とある少年の最期の独白
小説家になろうで同じモノを投稿しています。

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 ――いつでも私を使ってくださいね。

 

 アイツはいつもそう言って、小さく笑っていた。

 

 オレは自分で何でも出来ると思いこんで、どんなことでも馬鹿みたいに安く引き受けて、自分の全てを犠牲にしてまで、必死にそれを全うしていた。

 

 まるで、誰かに使われることが、自分の使命かのように、無理をしていた。

 

 勿論、ただの人間であるオレが何でも出来る訳が無かった。オレはただ人並みに物事を進めることが出来るだけであり、無理をしていたことは、簡単にバレてしまった。

 

皮肉なことに、オレはともかく、他の奴らにとっては最も重要だったであろう、中学校三年の卒業式で。

 

 教師からも、同級生からも、失望の眼差しを嫌というほど貰った。それはもう、トラウマになるほどには。

 

 だが、それまでの教師たちの期待が厚かったオレは、その学校で誰も進学しないような、有名高校に入学した。

 

――オレが犯した失態なんて誰も知らないような、そんなところに。

 

 そしてオレは、卒業式の件がありながらも、相変わらず無理をしていた。

 

 「今度こそ、失敗してはいけない」

 などと、思い込んで。一つ一つを正確に、完璧に、一度のミスも無く。

 それはもう、中学生時代の三倍は無理をしていた。

 

 三倍無理をする。数学的に考えれば、それは一年で大失敗をするということになる。

  そして、それは実際に起こりかけた。

 

 そんなときだ。アイツがオレに話しかけて来たのは。

 

「無理、しないでくださいよ? 目に隈が出来てますし、入学した時よりもかなりやつれてますし」

 と。

 アイツは同じクラスだったが、正直言って話しかけられるまで、何も知らなかった。無理をするのに、忙しかったのだ。

 

 オレは何故か、自分が無理をしていることが、まるで誰にも知られてはいけないような、絶対的な禁忌だと思い込んでいたのだろう。

 

「無理なんて、してないよ?」

 そんな風に、オレはろくに笑えてもいないであろう笑顔を作った。

 

 普通なら、それで、終わる。今回も、そのはずだった。

 

「そうですか?」

 そう言ってアイツは、オレを真剣に見つめた。

 

 放課後でなければ、見つめ合っていると周囲から冷やかされるぐらいには、まじまじ、じろじろ、と。

 そして、アイツはこう言った。

 それはもう、屈託のない笑みで。

「では、私を使ってください」

 

 最初、オレはアイツの言葉の意味が分からなかった。

その様子を察してくれたのか、アイツは細く説明をしてくれた。

 

「私はそれなりに要領もいいですし、記憶力もバッチリです。一人でするよりも、私を使った方が、作業が二倍ほど早くなります。勿論、君一人で出来ることですけど、私は君の言うとおりに動きます。それはもう、機械のように」

 

 そう言って、アイツはオレの机の前に座った。

 

「なら、使わせてもらうか」

 

 あとになって、それはオレのプライドを傷付けないように、手伝う方便だったことを打ち明けてくれた。

 オレのように無理をするような馬鹿には、そんな方便を察することが出来なかったらしい。

 

 それからオレは、毎回のようにアイツを使っていた。

 

 いつしか、それが普通になり、アイツと笑い合いながら、一緒に何かをすることが、日課になっていた。家が近いこともあり、学校が終わったあとでも、どちらかの家で何かをしていた。

 そして、好きにもなった。

 

 ――なのに、なのに。

 それでもオレは、やっぱり馬鹿だった。

 

 アイツによって、無理をする量が減ったオレは、更に無理をした。

 

 寝不足になって、意識が朦朧となるレベルで、無理をした。

 

 プラットホームで、意識朦朧としていたオレは、まだ電車が来ていないというのに、電車に乗ろうとしていた。

 周囲からのざわめきも聞こえず、電車が迫っていることにも気づかず、乗ろうとして、線路上に落ちる――はずだった。

 

 アイツがオレを無理矢理引き戻し、代わりに轢かれなければ、だ。

 

 最期の最期までアイツは笑顔だった。

 最期の最期にアイツはオレに向かって、こう言った。

 

「好きでした」

 

 ハッキリと、オレだけにしか聞こえない、アイツの最後の声。

 それが、目の前の血溜まりと肉片からだ、なんて、オレは信じられなかった。

 

 青で統一されたプラットホームに、赤い水玉模様が印象的に広がる。

 

 ぐしゃっ、という音が聞こえて、アイツが死んだ。

 

 それが嫌というほど自分のせいで、それが馬鹿みたいに分かりやすくて、それがクソみたいな恋の結末で――

 

 また、オレは失敗をした。それも、取り返しの付かない、最悪な失敗を。

 

 それから、オレは無理をすることも出来なくなって、何もかもを失った状態で、今の今まで、約一ヶ月間を生きた。

 

「もう、こうするしか、出来ない」

 

 絶望し、泣き続け、泣き枯れた。

 

 アイツが死んだプラットホームに行き、沢山飾ってある花々をもう一つを添える。

 

オレだけが知っている、アイツが好きな花、リナリアを。

 

 電車が来た。アイツを轢き殺した電車と同じ種類の、だが全く別の電車が。

 

「……あぁ、でも、これも、また、アイツを言い訳に使ってるだけ、か」

 小さく、オレは呟く。

 

『臨時ニュースをお伝えします。一ヶ月前死亡事故が起きた――県――市の――駅で少年がまた――――』

 




今日の八時三十頃に思いついて、三十分で書いた低クオリティです。思いっ切り夢の内容です。どんな夢みてんだ、って話ですけど。

ちなみにリナリアの花言葉は『私の恋を知ってください。幻想』です。
『アイツ』は、『オレ』を、いつから好きだったのでしょうか。

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