憑依物語   作:そりゃないわ

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#前回のあらすじ


竜種モドキに上級魔法をもろに喰らわせたダリア、果たして


36話的な話

「(入った!)」

 

 氷柱の大波を叩き込んだダリアは、感じた手応えに拳をギュッと握った。「ソイツ」がどうなったかは分からないが。左右にいるレッドリザードは防ぐ事も出来ず氷柱に串刺しにされていた。

 

 少し気だるさを感じるが、まだ余裕はあると気を持ち直し、油断なく「ソイツ」を注視する、がやはり自分の本気が「ソイツ」に当たった事で少し浮き足立っていた、カーラも少し気が緩んでいたのか構えていた体勢を若干崩した。

 

 その一方でレイグの表情は険しいままだった。確かにダリアの上級魔法は凄まじい威力を持っていたし、威力だけだったら今のレイグの全力をも凌ぐレベルだった。

 

「──え?」

 

 ダリアの呆然とした声が聞こえる、カーラも、「まさか」と顔を驚愕に染めていた、今回ばかりは「ソイツ」が一枚上手だった。 

 

 

 やがてそこら一体を包み込む煙が薄れていく、そこから現れたのは、虹色に薄く輝く膜の様なものを左右10m程に展開して、守られたレッドリザード達の群れ、クイーン、そして奴の存在だった。

 

 「ソイツ」は、少し霜が体の表面に降りていただけで、無傷だった、ただどこか焦った様子だったが次第にそれは怒りの表情に変わっていった。

 

 「憎悪」「殺意」、まるで全ての悪感情を詰め込んだように震えていて、目は血走り、顔を反らされた状態からもう一度鎌首をもたげた。

 

 口元から未だに漏れている「炎」を見てレイグは背筋に嫌な汗をかき、咄嗟にダリアとカーラを少しでも遠くへと力を込めて突き飛ばした。

 

「!?」

 

「!?レイグ様!」

 

 驚いた表情を浮かべるダリアとカーラをその目に収める事無く、レイグは気絶させた三人の男達の元へ駆けつていた。

 

 「ソイツ」は既にレイグをロックオンしているのか、突き飛ばされてレイグから離れている二人に等全く気にせずレイグに向けて顔を振り下ろした。

 

 一切の気遣い無用とばかりにレイグは両手で3人の襟首を掴み上げ、そのまま体を捻ってダリアとカーラがいる方にぶん投げた。

 

 同時に振り下ろした顔の恐ろしくガパァ!と開かれた口から吐き出された獄炎の炎が恐ろしい速さでレイグへと放たれた。まるで全てを飲み込まんとばかりに放たれたブレスは一撃でストルのギルドを半焼出来てしまうと確信が持てるとばかりに破壊的だった。

 

 既にレイグまでの距離を5mまで詰めてしまったブレスはまるで死神の息吹に感じた。

 

 ──パアアアアアアアアンッ!!

 

「っぐぅ」

 

 まるで、何かが破裂したような音が広場に響き渡り、レイグが何かに弾き飛ばされたみたいにダリア達とは反対方向に吹き飛び、ブレスの射程範囲から逃れた。

 

 

ーーーーーーー

 

 

 突き飛ばされたダリア達は痛みに顔をしかめつつも、すぐに起き上がる、同時に気絶した男達が、ずさぁ!っと転がりながらダリア達の近くで止まった。

 

 一体何が、とレイグに突き飛ばされた場所に視線を寄越すと広大な範囲の地面を焼き付くしながらダリア達の視界を遮るブレスがそのままレイグ達が来たルートを焼いていた。

 

『グルゥアアアアアアア!!!』

 

「ダリア!カーラ!二人はその馬鹿を頼む!」

 

 「ソイツ」が咆哮を上げながら、ブレスをダリア達とは反対咆哮に動かしていく。2人はレイグの安否が分かりホッとするも、聞こえてきたレイグの言葉に答えずにダリアとカーラは男達の側に立つ。

 

 カーラは少し前までの自分を叱咤し、パルチザンを構え、ダリアは「ソイツ」の意図かは分からないが分断された状況に歯噛みする、しかし頭を振り攻めてきたレッドリザード達の相手をするため、魔力を練った。

 

ーーーーーーー

 

「(分断されたな)」

 

 痛む右腕に回復魔法をゆっくり掛けながら、レイグは後ろから未だに迫ってくるブレスを鬱陶しく思った。

 

 レイグが先程取った行動は、ダリアが少し前にストルの街中でやった信号弾に使った物と同じ、ただ魔力を瞬時に練り上げ、その塊を側に配置、可視化できる状態になったら、魔力を爆発させる。

 

 方法は簡単だが、痛みは相当あるためレイグ自身も好んでやろうとは思わない。

 

 たが、本当に鬱陶しいのは、と走りながらレイグは「ソイツ」─仮に「クリムゾンリザード」と名付ける─が先程まで展開していた虹色に輝く膜を思い出していた。

 

 レイグが立てた最悪の仮説はまだあった。

 

 

 反魔法吸収障壁《アンチマジックフィールド》

 

 竜種と言うのは、強靭な肉体の 、知能も当然優れていて、そして魔法をも使う、その中でも厄介なのがこの膜である。

 

 何せ所有者が許容する範囲で無条件に魔法を吸収してしまうのだ、際限無くである。しかもその性質は「吸収」、「反射」そして「変換」である。つまり吸収した魔法をそのまま返したり、魔力に変換し、自分に使うことも出来る。

 

 竜種を喰らったなら、持っていてもおかしくないと思っていたが実際に持ってると、かなり厄介だ。唯一の救いはこの障壁は任意発動ってだけだろう。

 

 どちにせよ、このままでは埒が明かない、そう思ったレイグは、攻めに転じることにした。

 

 直剣を構え、速度を上げ、後ろから追ってくるブレスに対してクリムゾンリザードに向かって走り距離を詰めていく、ブレスを30秒近くも吐き続けていたせいか。大分魔力を費やしたのか、最初程の勢いも威力も無かった。

 

 レイグは、残り数メートルと言う所で一気に踏み込んだ、更には魔力で強化された足で地面を蹴る

 

『!?』

 

 ダァン!と擬音が付きそうな勢いで瞬く間にクリムゾンリザードとの距離を0にしたレイグは、迷いの無い動作でその身を守る鱗の下に入れ込むように直剣を振るった。

 

 すかさずレイグ目掛けて、岩で出来た針を魔法で数本飛ばすクリムゾンリザード、後少しで全てがレイグに刺さる、と言うところで。

 

「身に纏え」

 

 刺さるであろう全ての位置に小さい魔方陣が構成され、そこから直径30cm程の氷の礫を作り出し、レイグの身を守ったのだ。

 

『──ハ?』

 

 人間技では無いそれに一瞬呆けるクリムゾンリザード、だが刃物が自分の体を通す感触で我に帰り、もう片側の足で薙ぎ払おうとした。

 

 レイグは鋭い目でその動作を視認し、舌打ちした後に直ぐ様直剣を抜いて、一歩下がり振り払われた足の間合いから逃れた。

 

 そのまま一歩二歩と後退し、一旦状況を整理する。

 

「(コイツの周りにいたレッドリザードはダリア達を狙いに行った、周りを固めるのはクイーンリザードのみ····コイツの鱗を絶ち斬るのは難しいかもだが、「魔力を付与」した剣だったら行けそうだな、まぁそんな暇も、魔力も無いが···)」

 

 最初は100体以上は確実にいたレッドリザードも、ダリアが放った上級魔法で半分近くは倒せた、今もダリアとカーラのコンビで順調に数を減らしている。

 

 そう観察しているレイグに、クリムゾンリザードがその巨体に見合わぬスピードで迫る。思わず目を見開いたレイグはそれでも慌てず、その動きを見切りその場で跳躍し、突進を避けた。

 

 前にでも、後ろにでも無くただその場合で跳躍したレイグの行動に、クリムゾンリザードは疑問を覚える。

 

 が自分の真上にいるレイグを見て直ぐ様、反魔法吸収障壁を展開する、レイグはその両手に魔法行使によるスパークを身に纏っていたのだ。そして

 

 

────カッ!

 

『ぐぅア!?』

 

 レイグによって放たれた「閃光」魔法によって、強烈な光に目をやられた。すかさずレイグによって魔力ブースト込みの蹴りがクリムゾンリザードの顎に叩き込まれる。駄目押しと言わんばかりに空中で身を翻し、グラリと傾く巨体、その脳天目掛けて踵落としを決めた。

 

 ズドン!と横に倒れる巨体、体の作りは基本レッドリザードと同じだからと言って、鱗に覆われていない腹部が露になる。

 

 レイグは着地と同時に、直剣を振りかぶった。

 

「──!」

 

 振り下ろそうとした時、背後から迫ってくる殺意を感じ、レイグは横に一歩移動しその際に、直剣を構え直し。

 

 迫ってきた奴がクイーンリザードだったことに驚いた、何故ならクイーンリザードは番と共にいる場合は、決して戦闘には参加しない、基本、巣で胎児を暖めたり、子供であるレッドリザードを育てるからだ、そうじゃなくても番であるキングリザードがクイーンリザードを休ませている。

 

「·············」

 

しかし次には目を細めて、その首筋目掛けて振り下ろした

 

 雄のレッドリザードとは比べて、極端に鱗が少ない雌であるクイーンリザードのただ厚い皮膚で覆われているだけの首は容易く直剣の刃を受け入れ

 

 

『ギャッ!?』

 

 あっさりと首を落とした。

 

『グルゥアアア!!!!』

 

「············」

 

 もう一匹のクイーンリザードが襲ってくるも、クリムゾンリザードに比べれば、何の驚異でも無いその動きレイグは再び、クイーンリザードの首を落とした。

 

 どこか悲しげな顔をしているレイグは「すぐにお前らの旦那も送り届けてやる」とボソリと呟き、クリムゾンリザードに振り返る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『············ナ···········エ·····?』

 

 その光景を、視力と脳震盪が治ったクリムゾンリザードが呆然と呟いた。





愛は凶刃の前に伏せました、ならばもう片方の愛は?
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