私の名はセリー   作:続きません

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初 出:書き下ろし


変態皇帝がハイヒールブーツをくれた時の話

 私の名はセリー。ドワーフ族の16歳、鍛冶師。自慢ではないがモンスターカード融合連続成功記録更新中である。

 

 今私たちはクーラタルの郊外に家を借りて住んでいる。

 家に居るのはご主人様と私たち戦闘奴隷五人だけで、家事などもすべて私たちだけで賄っているのだが、ご主人様は私たちとは別に家内奴隷を入手することをどうやら目論んでいるようである。

 

 というのもある日の朝食後、ご主人様が出かける際、せっかくだからその間に部屋の大掃除をしようという私たちに、

 

「大変なら、誰かを雇うこともでき……」

 とご主人様は言いかけていたが、最後まで言葉にする前に、

 

「いえ。大丈夫です」

 とロクサーヌさんに即座に却下されていた。すでに我々五人の間では、これ以上の奴隷は絶対に増やさないことで合意が取れている。パーティーメンバーは六人が上限だし、家事などもきちんと分担すれば、今の人数のままで全く問題なくこなせるはずである。

 とくにロクサーヌさんはこのままのメンバーでやって行くことに、並々ならぬ執念を見せている。

 実は以前にも似たようなやり取りはあったのだが(というより同じようなやり取りが何度となく繰り返されているのだが)、ご主人様はいまだ諦められないようだ。……本当に困ったお人である。

 

「そ、そうか……」

 

 ご主人様はそう言うと、未練を見せながらも大人しく出掛けていった。

 

 そうしてしばらくして戻ってきたご主人様は、先ほどとは別の意味で明らかに様子がおかしかった。出かける前にあったやり取りのせいではどうもないようだ。解放会のロッジに行って来たようだが、一体何があったのだろう?

 

「お帰りなさいませ、ご主人様」

「あー。そのままでいいから、聞いてくれるか。ややこしい話だが。新しい装備品が手に入った。ただし、これにはとっととスキルをつけて献上しないといけないらしい。だから使っていられるのは短い間だ」

「新しい装備ですか。どんなものでしょう?」

 とロクサーヌさん。

 

「そうなんですか」

 と私。

 

 スキルをつけて献上? 何かイヤな予感がする。

 

「新しいそうび、です」

「短い間でもいいと思います」

「手に入ったのにスキルをつけてすぐに献上するなんて、まるで皇帝から下賜された装備品のようですね」

 

 ミリアやベスタは相変わらずの反応だが、貴族出身のルティナは何か事情を知っているようだ。

 

「手に入れたのは、このエナメルのハイヒールブーツだ」

「ほう。これですか」

 

 ロクサーヌさんが受け取る。

 

「モンスターカードの融合については、心配していない」

 

 ご主人様が私を見て言う。

 

「はい」

 

 まあこれまで一度の失敗もないし、大丈夫だとは思うが、もし失敗したら……ルティナの言っていることが本当だとすると……これはえらいことになってきた。

 

 ご主人様の話によると、なんでも慣例では皇帝より装備品を下賜されてから10日以内に、その装備品にスキルをつけて献上しなければならないそうだ(もちろんモンスターカードの融合に成功すればである)。そうして献上するとそれに倍する新たな下賜があるそうで、そのために、献上することのできる品が、下賜された装備品の現品に限られているということらしい。

 一応ルールは分かったのだが、もちろん献上しないという選択肢はとりえない。ただ問題は何のカードを融合するかである。とりあえずご主人様と私の二人で商人ギルドに向かうことになった。

 

 商人ギルドの受付でご主人様がルークを呼び出すと、彼はすぐにやって来た。

 ルークの話によると、皇帝がエナメルのハイヒールブーツを入手したらしく、近いうちにそれが誰かに下げ渡されるのではと、仲買人の間でもすでに噂になっていたとのこと。

 

「……そういうことなので、対応するモンスターカードを早めに手に入れたい。できれば値段のまだ上がらないうちに。問題は種類だが……」

 

 ハイヒールブーツに融合するモンスターカードの種類について、ご主人様が私に意見を訊こうとすると、私が答えるより先にルークがこう言ってきた。

 

「モンスターカードについては、私に心当たりがございます。明日の朝、また一緒に来てもらってよろしいですか?」

「分かった」

 

 ご主人様は少し考えていたが、どうやらこの件をルークに任せることにしたようだ。

 

「悪いようにはいたしませんので、ご安心ください」

 などと彼は言っていたが、仲買人などどこまで信用できるか分かったものではない。ただそうは言っても、切羽詰まったこの状況下では仕方がない。仲買人に任せるのは正直癪ではあるが、本当に仕方がない。仕方がないのだ。

 これでルークがヘンな提案でもしてこようものなら、タダでは済まさないぞと思いながら、ひとまず私は静観することにした。……断腸の思いではあるが。

 

***

 

 翌日、朝食後に再びご主人様と私で商人ギルドに赴く。ルークは私たちが来るのを早くから待っていたようだった(おそらくだが昨日も彼は私たちのことを待ち受けていたのではないか。どうも話がスムーズに行き過ぎている気がしてならない)。

 そのルークが用意してきたのは、牛のモンスターカードとコボルトのモンスターカードだった。なるほど「移動力増強」か。足装備に付けるスキルとしては定番の選択である。この辺りはさすがというべきか。

 

 ただこれに加えて、ルークが「公開融合」なるものを提案してきた。知り合いの商人の前で融合して見せろという。ご主人様がルークと一言二言交わしながら、思案している。どうやら迷っているようだ。

 私にも訊いてくる。

 

「モンスターカードの融合を人前でやっても大丈夫か?」

「そうですね。あまり多くなければ問題ありません。失敗してしまうかもしれませんが」

 

 モンスターカードの融合は見世物ではないので、公開での融合など正直やりたくはない。失敗の可能性も無いわけではないし。

 ただ自分はこれまで一度も融合に失敗したことはなく、すべてこれを成功させており、それがひそかに自慢である。まあすべてはご主人様の目利きのおかげではあるけれど。それに私のおじい様はよく依頼人の前でカード融合をしていたと聞いたことがある。私も一度やってみたいとひそかに思ってはいた。

 とはいえこれまで一度も失敗したことがなく、今回もおそらく大丈夫だとは思うが、万が一カード融合に失敗したときの精神的ダメージは計り知れないだろう。しかも公開の場での融合だし、二度と立ち直れないかもしれない。……いけないそう考えるとホントにドキドキしてきた。ご主人様の服の袖をそっと摘む。

 

「そうだな。まあ、大ごとにしないのであれば」

「おおっ。それはそれは。ご英断ありがとうございます。では、声をかけてまいります。ほんの少しの間だけお待ちください」

 

 ご主人様が了承すると、ルークが慌てて部屋を飛び出していく。早速やるようだ。

 

「うーん。せめて早く終わらせるか。セリー、すぐにでもできるようにしておけ」

「はい」

 

 ご主人様もあまり乗り気ではないみたいだ。自分と同じ気持ちのようで少しホッとする。

 

 ご主人様が、エナメルのハイヒールブーツをアイテムボックスから取り出し、今購入したばかりのモンスターカードと一緒にこちらに渡してくる。

 

「お待たせしました」

「いや」

「たまたま近くにいたお二方に声をかけさせていただきました」

「なにやらモンスターカードの融合を公開でやられるとか」

「たまたまそこにいたので、それならば是非拝見させていただこうと参上いたしました」

 

 ルークが二人の見知らぬ男を連れて部屋に戻ってきた。偶然を装っているがどうも嘘くさい。予め手配していたのだろうか。まあそんなことはいい。とにかくさっさとやってしまおう。

 カード融合の準備はすでに終えていたので、合図もまたずに詠唱を始める。

 

「今ぞ来ませる御心(みこころ)の、言祝(ことほ)(かげ)天地(あめつち)の、モンスターカード融合」

 

 もうすっかり慣れっこになったが、カード融合の呪文を唱えると、自分の手元が一瞬まばゆく光り、その光がゆっくりと消えていく。

 そしてハイヒールブーツが消えることなく、自分の手元に残った。成功だ。公開融合なんてもちろん初めてのことだったので、正直とても不安だったのだ。成功して本当に良かった。ホッと胸をなでおろす。

 

「我は尋ね力を見る、守りの魂立ち出でよ、防具鑑定」

 

 ルークがさっそく防具鑑定のスキルを使ってブーツの確認をしている。私は知っていたが、駿馬のエナメルハイヒールブーツに間違いないといわれて、なぜかご主人様が首をかしげている。

 

「牛のモンスターカードなのに駿馬なのか?」

「コボルトのモンスターカードも使いましたので」

 と最初はご主人様の疑問が何か分からず、的外れな答えをしてしまったようだ。

 

「馬だけどな」

 

 ああそういうことか。ご主人様の疑問ももっともだとは思うが、そういうものである。

 

「古来より、優れた馬は千里を走るといわれます。移動力を強化する装備品にふさわしい名前といえましょう」

「まあそれはそうだが…牛はどこへ行ったんだ?」

「古来より、優れた馬は千里を走り、優れた牛は八百里を歩むといいます」

「へえ」

「千里の馬は常にあれども、八百里の牛は常にはあらず、ということわざもあります」

「伯楽さんの立場は?」

 

 ご主人様がまた訳の分からないことを言いだした。

 

「ハクラク? とにかく、八百里の牛はそれほど貴重なのです」

 と説明はしたものの、私に対するご主人様の視線がなぜか厳しい。何か粗相でもあったのだろうか。

(後で教えてもらったのだが、ご主人様の故郷にその昔、ハクラクというその馬が良馬かどうか判断できる達人がいたということらしい。)

 

 そんなやり取りもあったのだが、他には特に何事もなくそのままルークと別れる。

 しかしまたどうしてルークは公開融合なんて提案をしてきたのだろうか。不思議に思っていた私だが、後でご主人様に教えてもらって謎が解けた。

 なんでも皇帝からハイヒールブーツを下賜された後、ご主人様はセバスチャンさんからかなり強く警告を受けたらしい。

 

 皇帝からの装備品の下賜は、それ自体きわめて稀なことであり、大変名誉なことである反面、何か粗相があればそれこそ命取りになりかねないという。

 通常その相手は貴族に限られており、自由民にすぎないご主人様に装備品が下賜されるなど異例中の異例だそうで(セバスチャンさんも記憶にないとのこと)、このことを知った貴族の間では相当騒がれるだろうとのことだ。

 

 セバスチャンさんは、貴族は相手の足を引っ張り、貶め合うのが仕事のようなもので、とくにハルツ公爵やエステル男爵と親しい(ことになっているらしい)ご主人様は格好の獲物だそうだ(あの二人も相当なやり手なだけに、敵も多いらしい)。

 そういうわけで皆がご主人様のことを注目しているのだから、不正が疑われるようなことが万に一つもあってはならないし、かといって下賜されたにもかかわらず何もしないとなると、その事自体が皇帝への忠誠を疑われることにもなりかねず、下手をすると不敬罪での処罰もありうるらしい。

 したがって今回のコレは細心の注意を払いつつ、それでも公明正大に事を運ぶ必要があるとのことで、余計な疑いを持たれないようにモンスターカードの融合を公開の場で行った者も過去にいたぐらいだと教えられたそうだ。当然このことをルークも知っていておかしくない。

 

 そう考えるとルークが公開融合を提案してきたのも、ご主人様のためを思ってのことなのだろう(もちろんルーク自身にとってもこれは実績となるのだろうが)。

 ともあれこれでご主人様にも箔が付くというものだが、もしかしたらルークは今回の件について、ハルツ公から直々に頼まれていたのかもしれない。

 そもそもハイヒールブーツの下賜そのものも、ハルツ公が皇帝に働きかけたのかも……私の考えすぎだろうか。

 

 なお解放会の店舗には、エナメルのハイヒールブーツがもう一足あったそうで、今もらったものを献上しなければならないというのであれば、そちらの方を自分用に買いたいと言ったご主人様は、セバスチャンさんに慎重さが足りないとまた叱られてしまったらしい。

 なんでもほとぼりが冷めるまで、半年くらいは同じものを購入すべきではないそうだ。とにかく向こうに揚げ足を取られないようにすることが大事だとのこと。

 

 もっとも出る杭が打たれるのは最初だけで、迷宮を倒せるほどの冒険者パーティーとなり、実力があることを周囲にはっきりと示せばこういった心配も無用のものとなるらしい。

 結局ご主人様はしぶしぶだが、セバスチャンさんの助言に従い、もう一足のブーツの方も諦めたというわけである。

 

***

 

 公開融合に成功した直後に話を戻そう。

 

「ちょっと帝国解放会のロッジに立ち寄るぞ」

「分かりました」

 

 どうやらご主人様はここから直接向うつもりのようだ。私を連れてそのまま商人ギルドから移動する。

 

「ミチオ様、セリー様、ようこそいらっしゃいました」

 

 ロビーに着くなり、セバスチャンさんがまるで私たちが来るのを待ち構えていたかのように、上半身を直角に折り曲げて出迎えてくれた。

 この人はいつも礼儀正しい。相手が誰であっても、たとえ奴隷相手であってもそれは変わらない。スゴイ人である。

 

 ご主人様が少しためらうような様子で、セバスチャンさんに今融合したばかりのブーツを預ける。声の調子もどこかヘンだ。何か不安でもあるのだろうかと疑問に思っていると、家に帰ってから尋ねられた。

 

「渡してしまったが、大丈夫だろうか?」

 

 はて?

 

「何か問題が?」

「黙って持ち去るとか」

「別に強くもなさそうでしたが」

 

 ご主人様はこれだけ強いし、盗賊や凶賊をアッサリ始末したこともあるぐらいだというのに、一体何を不安に思っているのか正直理解できない。

 ご主人様にはこういう気弱なところもあるが……まあそれもまた可愛いものである。

 

「あんなところで働いているのだし、強い知り合いがいるかもしれない」

「うーん。どうでしょう。あそこは貴族が多そうですし、あまり泥棒の片棒を担ぐとは。ねえルティナ、貴族は名誉や名声を重んじますよね?」

「当然です。泥棒を助けたなどと後ろ指をさされるようでは、はたして諸侯会議でどんな顔をすればいいか」

 

 ご主人様がまだウジウジ言っているので、ルティナにも訊いてみた。

 

「なるほど。彼が悪さを働こうとしても、力を貸す貴族は多くなさそうか」

「そうです」

「そのような者は貴族の風上にも置けません」

 

 これだけ言ってもご主人様はまだ完全に納得したようには見えない。慎重というかなんというか……。そもそもあのセバスチャンさんが、たかがブーツ一足のために、そんな真似をするようには全く思えないのだが。

 

 翌朝、やはりウダウダしているご主人様に訊いてみる。

 

「ロッジには行かれないのですか?」

「行くべきだろうか?」

「何の問題もないと思いますが?」

 

 ご主人様は少し考え込んでいたようだが、ようやく、

 

「よし。では行ってくる」

 と言い出した。何かふっきれたような様子だ。

 

「はい。いってらっしゃいませ」

 

 ただご主人様は今日は私を連れず一人で行かれた。昨日が例外とはいえちょっと寂しい。……と思っていたらすぐに戻ってきた。セバスチャンさんによれば、あのブーツは無事皇帝に届けられたそうだ。今後も時々はロッジに来てほしいとのこと。

 心配はいらないとは思うが、さてどうなるか……。

 

***

 

 ところで、今回のエナメルのハイヒールブーツが下賜されたという一件は、そもそもご主人様が皇帝にストッキングを献上したことが発端らしい。

 

 あれはご主人様が帝国解放会に入会したその当日のことである。

 休日となった私たちはそれぞれ思い思いに過ごしたのだが(私は解放会の資料室である)、二人で帝都に行っていたロクサーヌさんとベスタは、面白い店を見つけたという。みんなが戻ってきた夕食時、二人はご主人様に、帝都に面白い店があったといいながらも、具体的に何が面白いのかは内緒だと教えてくれなかった。

 そのときはご主人様だけでなく私やミリアも何のことか分からなかったのだが、お風呂から上がった後、ご主人様を先に寝室に行かせたロクサーヌさんが私たちを集める。そしてベスタが包みからあるものを取り出して私たちに配り始めた。

 一見黒い靴下のようだが、膝の上の方まである長いものだ。ストッキングというらしい。ひものようなもので上から吊る形になっている。こちらはガーターベルトというそうだ。下着……と言っていいのか、どちらも私の知らないものである。

 その場で初めて教えてもらったのだが、二人は帝都でこのストッキングとガーターベルトを見つけ、私たち全員の分を購入してきたのだそうだ。

 そもそも存在自体を知らなかった私がこんなものを履いたことなどはもちろんない。私みたいなのに似合うのか不安に思ったが、みんなで履けば怖くない(というか私だけ履かないという選択肢など存在しない)、そう言い聞かせ思い切って履いてみた。

 

 そうしてみんなの準備が整うと、ロクサーヌさんを先頭に、ご主人様が待つ寝室へ向かう。

 

「ご主人様、よろしいですか?」

「いいぞ」

 

 ロクサーヌさんの声掛けの後、彼女を先頭に寝室に入る。いけない、衣装以外はいつもと変わらないはずなのになぜか緊張してきた。

 

「失礼します」

 

 みんなでご主人様を取り囲むように、ベッドの両脇に並ぶ。

 

「お?」

「いかがでしょうか」

「おお?」

「今日ベスタと行った帝都の店で見つけました」

「おお」

「無名の小さな店でしたが、こんなものが置いてありました」

「おお。おお」

 

 ご主人様が私たちに近づいてまじまじと見ている。何故かはわからないが先ほどから同じことしか言わない。

 

「かなり高いうえに耐久性もないので、広まってはいないらしいです」

「お。お?」

「はい。触ってみてもいいですよ」

 

 ロクサーヌさんに促され、ご主人様がおそるおそる私たちに触れてくる。

 

「おお」

「思い切って買ってみてよかったです」

「おお。おお」

 

 この格好はある意味、裸でいるよりも恥ずかしいかもしれない。でもミリアは全く頓着していないし、ベスタはむしろ嬉しそうだ。

 そして肝心のご主人様の様子だが、さきほどから「おお」としか言わない……どうやら言葉も出ないほど喜んでいるらしい。

 ゆっくりと私たちの足を撫でまわしている。撫で上げたりもしていると、ガーターベルトにも気づいたようでまた固まっている。先ほどから本当に言葉を無くしているようだが、どうやらそれだけ感激しているらしい。まさかここまで喜ぶとは微塵も思わなかった。

 そしてその後のご主人様は……すごかった。いつもの五割増しぐらい?

 すでにこの日の昼に可愛がってもらっていたので、私は一回だけだった(その一回もすごかった)が、他のみんなは二回ずつだった。それもまたすごいのが二回ずつ。

 

***

 

 そして当然というか話はこれで終わらなかった。翌日の朝食後はみんなで帝都に行くことになった。ロクサーヌさんとベスタの案内で、ストッキングを購入したという服屋に向かったのである。

 

「よし。ここでみんな一着ずつ好きな服を買っていいぞ」

「よろしいのですか?」

「大丈夫だ」

「いらっしゃいませ」

 

 店員がニコニコしながら挨拶してくる。

 

「この店にストッキングがあるそうだが」

「はい。耐久性に難があり、まだ試作段階に近いものですが。履き心地、肌触りなどは最高のものが作れていると自負しております」

 

 昨日実際に試しただけあって、ご主人様もうんうんと頷いている。

 

「一つもらえるか」

「サイズはどのようなものを」

「あー。普通のでいい」

「かしこまりました。一足五百ナールになります」

 

 昨日は一人1000ナールずつお小遣いをもらっていたのだが、一足500ナールということはロクサーヌさんとベスタは二人分の全部をこれにつぎ込んだのか。

 ずいぶんと思い切ったことをしたとは思うが、ご主人様がこれだけ喜んでくれたのを見れば大成功だろう。二人ともとても得意げである。

 

「代金は後でまとめて払う」

「かしこまりました」

 

 ただ気になったのだが、どうやらご主人様は、私たちのとは別にストッキングをもう一足買うみたいだ。

 私たちには一着ずつ服を買ってくださるということだが、ストッキングの方は一体誰に贈るのだろう。……まさか自分で履くとも思えないし。ロクサーヌさんの鋭い視線にご主人様は気づいているのだろうか。

 

 そのことも気にはなったが、とりあえず今は自分たちの買う分である。あまりご主人様を待たせるわけにもいかない。

 ロクサーヌさんは早速服を選び始めた。いつものように真剣な表情である。

 

「小さいサイズは少ないです」

 と私が言うと、ベスタも、

 

「大きいサイズはもっとないですね。どれにしましょう」

 と言ってきた。方向性は全く逆なのだが、二人して悩む。

 

「どうだ。いいのはありそうか」

「高級なドレスばかりですね。迷宮に着ていくようなのは難しいです」

「一着くらいはそういう服があってもいいだろう。公爵のところからまた招待を受けているし」

「ありがとうございます」

 

 ご主人様とロクサーヌさんとのやり取りである。なるほど、ご主人様のためにも私たちが着飾るのは決して悪いことではない。

 

「ところで、ミリアは何と言ってるんだ?」

「魚が獲れる服を探しているようです」

 

 ロクサーヌさんが苦笑しつつそう言っていた。相変わらずこの娘はぶれない。

 

 そうこうしているうちに、ベスタがワンピースを選んでロクサーヌさんに見てもらっていたが、これではだめだと言われたようだ。

 けれどもこれがきっかけで、みんなワンピースで統一しようということになり、たっぷりと時間をかけ、もちろん試着もしてお互いに見せあい、各自豪華なワンピースを選ぶことができた。

 

「なかなか似合っているな」

「はい。ありがとうございます。ではこれにしようと思います」

「みんなそれでいいか?」

「はい」

「では、これを頼む」

「はい。こちらの衣装をあわせますと、えー、皆様に一着ずつお買い上げいただきましたし、特別サービスで8750ナールとさせていただきます」

 

 まただ。かなりの値引きがされているようだ。いったいこれはどういうからくりなのだろうか。

 ただそれよりもやはり気になるのは、ご主人様がもう一足ストッキングを購入していた件である。

 

「こんな高い服をありがとうございました」

「みんなにも似合ってたしな」

「ご主人様も何か手に入れられたようですが」

「まあちょっとな」

「ちょっとというのは?」

 

 言葉を濁すご主人様にロクサーヌさんが食い下がる。どうやら彼女は私たちのほかに女性がいるのではないかと懸念しているようだ。

 

「昨日セリーが酒をもらったから、そのお礼みたいなもんだ」

「そうですか」

 

 ということは、あのヘンなおじさんにあげるのか。……やはりおじさん本人が履くわけじゃないよね。

 

 帝都の冒険者ギルドから、さっそくロッジへと跳んだ。

 

「これはようこそいらっしゃいました、ミチオ様、ロクサーヌ様、セリー様、ミリア様、ベスタ様」

 

 すぐにセバスチャンさんが、まるで私たちを待ち構えていたかのように出迎えてくれた。いつものことながら不思議である。

 

「昨日は店舗を見ることができなかったのでな。少し見に来た」

「はい。かしこまりました」

「それと、ガイウスが来ることがあったら、これを渡してほしい」

 と、ご主人様はセバスチャンさんにストッキングの入った袋を渡していた。あのおじさんは名をガイウスというらしい(まだこの時点ではあのヘンなおじさんが皇帝だと私は知らなかった)。

 

「これをでございますか?」

「昨日セリーが酒をもらったから、その礼も兼ねてだ。危険なものではない」

 

 訝し気なセバスチャンさんに、逆に自信たっぷりな様子のご主人様が説明している。

 

「承りました。お預かりいたします」

「精進するようにと伝えてくれ」

 

 いったい何を精進するのかさっぱりわからない。が、どうやらセバスチャンさんにはそれで伝わったようだ。これだけのやり取りで良く分かるものだと思うが、さすが察しの良いセバスチャンさんである。

 しかしそれより問題なのは、前にも書いたように、ただの自由民にすぎないご主人様が、畏れ多くも皇帝陛下にそう簡単にプレゼントなど通常はできないはずだということである。またこれも最初の方で書いたように、皇帝に献上できるのは、皇帝から下賜された装備品に限られるというルールがあるそうな。もちろんストッキングは装備品ではないだろうし、このルールのことはセバスチャンさんも当然知っているはずなのだが。ただあのおじさんが皇帝であることは一応伏せられているので(私には分からなかったのだが、少し注意して見ていればバレバレだそうな)、ご主人様がストッキングを贈るのをセバスチャンさんは断れなかったのだろうか。同じ解放会の会員としてなら許されるということなのかもしれない。

 

 話がすっかりそれてしまったのだが、つまりは以上のようないきさつがあったということである。

 後日ご主人様にハイヒールブーツが下賜されたように、皇帝のおじさんはストッキングのプレゼントを大層喜んだらしい(ルール無視など全く問題にならなかったそうだ)。もっともその使用法はご主人様の場合とは全く違ったようだ。

 ご主人様は前にもあんな変態(どえむ?)と同類だとは思わないでくれと言っていたが、その変態さんが喜ぶようなプレゼントをピンポイントで選べる点で、私にはご主人様も同類にしか見えない。が、それを言うとご主人様の機嫌を損ねるので、賢明な私は黙っておくことにした。

 

***

 

 というわけで話を戻そう。

 その後もご主人様と私たちは、いつも通りに迷宮探索を続ける毎日だったのだが、ある日ロッジに行ってきたというご主人様が、ホクホク顔で帰ってきた。

 本当に嬉しそうだ。一体どうしたのだろうと不思議に思っていると、献上したはずのハイヒールブーツと、さらにそれとは別にモンスターカードを何枚もその手に持っていた。と思ったら、そのハイヒールブーツは献上したのとは別物らしい。

 なんでもそのハイヒールブーツだけでなく、それに融合するためのモンスターカードも、皇帝から新たに下賜されたのだそうだ。

 

 余談になるが、このときはまさかこのブーツに、最終的に五枚ものカード(コボルトのカードも含めると合計10枚だ)を融合する羽目になるとは思いもよらなかった。一つの装備品に融合したカードの枚数としては未だに最高記録である。

 ロクサーヌさんが装備しているダマスカス鋼の額金には四枚(八枚)のカードが融合されており(火、水、風、土と、全ての属性防御が付いている。一体どれだけの価値があるのか想像もつかない)、これも全部私が融合したものなのだが、五枚(10枚)ものカードを融合したのは初めてのことだった。

 結局成功したのでよかったが、精神的に非常に疲れた。とくに五回目のカード融合をしたときは、本当にまいった。

 成功した後、「これで最後ですよね。もうやらなくていいですよね」と、ご主人様に何度も確認したぐらいだ。

 ご主人様も笑って、「すまなかったなセリー、これで最後だ。このブーツのスキルスロットは五つだったからな」と言っていた。

 ……やはり本当だったのかスキルスロットの話は。

 こうして出来上がったハイヒールブーツは、やはり魔法使い用だということで、ルティナに渡された。五つもスキルが付いていると知って、彼女も絶句していた。それはそうだろう。ただ彼女はそんなハイヒールブーツを自分がもらえたことを大層喜んで、とても大事にしている。今では彼女のご自慢の装備である。

 

 ……話を戻そう。

 ご主人様によると、ロッジに行ったら突然皇帝がやって来たらしい。すごいタイミングだが、考えてみればこれも何だか怪しい感じがする。そしてとても上機嫌な皇帝に、この歓びを師兄(すひん)と分かち合いたいなどと言われ、献上したのとは別のハイヒールブーツがご主人様に下賜されたのだそうだ。ヨロコビって何のことだろう(あとからその内容を教えてもらったのだが、あまりのしょうもなさに心底呆れてしまった)。

 

「とても有能な鍛冶師の奴隷を所有していると聞いた。もしや入会式のときにここに来ていたあのドワーフ娘か。今度帝宮に招待するので必ず連れて参れ」

 などとも言われたそうだ。

 

「随分と仲がおよろしいようですね。そんなに趣味が合うんですか」

 と聞いたら、ご主人様が珍しく色をなして、

 

「頼むからあんな変態と一緒にしないでくれ」

 と言ってきた。ストッキングの件といい(ハイヒールブーツを下賜されたのも、先ほど言ったようにどうやら皇帝にストッキングを送ったのが原因らしい)、私からすればあまり変わらない(というかほぼ同類な)ように見えるのだが。が、やはり賢明な私は黙っておくことにした。

 

 それでもハルツ公についてもそうだが、こうしてこの国の支配層と繋がりができたことは、そのきっかけや内容はともかくとして、将来を見据えるならば、非常に良いことではある。

 どうもご主人様には人を惹き付ける何か不思議な魅力があるように思う。ロクサーヌさんにそのように言うと大きく頷かれた。彼女曰くやはりご主人様の人徳だとのこと。彼女はいつもそう言うのだが……そこまで大層なものかはちょっと疑問だけど。

 

 帝宮に招待された件について、ご主人様本人は、行くこと自体とても嫌がっているようだったが、いい機会だしやはり行っておくべきだろう。帝宮にはルティナも連れて行ってもらおう。あと当然だがロクサーヌさんも。一番奴隷だしね。

 ご主人様にそう言ったら、どうせならもう全員で行こうということになった。ヤケクソらしい。さてこちらの方もどうなることやら……。

 

***

 

 ……と思っていた帝宮訪問の話だったが、割と早くに実現した。

 というのも将来的にご主人様が迷宮を討伐し、めでたく叙爵されるにあたっては、当然帝国側ともいろいろと折衝が必要であり、そしてそれらをスムーズに行うには、やはり前もって正式なかたちで皇帝に拝謁しておいた方が良いらしい(非公式には皇帝と様々な交流?のあるご主人様だが)。今回はそのちょうど良い機会だとして、皇帝の側で急遽日程が組まれたそうな。

 

 そして当日はもちろん迷宮探索はお休みとなり、ご主人様は私たち全員を連れて、帝都の冒険者ギルドに跳んだ。冒険者ギルドの前には二台の馬車がすでに待っていて(しかも帝国のエンブレムの付いたとても豪華な馬車で、周りの人たちから大変な注目を集めていた)、私たちはその馬車に三人ずつ分乗し、帝宮まで運ばれていったのである。

 

 期待よりも不安の方が大きかったのだが、そうして連れて行かれた帝宮は、外観からして巨大で、しかもとても壮麗な建物だったが、中もやはりすごかった。私たちがここに来るのはもちろん初めてのことだし、ルティナですら一度だけしか来たことが無かったらしい。

 とても広いホール(「謁見の間」というらしい)に通された私たちが待つことしばし、皇帝が入ってきた。確かにあの時のヘンなおじさんである。今回は頭に王冠をかぶり、絢爛豪華な衣装を身にまとっていた。

 

 謁見の間には8大勢の人がいたが、ハルツ公爵のほか、エステル男爵までもいるなか、謁見自体は極々形式的なもので、粛々と進み、そしてアッサリと終った。正直拍子抜けした。だがその後なぜか、私たちはそのまま帰されるのではなく、お城から出て解放会のロッジに案内された(やはり例の扉は帝宮とつながっていたのだ)。

 ロッジの会議室に通されると、しばらくして先ほどのメンバーが揃ってやってきた。皇帝は着替えたのか、王冠もかぶっておらず、最初に会った時と同じような格好をしていた。

 みんなが揃うと、セバスチャンさんがすぐにハーブティーを人数分持ってきてくれたのだが、なぜか私の前にはドワーフ殺しの壺が置かれていた。いや意図は分からないでもないのだけれど、なんで私だけ……。みんなが私の方を注目しているような気がする。気がつくとセバスチャンさんがもうお代わりを用意して待っている。ご主人様の方を見ると、苦笑しつつも遠慮するなと言われた。仕方がない。これはもう行くしかない(飲みたい気持ちも当然あるが)。……ええ、飲みましたよもちろん! 大変おいしくいただきました。さすがに二杯目でやめておいたけど(もうお代わりは結構ですと言うと、セバスチャンさんはとても残念そうな顔をしていた)。前回のようなことになるとまずいので、ここはガマンした(何を危惧しているのか知らないが、ロクサーヌさんが心配そうにこちらを見ていたのもちょっと気になった)。

 

 皇帝のおじさんは、さすがに謁見の時は様子が違ったのだが、ロッジでは私が最初に会ったときの印象とほぼ変わらず、非常に気さくな人で、いろいろと楽しくお話しさせていただいた。他のみんなは恐縮していたようだが、私は第一印象がアレだったせいもあり、特に緊張もしなかった。私にとってはただの面白いおじさんである。とにかく私のことを終始ベタ褒めしてくれていたので、思わず照れてしまう。テレテレである。

 

 それと会議室には、カシアさんの従弟という、新しくセルマー伯となった男性も来ており、例の一件について、ご主人様は大変感謝されていた。

 彼は現在、ハルツ公などの助力を得て、自家の騎士団を立て直しつつ、迷宮駆除に精力的に当たっているという(今後解放会にも入会予定とのこと。確かに迷宮駆除のためには、解放会による支援も欠かせないだろう)。そして今はまだ余裕がないけれども、ご主人様にもいずれこのお礼はぜひさせていただきたいという話だった。

 それにハルツ公からも、ご主人様が叙爵されたあかつきには、全エルフ最高代表者会議に、特別会員として参加してもらいたいという話があった。皇帝やエステル男爵はご主人様が上手く囲い込まれてしまったと、とても残念そうにしていた(ただ皇帝は「なに、まだ手はある」と意味深なことを言っていたのが少し気になった)。

 

***

 

 その後、いろいろと情報をつなぎ合わせ考えると、私にも今回の事情が掴めてきた(情報の出どころは主にハルツ公である。ご主人様に面白おかしく語ってくれたそうだ)。どうやらこういうことらしい(私はハルツ公が仕掛人ではないかと勘ぐっていたが、言い出したのは皇帝自身で、それにハルツ公が乗ったというのが真相のようだ)。

 

 もともと下賜については皇帝からハルツ公にまず話があり、ハルツ公の了承を得て行われたということだそうだ。

 ご主人様によるストッキングの献上を、最初はたいそう喜んだ皇帝だったが、どういうわけかこれを自分に対する挑戦と受け取ったそうな(何で!?)。ただの自由民にすぎないご主人様に、たとえ返礼品だとしても、皇帝が何かを下賜するなど前例のないことだと周囲に言われたのを、ご主人様は将来必ず叙爵されるほどの人物だからと、皇帝本人が反対を押し切ったらしい。ハルツ公にも口添えしてもらったとのこと。

 ハルツ公としても、先々のことを考えれば、ご主人様が貴族の何たるかを知るには丁度いい機会だろうし、箔をつけるという意味でも有益だろうと考えたとのこと。

 そしてご主人様のサポート役として、ルークにはハルツ公から、セバスチャンさんにはエステル男爵からそれぞれ話が行ったという。実際にご主人様とハイヒールブーツの受渡しをしたセバスチャンさんも、貴族間のしきたりについて、ご主人様にいろいろと説明してやってほしいと頼まれていたらしい。

 私を連れて商人ギルドに赴いたときも、ルークは下賜の件は商人の間で噂になっていたと言っていたが、実は彼もまたハルツ公から内々に今回の件について言いつかっており、普段の仕事そっちのけでご主人様がギルドにやって来るのを待ち構えていたようだ。

 カード融合の成否は別として(皇帝も今回カードの融合に失敗したのなら、それはそれで仕方のないことだが、あのドワーフ娘ならきっと成功させるであろうと言っていたらしい。なぜか分からないが期待が重い)、すでに筋書きは出来上がっていたのだった。私たちはハルツ公やエステル男爵の掌の上で踊らされていたようにも見えなくもない(もちろん彼らも厚意でしてくれたことではあるが)。ご主人様はまんまと載せられたようで素直に喜べないと言っていたが、まあ良い方のハイヒールブーツをもらったので許してやるとも言っていた。

 なお今回の件以外にも、ルークはハルツ公の依頼を受けて、ご主人様のことを色々と調べ回っているようだ。非常にけしからん。大変気に食わない。まあ彼も全く役に立っていないわけではないので今は見逃してやるが、コイツがもしご主人様に仇なすようならいつか必ずこの手で始末してやろう、と私は密かに決意した(ロクサーヌさんも賛成してくれるだろう)。

 

 今回ハイヒールブーツが二足あったのも、初めから二足用意されていたということらしい。皇帝のおじさんは、ご主人様と二人でぜひともハイヒールブーツを使った喜び?を分かち合いたいのだそうだ。解放会の売店に置いてあったのも、予め現物をご主人様に見せてその反応を確かめたのだそうで、大変用意周到なことである。もう勝手にしてくださいというほかない。

 

 余談だが、ご主人様は空きスロットがたくさんついている装備品を好む。材質など装備品それ自体よりもいくつ空きスロットがついているかの方が重要らしい(もっとも材質の優れた装備品ほどスロットの数は多いという話だが)。どのスキルを付けるか考えるのが楽しいらしい。ワクワクするとのこと。

 確かに有効なスキルがついた装備品の価値は、何も付いていないものの数倍にもなる。非常に良く分かる話ではある。……ただ実際に融合するのは私なのだけれど。

 

 あとブーツを使って喜ぶという話だが、前にも書いた通り、皇帝のおじさんは、女性に自分を足で踏んでもらうことがとても嬉しいらしい。これまでは靴をはいた女性に踏んでもらっていたようだが、ハイヒールブーツで踏んでもらってさらに喜んだそうだ。私などには全く理解できないことだが(踏みつける方の女性も大変というか迷惑だろうし。特に相手が皇帝ともなればなおさらだ)……ということはもしかしたらご主人様も、ブーツを履いた女性に踏まれてみたいと言うことなのだろうか? もしそうなら相手は自然とルティナということになる。

 ルティナにさせましょうか?と一応ご主人様に訊いてみると、ご主人様は幾分動揺していたようにも見えたが、別に俺はドエムじゃないと断っていた。前にも聞いたどえむ?という言葉の意味はいまだに良く分からないが、そんなことをされてもご主人様は別に嬉しいわけではないらしい。

 ちなみにルティナもそんなことには全く関心がないそうだ。奴隷が主人を踏みつけるなんてとんでもない!と言っていた。それを見ていたロクサーヌさんが、よろしければ私がやりましょうか?とおずおずと言っていたが、やはりご主人様は断っていた。

 

***

 

 いろいろとすったもんだあった今回の一件だが、これまでは解放会のごく一部で知られているに過ぎなかったご主人様のことが、やはり帝国貴族たちに広く知られるようになったらしい。これがいいことなのか悪いことなのかは判断が難しいが……。

 まあご主人様はもっと評価されてよいと私は常々考えていたので、良いことだと思おう。これでご主人様にも自覚が出てくるとさらにいいのだが。いまいち無欲なご主人様である。

 

 ともあれ、これで迷宮討伐後の後ろ盾がほぼ揃ったことになる(あとはエルフ族の長老というあのオババ様である。オババ様のところに行った話はすでにしたけれど、ある意味あの人が一番頼りになりそうである。ルティナのことを本当に思ってくれているようでもあるし)。ここまでくれば残すは実際に迷宮討伐を成功させるだけだ。もっともどうやって迷宮の最終ボスを倒すかは、これもまた難問ではあるが、これについてはまた改めて話す機会があるだろう。




こちらが先にある程度まとまったので投稿します。
当初の予定よりタイトル変更。
いつも通り、加筆・修正がありますのでご注意を。

今回、原作にはない部分を勝手に補いました。
ハイヒールブーツが2足あったということは、おそらく変態皇帝と分け合うのではないかという推測です。
内密さん的にはスキルスロットが5つついている方が自分に来たので嬉しくて仕方ない感じ。
今後の展開次第では書き換えることになりますが…というか展開するのかな?

評価・感想お待ちしております。
また、何かお題があればぜひぜひお寄せください。
盗賊がらみのお話も作ってみたいとは思っています。⇒作りました(第9話)。

(追記)
最後の個所を追加しました。

(さらに追記)
ストッキングのくだりと、セリーによる考察を加えました。
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