憑依物語   作:そりゃないわ

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後悔はしていない( ・`д・´)キリ


『ダリア』

「ふぅ·····」

 

先程の騒動から2時間程たち、私は貸し与えて貰った部屋のベットに腰掛ける。

 

今しがた、水浴び場を借りていた所だ。

 

掌を私の顔の高さまで持っていき。

 

「火炎よ」

 

ぼそっとそう言って、掌に魔力を集中して魔法を発動する初期魔法ぐらいなら私でも詠唱破棄出来るのだ、多分「黒魔道」による成長補正による産物だと私は思ってる。

 

魔力を調整し、拳の半分くらいの火玉が出現した。火玉を私から少し離れた位置に浮かして固定する。

 

「風よ」

 

続いて風の魔法、私の向かい側に魔方陣を出現させて任意永続で固定する。

 

魔力量を調整して初期魔法とはいえ本来強風レベルの風をそよ風レベルまで落として発生させて温風を生み出して髪を乾かしていく。

 

「~~~♪」

 

自然と鼻歌が出てくる、気分が高揚してくる。

 

半年間使えなかった魔法が再びこうして自分の手で操れる日が来るとは思ってなかったし、思わなかった。

 

半年間、長いようで短いかもしれない月日の経過、その最中で同胞が買われていく事も、慰み物にされることも

 

 

見せしめに他の奴隷が目の前で殺される事もあった。

 

もう一生飼い殺されるしか道は無いと思ってた。

 

一生大好きな家族に会えないのかと、流す涙はとうに枯れていた。

 

大好きな魔法をもう使えないのかと絶望した。

 

「~~~♪(レイグ様······)」

 

そんなある日、私は逃亡を決意した。

 

ストルの街に奴隷を売りに行く途中で野営をしていて、奴隷商人の男と、手下達が眠りに付いた時だった。

 

檻の鍵が壊れていたのか、南京錠がポトリと落ちて扉がひとりでに開いたのだ。

 

私含めた奴隷皆がゴクリと生唾を呑んだのが分かった。

 

そして同時に恐怖を抱くのも······分かった。

 

中には私よりも更に小さい子供もいた、皆檻の外に広がる外の世界に羨望し恐怖していた。

 

『··········』

 

脳裏に浮かんだ家族の笑顔、私は静かに立ち上がり静かな声で尋ねた。

 

『誰か、馬を扱える人はいる?』

 

その言葉に誰もが戸惑い、顔を見合わせた。

 

やがておずおずと一人が手を上げた、彼女はどうやら付き合っていた男性が騎馬兵を務めていたらしく、直接な乗馬はしたことが無いが良く見ていたため扱い方は分かるとの事。

 

『私が囮になる、多分一人は残るかもだけど皆で頑張って』

 

こういうのは勢いだ、誰かが「でも」何て言い出したら多分何も出来なくなる、気まずくなって終わりだ。

 

だから、私はまず皆に指を噛みきって血を流して貰い頭から額に流れるよう塗って貰った、そして寝たフリをして貰う。

 

『────もうこんな生活は嫌よ!!』

 

そう言って近場にあった森に駆け込んだ、あくまで希望的観測だったけど、天はあの子達に味方したみたいだ。

 

奇跡的に「乱心した奴隷が他の奴隷を殺して逃げた」と思い込んで貰えたらしい。全員が怒り心頭で追いかけてきた。

 

『(私の味方も····してくれないよね)』

 

分かっていたが絶望感が心にのし掛かった、もう無理だと思った、この半年動けてない私にとって全力疾走はいつ崩れても可笑しくなかった。

 

 

 

「うん、もう臭わない♪(でも助かった)」

 

 

捕まって自害すら覚悟したあの瞬間、その時に現れたのは、同い年ぐらいの少年、黒髪に黒い瞳って言うちょっと珍しい風貌だった

 

助けに来てくれたのは嬉しかった、でも奴隷商人がレベル3って言ったとき、逃げて欲しいって思った。

 

最後に貴方みたいな人がいると分かっただけでも幸運だった

 

 

───そこからはあっという間だった。

 

レベル3なのに元とは言えCランクの冒険者を3人とも一瞬で倒し、奴隷商人を脅迫したのだ。

 

現実味が薄すぎて実感できなかったけど、暖かい言葉をかけられて久しぶりに恐怖以外で涙を流した。

 

彼は慌てるわけでも無く、ただ頭を撫でて待ってくれていた。

 

そしてついには奴隷紋からの解放までしてくれた。

 

彼──レイグ様と旅をする事を決心した次の日の朝、私は怒られた。

 

「いつでも会えるなんて口が裂けても言うなよ?」

 

「家族をその辛さから解放してやってくれ」

 

レイグ様は本当に優しい、厳しい口調でも会ったばかりの私や会ってすらいない家族の為に怒れるんだから。

 

 

レイグ様はどうやらこの世界の人では無いらしい、厳密には他の世界にいたレイグ様の魂がこの世界のレイグ様と同姓同名の存在に憑依してしまったらしい。

 

流石にその経緯までは聞けなかったけど

 

でも納得した、レイグ様のこの同年代と話してる感じがしない感覚も、どこか達観してるような感覚も

 

 

 

そんなレイグ様が悲痛そうな顔していた。

 

この世界のレイグ様が拠点にしているストルの街で懇意にしている宿屋「沈む太陽」そこの女主人ミランダさんと旦那さんのダインさんはレイグ様が昨日帰って来なかったレイグさんの心配をしていたらしい。

 

ひとしきり暴れた(ダインさんは本当に同情した)ミランダさんはしゃくり上げながら心配していた意思をレイグさんに伝えた。

 

私はその姿に少なからず狼狽した思わず母の姿を重ねてしまったのだ。

 

レイグ様からすれば正直関係ない話なのに、何かその姿に重ねるモノがあったのだろうか、本当に悲しそうな顔をしていた。

 

「っ」

 

さっき起こったばっかりのせいか、胸が苦しくなる。

 

きっとその表情の背景には辛いなんて言葉じゃ表せないことが一杯起こったんだと思う。

 

「(レイグ様の事をもっと知りたい)」

 

チョロい?安い女?好きなだけ言えばいい、でも仕方ないじゃないか、惚れるに決まってる、好きになるに決まってる。

 

「(アリスって人が羨ましい)」

 

森の中でレイグ様が寝言で呟いた名前、どんな関係なんだろうか、恋人?家族?

 

でもレイグ様を好きって言う気持ちは負けない、最終的に選ぶ選ばないはレイグ様だけど、これから一緒にいるのは私だ。

 

ねぇレイグ様?あの森での問答の時私は貴方に「命の恩人だから」と言いました、でも恥ずかしさから言えないことがあったんですよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────貴方の傍にいたいから。

 

 

 




ミランダ「·········(あの娘、レイグに手を出してないだろうね)」

「おぅい奥さん!エール一つ!」

ミランダ「あ"あ"ん"!?」

「ピィイイイ!?」

ダイン「気になるんだろうねぇ····」
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