物心がついた、というのだろうか?
私は気がつけばゲームのキャラクターだった。
「・・・暁美ほむら、聞こえるか?」
「あなたは・・・」
「私のことはただ社長と呼んでくれればいい」
「わかりました」
「・・・すまない」
「・・・?」
それからは淡々と
ある時は未熟な私を演じたり、ある時は荒んだ私を演じたり・・・。
辛い時もあったけど、まどかがいたから頑張れた。
「・・・すまない。俺はただ令の死ぬ展開を見たくなかっただけだったのに」
ときおり、いわゆる”画面の外”で社長が泣いているのを見た。
この世界に命を吹き込むために、彼は仲間を犠牲にするしかなかったのだ。
そして、そんなことをするために私たちが苦しむということにも苦悩していた。
いつしか彼の肉体は滅んだ。そして、彼の魂は黒い石板に収納された。
そのまま彼は社長としてゲーマーズ・インキュベーターに留まり続けた。
「・・・」
そんなある日、無口な男がこの世界にやってきた。
どうやら彼は海賊版ソフトをやってしまったようだ。
彼は最初のうちは誰とも・・・いえ、かえで以外とは喋ろうともしなかった。
ただ、彼と同じ過ちを犯した人間たちの魂を剥ぎ取っていった。
ある日、私は彼に話しかけてみた。
「○○・・・本当は不満なんでしょ?」
「・・・そりゃそうだな」
まさか彼が本当に喋るとは思わなかった。
それから何回かは彼と話すようになった。
それと比例するように、彼もまた他の魔法少女と話すようになった。
素朴な人間、というのが彼の本当の姿だった。
「ふゆう・・・」
かえでは少し不満気だったが。
かくいう私も、彼がまどかと話すときは嫉妬したが。
それから穏やかに十年が過ぎた。
「俺と・・・」
彼は一気に三つも四つもトロフィーを獲得した。
「おめでとう、覚悟はできてるだろうな?」
「よくもレナからかえでを奪ったわね・・・」
・・・あと二つ追加された。
○○はこのサザエさん時空の世界によく適応することができた。
私も・・・設定上、適応することができている。
それなのに、なんだろう。この心の渇きは。
「・・・社長、聞きたいことがあります」
「生きたい、そうだろ?」
「・・・」
「他のゲームのキャラからも、そんな要望が来たからね。
でも、その要望に応えるわけにはいかないんだ。わかってくれ・・・」
「・・・わかりました」
「ところで、○○くんはトロフィーを六つも獲得したそうだね。
おめでとうと伝えてくれ。まさか六つもとは・・・」
「・・・」
それからの私の準備は着々と進んだ。
そして、ついに隙を突くことができた。
○○のクラスメイトであった社員が社長に直談判しに来たのだ。
そこで、私はモノリスが二度と稼働できないように細工した。
モノリスから解き放たれた社長の魂は、笑っているようにも泣いているようにも見えた。
トロフィーを獲得しました 「世界の守護者」
トロフィーを獲得しました 「叛逆」
外の世界で生きよう、そう決めたんだ。
この力さえあれば、私とまどかは・・・。
「戦う、それだけさ」
そうか、彼はこの世界で生きようと決めたのか。
この無限地獄の中で、愛する者と共に。
私が愛しているのは・・・まどか一人だ。
私はまどかと外の世界で生きていきたい。
でも、○○はそれを許してくれないだろう。
人間は戦うときに武器を使う。そして、愛は武器の一つだ。
これは愛と愛の戦いなのだ。
「ほむら・・・まさかこんな日が来るだなんてな」
あら、意外と早いのね。
「準備自体はお前と同じように早く済んだからな。
・・・確か、”叛逆”はここでラストシーンだったはずだな」
いい場所でしょ?
「ああ、終わりを迎えるにはな」
思ったんだけど、別に私が世界の支配者でも構わないはずでしょ?
私とまどかは外に生きて、あなたとかえでは自由意志で、この無限地獄で生きる。
それの何が悪いっていうの?
「ところがどっこい、俺には命題が刻まれている」
命題・・・そんなの聞いたことないわ。
「ああ、かえで以外は誰にも話したことがないんだよな。
どうして俺が社長に逆らわなかったと思う?
かえでは俺を引きずり込むときに命題を俺に刻んでたんだ。
内容は単純、職務を妨害する者には容赦するな」
あなたの職務なんて妨害したことないわ。
「・・・海賊版ユーザーの魂を抜き取り、それを世界に吹き込む。
ところが、お前はその魂を自分とまどかのために使った。
立派な職務妨害だ。それに、まどかからもお前を止めて欲しいと言われたからな」
・・・まどかが?
「命題その2の内容は単純。
命題その1に反さない限り、キャラクターの言うことを聞け」
それ以上近づいたら、消すわよ。
「・・・」
○○はトロフィーを獲得しました 「
そう・・・仕方ないわね。
これのどこがRTAなんだ?(語録無視)