憑依物語   作:そりゃないわ

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サブタイトルは別に変な意味ではありませんのでm(_ _)m


『三人で──』

 

 ······はぁ···

 

 横になってから、何度目になるか分からない溜め息が出る、でも、絶対引かれた····レイグ様にあんな姿見られて·····

 

 前から試してみたかった物理攻撃の特訓、ダンジョンやリデル村に向かう時、今までのモンスターとの戦闘は私が魔法詠唱を終えるまでの時間稼ぎや戦闘を引き受けてくれたレイグ様のお蔭で成り立ってきた。

 

 勿論、適材適所な上での仕方ないポジションだと思っている。でもレイグ様は魔法も使えてしまうのだ、しかも扱い方は私よりも巧い

 

 レイグ様は気にするなって言ってくれるかもしれないけど、でもせめて自分の身は自分で守れるようにしたかった、レイグ様が私の事を気にせず戦闘に集中出来るように。

 

 もしこれからの旅、もし魔王陣営と事を構える何て事になったら間違いなく、間違いなく私は足手まといになる。簡単に人質になるかもしれないし、件の勇者パーティーと関わる可能性だってあるし、下手すれば対立もするかもしれない。

 

 だから、レイグ様達から見えない位置で修行をしたかった、少しでも自分の事を気にしなくていいように。

 

 特訓、魔力ブーストによる身体強化での接近戦、レイグ様からやり方は教えて貰っていたから。最初は少し躓いたけど、割りとすんなりと出来た。それどころか肌に合っていたのか少しするとレッドリザード程の重量があるモンスターすら吹っ飛ばせるようになっていた。

 

 私が使っていたのは「一撃型」の魔力ブースト、単に攻撃する部分に魔力を溜め込み、ぶつける瞬間その魔力を爆発させる。簡単そうだけど最初は割りと手こずった。ちゃんと一定のラインで止めておかないと、どんどん溜め込んじゃって魔力持っていかれるし、逆に魔力が戻って来ちゃってあんまし貯まらなくなる事もあった。

 

 それで調子づいちゃったのか、時間を忘れるぐらいにはのめり込んだと思う。

 

 いきなり20匹はいたであろうレッドリザード達の図上に魔法陣が描かれ、雷がレッドリザード達に止めを刺した。間違いなくレイグ様がダンジョンで使った魔法だ

 

 特訓が上手く行ったのと、レイグ様が助けてくれた事に受かれてしまったのだろう、レッドリザードの返り血を浴びた状態でおおはしゃぎしてレイグ様に駆け寄ってしまったのだ!

 

 私なら殴り飛ばす絶対

 

 そのあと、魔力の枯渇による弊害で倒れてしまったレイグ様を口をあんぐりと開いたカーラさんと共に休憩地点まで運んで、野営の準備をした。

 

 レイグ様が火の番をやると言って、私達は簡易式のテントを立て「疲れたら声をかけてください」と言うとレイグ様は苦笑を溢した。

 

「はぁ···」

 

 思い出していたらまた溜め息を吐いてしまった。明日に向けてちゃんと寝ないと。

 

「ダリアさん、溜め息ばかり吐くの、駄目」

 

「ご、ごめんなさいカーラ五月蝿かったよね?」

 

「あと、その言葉遣い、何か距離を感じるからやだ」

 

 とことんマイナスになってる私が見ていられなかったのか、カーラさんが咎めてきた、流石に悪いなと思い謝罪を述べようと口を開いたら、まさかのダメ出し

 

 どこか固い声音だったので、やはりさっきの事を怒っているのか申し訳ない気持ちになる。

 

「······じゃあカーラ」

 

「ん」

 

 「私もダリアって呼ぶ」と言ったカーラ、同年代の女の子を呼び捨てにするとか何か変な感じ、そう言えば私の村に同年代の女の子って居なかったかも

 

 私が呼び方を言い直すとカーラは満足そうに頷いた。カーラは私の方に顔を向けた。綺麗な紫の瞳─菖蒲(あやめ)色っていうのかな?─が私の目を見つめてきた。どこかその表情は怒っている。

 

「私達では駄目だった?」

 

「え······」

 

 その声音はいつもの淡々とした口調では無く、どこか苛立たしげで、悔しげでもあった。つまり「私達では安心して魔法が撃てないから、自分の身は自分で守る」って取られてるって事?それは──

 

 違うって咄嗟に言えなかった。いや違うって否定は出来る、でも私はそれを言葉にしてない、ならそう取られてもおかしく無いってこと·····だよね···

 

 つまり私はカーラどころか、レイグ様の事も····

 

「····うん、分かってる、意地悪してごめんね」

 

 

 明らかに狼狽えている私にカーラは抱きついてきた、お互いプレート越しなのに温もりが伝わってくる。

 

「ちゃんと分かってる、貴女が私達の為に前衛もしようとしてくれてる事も分かってるよ、まだ短い付き合いだけど、分かる」

 

 よく見てくれてる、素直にそう思った。どこか穏やかなカーラは更に続ける。

 

「確かにこれから先ダリアにカバーが間に合わない事もあるかもしれない、レイグさんの旅の目的を考えると、余計にね」

 

「····そう、だから足を引っ張る何て絶対に嫌、私が傷付く事でレイグ様や、カーラが傷付くなんてもっと嫌よ」

 

 それだけは死んでもごめんだった、レイグ様にはちゃんと目的を果たして欲しいし。カーラは大物冒険者になって実家を見返して欲しい。そんな2人の足枷になんかなりたくない。

 

 レイグ様は気付いてないかもしれないけど、まれにどこか遠くを見るときがある、切望するかのような表情で。

 

 カーラだって憧れの冒険者を目指すと言う、「沈む太陽」のレイグ様の部屋の中、日陰に包み込まれた部屋での告白を成就して欲しい。

 

 私だって、陳腐な言葉かもしれないけど「レイグ様と一緒にいるため」って言う言葉は本気だし、それをどこの誰とも知らないモンスターや勇者パーティーや魔王陣営なんかに邪魔されたくない。それこそ「幼馴染み」にだって。

 

 だから·····

 

「それでも私とレイグさんに貴女を守らせて?

 

 

 

 

そして、貴女も私とレイグさんを守って?」

 

「え?」

 

 守る?私が?

 

 困惑する私を抱き締める力が僅かに強まった気がした。

 

「レイグさん、今日怖い顔してたんだ」

 

「怖い顔?」

 

 カーラは頷いて今日の事を話してくれた、レッドリザードの数が異常に多い事や、山の生態系が狂っている事など、カーラの見解だけど、レイグ様はただ、予測不能な事が起きてカーラや私を失うことが怖かっただけだと言う。

 

 ──大丈夫、レイグさんには私とダリアさんが、私にはダリアさんとレイグさんが、ダリアさんには、私とレイグさんがいる、これで怖いもの無し、死角何て存在しないし、誰も失わない

 

 そうレイグ様に言ったらしい。

 

「私が2人を····」

 

「うん、私の槍とレイグさんの直剣で邪魔な敵を退けてダリアを守って、ダリアの魔法で敵を一掃して私達を守る、そしたら最強」

 

 気付けば何時もの淡々としていた口調に戻っているけど、どこか楽しそうな言い回しだった。

 

 いつもと変わらない戦法、なのに私には

 

「凄く、強そうだね」

 

「だって強いもん」

 

 とても頼もしく思えた。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

──同時刻、ストルの山「中央エリア」

 

 

グルルルルルルルゥゥ··········· 

 

 

 

 

 まるで地を這うような唸り声が岩や岩壁に囲まれたどこか暗澹(あんたん)な雰囲気を放つ通路の中に鳴り響く。

 

 

 

 一匹の竜がいた。

 

 否、竜「擬き」と言ったところか、レッドリザードより3倍程の大きさ、赤黒く染まった鱗、口元は裂けて馬ぐらいなら余裕で丸飲み出来そうだ。

 

 そして、その背中には折り畳まれた翼、みたいなものが這えていた。まだ未発達なのか翼膜はどこかスカスカだし翼を型どる役目を持つ骨はところどころ歪んでいた。

 

 その足下には、二匹の母体、「クイーンリザード」が寄り添うように眠っていた。

 

 その様子を見た竜擬き「キングリザード」は周囲を警戒して自らも眠りに付いた。

 

 

 

 

 

「な、なんだよ······あれ······」

 

「あ、あんなん聞いてねぇよ····」

 

 少し離れた場所にある大きな岩影からその様子を見ていたレイグ達に絡んだ男達はその状況に恐怖していた。腐ってもBランク冒険者なのか、パニックにはならず、必死に目に見える情報を頭で噛み砕こうとする。

 

 そもそもがおかしい、本来ならレッドリザードは雄と雌で一組の番、と言うのが基本だし、常識だ。

 

 そして一番常識を壊しているのは、雄である竜擬きだった。キングリザードの単体の強さがB級上位が基本だが男達が見ているキングリザードは明らかにその強さから逸脱していた。

 

「あ、明日一番に、俺達は山を降りる、良いな?」

 

 リーダー格である男が冷や汗を拭いながらそう呟き周

りの誰もが何の文句も言わずにそれに頷き、静かに4人はその場を離れた。

 

 クエスト失敗扱いになってしまうが命には変えられない、それ以前にこんなの依頼内容の詐称で慰謝料を取れるんじゃないか?

 

 等と一時の恐怖を紛らわすためにそんな下衆な会話をし始めた彼等は本人にとっての最適解を示した筈だった

が、ひとつのミスを犯した。

 

単純なミスで、この上ない残酷なミス

 

『・・・・・・・・・・・・・』

 

 遠ざかる「食い物」にニィっと裂ける口

 

 

 

 

 

 彼等は「奴」までもただのレッドリザードだと思い込んでしまった。

 

 

 





to be continued·······
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