Ghost in the Doll   作:恵美押勝

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ど~も恵美押勝です。…話すこともないので本編をどうぞ(投げやり)


Mission02.ハイエンドモデル~オズの魔法使い~

「お前が草薙素子か…」

目の前にいる女子高生の様な見た目と声、一見して戦術人形としか見えないがそれはまさしく…

「そういうお前は…スケアクロウだな。予想通りお前から来たな」

素子は箱を飛び越えスケアクロウの傍へと寄る

「ほう…どうして分かった?」

彼女はそう言いながらスカウトやVspid、Ripperの軍団らを地上にリフトアップさせた。それらは素子とスケアクロウを囲むように配置された

「地下から!?」

「この基地は地下に兵士の保管庫があってな、丁度この辺がその出口というわけだ」

「なるほど、あくまで私とのタイマンを望むつもりか。そうまでして私の予想が的中したワケを知りたいのか?」

「勘違いするな、そんな質問はこの状況を作り出すための会話にしかすぎん…単純に言おう、代理人が貴様のことに興味がある。大人しく降伏してついてくるなら他のクズ人形共は生かしてここから返してやろう」

「代理人?ハイエンドのお前よりも上の存在がいるというのか?」

「答える義務はない…が、一言だけで言うなら私は下級人形に過ぎないということだ。それで要求の答えは?」

「決まってるわ」

素子はセブロC-25を構え案山子に向かって撃った。しかし素早くスケアクロウのビットが盾の役割を果たし本体へのダメージを防いだ

「無駄だ、恐らく貴様は衛星さえ潰せばどうにかなると思ったんだろうが生憎私の衛星は貴様らのような時代遅れの銃では破壊することは出来ない。そう向こうにいる狙撃手にも伝えておくんだな….」

「チッ…銃が効かないってなるとやっぱこれに限るか!」

素子はC-25を地面に捨てるとスケアクロウへと飛びかかる

「捨て身の戦法か!?舐められたものだな!」

素子の攻撃をヒラリと躱し衛星に彼女が飛び落ちる地点へ攻撃するように命ずる。衛星から放たれる9mm弾が彼女に襲い掛かる。だがその攻撃を彼女は着地した時の勢いを利用したローリングでよける。そのまま彼女は2つの衛星に向かってセブロm5で攻撃を加えるがカンカン、と甲高い音が響くだけだ

「無駄だと言ってるだろう!…学習能力が人形以下だな。代理人もよくもこんな奴に興味を持ったもんだ」

「随分と五月蠅い案山子だな、案山子なら黙って雀を追い払え!」

「言われなくても…!」

 

スケアクロウが立ち上がっている素子に向かって攻撃しようとしたその時、突如として彼女の衛星が謎の爆発をする

「なっ…!衛星がオフラインだとどういうことだ…!」

彼女が衛星に気を取られたこの瞬間を素子が見逃すはずがなかった。直ちに彼女を飛び越えるようにジャンプをし、背後に回り込むとその腕をつかみ自身の方向へと寄せる、そしてそのまま右足で彼女の関節を蹴り膝をつかせる。これでもう彼女は素子の手中から逃れることが不可能になった

「バカな….衛星をハンドガンで2個とも落としただけでなくこの私までも拘束するだと…!?たかだが人間の力で下級人形とは言えハイエンドであるこの私を…!?グッ…!」

素子はスケアクロウを地面に伏せさせその足をセブロm5で撃つ

「ほら、立ってろスケアクロウ。立ってその華奢な拳でこの私のことを殺してみせろ!」

スケアクロウは歯をギシギシ言わせ殺意に満ちた目で彼女を見上げ立ち上がろうと足に力を籠める。だがその足は既になかった

「…!私の足が千切れている…!?草薙素子!貴様…!」

「悪いが、お前に用があるように私にも用があるからこれを使わせてもらった」

素子はm5のマガジンを抜き取り逆さまにし弾薬を地面に転がした

「その弾…炸薬弾か…!なるほど道理で私の衛星や足が壊されたわけだ」

その言葉を無視し素子はスケアクロウの首にUSBメモリを差し込む、途端に彼女の周囲にいた鉄血兵らが機能を停止し跪く。そのことを確認した人形たちが素子に駆け寄り案山子に銃口を向ける

「…私の指揮権限が解除されてる?」

「同士討ちするプログラムをちょっとアレンジしたんだ。さぁこれでもうお前も守るものは誰も…」

突如、軍用携帯のバイブ音が体を震わせた。こんな時代に電脳通信を使わずにアナクロな方法をとるのは…

「ヘリアンか?」

「そうだ、私だ。電話に出る余裕があるということは案山子を倒したんだな?」

「そうよ、ツラ拝んでみたい?」

「是非とも頼む」

「ほいよ」

携帯を操作してテレビ通信に切り替える。画面からヘリアンのホログラムが生成され倒れているスケアクロウを覗き込む

『初めましてだな、スケアクロウ。こうなってしまえば案山子としての役目すら果たせまい、降伏すれば奇麗なまま電脳を抜いた状態でその姿を保管庫に入れといてやろう』

『案山子に脳みそなんてあるのか?』

 

「…この私がこんな結末をね…」

『お前は人形を拷問して情報を入手したつもりらしいが生憎、私達の人形はほら吹きでな。こういう結末でスケアクロウと言う人形の結末を迎えるのさ』

ヘリアンがそういった直後、スケアクロウは突然甲高い声で笑い出した。全身をガタガタと震わせ千切れた足から出るオイルの量が増えた

『何が可笑しい?』

「所詮民用のAI、完璧なウソなどつけませんわ!あの劣悪人形がつく噓には本当の情報が必ず混じっていて適当に混ぜた偽の情報を入れその順番を入れ替えてるだけですわ!だからその情報を精査すれば自ずと真実が見つかる…!」

「貴様…それはiop社の機密情報だぞ!?何故貴様のような人形がそのことを知っている!?」

「ただの…案山子ですわ…貴様たちみたいな基地に引きこもり顔も出さないような雀共を追い払うだけの人形…それが私ですわ」

『…ほざいてろ。どの道貴様の作戦は失敗だ。その情報を伝えるすべは何一つ残っていない』

『ちょっと待てヘリアン!コイツなにか囁いているぞ!』

「プロセスナンバー…8354…9266…0223…ようやくあなたに伝えることができましたよ…“M4A1”の座標を…処刑人」

『おい!処刑人とは誰だ!』

『あぁ、確かに聞こえたぜ。よくやった』

『誰だ貴様は!?』

『ではこれにて失礼…』

『まずい!奴は自爆するつもりだ!総員直ちに伏せろ!…おい少佐!何をしてる!?』

ヘリアンの命令を無視して彼女は自爆寸前のスケアクロウの電脳へダイブした

(情報が崩壊している!視覚野も運動野、記憶野も…消えていく!奥底に行って自爆命令プロトコルを破壊しなくては…!あと数秒のうちにしないとコイツと心中することになるわ…!)

深度を高め素子がスケアクロウと同調していく。意識を保ち続けながら更に深度を高め素子とスケアクロウの境目が判別がつきづらくなった頃、熱いあの感覚がやって来た

(攻勢防壁か…だがこっちには身代わりがある!)

直後、熱さが全身を覆い焼けるような感覚を覚える、だが破壊されているのは身代わり防壁であって彼女自身ではない。その間彼女は即席で防壁破りのためのプログラムを作る、そして作り上げたプログラムを作動させるとスゥーっと感覚が引いていった

(よし、防壁の破壊に成功したわ)

そのまま進むと書類の束のようなものが見えた。プロトコルだ

(よし!後はこいつを書き換えてと…!)

プロトコルに接触し展開するとプログラムが流れてくる、素子はそのプログラムに適当な不規則な文字を入力する。これだけで自爆プロトコルはエラーを起こし緊急停止した。これでもうスケアクロウが自爆することはない

(任務成功…!よし早いこと脱出を)

素子が上を見上げるとそこにはなんとスケアクロウがいた

(…!何故ここに?)

(これは私の搾りかすのような物…もう少しで消えます)

(わざわざお見送りか?律儀なことだな)

(草薙素子に直接破壊された私という個体が無くなる前に一つだけ…なぜ貴様は私から貴様に接触すると知っていた?)

(やっぱり気になっていたのか。あれはな、最初、Ripperの電脳にダイブした時に悟ったのよ。貴様はプログラムを設置するんじゃなくてわざわざ私と会いに来た。もし貴様が指示を受けてなかったらそんな非効率的な方法はとらないだろう?その時点で“私と接触しなくてはいけない何かがあったのではないか”と思ったのよ。後はピンチになってどっかに留まればやってくるだろうと)

(貴様らが言う“ゴーストが囁く”とか言う代物か…鉄血兵だけでなくハイエンドモデルにもダイブするなんてやはり貴様は普通の人間じゃない。代理人が興味を持つのも納得だわ)

(…ところで“M4A1”とは何だ?)

(それはあのヘリアンとか言う人間に聞けばわかるだろう…そろそろ限界ですわね)

(もうくたばるのか)

(ええ、私という“個体”はね。代わりの個体はいくらでもいるわ…最後に言わせて何故私が案山子というか知ってる?)

(…オズの魔法使いか)

(そう、オズの魔法使いに出てくる案山子は脳みそを求めてドロシーについてきた…私も他の人形のような頭がない人間の命令だけ聞く道具ではなく考えることの自由を持つ脳みそを求めているの…人間になりたいとかそういうのじゃなく道具でいたくなかった。それだけのことよ…)

そのことを言い残すと彼女は今度こそ消滅した、もうこのスケアクロウと言う人形はスケアクロウではない。美しい姿をした人形だ。

(道具になりたくない…か、だがそう言う彼女も上からにとっては道具に過ぎなかったのではないか?情報を盗み取り私と接触するためだけの道具…)

何とも言えない表情を浮かべながら彼女は浮上していくのであった….

 


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