「ア」の方の出番は挟めつつも、まだありません
レイグ達がその場を離れて、直ぐに憲兵達が5人やってきた。自分達の警邏区域で突如上空で魔法が破裂したのだ、憲兵全員が険しい表情だった。
比較的近かったので、通信用の魔法具を使い近くで同じく警備をしていた仲間を呼び出し現場に向かうと、大通りから差程離れていない小路に建つ平屋住宅の前に人だかりが出来ていた。
「何があったんだ?」
硬い表情ではあるが、心配させないように穏やかに話しかける憲兵。話しかけられた住民はどこか安堵しながら「上から何かが破裂した音がなって少ししたら、いきなり、家の中から破砕男が鳴り響いた」と言う要領を得ないものだった。
「とにかく分かった、貴方達は普段の生活に戻ってくれて構わない。」
その言葉に安心した様子を見せた住民達は気にした素振りを残しながら一人一人とその場を離れていった。
「お、おい」
「どうした?」
家の中を探索していた仲間が動揺した様子で呼びに来た、仲間の案内を元に奥の部屋まで行くと
ドアは綺麗に蝶番ごと無くなっていて、奥に視線を向けると3人の男がいた、一人は顎を破壊されており、もう一人は恐らくこの部屋のドアと床に挟まれたまま意識を失っている、もう一人は胸元を抑え重く呻いていた。
「な、何が───」
あまりの光景に憲兵は呆然とした。
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あのあと、ブーストした体でダリアとカーラを抱えた、レイグは窓から外に出て家を飛び上がり、更には隣の建物の屋根まで飛び上がり、そこから屋根伝いで「沈む太陽」の前までショートカットしていた。
ダリアは楽しそうにしていたが、カーラは短い時間の中で整理が付いたらしい、どこか暗い表情で俯いていた。
「だぁ····しんどい」
「レイグ様のそれ凄いですよね!一部分だけでなく全身くまなく循環させられるんですから」
「まぁただ、今回みたいに無理矢理な使い方すると、自分にも反ってくるがな···」
興奮したように言うダリアにレイグは苦笑いを浮かべて、「魔力のコントロールに役立つから教えるか?」と問うと、はい!、と元気よく返すダリア。
「取り敢えず、話は俺の部屋に行ってからな、カーラ」
「·····分かった······」
「ミランダさん、戻りました」
「ん、お疲れさん、依頼はどうだったい?」
「無事に達成です!」
「沈む太陽」に入って、出迎えてくれたミランダさんに挨拶をすると、本当に母親に出迎えられているような感覚になった俺は、後頭部をかいて目を逸らすしかできない俺に代わって、ダリアが返してくれた。
「そいつは良かったよ、おや?新しいパーティーメンバーかい?」
「········」
「まだ審議中です」
「───え···?」
俺の言葉に、カーラはえ?と呆然とした顔で俺を見ていた。ミランダさんは嬉しそうに答えて、「そりゃ良かった」と気前よく言った。
「あんたも宿を使うのかい?」
「········まだ、分からない」
ミランダさんは別段気を悪くしたようすも無く、笑って「ゆっくり決めな」と言った。
取り敢えずそのまま俺の部屋に直行した俺達は腰を落ち着かせた。
最初は無言状態が続いたが、やがてカーラが口を開く。
「先ずは、助けてくれてありがとう、本当に助かった」
頭を下げるカーラに俺達は頷いて、次いで「でも」と続ける前に俺が口を開いた。
「ゴメン」
「え?」
「あの時、俺はカーラを一方的に拒否した、確かに提案は度が過ぎている感はあった、でも俺達にも頼まれた以上色々話を聞く義務はあった筈なんだ」
確かにカーラにもああなった原因はあるだろう、これは分からないがカーラは何らかの期待を持って俺達にも接したのだろう。
でもその期待を俺が真っ向から否定、までは言わないけど異を唱えた。多分今回の誘拐はそれが付き入れられる隙を作った要素、なんだと思う。
「それは違う!」
必死な形相で大声を上げたカーラは、ハッとして、下を向いた。
「······それは違う、私は事情の全てを話した、でも私は貴方のランクの事も関係無しにランク適正外クエストの話を持ちかけた、下手すれば貴方達に危険をもたらすなんて考えもせずに」
どこか、青褪めた顔で呟くカーラ。
「カーラさん、この際、貴方の家の事もカーラさんの立場も、何なら先程起きたことも全部脇に起きましょう。」
そんなカーラを落ち着かせるようにダリアが立ち上がりカーラの傍に移動して落ち着かせるように言う。
「······え?」
「さぁ貴方の目的を教えてください」
ダリアが此方を見てくる、頷くとダリアは意を決してカーラを強い眼差しをで見ていた。
「目的····?」
「はい、貴方の家の事情も、貴方が冒険者に憧れて家族と喧嘩した。事の経緯は教えてもらいました。
でも、貴方が冒険者になってから「何をしたいのか」それをまだ教えてもらってません。」
「───」
カーラが息を飲むのが分かった。
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「目的····?」
ダリアさん、そしてレイグさんが私を見つめている、カーラさんは続けた。
「はい、貴方の家の事情も、貴方が冒険者に憧れて家族と喧嘩した。事の経緯は教えてもらいました。
でも、貴方が冒険者になってから「何をしたいのか」それをまだ教えてもらっていません。」
言葉が詰まる、だってそれは、そんなの
私の、わたしの全てを晒けだせと言うこと?
「因みに、私はレイグ様にどこまでも付いていく事が私のしたいことです」
「!?」
「!?」
え?今凄いこと言ったダリアさん?レイグさんなんか顔を赤くしてダリアさんに驚愕の表情を向けている。今のってプロポー····
「·····あぁ、もう····俺のしたいことってか目標か····」
そしてレイグさんが語った事は、信じがたい事、異世界?違う世界の自分に憑依?到底信じられる事ではない。
レイグさんの目は本気だった、いや、今までも。これからも何時までも本気なのだろう。それがどれだけ困難な事が分かっていながら。
2人がこうして自分の内をさらけ出してくれた意味は私でも分かる、決して私が話しやすいとかそういうものでは無いと言うのも。
これはチャンスなのだろう、最初で最後のチャンス
「────
私は、ただあの本の主人公みたいな、誰もが笑顔を向け、誰にも笑顔を向け、龍を倒す、と馬鹿げた理由で何処までも進んで。
騙された時があった、苦しい時もあった、それでも皆で協力して進んで、笑いあって進んで
何度も挫けた、何度も折れた、でも何度も立ち上がって最後には本当に龍を倒す
────そんな冒険をしたかくて、でも私は才能がなくて、見返したくて」
駄目だ止まらない
したいこと事に異物が混ざってる、私の醜い所が出始めてる
分かっていても、止まらない、チャンスなのに
「───何かを成せる冒険者になって、皆を見返したかった、「貴方達の知っているカーラはもういない」って、凄いって誉めてもらいたかった
だって皆お姉様ばかり、私が出来ない事をお姉様は何でも出来る、お勉強も作法も、胆力もある、綺麗だし、どんな服も似合う、お茶会の時に色んな子達に囲まれていた
お父様もお母様もメイドも執事も皆お姉様の事ばかり
私だって!お父様達の子供なのに!お姉様ばかりずるい!」
それは只の嫉妬、醜い、自分の事しか考えてない。
涙が止まらない、一度溢れた感情はマグマの如く留まること無く、私を激情に晒していく。
きっと彼らは失望している、「そんな下らないことで、俺達を危険な目に合わせようとしていたのか」と憤怒の形相を浮かべている。
でも、もしそんな私でも、認められたなら
「じゃあ、これからバンバン見返してかないとな」
「はい!頑張りましょう!カーラさん」
求めても良いですか、あの物語の続きを。
念のためハーレムタグ付けた方がいいかしらん