憑依物語   作:そりゃないわ

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#前回のあらすじ


レイグ、空気を読めと怒られる

レイグ「m(_ _)m」


『長』

 

 レイグ様があの子供を探しに村を出ていったのを見届けて、私は村人達に言い放つ。

 

「じゃあ皆、早速準備するわよ?」

 

 いきなりそう言った私に村の人達は困惑したようにざわざわしている。

 

「な、何をするんだ」

 

 恐る恐ると言った感じで、集まっている村の人達の少し年配の男性が尋ねてくる、どこか警戒と猜疑心を含んだ表情に私は(これはキツいかも)と顔をしかめた。

 

 レイグ様、私にこの大役が務まるのでしょうか?

 

 若干遠い目をした私は御者さんの家の中でレイグ様と話し合った事を思い出した。

 

 

ーーーーーー

 

「村人達を、ですか?」

 

「あぁ、俺はフォレストウルフを全滅····まではちとキツいかもしれないが、壊滅状態までは追い込みたいと思ってる。」

 

 レイグ様が考案した案は、村人達に協力して貰い「追放運動」を働きかけることだった。

 

 私に言い渡されたのは「村人達を説得して、全員で森を踏み荒らすだけ」とのこと。

 

「小さい村ではあるが、100人くらい居るなら大丈夫だ、フォレストウルフは基本臆病だ、火を恐れ自分より大きい奴には集団じゃないと挑めない、松明を持たせて全員で力強く歩くだけでかなり効果が現れる······頼めるか?正直この作戦で一番大変なのはダリアだ」

 

 幾らか眉を下げて、心配してくれるレイグ様に内心歓喜を覚えながらも「確かにそれは」とも思う。

 

 まだ村を一周ぐらいしか見て回ってないが大人達の未来に対する不安や絶念が子供達にも伝染していた。

 

 加えて、先の偽者の一件に干されていた依頼、そして来たのはCランクの私とEランクのレイグ様。

 

「不安になる要素しかないな」

 

 口元をひきつらせて言うレイグ様に私も微妙な顔を返してしまったと思う。

 

「──レイグ様、私に任せてください」

 

 私の言葉を聞いてもレイグ様はどこか浮かない顔をしていた、どこか「ダリアを自分の都合に付き合わせてる」、そんなことを思ってそうだった。

 

 客観的にみたら誰もがそう思うと思う。

 

 明らかに依頼内容の範疇を越えている、肩入れをしすぎていると言われてもしょうがないだろう。

 

 

 

───レイグ様は本当の意味でこの村を救おうとしている。

 

 たまたま受けた依頼先が危機に瀕している、たったそれだけで。

 

 でも私は知っているのだ、レイグ様がそれだけでは無いのが、レイグ様は諦めるという行為が嫌なだけなんだ。

 

「レイグ様、私は嬉しいんです。頼ってくれているのが、だからそんな顔しないで下さい」

 

「ダリア·····」

 

「レイグ様·····」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの?盛るなら良い場所あるから教えてアッ」

 

 邪魔をした御者さんの目潰しをした私を誰が責めると言うのだろうか。

 

 

ーーーーーーー

 

「何って、今から皆であの森に入るのよ」

 

「はぁ!?」

 

 村人の反応は当然だ、魔物が怖いし命が惜しいから依頼を出したのに、意味が無いじゃないか、何を言ってるんだ?と私を責める視線が増していく。

 

 その反応も当たり前だ、でも───

 

「皆、分かってんだろ?そう言う段階は過ぎてるって」

 

 そういって私の横に立っているのは御者さん、若干目元をヒクヒクさせて、私から少し間を空けて立っている。うん、素直に反省。

 

「ギョシャ·······」

 

 え、この御者さん「ギョシャ」って名前だったの?

 

「ギョシャさんの言う通りよ、もうこれは「只討伐するだけ」じゃ。収まり付かないって皆も分かってるでしょ?」

 

 そう、本当にその段階を越えている、魔物以前の問題なのだ、あの男の子が言っていた事をギョシャさんに聞いてみてますます思った。

 

 寄り付かない商人、閉鎖的になっていく、痩せていく土地、幾らストルの街近隣と言っても。魅力もない村に寄るかしら?

 

 正直、近隣の村や集落は、少し歩けば他にも幾つかあるのよね。

 

 

 

 

「って言って、アンタもあの兄ちゃんも逃げるんだろ?「あの時」みたいに」

 

 その時、「ついに」村人側からその声が上がっていた。

 

 どんどんその言葉に他の村人に浸透していき·····

 

 ギョシャさんが何とか収めようと声を荒らげるが全く聞き入れない様子。

 

「冒険者なんて信じられない!」

 

「ギョシャの家で食った飯は上手かったかよ!?」

 

「もう騙されないぞ!」

 

 放火火事の如く、一度着いた火は消えず、寧ろ強く勢いを増した。

 

「皆、頼むこの嬢ちゃん達を信じてやってくれ!本当にあの時の奴らとは違うんだって!」

 

「うるさい!お前も同罪だ!こんな余所者連れてきて!·······第一こんな子供が本当に冒険者かよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

じゃあ勝手に滅びろ!

 

 気付けばそう叫んでいた、完全に頭に血が上っている私は村人達全員を睥睨し更に叫ぶ。

 

「そんなに死にたければ死ねば良い!折角レイグ様がこの「村を」救おうと動いているのに!」

 

 村人達が静かになって私の声だけが響く。赤子の泣き声が僅かに聞こえる。でも止まらない。

 

「こんなに狭い視野でしか物事を計れないなんて残念だわ!私達はクエストを受けたんだから依頼通りフォレストウルフは倒して上げる、でも、そのあとは知らない、閉鎖的な村で生きて、外と全く関わらず。

 

 

 

全く同じ事を繰り返して滅んでしまいなさい!」

 

 

 レイグ様が気に掛けていたのは、その事だった。依頼達成するのは良い。

 

 そのあと、この村がどうやって生きていくかだった。商人による物資の流れが無ければ当然お金も動かない

 

 現状文無しで、痩せた土地で作った作物で生きている状態

 

 その状態では当然村人はますます閉鎖的になりストレスも溜まっていく。

 

 そこにモンスターや盗賊が来たら?簡単に略奪されるだろう。

 

 だから、例え強くなれないとしても、脅威に立ち向かえる心の強さは持って欲しいとレイグ様は言っていた。

 

 

 「ギョシャさんごめんなさい」

 

 ギョシャさんは目をぱちくりさせたあと複雑そうに笑って「気にすることはない、寧ろすまない」といって頭をさげられた。

 

 

 「待ってください」

 

 もうどうにもならない、そんな状況にどこか弱々しい声が響いた。

 

 そっちを向くと、一人の老人がいた。

 

 そう、リデア村の村長だった。今さら何?と私は思わず睨むように見てしまった、しょうがないでしょ!第一印象悪かったし!

 

 私が何も言わずに視線だけを返すと村長がいきなり何も言わずにその場で膝を着いた。

 

「村長!?」

 

「ダリア様、この度は私含め、村の者が失礼を働いた

 

 

 

すまなかった」

 

 そう言って頭を地面に着けた、所謂土下座だった。

 

「ワシは思った、本当にこのままでは村が滅びると、奇跡的にフォレストウルフの脅威が去っても、金もない、交流もない、農作以外に何もできない我々では····」

 

 村長は頭を伏せたまま震えていた

 

「ワシだけならそれも良い、と思っていた。どうせ生きて後10年あるか無いかぐらいじゃ」

 

 頬を伝って見えた何かは冷や汗か、それとも·····

 

「でも、ワシは腐っても村長じゃ、皆の生活を守る必要がある」

 

 震える声で「助けてくだされ」と更に地面に頭を押し付ける村長。

 

 更に

 

「すまなかった!」

 

「ごめんなさい!」

 

 次々と、村人達が村長に習い土下座を始めた。私とギョシャさんは目を丸くして、その光景を呆然と見ていた。

 

 皮肉でも何でも無く村長に対して凄いと思った。どこかギルドマスターに通じる何かを感じる。

 

 村人達からは掌返しが露骨な感じもするが、言い訳もせずに懸命に謝ってる姿からはちゃんと誠意も感じる。

 

「·····俺も土下座する?」

 

「·····絶対しないでください」

 

 ギョシャさんの言葉に私はそう返すしかできなかった。

 

 





次回、むらびとぱれーど
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