憑依物語   作:そりゃないわ

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2話『大成、寝床を求める』

あれだけ地上を明るく照らしていた太陽が、今は夕焼けに代わり暗くなる前兆を見せ始めた頃。

 

ようやくレイグはその山から抜け出せた。

 

「······やっと出られた·····」

 

どこか疲れたような声でそう言うレイグ、実はあれからカードをよく見たが、分かったのは冒険者としてのランクが最低であるEランクと言うのと、(new)と付いた魔法という項目があったと言うだけで、後は預金額等のどうでもいいのか重要なのかよく分からない事だった。

 

肝心の地図が無かったのである。

 

そこからは必死だった、幸い携帯食料はあったし、動植物はいたし食には困らないものの、水も無ければ替えの服もない

 

一日だけならギリギリ問題ないであろう。

 

しかしこの状態が続いてみろ、髭は生えるだろうし、体臭もキツくなるそれだけでもし町を見つけたとしても入らせてくれないし、警戒はされるし、冒険者カードを見せて入れたとしても待っているのは鼻を摘まんで露骨に避けられる仕打ち

 

宿屋は門前払い、八百屋に近付こうものならば、包丁を持ち鋭い目で此方を睨み付けるおっちゃんバッチャン若奥様(トラウマ)、ギルドには入れるだろうがそこでも冷たい対応

 

広場で遊んでいるだろう子供達に見つかったなら「くさい」と連呼され石やら、泥やら何でも投げつけてくる始末(強トラウマ)

 

幼馴染みには、「臭い」と感情を感じさせない表情で一言(超トラウマ)

 

「········マジか」

 

山から出たのはいいが、そこから広がるのは広大な草原、目を凝らしても町がありそうな気配は全くない。

 

 

「まぁ、道があるだけでも儲け物か?」

 

目の前に見える馬車一台分ではあるがちゃんと道になっている地面が続いている

 

「探索魔法覚えとくんだったなぁ」

 

アリスが使っていたのを思い出し、教えて貰うんだったと、軽く後悔した。まぁ、仮に使えたとしても今の魔力量では大した距離は見えないだろうが。

 

 

取り敢えず歩く

 

「·······」

 

ひたすら歩く

 

「··········」

 

歩き始めて2時間が経過した頃、とうとうレイグはキレた

 

 

「何なの!?こんだけ広大な土地があって、町や村どころか人っ子一人通らねぇじゃねぇか!?」

 

もう辺りは暗く、狼であろう遠吠えまで響く始末。

 

「·······まぁ、普通暗くなり始めたら夜行型のモンスターや獣を警戒して出歩かないか」

 

怒鳴った事で冷静さを取り戻したのか、大きく深呼吸を繰り返して落ち着く。

 

そうして未だ見晴らしの良い草原を見渡し、そこら辺の森に入り野宿と決心

 

夜中の移動は慣れてはいるが、この身体でそれを出きるかと言われたら即答で無理と答える。

 

「·····焦ってもしゃあないか」

 

そう言って自分を納得させてまだ視界がハッキリしてるうちにさっさと寝床を見つけようと移動を開始する。

 

ーーーーーーー

 

レイグが森に入り中を探索し始めた頃

 

森の中を疾走する人影があった、疾走と言ってもその足取りは重く、どこか覚束ない、今にも倒れてしまいそうだ

 

「はぁ······はぁ·····」

 

「何かから逃げている」その人影は少女のようだ、10代後半に差し掛かるであろう少女、茶色の長い髪を揺らしその顔は形の良い顔を真っ赤にして息を切らせながらも懸命に走っている

 

 

─────っくそ!待ちやがれ!

 

 

背後から聞こえたその怒声に少女はビクッと反応して、綺麗な紅い瞳で後ろを確認する

 

「(姿は見えない!どこか·····隠れる所に·····!)」

 

しかし辺りを見渡しても細い木々や中途半端な茂みしかないのを確認して焦る

 

「(っ!もう····体力が·····!)」

 

足の感覚が無くなって来てる、何かに躓いたら動けないだろうにそれでも少女は走り続けた。

 

「(あんな生活は嫌·····!)」

 

無理矢理拐われて無理矢理奴隷紋を刻まれた。

反抗しようものならその身体に電撃を流され、他の奴隷達と共に別の街に連れてかれ檻に入れられたまま見せ物にされ軽蔑と獣欲に満ちた視線に晒される日々

 

少女は奴隷だった、よく見るとみずぼらしい膝下まである服を来ていて、茶色の長い髪もかなり傷んでおり端整な顔も汚れがかなり目立っているせいで酷い見てくれになっていた。

 

「っ(この奴隷紋さえなければ!)」

 

忌々しげに胸元に刻まれた奴隷紋を見る

 

「(魔法さえ使えればあんな奴ら!)」

 

怒りと悔しさと恐怖で涙が出てくる、視界が涙でボヤけた事と奴隷紋の事に気を割いてしまったからだろう

 

がっ

 

木の根に躓いてしまい身体が傾く、ろくに受け身も取れずに転んでしまった

 

「あぅっ!?」

 

少女の逃走劇はあっけなく終わった。

 

膝を強打したのだろう、激痛が少女を襲う、更に

 

 

バヂヂヂヂヂヂ

 

 

「キャアアアアアアアアアアアア!?」

 

 

胸元の奴隷紋が光り全身を協力な電撃が走り抜ける。

 

「あ·····あぁ······」

 

流された時間は3秒にも満たないが、それでも少女を屈服させるには充分だったし、恐怖によって失禁もしてしまっていた。

 

「おいおい、あんまり手間かけさせんなよダリア」

 

世話が焼ける子供に話し掛けるような、どこか穏やかな声で少女──ダリアに話し掛ける目の前にたった男

 

ダリアや他の奴隷達を支配している奴隷商人だった。

 

穏やかなのに悪意しか感じないその声音にダリアは涙や鼻水でグシャグシャにしながら恐怖に喘ぐ。

 

「旦那、ここはキチンと主従関係ってのを教えてやらなきゃ駄目って奴じゃないですかい?」

 

奴隷商人の後ろから山賊のような格好をした男が3人程出てきた。

 

「────ッヒィ!?」

 

手下の提案に奴隷商人はがっとダリアの頬を手で掴み顔を近付けた。

 

「あー、しゃあねぇか性奴隷で処女ってのは人気があってなるべく手は出したくなかったんだがなぁ」

 

「そうこなくっちゃ!旦那」

 

途端に獣欲染みた視線を向けてきた奴隷商人に手下達、その意味が分からない程ダリアは子供じゃないし

 

 

 

 

それを受け入れる程人生を諦めてなかった。

 

 

「いったい····あ····が······」

 

「あん?」

 

俯きブツブツ何かを呟くダリアに訝しげな顔をする奴隷商人にダリアは顔を怒りに染め上げ声を振り絞り、恐怖を殺して怒鳴った。

 

 

「一体あたしが何をしたって言うのよ!?」

 

もう、構うもんか、電撃を流されようと犯されようと暴力を振られようとも。

 

そのときは舌を噛みきってやるとばかりにダリアは怒鳴った

 

「あたし何もしてないじゃない!誰の恨みもかってないし、あたしも家族も借金なんかしてない!犯罪だってやってないし、ギルドの規約違反だってしてないわ!」

 

フーッフーッと怒りに震えるダリアをポカンとした顔で見ていた奴隷商人達は次第に震えて笑いだした。

 

「ヒヒ·····まぁ、何だダリア

 

 

恨むんなら美人な顔で産んだオメェさんの親を恨みな」

 

 

そう言ってダリアのボロボロの服に手をかける奴隷商人

ダリアはギュって目を閉じ舌を歯ではさみ噛みきろうとして。

 

「ぶべっ!?」

 

「っ!?」

 

目の前の男が横に吹き飛んでいく様を見た。

 

 




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