ごちゃごちゃいう前に走りながら今から転送するマップデータを叩きこんでおけ!」
「了解!」
一目散に走り出し、基地まで前進する素子ら。その前には鉄血兵達が待ち構えていた、更に頭上にはスカウトもいた
(恐らくあの小隊は大掛かりなトラップ…!私が鉄血兵の電脳に侵入した時にスケアクロウも奴に侵入し防壁を発動させ同時に逆探知も行った訳だ…!流石はハイエンドモデル、ウィザード級ハッカー並みのことをしやがる!)
『スプリングフィールド!私達の上を飛び回ってる蠅を打ち落とせ!』
『了解!』
スプリングフィールドが撃ち落としていく中、ほかの人形もまた目の前にいる鉄血兵に向かって撃ち続ける
「こんだけ敵がいちゃ基地に入る前に弾が付きそうだよ!」
そう言いながらスコーピオンはポケットからマガジンを取出しリロードをした
「カリーナさんに頼んで補給要請をしてもこの状況では….」
「…これは案山子に使う予定だったが、仕方ない!全員聴覚と視覚を物理的に塞げ!フラグを投げるぞ!」
素子は防弾ジャケットに引っかけていた閃光手榴弾のピンを抜き前方にいる人形に向かって投げた。刹那、青白い閃光と耳を刺すような高音が辺りを包み込む。対人用の非殺傷武器ではあるが人形にも効果的である、その眩い光は人形の視覚センサーを一時的にオフラインにさせることが可能で高音は聴覚センサーもオフラインにさせる。無論、目を瞑り、耳をふさげば無効化することは出来るのだが対処をしてない鉄血兵にとっては有効打であった。
「動きが止まってるな、再起動する前に一気に突っこむぞ。あと400mだ!」
その後、再び追いつかれる前に基地内に侵入することに成功した。だが基地内にも当たり前だが敵が跋扈している
『カリン、座標H-16地点に飛行場がある。そこに補給物資を投下してくれ』
『わっかりましたー!』
『全員聞いたな!?飛行場までは150mだ!弾はどうだ!?』
『アタシはもうマガジン一個しか残ってないよ~!ダミーの方も~!』
『私はもう少しだけ余裕があるわ』
『私はVectorよりも余裕があるわね。フルオートじゃなくてセミオートで一発撃破を狙いながらやってたから』
『私はスプリングフィールドさんが負えない分のスカウトを倒していたので余り余裕はありませんわね』
『分った、私とZasが前に出て飛行場を制圧するから、残りの3人は後ろを頼んだわよ』
そう言って素子らは走り出す。それを覆う形で後方の人形が陣形を組む。行かせてたまるかと後ろから攻撃をしかけてくるスカウトらはスプリングフィールドやほかの人形のダミーに任せ、本体がRipperやVspidを倒す。優勢に見えるが圧倒的物量に徐々に押されつつある、おまけに弾がもうすぐ付きそうだ。急がなくてはならない
『Zas!飛行場の敵はどの位だ!?』
『ざっとRipper4体、Vspid3体、スカウト4体ね』
『私達3人でギリいけるか…!Zas、ダミーの方の弾は大丈夫だな!?』
『大丈夫よ、弾は私しか使ってなかったから』
『よし、あと少しで奴らの視覚センサーの領域に入る。準備は出来てるな!』
『勿論』
視覚センサーの領域に入るや否や素子はグレネードを投擲した。ポサっという音を立てて落ちたそれは間もなく爆発し落下地点にいたVspid一体が破壊される。すぐさま敵は体制を整え発砲を開始する。が、身を屈めこれを回避した、それと同時にダミー人形がスカウトに向けフルオートで薙ぎ払うように撃ち、2体落ちる。素子も負けじとセブロm5を連射しスカウトの全滅に成功する。だが喜んでいる暇はない。迫りくるRipperらに向けてm5に残ってる弾を奴らの頭に叩きつけてやる
「Ripper一体倒してm5の弾が切れた!そっちはどうだ!?」
「ダミーの弾が切れそうよ。ん、今Vspidを倒したわ」
そう言った次の瞬間、Zas本体に別のVspidの弾が命中し彼女の右腕が吹き飛ぶ。
「大丈夫か!?」
「痛覚は元からないから大丈夫だけど…命中精度が落ちたわ」
と言いながら片腕だけでセミオートで撃ち冷静に自身の腕を奪い取った存在の頭を射抜く
「借りは返したけど、今のでマガジン撃ちきっちゃったわ。リロードしようにも片腕だけじゃね…というわけで残りはダミーに任せるわ。と言っても残りはRipper三体だけどね」
「後は任せておけ」
と言いながら素子はセブロC-25の上面にある透明の弾倉を確認する
(あと20発ってところね…予備弾倉は2個しかないけど補給もあるし一気にフルオートで制圧するか!)
確認するとすぐさまRipperに発砲する、2秒ほどして弾切れとなり眼前のRipper2体が蜂の巣となる。そしてZasのダミー人形もまた残り一体を破壊し、これにより飛行場を警備する敵は居なくなったのである。
『制圧確認!カリン、ヘリは!?』
『もう間もなく投下します!あと15秒ほどお待ちを!』
『こちらスコーピオン!なんとか第一波は退いたけど全員弾切れだし、アタシのダミー人形がやられちゃったよ!』
『他に被害はあるか?』
『Vector本体の左腕破損に、G36のダミー人形が両腕をやられてる!あとは問題ないよ!』
『分った、取り敢えず合流しろ!』
『了解!』
と通信を切ると頭上にプロペラ音と風が吹き荒れる。補給が来たのだ。巨大な箱がフック付きのロープにつなぎ留められながら降りてくる、素子は急いでフックを外し地面へと降ろす。そして体全体でOのマークを表現しヘリのパイロットに受け取ったことを知らせる。それを確認しヘリは飛び去って行った
そんなことを気にせず箱に群がり全員各々の弾薬、弾倉を箱から取り出し補給を素早く済ませる
「Vector、お前大丈夫か?」
「片腕がなくなっただけで大げさだね少佐は。このぐらい平気よ。まぁリロードがしずらくなったりはするけどさ」
そういいながら彼女は包帯を切断面に押し当てグルグル巻く。真っ白い包帯がじわじわと茶色に染まる、オイルの垂れ流しは敵に自身の存在を知らせるだけではなくそれに足を取られ転倒のリスクがあるからだ
「G36、両腕が無いダミー人形がいてもしょうがない、オフラインにしといて箱の中に詰めておけ」
「承知いたしました。」
「んで、こっからどうするのさ」
「心配するな、じきに案山子は雀を求めてやってくる」
「それってどういう…?」
「全員、箱の後ろに退避しろ!」
素子が叫んだ直後箱に弾丸が掠める嫌な音が聞こえた
高音が水面に落ちた雫のように響き渡る、やがてその音が止み。ほかの人形には伏せるように命じ素子は頭を箱の上に出した。素子の目の前にいたのはガスマスクをしたツインテールの少女だった
「初めまして…お前が“草薙素子”だな」