憑依物語   作:そりゃないわ

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#前回のあらすじ

レ イ グ は 木 の 枝 (?) を 手 に 入 れ た!


31話的な話

 

 道中気絶した(させられた)カーラを揺り起こし、三人はダンジョンの入口まで上がってきた。上がってきたレイグ達に気付いたのか、憲兵が「お疲れさん」と言って手を挙げた。

 

 外に出ると、時間的にまだ昼間に差し掛かった頃で、ダリアとカーラはダンジョンに入ってからまだ数時間しか立ってないことに驚いた。

 

 憲兵の人達は、降りていった直後のカーラの叫びを聞いていたのか、同情するような、そんな苦笑いで口を開いた。

 

「もしかして、初めてのダンジョンだった?」

 

「·········」

 

 話し掛けられたカーラは、ふいっと気まずそうに視線をそらした、その様子とダリアにじっとりとした目で見られているのを見て、憲兵は「ドンマイ」と苦笑いした。

 

 どこか「モンスターの軍団から逃げ切ったのか」と僅かながら称賛と感心が混じっているのを感じたレイグだが、「本当は全滅させた」等と混乱を起こしたい訳では無いので、肩を竦めるに留めた。

 

 その後、一階層で現れたモンスターの種類、そして床に壁がスライドするギミックがあることを報告した。ギミックに関しては未だ把握していない情報だったらしく、一応調査は入るらしいが感謝された。

 

「そう言えば、御者に聞いたんだが、このダンジョンが出来てから周辺のモンスターが減ったって聞いたんだが。何か知らないか?」

 

「·····一応、王都の騎士団が調査隊を派遣してくれているんだが、著しい結果は出てないんだ」

 

レイグにそう聞かれた憲兵達は、揃って難しい顔をした。

 

 「この話はあんまし口外しないでくれよ?」と真剣な面持ちで付け足した憲兵に「箝口令案件を易々と一般冒険者に話すなよ····」と呆れるレイグとダリアに目を輝かせるカーラ、どうやら「秘密の情報」を教えてもらってる状況が琴線に濃厚接触しまくってるらしい。

 

 調査依頼の用紙に調査完了の印を押してもらい、それを受け取る。一言、二言会話を交わした後、待たせていた御者が操る馬車の荷台に乗り込む。

 

「そうだ憲兵さん、何か食ったら良い」

 

 その際、レイグがダンジョン内であった冒険者パーティーのリーダーであるバズから貰った硬貨が入った袋の中を見て、さっと大銀貨3枚程手に取り憲兵に向けて弾いた。

 

 危なげなく、それをキャッチした憲兵が疑問を浮かべて大銀貨を見て、笑顔で手を振ってきたのでレイグ達も振り返した。

 

「まぁ、情報料にしては安いがな」

 

「レイグさん凄い、冒険者みたい」

 

「冒険者なんだけど」

 

「でも、何で態々騎士団が調査を····?」

 

「多分、信頼と金の問題じゃないかな」

 

 案に「冒険者に依頼を出せば」と言ってるダリアにそう返す。こういった国絡みの調査依頼と言うのは基本的に高ランクパーティー等の実力者且つ、国と直接関り合いのある奴らに当てられる。

 

 そうなると当然、高額な報酬を支払う前提の依頼になってしまう、これが騎士団にすら手が余る案件だったら迷う事もなく依頼を出すだろうが。

 

 「たかが」Cランクダンジョンに高額の報酬は無駄遣い、と言う事なのだろう。

 

 ダンジョン自体、まだまだ不明な点が多いのだ、何かが起こるか分からない状況、確かに一冒険者が請け負うには役不足かもしれない。

 

「まぁ、俺らが気にすることでも無いだろう、それよりも明日からバンバン依頼受けてくからな?」

 

「そうですね、何だか楽しみになってきました」

 

「···········」

 

 レイグの言葉にダリアだけが返し、カーラは強い眼差しで頷いた。

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 ストルの街に戻ってきたレイグ達はギルドに行く前に昼食を食べようと言う話になった、確かに時刻は既に3時を過ぎて射手座、意識したからか空腹感がレイグ達を襲った。

 

 三人は「沈む太陽」に戻り、宿屋の入口がある小路ではなく、大通り側にある食処の店を開けた、カランカランと鈴の音が中に響き渡り、その音に反応した店主、ダインが出迎えてくれた。

 

「ん?レイグ達じゃないか、珍しいな」

 

「今日は早めに終わったんですけど、まだ昼飯を食ってなくて···」

 

「もう倒れそうです····」

 

「············」

 

 空腹に喘ぎながら言うレイグ達、ダリアは今にも倒れそうだし、カーラに関しては俯いて何かを呟いている。レイグが耳を澄まし「冒険者」と単語が聞こえた瞬間、問題なしと頷いてダインに向き直った。

 

 ダインは三人に対して優しく笑い「カウンター空いてるから座って舞ってなさい」と言って、厨房に戻っていった。

 

 先に座ったダリアとカーラに続いてレイグも店内を見ながらカウンター席に座った。店内は賑わっており。確かに空いている席がカウンターしかなかった。

 

 意外にも人気なんだな、とかなり失礼な事を思いつつ感心していると。

 

「なぁ、聞いたか「ヴァリエン最強の勇者パーティー」の話」

 

「あぁ、半年以上も前に「勇者」「剣聖」「聖女」「賢者」の希少スキルの持ち主で結成されたパーティーだろう?」

 

「ちがうちがう、そう言うんじゃ無くてだな」

 

 そんな気になる会話が聞こえたので思わず耳を傾けるレイグ、カーラも気になったのか「う"う"·····」と言う呻き声を封じて幾らか隣にいるダリアへカウンターに伏せたままにじりよった。ダリアはそんな二人に気が付いてカーラの真似をして同じく伏せた状態で隣にいるレイグにさりげなくしなだれかかるような感じで体を傾けた、中々強かな女である。

 

 回りから「ドミノ倒し?」「ってか坊主そこ代われ」などと聞こえるが、レイグ達は一切無視である。

 

「とうとう、魔人の手掛かりを見つけたって専らの噂でな」

 

「マジで?朗報じゃないか」

 

 潜めた声でそう言った男に、もう片方が驚いたように声を出した。

 

「しかも、その場所が「カサブの街」近くの洞窟らしくて、一昨日からカサブに滞在してるってよ」

 

「こっちにも来てくれねぇかな?」

 

「あり得るんじゃねぇか?確か「賢者」様の故郷がストルとカサブの中間にあるんだとよ」

 

「見てみたいよな、勇者様以外、皆かなりの美女って言うらしいじゃないか」

 

 やっぱりそう言う話になるのね。と思わずガックリするレイグ、不意にダリアがレイグの腕の服を摘まんだ。

 

 レイグは確かに美人だったな、と前の世界で絡まれた時の面子を思い出した。しかし性格がくそだったので、レイグとしては論外である。

 

「しかも3人共勇者様にお熱って噂なんだろう?」

 

 

 

 

 

「は?」

 

 思わず、殺気が漏れた周囲がそれに当てられたのか、びくっとなっていたが、レイグはそれどころじゃなかった。

 

「(俺は今、怒ったのか?)」

 

 それは怒りではなく、困惑だった。

 

 レイグ本人としては、自分の思い人であるアリスとこの世界にいるアリスは全く別の存在だと割りきっている。

 

 そう言えば、とダンジョンでの一幕が頭を過る。

 

 憲兵が話していた内容、「勇者パーティーに「アリス」がいると言うこと」にレイグは確かに「苛立ち」を覚えた。レイグ本人の意思とは関係無しに、である。

 

 分かっている筈なのに分からないような、そんなやり場のない感情がレイグを支配した。

 

「レイグ様」

 

「レイグさん?」

 

 すぐ傍から、心配するような声を出すダリアに、「どした?」と疑問符を浮かべたカーラに自然とやり場のない感情が吹き飛んだ。

 

「悪いダリア、殴ってくれ」

 

「殴る···ですか?」

 

 2人には伝わらないかも、と思いながらも胸中を明かした。仲間にそんな顔をさせた自分に対して、そして訳が分からない感情に一瞬でも振り回された自分に対して罰が欲しいとレイグはダリアに言った。カーラはレイグにもそう言う所があるんだと珍しげに言っていた。  

 

 

「──分かりました」

 

 レイグに頼られた事が嬉しいのかダリアは笑顔で頷いた。カーラは「ダリアさんふぁいと~」と未だ伏せたまま応援した。立ち上がったレイグとダリアに店内がざわつく。受け入れ体制のレイグに拳を構えるダリアを見て、変な邪推を始めながら盛り上がる店内、呆気に取られているダイン。

 

 「いきます」短くそう言って、レイグの傍まで行ったダリアが拳を引く「あ、グーなんだ」と僅かに顔が轢き吊るレイグ。

 

 意外にも重い拳に感じていた空腹も相まって、倒れ込むレイグは。

 

「(一回は会った方が良いかもな)」

 

 何にとは言わないが、どこか安らかな顔でそんな事を考えながらレイグは倒れたのだった。

 




カンカンカンカアァァァァン!
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