私の名はセリー   作:続きません

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ベース:https://ncode.syosetu.com/n4259s/48/ 「頭脳派」
    書籍版 第4巻 第17章「頭脳派」
初 出:【異世界迷宮で奴隷ハーレムを】蘇我捨恥42【別ルート執筆中】(https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1585485655/


セリーから見た内密さん(書きかけ)

 私の名はセリー。

 種族はドワーフで、訳あって奴隷となったが、この度めでたく、今のご主人さまにお買い上げいただいた。

 こんな私にもそれなりの価値があったということだ。正直ホっとしたし、何より嬉しかった。いやっほう! おっといけない。

 当時、鍛冶師への転職に失敗していた私は、これはもう探索者として頑張るしかないと決意を新たにしていたのだが(実は巫女への転職にも失敗していた私である。ただこれはあとから誤解であることが分かるのだが)、現在では鍛冶師として、ご主人様の下で戦闘奴隷をやっている(もちろん鍛冶師であるから、モンスターカードの融合や装備品の作製もしているけど。一度は完全に諦めていたはずの私が鍛冶師になれた経緯についてはいろいろとすったもんだあったのだが、これは別に話す機会もあるだろう)。

 

 年齢は16歳……ちょっと聞いてくださいよ!私、こう見えても16歳なんですよ。分かりますか!

 でも周りからはなかなかそうは見てもらえない……。

 

 ……同じドワーフからすると若いけど耳が細くて老けて見える人。

 ……他の種族の人からすると耳が細いので若作りしているおばさん。

 

 どっちもイヤだ!! ヒジョーに腹が立つ。

 後から知ったのだがロクサーヌさんにまでそのように見られていたのがショックだった。

(ロクサーヌさんからは謝られてしまった。彼女に悪気が全く無いのは良く分かったので何と答えてよいやら困ったし、何よりもそうやって彼女に気を使わせてしまったのが申し訳なかった。)

 確かにこの耳なので仕方ない……仕方ないは仕方ないんだけど。

 

 逆に低身長のせいか子供に見られたりすることもある。確かに着る服のサイズは他種族にとっては子供用のものになってしまうが……。あと他種族の、とくにドワーフ族の耳について良く知らない人間族のオジサンなんかが私と話すとき、しゃがんでこちらと目線を合わせてくるのが地味にムカつく。

 

 でもご主人様は出会った当初から、私を普通に年齢通りに扱ってくれていた。アラン氏から聞いたわけでもなく、どうやらインテリジェンスカードを確認する前から私の正しい年齢が分かっていたらしい。

 そのことには本当に感謝しているのだが、人間族だというのになんでだろうと、はじめは不思議に思っていたものだった。

 実はあんなスキルを持っていたとは……。

 

***

 

 このご主人様、ミチオ・カガというが、人間族で、インテリジェンスカードを見せてもらったところ、ジョブは探索者、年齢は17歳だった。若い。

 この若さで、私を含め二人も奴隷を購入するなんて一体どういう人なんだろう。インテリジェンスカードには自由民とあったが、どこかの貴族のボンボンだろうか。ただそれにしては質素な身なりをしている。

 奴隷を1人連れているだけで、他に従者らしき人が全くいないのもおかしい。

(余談だが、迷宮探索をするパーティーは六名でフルメンバーだけれども、このときはまさかご主人様が自身以外のメンバー全員を、若い女奴隷で埋めるとは思っていなかった。確かにその方が合理的ではあるのだが(若い女性かどうかはともかくとして、奴隷をメンバーにすることについてはアラン氏から強く勧められたそうだ。彼もそれを商売にしているのだから当然と言えば当然なのだが)、ご主人様のその意図を知ったときは大変驚いたものである。)

 

 しかしそんな疑問もすぐに吹き飛んだ。ただそれは疑問が解決したからということではない。

 というのもご主人様には、購入してからすぐにその不思議な能力をいくつも見せつけられたからだ。そんな疑問などどうでも良くなるくらいの。

 いまだに私もその全貌を掴めているわけではないようだが、普通の人では到底考えられないことが何度も起きたのである。

 

 まず、ご主人様は探索者であるにもかかわらず、冒険者ギルドから自宅に帰る際、フィールドウォークらしきスキルを使ったことだ。最初冒険者ギルドから自宅に帰ると言われたので、他に冒険者のパーティーメンバーがいて、ギルドで落ち合うことにでもなっているのかと思っていたが、そうではなかった。

 ご主人様は探索者だけでなく、冒険者の能力も兼ね備えている、すなわち複数のジョブを持っているということなのだろうか。そんなのは神話の中の話でしか聞いたことがない。驚いて尋ねてみた。

 

「あの。ひょっとしたら複数のジョブを使うことがおできになられるのでしょうか。そんな話は神話でしか聞いたことがありませんが」

「惜しい。冒険者のジョブは使えない。あれはワープという魔法だ」

「時間空間魔法ですか?」

「時間空間魔法?」

「ええっと。あまり知られていませんが、フィールドウォークで移動するとき実は空間だけでなく時間も変わっています。だから正確には時間空間魔法というのだそうです」

「時差のことを言っているのか?」

「時差というのが何か知りませんが、移転元が昼間だったのに移動先が夕方になっていたり、朝方移動したのに移転した先がまだ夜だったりします。フィールドウォークはこのように時間も司る魔法です」

「この星、いやなんていうか、大地が丸いという説は知ってるか?」

「昔の偉い学者さんがそう主張したという話は知っています。でも、その話を私にしてくれた人は、こんなアホなことをいっているようだから駄目なんだと馬鹿にしていました」

「ちなみに、馬鹿な説だということの根拠は」

「大地が丸かったら、反対側に立っている人は落ちてしまいます」

 

 一連のやり取りの最後に私がそう言うと、ご主人様は残念な人を見るような目でこちらを見た。何か間違ったことを言ってしまったのだろうか。もしかしたら昔の偉い学者の言っていることの方が正しいのだろうか。

 

「時間空間魔法かは知らないが、俺にはいくつか使える魔法がある。このことは第三者には内密にな」

「……かしこまりました」

 

 どうやらご主人様は、どのジョブにもない独自の魔法をいくつか持っているらしい。ワープはその一つだそうだ。フィールドウォークと同じく時間空間魔法らしい。

 なんでもこの呪文は冒険者のフィールドウォークと探索者のダンジョンウォークを合わせたようなもので、フィールド上だけでなく迷宮にも移動できるという。さらにこれを使えば、遮蔽セメントが塗ってある場所にも出入りすることができるとのこと。……これは使いようによってはいくらでも悪事を働くことができてしまう。もちろんそんなことをするような人ではないのだろうが(本人によれば、たとえ自分にその気がなくても、遮蔽セメントが使われている個所などにワープを使って不用心に跳んでしまうと、たちまち疑われてしまうので、行先は慎重に確認しなければならないとのこと。確かにその通りである)、……それにしてもなんて人だろう。

 

 しかもこのご主人様、ワープの他にもいくつか特殊な呪文を使えるらしい。

 そのうち、これまで見せてもらった魔法の中に、メテオストライクとガンマ線バーストという攻撃魔法がある。

 

 メテオストライクを初めて見たときも本当に驚いた。ロクサーヌさんと並んで二人で魔物と戦っていたら、私たちの後ろから焼けただれた岩石の塊が、凄まじい勢いで魔物に向かっていくつも飛んで行った。あれをくらったら魔物もたまらないだろう。実際魔物の群れがご主人様の呪文一発で壊滅していた。

 

 ガンマ線バーストは、さらにその上を行く。初めてこの魔法を目の当たりにしたとき、私はご主人様を真横から見ていたので、その様子がはっきりと分かったのだが、ご主人様が光り輝いたと思ったら、何か光線のようなものが魔物を刺し貫いていた。

 

 ……幼いころ、私は嵐の夜に、寝室の窓から稲光をずっと見ていたことがある。

 両親からは早く寝るようにと言われていたのだが、まるで何かにとりつかれるように窓にかじりついていた。

 ときおり強烈な閃光とともに凄まじい轟音が鳴り響くと、私は恐怖も忘れてそれに見入っていたものである。まかり間違って撃たれればまず命はないような恐ろしいものだが、幼い私はその凄まじさにすっかり魅入られていたのだ。

 

 ……ご主人様の呪文を見て、ふとその時のことを思い出した。

 ガンマ線というものが何なのか正直分っていなかったのだが(今も分からないけれど)、これもあのときと同じく、あまりの凄まじさに戦慄が走った。

 もっともこれだけの威力なだけに消費する魔力量もかなりのようで、ご主人様は連発もキツイからそうそう簡単にこの呪文は使えないと言っていた。使うとしてもボス戦になるだろうか。

 

***

 

 ご主人様について驚くべきことはこれだけではない。ご主人様はやはり複数のジョブを使うこともできるようだ。次のようなやり取りもあった。

 

「セリーは複数のジョブを持つ者を知っているのか?」

「神々の中にはそんな神がいたという神話があります」

「俺についても、その(たぐい)だと思っておけばいい」

「え?……でも、神話なんて作り話ですが……」

 そういうとご主人様は苦笑していた。

 

 このときは、ご主人様は誇大妄想狂なのかそれとも虚言癖があるのかと思っていたが、後にこの人の言うことが全て真実であると思い知らされることを、このときの私は知る由も無かったのである。

 

 これは、私が初めて武器屋に連れて行かれ、得物をどうするかという話になったときのことだが、

 

「得物は、前衛になるなら槌、中衛になるならば槍がいいです。槍の方が得意ですが、最前列では槍は振り回せません。味方に当たるのを避けるには槌の方がいいです。力はあるので、槌でも大丈夫です」

「槍の場合なら、後ろから突くのか?」

「そうです。前衛の間から、勢いをつけて魔物に突き刺します。手数は少なくなりますが、威力は大きくなります」

 

 というわけで、私が使う武器として、槍か槌をということになった。私自身は槌を使ったことがなかったので、できれば槍の方が無難かなとは思ったのだが、ロクサーヌさんが、

 

「ご主人様のパーティーでは、私が魔物を抑えている間にご主人様の魔法で敵を殲滅するというのが今まで一つの形でした。火力としてはご主人様がいらっしゃるので、前衛で槌を振るってもらうのがいいでしょう」

 と言ってくる。

 

「え? 魔法ですか?」

 

 突然のことなので反応が遅れる。

 

「はい」

「どういうことでしょう?」

 

 ご主人様とロクサーヌさんの双方を見ながらおそるおそる訊いてみる。

 

「使えるのです」

「使えるのだ」

「えっと……」

 

 二人揃ってこう言ってくるが、一つ心当たりを除けば、全く訳が分からない。

 

「人に知られてよいものではないので、内密にな」

「は、はい。……本当に、複数のジョブが?」

 

 この目で見ない事には到底信じられないことだが、魔法使いの魔法が撃てるということになると、そうとしか考えられない。

 

 こうして私は槌を振るうことにはなったのだが、これが鍛冶師のジョブの取得条件であるとは、当時の私は夢にも思っていなかった。

 私が今こうして鍛冶師になれたのもご主人様の病的なまでの(というと失礼だが)探求心の賜物である。いくら感謝してもしきれない。

 

 もっとも当時はまだ三人だけだったので、メンバー構成上私が前衛をやっていたために槌を振るっていたのだが、ミリアやベスタが加入することで私が後衛に回り、槍を持つようになった。そしてそれに伴って戦闘時の私の役割は、前に出て魔物を抑えてご主人様を守るのではなく(それは主にベスタに任せて)、魔物のスキル攻撃を妨害することになっている。もちろんこれも重要な役割である。とりわけ全体攻撃魔法を放ってくる魔物は厄介であるから、発動前に必ずそれを潰しておかなければならない。

 

 なお話を戻すけれども、ただの人間でしかないはずのご主人様が、複数のジョブを持っているなどということは、どう考えてもおかしいはずなのだが、先ほどのやり取りにもあったように、ロクサーヌさんは特に疑問を持っていないようだ。「ご主人様」というジョブ?だと思っているらしい。非常にロクサーヌさんらしい解釈だが、やはり実際はそんな単純なものではなかった。

 これは相当の後になってからのことだが、ようやく教えてくれたご主人様が言うには、ご主人様は最高で七つ(!)のジョブを同時に使うことができ、しかもそれらを随時入れ替えることができるのだそうだ。

 

 これは周知のことだが、特定のジョブにつくためには、本来はギルドに所属したうえで、相応の期間修行を積み、ギルド神殿で転職しなければならないはずである(失敗することも当然ある。今でこそ鍛冶師としてやっているが、自分も一度は転職に失敗した身である。オマケに巫女への転職にも失敗している。これはあとから誤解であることが分かったのだが、当時はひどく落ち込んだものだった)。裏技としてエレーヌの神殿という手もあるけれど。

 

 ところが、ご主人様によれば、各種のジョブには、それぞれ取得のための条件があるそうで(たとえば、迷宮に入ると探索者になることができ、さらに探索者のレベルが50になると冒険者になれるとか)、ご主人様はいろいろと試行錯誤をしながら、ギルドにも所属することなく、これまで様々なジョブを取得して来たとのこと。一般にギルドで行われている修行も、実はこの条件を満たすためのものらしい。

 

 確かに思い当たるフシはいくつもある。ご主人様はたまに、迷宮内で理解に苦しむようなことをしているが(私たちにもさせたりする)、それがジョブの取得条件探しだったらしい。

 まあ今ではもう慣れてしまったので驚かない。それにこうした試行錯誤も面白い。新たなジョブの発見についつい期待してしまう。

 

 複数のジョブに就くことができるという点についても、ある時ご主人様は、自分が遊び人のジョブを得たことを皆に明かしていたが(遊び人というジョブが本当にあったことにも驚いた)、それだけであのような行動の全てについて説明がつくわけではない。やはり複数のジョブを持つことができ、しかもそれを随時入れ替えることができるというのは本当のようだ。

 さらにスゴイことに、パーティーメンバーについても、各人がどのジョブを持っているかが分かり、しかもそれを自由に変更することができるらしい。巫女修行のため、パーティーのみんなで滝行に行く前に、すでに私が巫女のジョブを持っていた(!)ことも知っていたらしい。だったらなぜすぐに教えてくれなかったと今でも不満に思う。ヒドイ話だ。

 

 実際にご主人様にそう文句を言ったら、

 

「滝行をしているセリーが見たかったから」

 と真顔で言われてしまった。

 

「セリーのことだから、巫女のジョブがすでにあることを知ったら『じゃあ私はもうやる必要ありませんね』などと言いそうだったから」

 とのこと。確かに言いそうだけれども、どうしても見たいというなら見せてあげたっていいんだから。まったくもう。

 

 ところで先ほど探索者から冒険者になるという例を出したが、どのジョブでもさらに上位のジョブが存在することは広く知られている。またそれ以外にも派生ジョブというべきジョブもある。

 ジョブの種類やその取得条件とともに、ご主人様に教えてもらいながらツリーのようなもの(「ジョブツリー」とでもいうべきか)を書き出してみる。ただしまだまだ謎な部分も多いが。ご主人様は単なる興味だと言っていたが(それにしては並々ならぬ意欲を見せているのだが)、今後も解明を続けていくつもりらしい。

 

 こうした作業は、私たちパーティーのジョブ構成をどうするかを考えるうえでも有益なことは確かである。ご主人様はパーティーメンバーの安全を何よりも第一に考えているので、今のところ守備重視の構成になっている(「安全まーじん?」というらしい)。ロクサーヌさんはより積極的に攻略していくべきと考えているみたいだが、私はこれはこれでいいと思う。

 

 ただ今後私達が迷宮を討伐するために、メンバーのジョブ構成をどうしていくべきかを考えていく必要は、当然あるだろう。私もどこまでお役に立てるかは分からないが、ご主人様を手伝っていきたいと思う。

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