#今回の話の前半、もしかしたら分かり辛い描写になっていると思います。ご了承下さい。
「これで全部か?」
静まりきった森の中で、俺は疲労を滲ませた声でそう言った。あぁ·····
「疲れたぁ······」
極度の緊張から解放されて、俺はその場で倒れ込む。ビチャっとフォレストウルフの血で汚れるが今更だ、もう全身が血まみれになっていた。
今すぐにこの場から離れたい、獣独特の臭いだったり血の臭いだったり、あちらこちらに飛び散ったりしてる血だったりで、軽く阿鼻叫喚になっている····が
もう無理、もう動けん。魔力やブーストで無理矢理動かしていたのもあって、もう少ししたら反動来るだろうなぁ。
「·······」
辟易としながらさっきの傀儡獣のブラッディウルフを思い出した。
「大成者······か」
『異界の英雄よ、大成した者よ』
この世界に入る時に聞いた言葉と同じ言葉····だよな。有力な情報ではあるんだろうけど、如何せん他の情報が少なすぎる。でも
「取り敢えず、依頼達成だな」
無事だったことを喜ぼう。
目をつぶって。耳を澄ますと
───オオオオオオオオオオオオ··········
村人達が雄叫びを上げているのが遠くから聞こえた。
雄叫びに次いで、走る音までもが此方にまで響いた。
「さすがダリア」
顔が笑みで緩むのが分かる。
何か忘れてる気がしなくもないが、パッと思い出せない事の大半はどうでもいいことだって誰かが言ってたかもしれないので。
そう思うことにして俺は寝る事にした。
ーーーーーー
──ん?
「ん?夢か」
気付けば俺は目を開けて立っていた、いきなり夢と断定出来たのは。
「そう、これは夢よレイグ」
決して、今、俺の傍には居ないであろう大切な人が見慣れた笑顔で目の前に居るからである。
茶色のセーターに青いデニム生地のズボンという最後に会った時の服装、腰辺りまで伸びた綺麗な金髪をポニーテールに纏めあげ、お姫様と言うより宿屋の美人看板娘と言った感じの彼女、チャームポイントとも言うべき鼻の上に僅かにあるそばかすは確かに彼女──アリスだった。
「久しぶり、アリス」
「何言ってんの、まだ「会えなくなって」たったの3日めじゃない」
「·····そっか、まだ3日しか経ってないんだな」
おかしいレイグと、カラカラ笑う彼女、からかうような口調、優しく見守るような表情は相変わらずだった。
俺は話した、この世界に来てからこんなことがあったんだとまるで小さい子供に絵本を読み聞かせるかの様に。アリスは笑って、時には呆れて、時には驚いて、時には悲しんで、やっぱり笑って俺のどうでも良いような話を聞いてくれた。
「アリス·····俺さ──」
俺が何を言うか、分かったであろうアリスはまるでステップを踏むかのような軽い足取りで目の前に立つと。
俺の口元にピッと人差し指を添えた。
「ダメ、レイグ」
「······夢の中ぐらい良いじゃないか」
思わず拗ねるような口ぶりになってしまった。
「それは「その時」にまで取っておきなさいな、全くせっかちなのは変わんないねレイグは」
「アリス?」
「いーいレイグ?これは夢よ、でも·····
でも、この世界で貴方は決して一人では無いわ」
······どういう意味だ?
「この事は覚え···て無いかもしれないね、まだ私達は馴染んで無いみたいだから
······でも、それでも··」
馴染む?私達?俺とアリスの事?一体何を何でそんな寂しそうな····
ん?喋れない!?ふざけんなまだこちとら言いたい事あるんだぞ!おい!
アリスっ!
ーーーーーーー
「ん·······」
「起きましたか?レイグ様」
目を開けると頭に柔らかい感触を感じ、真上から最近聞き慣れた、でも意外と聞き心地の良い声が落ちてきた。
「だ····りあ?」
「はい、ダリアです!」
元気そうに答える彼女、取り敢えず状況を確認して····相変わらずのそこら中から漂う、血、獣の臭い、そして血だらけの森。そこまで時間は経ってないようだ。
どうやら本格的に寝てしまった所を、ダリアが見つけてくれて見ていてくれたらしい。
しかも膝枕されてるし···何か恥ずかしいぞこれ。
あー、つーか動けねぇ····ダルい。
てか何だろう、凄い大事な夢を見てた気が、全然思い出せないや···
「村の人達は?」
「はい!隠れていたフォレストウルフ達も流石に100人が横に並んで松明振り回して叫びながら走ると言う光景に真っ直ぐ逃げていきました。」
「そこまでやったのか」
そりゃ逃げるわ、俺でも逃げるわ
「はい!何か気分良くなったのかそのまま、他の森の方にまで走ってっちゃいましたけど····」
·······まぁ結果オーライか····?
「悪い、重かったろ?今どいて····」
「わ、私は大丈夫何でもう少しこのままで!!」
「お、おぅ」
勢いに押されて、そのままの状態を維持する事にした。いやまぁ現状何も出来ないけど。
ダリアも、顔を真っ赤にして俯いてしまっている。
·····しばらくそうしていると、ダリアがなぜか泣きそうな笑みを浮かべた。
「ダリア?」
「無事で良かったです」
「──あ···」
「大丈夫だと信じてました····でも、レイグ様が血まみれで倒れていたのを見て、·····わたし·····わたし···」
涙を溢しながらダリアが、口元を手で覆って震えていた。
「ダリア」
泣かないでくれ、俺なんかの為に、そう思ってダリアの目元を血が付いてない指で拭う。
でも、俺なんかの為に泣いてくれて
「ありがとう」
力があまりでないから上手く笑えてるか分からないな······
「────れいぐしゃまぁあああああ!!!」
あ、だから泣かない──うおおお!?抱きつかないで!恥ずかしいから!てか、血が付いちゃうから!
「お楽しみですね、あんちゃん?」
「お前、レン何勝手に降りてきて!つか見てるなら何とかしてくれ!」
「いやぁ何て言うかぁ?「いいかっ!必ず戻る!絶対降りてくるんじゃねえぞ!?」ってカッコつけてたのに静かになっても全く帰って来ないから心配になって来てみればぁ?そのねぇちゃんに膝枕されて幸せそうにしてるみたいだから邪魔しちゃったのかなぁって」
このガァキャァァァァァア!?
「れいぐしゃまぁああああ!!!」
ああもぅ、何故こうなるの!?
俺は心の中のアリスにそう声をかける。
心の中のアリスは此方を見て鼻で笑って背を向け去っていった
ああもぅ、何故こうなるの!
ーーーーーーーーー
「いでえぇぇ····」
数十分後、頭を擦っているレンの姿があった。
「ったく」
「レイグ様駄目ですよ?小さい子供にそんな乱暴しては」
「全くの無抵抗の時に抱き締めてきたダリアに言われたくない」
「········りぴどー」
「何言ってんの!?」
「あんちゃん」
「ああん?今度はなに?」
最早投げ槍にそちらを見ると、レンが真面目な顔で、俺達から3歩ほど離れた所に立っていた
「あの時は酷いこと言ってごめんなさい、あと助けにきてくれた時も」
深く頭を下げて謝るレンに思わず面喰らう俺達。
「お、お前ちゃんと謝れたんだな?」
「失礼だな!?」
「悪い悪い、まぁ何だ、帰るか」
罰が悪くなったのでそう言うとレンは「おう!」と言って駆け出した。
俺達も行くか、と声をかけて俺達もレンの後を追いかけようと足を動かそうとして。
「花?」
先程まで俺が寝ていたであろう場所に全く血によごれてない白い花が一輪咲いていた。
「これ勿忘草ですね!綺麗、しかも一輪だけだなんて」
何故か気になって、マジマジと見ていたが、結局何が気になったのか分からず、その勿忘草を人なでして俺達もレンの後を追いかけた。
───そう言えばアリスが好きな花だったな、まぁ何故か白は嫌いと言ってたが
ダリアちゃん
ダリア「··········」
これ、健全な奴だから
ダリア「っち」
ダリアちゃん!?