憑依物語   作:そりゃないわ

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#前回のあらすじ


秘密の情報を持ち出すと、カーラが凄いことになるんだって(小声


32話的な話

 

「カーラ!そっちに行ったぞ!」

 

「ん」

 

 周りが岩場だらけの殺風景な景色、強靭な四つ足に竜にどこか似通った赤い体躯のモンスター、「レッドリザード」が俺から少し離れたところで戦っているカーラの元へと走っていくのを見て、俺はカーラに声をかけた。

 

 カーラは短く言葉を返して、目の前のレッドリザードの横っ面にパルチザンの穂の部分を腰の回転を僅かに入れて叩き、怯ませた。

 

 「グルオォオオオ!」とくぐもったような声で叫び声を上げて、後ろから迫るレッドリザードを肩越しに一瞥して、目の前で脳を揺さぶられているレッドリザードの鼻を思いっきり踏み台にして、宙返りをした。

 

『グルゥオ!?』

 

『ガアアア!?』

 

 レッドリザードは見た目大型犬を一回り大きくしたような、蜥蜴に似たような見た目をしている、それでいて頭は大して宜しくない、「ボア(猪)系モンスター」と同じく突進してしまう残念なモンスターだ

 

 当然、急にカーラが視界から居なくなって、仲間であるレッドリザードが急に現れようが停止出来る訳が無かった、当然ぶつかる。

 

 しっかしカーラの槍術も凄いが、その戦闘センスはずば抜けていた。何と空中で身を捻り、勢いを付け、刺突

を繰り出したのだ。

 

『ガヒュ』

 

 突っ込まれた方が吹き飛び、突っ込んだ方は衝撃と味方を吹き飛ばした動揺で立ち往生しているところにその鋭利な穂先に強襲された。

 

 驚く暇もなしに、喉元を何の抵抗も無く貫かれたレッドリザードは、確実に絶命してその体から力を抜いた。

 

 そのまま油断せずに、自分に近づいてくるレッドリザードに対峙していくカーラを見て、内心「お見事」と称賛しつつ、俺は横から噛み砕こうと大きな口を開き飛びかかって来たレッドリザードの顎を下から打ち上げた。

 

「おら"よっと」

 

 ガチンッ!!と大きな音を立てて、顔ごと上に打ち上げられたレッドリザード。

 

 僅かに体を浮かしたレッドリザードが見せている腹を鋭い呼気を吐くと同時に魔力ブーストで強化した足で蹴り飛ばした、すかさずそっちの方向に手を翳す。

 

「雷鳴よ、刺し殺せ」

 

 バヂヂヂヂ!!と、けたたましい音が響き渡り、俺の頭上に2本の魔力で作られた雷のような剣が魔方陣より現れた。

 

 ──中級魔法「ライトニングソード」

 

 作り出してほぼノータイムで射出されたそれらは、吹っ飛ばされたレッドリザードが巻き込んだレッドリザードもろとも刺さり、魔力によってその体を焼き殺した。

 

 カーラも片付けたのか、俺の方に小走りでやって来た。

 

「こっちは終わった」

 

「俺も今終わった······所でダリアは?「やりたいことあるから少し離れますね」って言ったっきり戻ってないが·····」

 

 今この場にいないもう一人のパーティーメンバーの名前を口にしながら、「一時休憩」と言って、近くの岩に腰を降ろした。

 

 まぁ、ダリアなら心配は要らないな。

 

「········」

 

「何だよカーラ、まだ怒ってんのかよ?」

 

 カーラも俺に倣って近くの岩場を背凭れにして、座り込んで休み始めたが、その顔は徐々に分かりづらくではあるが確かに「怒り」を窺わせた。

 

 カーラは俺の少し呆れたような質問に答えず、体育座りに似た体勢で、俺から顔を背けた。

 

 別にカーラが気にするようなことではないはずなんだがなぁ·····と、昨日の事を思い出しながら。

 

 俺は「ストルの山、中腹地点」で山道から見える景色を眺めた。

 

  

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 昨日の「沈む太陽」にて「チャンピオン」と言う不名誉な渾名を付けられてしまったダリアと俺達はダインさんに軽く怒られて、昼食(というには些か遅いが)を済ませてそのままギルドへと直行した。

 

『どうする?出発は明日にして、依頼だけ受けとくか?』

 

 依頼受注するだけったら、期日を守れば自己責任ではあるが、先に受けることは可能である。

 

 ダリアは「カーラさんに任せます」と言って、カーラは「ありがとう」と言って。とてとてと、依頼掲示板《クエストボード》 の方に歩いていった。

 

『カーラさん、張り切ってますね!』

 

『今から受けるわけでは無いんだがな』

 

 ダリアの言葉に頷いた俺は、顔を唸らせてクエストボードを睨んでいるカーラを見た。

 

 あの顔が、冒険者を辞める状況になって歪ませるのだけはしたくないなと思う。同じことを考えていたのか同じくカーラを見つめていたダリアとふと目があって笑い合った。

 

 その時、クエストボードがあるところから馬鹿にするような大声で嘲笑するような声が聞こえて俺とダリアは「何事!?」とばかりに視線を戻した。

 

 受ける依頼用紙を持ったカーラに、4人の男が絡んでいる所だった。

 

『おいカーラ!お前血迷ったのかよ!それは EランクでもDランクのクエストじゃなくてBランクのしかも至急印付きかよ』

 

『········貴方には関係無い』

 

『だから言ってるじゃねぇか、俺達のパーティーに入れてやるってよ!』

 

 そう言った男の顔は善意の欠片も無く、極上の獲物にありつけた!とばかりに欲望を付け足したような喜色に溢れた笑みを浮かべていた。

 

 カーラは一瞬震えたが、それでも冷たい目で睨み返していた。

 

 「おーこわいー」などとほざいたそいつは、「まぁ細かい事はあっちで話そうや」と言ってカーラの腕を捕まえようとした。

 

 

 

 

『────触るな!』

 

 カーラはその腕をパシンッと振り払い、ギルド内全体に響くような声で怒鳴り返し、俺達の元に戻って来た。だがやはり、怖かったのだろうか俺とダリアの服を掴んだまま離そうとしなかった。

 

『この2人が私のパーティーメンバーだ!』

 

 ざわついたギルド内にいる人達が、咎めるような視線を男達に向ける。

 

 動揺した様子の男は、逆に周りに睨み返し俺に気付くとニヤニヤしながら子分のような男達を引き連れて来て、俺の前までやって来た。

 

 威圧的な態度で俺を睨み付けていた男は舌打ちすると、俺の胸倉を掴んだ。

 

『おい落ちこぼれ、何でお前みたいなクソガキがこんな上玉·····オホッ!あと一人いやがる!』

 

 男は、ダリアに気付いたのか、上機嫌になり笑い始めた。多分このギルドでも腕利きの部類なのだろう、周りがどんな目で見ようが全く気にしていなかった。

 

 胸倉を掴まれているのに、抵抗も何もしない俺を男はつまらなそうに笑って、ドスの聞いた声で口を開いた。

 

 

『落ちこぼれ、どうせビビって口も聞けねぇだろうから、頷くだけで良いぜ?お前のパーティーメンバー貰うから』

 

 嗜虐的な目で俺を見下すその目を見て、俺は深い溜め息を吐いた、男の顔が苛立たしげになる。つーか息臭いんだよ、寄んな気持ち悪い。

 

 俺は胸倉を掴んでいる男の手を振り払って、体の自由を取り戻す。

 

『何だ?お前、その反抗的な目』

 

『あー、アイツ死んだな』

 

『リーダー怒ったら止まらねぇからな』

 

『大人しく女達を譲れば良かったのによぉ』

 

 

 

 

『どうせギルドの中じゃ、違反とかにビビって何も出来ねぇ糞どもが何をいってんだ?』

 

 俺がそう言うと、ニタニタ笑っていた男達はポカンとした後、分かりやすく顔を真っ赤にした。

 

 分かりやすいなおい

 

 流石に、俺が言い返すどころか煽り返すとは思ってなかったのだろう。周りはギョッとしてる奴ら半分、面白そうに見てる奴ら半分に別れた。

 

『てめぇら何してんだ』

 

 一触即発の空気の中、上から降りてきたギルマスが気だるそうに声をかけてきた。そんな声でも目の前の男達にはかなり効いたようで、冷や汗を分かりやすく浮かべながら、気まずそうにギルマスへ顔を向けた。

 

『ぎ、ギルマス····』

 

『何だ?お前ら、とうとうギルドで揉め事か?』

 

 圧を飛ばしながら言うギルマスに男達は顔面を蒼白にしながらも媚びへつらうように下手くそな笑みを浮かべて弁明しようとしたが。

 

 ギルマスが先に口を開いた、この時、何か嫌な予感はしたんだよな·····

 

 だって何か楽しそうに笑ってるし、視線が俺達と男達を言ったり来たりしてるし、カーラが持っている依頼用紙を見ては笑ってるし。

 

『おいレイグ、訳を話せ』

 

 などと大勢冒険者がいるなか、一冒険者である俺を名指しで呼んだのだ。さすがに顔が轢き吊るのを止められなかった。周りを見るとポカンとして、ギルマスを見ている。ギルドマスターと言う大きな肩書きを持つ奴が一冒険者に親しげに話しかける事の意味をギルマスが知らないわけがない。

 

 いや、マジふざけんなよこのジジイ!、この〇〇〇野郎!〇〇〇〇!〇〇〇が〇〇〇〇〇の〇〇野郎!!〇〇!!!

 

 考えうる悪口を頭の中でぶちまけたわ。流石に何か考えあっての物だろうと思い、俺はカーラやダリアに合わせて貰いつつ事細かに事情を話した。何度か男達のグループが口を挟もうとしたが、ギルマスが一睨みするだけで他人の家に預けられた猫みたいに大人しくなった。

 

 俺が事情を話し終えると、ギルマスは一つ頷き「明日の夕飯はカレーにするか?」と言わんばかりの軽さで

 

 

 

 

 

 

 

『じゃあ、レイグ達が受けるクエストをお前らも受けろ、勝負で白黒付けりゃ良いじゃねぇか』

 

 と言ったのだ

 

 

 はぁ?






武士の情けって言葉を知ってるかい?
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