憑依物語   作:そりゃないわ

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#前回のあらすじ


奴隷商人の有り金万能説






こんな駄作にお気に入り感謝ですm(_ _)m


9話『大成、人妻を泣かす』

涙目で怒鳴り付けられて、挙げ句の果てに胸倉を掴まれて振り回されるとは思わなかった。

 

パニクり過ぎて逆に冷静になった。

 

ダリアは呆然としてた、多分思考が停止してる。

 

涙目所かポロポロ涙を溢す恐らく宿屋の主人であろう女性取り敢えずここは落ち着いて一つ一つ対処しないと!

 

「おおおおちついてててて!?」

 

「何言ってるのか分からないよ!ハッキリと言いな!」

 

うん、これは俺も分からないな、全然落ち着いてないわこれ

 

いや、だって普通に怖い、青筋浮かべて俺を睨み付けてるし見た目は細身寄りなのに何か俺中に浮いてるし

 

「ミランダ!落ち着きなさい!レイグも!」

 

 

すると、奥の通路から出てきた料理人のような男性が駆け寄ってきた。

 

女性──ミランダさんの肩に手を置いて宥めようとする、いや待って?何か俺も暴れてるみたいに言われてなかった?

 

「ぅるっさいっ!」

 

「ブフゥ!」

 

「ちょっ!?」

 

瞬殺だった、後ろも見ずに正確に裏拳を鼻っ面に当てるミランダさん。

 

男性は鼻血を噴き出して簡単に地に伏した、多分夫だよな······?

 

ダリアが復活して、慌てて間に入ってこようとするが手で制す、多分こうなったら俺がこの人の気が済むまで殴られるなり何なりされなきゃ収まらないだろう。

 

「········本当に」

 

「え?」

 

黙って目を閉じていた俺だったが、聞こえて来た声は先程までの激情に任せた声では無く、何かを耐えるような、漏れだしてしまいそうなそんな弱々しい震え声だった。

 

ミランダと呼ばれた女性の顔には未だ残っている怒り、そして恐怖

 

「ほ、本当に、アンタに何かあったのかと」

 

「───────」

 

そして安堵

 

 

気付けば俺は地面に足が着いており、ミランダさんは静かにしゃくり上げていた。

 

「ごめんなさい」

 

気付けば俺はそう言って低頭していた、謝らなければとおもった、恐らく怒られているのは前の俺であって今の俺ではない。

 

それでも謝ったのは不意に、この人に「母さん」を重ねてしまったからだろうか。

 

死の直前まで俺とアリスを、体を凶刃に晒されながらも、激痛で涙が押さえきれなくても俺の身を案じてくれた姿に

 

それともただ単にこの体に起こった無意識的行動に俺の精神が引っ張られたからなのだろうか。

 

「·······今まで何してたのか、ちゃんと説明して」

 

俺に謝られたミランダさんは暫しの沈黙の後、感情を押し殺すように小さくそう言った。

 

俺はミランダさんから目を反らさず頷いて口を開いた。

 

 

ーーーーー

 

「記憶······喪失」

 

深刻そうな顔でそう呟くミランダさん

 

少し落ち着いた俺達は宿の一室を使って向かい合っている、俯くミランダさんにダリアがすかさずフォローをする。

 

「えっとミランダさん、記憶喪失って言ってもそんな酷いものじゃないんだ!この宿屋に来るときだって道なんて分からない筈なのに自然と浮かんだって言ってて、事実レイグさんの案内一発でここにたどり着いたんだよ!」

 

「お、おお!それが本当ならすぐ思い出すかもしれんな!」

 

ダリアのフォローに便乗してミランダさんの旦那さん──ダインさんが励ますようにミランダさんに声をかける。

 

「アンタ」

 

「?どうしたんd」

 

「黙ってな」

 

無言になるダインさんをダリアが半目で見ているのを尻目にミランダさんは深くため息を吐いて

 

項垂れた。

 

「本当に忘れちまったのかい」

 

「すいません」

 

ぐっと唇を噛み締めるも次の言葉を紡ぐ

 

「──半年、アンタがこの「沈む太陽」に泊まり込むようになって半年、子供がいないあたしらにとっちゃアンタは子供みたいなもんなんだよ。

 

どこかぎこちないアンタが主人の作った飯を食った時のアンタの輝いた顔は未だに忘れてないし、疲れて帰ってきたアンタがあたしらに「ただいま」って笑顔で良く言ってくれたね。飯所が忙しい時アンタはこっちが遠慮してもお構い無しに手伝ってくれた事があったね、嬉しかったよあの時は·····

 

 

 

ぜんぶ、わすれちまったってのかいっ·······」

 

どこか恨みがましく、そしてどこか懇願するミランダさんの視線、ダインさんが辛そうに目を閉じてダリアが痛ましいものを見るように目を反らした。

 

否定して欲しいのだろう「今までのは嘘です」そう言って欲しいのだろう、例えウソでも。

 

でもそれは出来ない、してはいけない。

 

「正直今の話を聞いてもピンと来ませんでした」

 

「っ·········」

 

悲痛に顔を歪めるミランダさん、でも俺に期待してはいけない、俺は俺であって、この優しい人達の知る「俺」ではない。

 

「でも」

 

「·······?」

 

「さっき俺を心配してくれた時、無性に謝らなきゃって思ったんです。何故かミランダさんやダインさんを悲しませてはいけないと思いました。上手くは言えないですけど·····

 

 

 

 

今はこれで良いですか?」

 

「···········」

 

でも、希望はもっていいはずだ。

 

ダインさんが微笑みミランダさんの頭を撫でて、ダリアはちょっと涙目だ。

 

「·······怪我は無いんだね?」

 

「はい、ダリアさんのおかげで無キズです」

 

 

ミランダさんは俺の返事を聞くと、暫く黙っていたが深呼吸をするように息を吸って吐いた

 

そして乱雑に腕で目元を拭きながら後ろを向いて

 

「晩飯になったら呼ぶから好きにしてな、部屋は自由に使って良いから、水浴びは裏庭にあるから」

 

そう早口で一気に捲し立てそそくさと部屋を出ていった。

 

「全く、ミランダも素直じゃないんだからな····レイグ、ダリアちゃんも今日は疲れただろうゆっくり休みなさい

 

記憶戻ると良いな」

 

 

ダインさんはそう言って静かに部屋を去った。

 

「レイグ様····」

 

心配してくれるダリアにこれ以上心配かけないように微笑んで頭を撫でる。

 

「大丈夫」

 

とだけ言った。

 

 

こんな中身の無いことしか言えない自分自身に嫌気が刺す、そして

 

 

「(お前はこうして帰りを待つ人達が少なからずいるというのに諦めたのか

 

 

レイグ·アーバス)」

 

俺《奴》に大して。

 

 




レイグ「大丈夫ですかダインさん!」

ダイン「馴れてる」

レイグ「!?」




次回ダリアちゃん視点です
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