レイグ(前)を見捨てた奴ら、そこまで重要キャラじゃなかった!
「──ちょっとレイグ君来たわよ?」
「先輩!私対応しますから!」
「オメーは駄目だ、何吹き込むかわかんねぇ」
「は、はなせぇ!!」
········近寄りたくねぇ。
「わ、私行ってきますか?」
ダリアが気遣ってくれるが、そう言うわけにもいかないだろう。
この境遇になっている以上こういった人間関係の厄介事、面倒事をダリアに押し付ける訳には行かない。
「すまない、クエストを受けたいんだが···」
俺がそう声をかけると受付け嬢達は騒ぎを止めて、視線で頷き合い年長者らしき女性が前に出てきた。
他の受付け嬢は他の冒険者の相手に回っていた。
「·····本当に記憶喪失になってたのね」
「····すみません」
「早く、記憶が戻ると良いわね」
どこか痛ましいものを見るような目で見られてから、まるで仕切り直しだとばかりに笑顔になった。
「ああ!貴女がレイグ君を助けてくれたダリアさんね、レイグ君がお世話になったわね!」
「(おかん······)」
「(お母さん····)」
レイグの身を案じる姿といい、ダリアにする挨拶といい、完全にその姿はオカンだった。
因みに彼女は割りと本気でレイグの事を息子に近い何かを感じている。
「あっと、そうだったレイグ君」
「はい?」
「おかえりなさい、生きててくれて良かったわ」
「······どうも」
心からそう思ってると笑顔の受付け嬢に気恥ずかしくなったレイグは顔を背ける。
「ごめんなさいね?クエストだったわね?確認するのでお預りします」
瞬時に仕事モードに切り替わった受付け嬢にレイグとダリアは感心しながら、依頼用紙に目を通す様子を見ていた。
すると彼女はピタッと止まりクエスト用紙を返してきた。
「受理できません」
「なっ」
「····Cランククエストで、フォレストウルフ「だから」ですか?」
「え?」
キッパリと不許可の意を唱えた受付け嬢。
ダリアは驚いたが、俺はやっぱりか、と後頭部を掻いた。
フォレストウルフ単体はそこまで強くはないし、正直ゴブリンやコボルトより少し強いぐらいだ。
何故Cランクなのかって?簡単だ、群れで行動するからだ。
しかもこれが中々統率が取れていて、連携攻撃も出来るしかなり厄介だ
「ある条件下であれば」クエストランクはCからBの上位まで跳ね上がるのだ。
·····そうだよな、レベルやステータスが低いだけじゃない、俺Eランクなんだよな。
「·····そこまで知っているなら、分かるでしょ?幾らダリアさんがCランク冒険者と言っても、貴方が足を引っ張って2人とも危ない目に遭う可能性だってあるの。
貴方は自分の我儘で仲間であり、恩人でもあるダリアさんの命を危険に晒す可能性つもりなの?」
·········正直ここまで言われるとは思ってなかった。
正論も正論、ド正論だ。ぼっこぼこだよ
遺憾?バカ言え、寧ろ安心したわ。
難癖つけるような冒険者だって少なくは無いだろう、実質さっき絡んで来た奴らは全員そういうタイプだ。
それでもこうやって身の丈に合ってないクエストを受ける危険性を説ける人は中々いない。
黙っている俺に表情を厳しくしたまま受付け嬢は続けた。
「·····先程レイグ君がギドルさんを倒したと小耳に挟みました、もしかしたらレイグ君の才能が少し開いたのかもしれません、格上に勝つことによって自信が付いたのも分かりますし、いい傾向と言えます
ですが自信を持つことと自惚れるのとは全然違います」
「でも、受けます」
「何故!」
受付け嬢の叱責がホール内に響き渡る、シーンと静まり再び視線が集まる。
「··········」
「────はぁ、ダリアさん」
「は、はい」
俺を睨み付けていた受付け嬢だが、一切ぶれないと察したのか、眉間を揉みながらため息を吐き、何故かダリアを呼んだ。
受付け嬢の空気に呑まれ、幾らか緊張したダリアが言葉を返す。
「レイグ君が無理したら気絶させてでも連れて帰って来て下さい、クエスト失敗でも構いません。
責任は私が取りますので」
書類に了承印を押した受付け嬢は、そう言いながら用紙を俺に渡した。
その際、受付け嬢はレイグをどこか聞き分けの無い子供を見るような、しかしどこか優しい顔をしていた。
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「ち、ちょっとアンナさん!良いんですか?Eランクのレイグ君にCランククエストって···いくらCランク冒険者がついてるからって」
レイグとダリアが低頭してギルドから去っていくのを確認した受付け嬢のうちの一人が慌てた様子で受付け嬢最年長であるアンナへと声をかけた。
「·······一緒だった」
「え?」
雰囲気が全く違うし、言動も全く違う、最早別の人が乗り移ったと言われても信じるレベルだった。
「どれだけ、内気で弱気でも、周りに馬鹿にされようともここって言うところはブレない、あの時と同じ目をしてたのよ、折れるしか無いでしょ」
疲れた用に椅子に身を沈ませて、アンナはそれでも嬉しいような優しいような、そんな笑顔を浮かべた。
レイグの安全を祈りながら次の冒険者の相手をし始めたのであった。
そんなオカンな彼女、実は28歳独身である
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あれから俺達は一度「沈む太陽」に帰って、クエスト経由で帰りは明日になると伝えた。
近隣の村にフォレストウルフが出現して被害が出ているらしく、恐らく泊まり込みになるであろうと思ってる。
渋っているミランダさんをダインさんという犠牲の元に説き伏せ。
必要な食料、水などを用意して俺達は街を出た。
「あの受付け嬢の人、いい人でしたね」
「あぁ、早く終わらせて早く返らんとな」
普通なら通らないような我儘を許してくれたんだ、感謝しきれないよ本当に。
「はい!」と元気よく返してきた仲間に頷き返して、俺達は近隣の村へとその足を動かした。
初クエスト開始だ。
受付け嬢のアンナさんに質問です!
Q、結婚しないの?
アンナ「は?おい」
えっ?ちょ───!?