ダリア「レイグ様は年上好き?ならワンチャンあんじゃね?」
やめろ、どしてそうなった
ストルの街近隣と言っても、徒歩でも片道何時間あるであろう距離だ。
だから必ずそういった遠征依頼の為に冒険者専用の運用馬車がどの街にも存在する。
「馬車なんて初めて乗っかったかもな」
「そうなんですか?」
味わったことの無い、地面を歩かずに進むという違和感、そして凹凸の付いた地面を車輪が通った時の揺れる感覚。
この世界に生まれ、冒険者として生きている者からすれば、固い木の板を繋げて作られただけの粗末な馬車の荷台。そして乗り心地の悪さに顔をしかめるだろう。
レイグは、初めての感覚に「おお···」と目を見開いていた。
「あぁ、こっちでは馬車なんてのは貴族、王族、商人が使ってるイメージが強かったからな」
「(ふふ、レイグ様かわいい)」
目を煜かせて、どこか声が高くなっているレイグにダリアは頬を緩めた。
「ハハッ!冒険者さん面白いね!どんな田舎に住んでいたんだい!」
レイグの台詞を聞いて面白かったのか、馬の御者が話し掛けてきた。その台詞には他意はなく、純粋にレイグやダリアと話したかったのだろう。
「山に囲まれた糞田舎」
「ワハハハハ!辛辣だなぁ!」
出だしは順調で、和やかな雰囲気だった。しかし街を出発して一時間もしないうちにレイグの顔に険しさが生まれてきた。
右側50M先にに広がる小規模の森に目を向ける。
「(ゴブリン、いや、リーダーもいるなこれ)」
気配はまるわかりだが、姿の隠し方は中々上手かった。
「レイグ様」
「あぁ」
そう短く答えて朝方買った直剣を鞘から抜く。うん、やっぱししっくり来るなと、レイグは満足げに頷いた。
御者に「魔物だ」と答えてダリアに「援護頼む」とだけ言って。森に向け駆け出した。
無駄と言う無駄を省いたレイグの走りは、スキル補正もあってか普通のレベル5とは比べ物にならなかった。
すぐさま距離を詰められた森に潜む気配、ゴブリン達は堪らないとばかりに森から飛び出し、迎撃の姿勢を向ける。
そのゴブリン達に遅れて明らかに体が一回り大きいゴブリンが貧相ではあるが胸当てや棍棒を装備して2体ほど出てきた。
ゴブリン8体に、ゴブリンリーダー2体
『ギャギャ!』
『グギャギャ!』
リーダーがレイグになど眼中は無いとばかりに、馬車がある方、性格にはダリアを指差して叫んでいた。
その様子に青筋を浮かべるレイグ。
事もあろうにゴブリン達はともかくリーダー2体はレイグなど物の数にすら入れてなかったのである。
「上等」
そう震える声で言ったレイグは残り6Mと言った所で、更に深く脚を踏み込み、更に魔力で踏み込んだ脚にブーストして爆ぜた。
その結果
6Mと言う距離は一瞬で埋められ、並んでいた2体の間、顔の高さの位置に飛び込んでいたレイグが右側のリーダーの肩に脚を乗っけて飛び込んだ勢いを殺しつつ左側のリーダーの首をあっさり絶ち斬った。
『ギャ?』
まるで幻のように消えたレイグにリーダーは?を浮かべると同時に肩から感じた重みが消え、そちらに顔を向け、そこには首から上が無くなっている同胞の姿を確認した。
────と、同時に首を何かがスゥっと駆け抜けていく感触と共にリーダーの意識は永遠に閉ざした。
「じ、嬢ちゃん、あ、あの兄ちゃんの冒険者ランクって·····」
「信じがたいですが、Eですよ」
私は興奮する気持ちと、御者の呆然とした質問に答えながらも、魔法の詠唱を中断しなかった自分を誉めたかった。
────分かってたけど、ここまでだなんて!
ゴブリンリーダー、ゴブリンと付いてはいるがその体は裕に2Mを越えて、体格なんて今日ギルド前で絡んで来た豚達と比べることすら失礼なほどにゴツい。
私は初めて見たけど、書物などで知識はあった、リーダーの個体ランクはCランク上位
それをああも容易く倒すなんて···!
魔法の詠唱の最後の節を読み上げていく。
───炎の精霊サラマンダーよ、今一度力を貸し与え彼の敵を討ち滅ぼせ───
高まっていく魔力、半年振りの魔法行使による緊張、不安。
「レイグ様!」
「頼んだ!」
まるで、待ってましたとばかりにその場を離れるレイグ様、いつの間にか残ったゴブリン達を一ヶ所に纏めている。やっぱりレイグ様は凄い、私も頑張るんだ。
「(───レイグ様の傍に居るために!!)
私の指先が一瞬強く発光して、消えた。代わりに、ゴブリン達の真上と真下に赤い魔方陣が展開される。
ゴブリン達が慌てて逃げようとしているが遅い。次の瞬間
ボボボボボボ!!
次々と火球が生み出されていき
「あの世で後悔しなさい」
一瞬で8体のゴブリンを消し炭にした。
ーーーー
ダリアの魔法がゴブリン達を一掃した。
「(マジか、確かに攻撃に特化したスキルだとは思ったが、ここまでか····)」
何で、中級魔法なのに威力が明らかに上級魔法のレベルなんだよ。アイツまだレベル15なんだよな?
ダリアを見ると、両手を振って喜んでいた。
その後、特にモンスターに襲われる事もなく。御者にひたすら質問責めされていた。
やれ、本当にEランクなのかとか。
やれ、ダリアとどんな関係なんだ、付き合ってるのか?とか、これには少し困ったが顔を真っ赤にしたダリアが体をくねらせながら御者の首を絞めていた。
流石に、止めた。
そうし騒ぎながら馬車に揺られて数十分。
俺達はストルの街近隣の村「リデア村」へと行き着いた。
ーーーーーーー
「こっちだ、付いてきてくれ」
村に付いた俺は、御者のおっちゃんに村の長である人の家に案内された。
どうやら御者のおっちゃんはこの村出身らしく
俺達に依頼を受けてもらって安心したらしい。
「·······(村自体に被害は無さそうだな、だが、なんだ?この村の人達の覇気の無さは···)」
ダリアも村の様子に気づいたようで、不安げに俺を見てきた。
「·····すまないな、もう少し前まではまだ活気は合ったんだが····」
申し訳無さそうに言う御者だが、やはりその顔は辛いことに耐えるようだった。
「····何か合ったのか?」
「····このクエストはさ、(塩漬け)なんだよ」
歯を噛みしめて、どこか寂れてしまっている村を憎々しげ見つめて。御者のおっちゃんはそう言った。
ダリアちゃんに質問です!
Q趣味は?
ダリア「レイグ様の顔を観察することです」
Qつまりストーカーね?
ダリア「は?おい」
え?ちょ───!?(二回目