レッドリザード=赤蜥蜴
クイーンリザード=蜥蜴王妃
キングリザード=蜥蜴王
クリムゾンリザード=紅黒蜥蜴
横文字の漢字表記って難しいですね
頭が良いレッドリザードがいた、頭が良いと言っても、脳の発達器官が他の個体よりも優れている、と言う程度。
しかしそれでもその蜥蜴は、同胞の中で注目を浴びる存在だった。順調に育ち「王」の名を冠する程に強くなり、更に普通のレッドリザードには持ち得ない、狡猾さ、執拗さに長けたスタイルを持って、狂熊《クレイジーベア》や、暴鬼《オーガ》等の明らかな格上を単独で倒してしまう程だった。
やがて群れの蜥蜴達は、蜥蜴王を唯一無二の存在として、従えた。
外敵から群れを守り、時には仲間と共に敵を殺し、順調に山での生活圏を着々と広げていた。
そんな蜥蜴王に気になる雌が「二匹」出来た。本来なら番は雌雄一体ずつ、しかし蜥蜴王は他の浮気事情等、何のその、本気で二匹を欲しがった。
発狂し、暴れた雌蜥蜴二匹に、どれだけ打ちのめされようとも、噛み砕かれようとも、踏みつけられても、そんな日々が続いても、蜥蜴王は何もせずに求愛の声を贈っていた。
やがて認められ、結ばれた蜥蜴王と王妃の名を冠する二匹の雌蜥蜴、この時にはもう山で蜥蜴王に敵うものはいなかった。
並みの蜥蜴王とは全く違う強さに、周辺の並みの冒険者ではてんで相手にならなかったのも大きい、蜥蜴王は調子に乗っていた。
──本当の山の主が帰ってきた。
圧倒的存在、目があっただけで「死」を明確に感じさせる圧迫感、蜥蜴王の3倍近くはある体躯に初めて恐怖を覚えた。
「様々な助け」が入り、蜥蜴王は山の主である最強種を喰い殺してしまった。何度も吐きながら、最強種を平らげた蜥蜴王は、全てではないもののその力を得てしまった。
凶刃な体
膨大な魔力
上がった思考能力
特殊な技能
───これでみんなをまもれる
仲間や、愛した番からはその存在感、圧迫感によって恐怖に怯えられてしまい。胸の内を締め付けられるような苦しみを感じたが、「この力さえあれば」と自分に着いていれば絶対に死なせない。そんな自信さえ溢れていた。
ある時、「恩人」に頼み事をされた、「いずれくる大成者を倒してほしい」そう言われた蜥蜴王 、何を聞き返すでも無く只頷いた。
──何が起きている。
最初は順調だった、何の警戒もなく蜥蜴王達のテリトリーへと近づいてきた4人の人間、一度は逃がして、レッドリザードに奇襲させた。その時に手下のレッドリザードが殺されてしまったが、計画通り一人を殺し、残りを誘き寄せる為の餌として広場へと誘導させた。
その後にやって来た人間の雄1匹に雌2匹、雄が纏っている空気が違うが分かった。
──この時から、何かがおかしくなった。
新たに来た3人の人間は今までの人間より強かった、蜥蜴王の攻撃に一歩も引かず、それどころか放たれた魔法の威力が高く、ブレスで相殺をしようとした時には妨害を受けた、そのせいで魔法を吸収する障壁の展開には間に合ったものの、庇いきれ無かった仲間達が串刺しにされた
蜥蜴王─紅黒蜥蜴は、何が何でもと人間の雄を殺さなければ、と殺意や怒りに任せた。
──何だこれは。
その雄は普通の人間の雄とはまるで違った、ブレスを叩き付けられても、逃げるどころかこちらに立ち向かう始末。
気付けば懐に潜っていた、瞬発力と速さ、鱗と鱗の間に迷い無く刃を入れる冷酷なまでの精密さ、殆んど死角から打ち込んだ魔法にも人間なら言葉を発する必要があるはずの魔法を発動して、相殺された。
そして魔法を吸収する障壁を逆に利用され、紅黒蜥蜴は視界を奪われ、更には脳を揺さぶられ、脳天を内据えられた。
気付けば、狩る側と狩られる側が入れ替わっていた。
仲間は次々に、人間の雄の仲間により葬られた。
最初から本気を出せば、何て言い訳すら出来ない、揺れる意識の中仲間に謝罪を詫びて。せめて、せめて愛した伴侶だけは逃げてほしい、そう思い今も自身に凶刃を振るおうとしている人間の雄に目を向け。
──ヤメロ
蜥蜴王が紅黒蜥蜴に変貌してから、恐怖を浮かべるようになった眼を、必死さを浮かべた眼に変えて。
──ヤメロヤメロヤメロ
人間の雄の背後から食らいつこうとしている伴侶が見えた。更にその後ろにもう片方の伴侶も追随している。
──ヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロヤメロ
人間の雄は簡単にその襲撃を回避して、軽やかにその手に持つ凶刃を構え直し。
──ヤメ──
その首を落とした。流れるような動作でもう片方の伴侶をも屠る人間の雄。
体に力が入らず、ただ紅黒蜥蜴は呆然と唖然とそれを見届けることしか出来なかった。
ただ、絶望が紅黒蜥蜴の心を飲み込む寸前、紅黒蜥蜴には二匹の蜥蜴王妃が恐怖でも、人間に対する憤怒でも無く。まるで紅黒蜥蜴に「逃げて」と訴えるように必死な形相を浮かべた。
人間の雄が再びこちらに振り返る、その顔を見た瞬間、力が全身に漲った。
──殺す
紅黒蜥蜴の殺意に、敵意に、悲壮にまみれた叫びが大気を震わせた。
ーーーーーーーーーーー
『ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』
「!?」
大気を揺るがす程の咆哮が、レイグの脳内が警鐘を激しく打ち鳴らす。ビリビリ体に響く咆哮に冷や汗を流し、一旦後退する。
咆哮を上げ続け、ジタバタと暴れる紅黒蜥蜴を見つつ、レイグはダリア達の元まで下がった。ダリア達が相手をしていた赤蜥蜴達は紅黒蜥蜴の咆哮に恐怖心が振りきれたのか一斉に逃げ出してしまっていた。
疲弊した様子が強く見えるが、別段怪我等はしていなかったようでレイグはホッと息を吐いた。
戻ってきたレイグを2人が出迎えた。
「レイグ様!大丈夫ですか!?」
「ああ、悪いな心配かけて」
「良かった····それよりも····」
安心した様子を見せたダリアとしてカーラは、険しい顔になり、今も立ち上がろうともがく紅黒蜥蜴へと目を向けた。
肢体を力の限り地面に叩き付け、地震のような揺れを起こし続け、紅黒蜥蜴の周りは地が砕かれ、その部分だけ陥没している。
「ダリア、魔力は大丈夫か?」
「はい、調達しておいた魔力回復用のポーションがあるのでまだ行けます」
「私も、まだ行ける」
ダリアは自分のポーチから取り出した試験管のような器を取り出して言った。カーラも顔に疲労を滲ませながらも強く言った。
レイグは「無理だけはすんな」と、堅い口調で言うが、どこか意固地な2人に苦笑を溢していた。
やがて紅黒蜥蜴はゆっくりと立ち上がり、レイグ達へとその視線を向けた。
殺意が入り乱れる、濁った眼でレイグを睨み付ける紅黒蜥蜴、さっきまで大暴れしていたとは思えない程に静かたが、重苦しい空気にレイグは冷や汗を垂らし、ダリアは口を結び睨み返し、カーラも深呼吸をして再び構えた。
レイグはその瞳の中に、一握りだが悲しみの色を宿している事に気付き、自分が殺した二匹の蜥蜴王妃の事を思い出し、わずかばかりに複雑な顔を浮かべる。
『殺す』
「(悪いな、同情はしない)」
レイグは内心詫びを入れ、駆け出した、遅れてカーラも続く。同時に紅黒蜥蜴も走り出す、瞬く間に距離が近くになり直剣を振りかざす。
先程同様鱗と鱗の間に直剣を入れようと狙いを定める、しかし足下に魔力が収集されるのを察知した瞬間「カーラ!」と叫び、横に跳ぶ。
「───!」
カーラも聞き返す事などせずに、感じた危険に体を任せレイグとは反対方向に跳び、直後人を2~3人は飲み込むような火柱が立った。
カーラは着地と同時に体を地面深く伏せる、直後自身の上を何かが通り過ぎ「ブゥオン!」と音がなる。
急いで立ち上がりながら、通り過ぎた物を見ると尻尾だと言うのが分かった。
「カーラ!!!」
「───」
今までとは違う、本当に焦った声カーラは咄嗟に手に持つパルチザンを力の限り前に突き入れた。
ガギィン!!と鈍い音が響き、カーラの手に痛みを生じた衝撃と凄まじい痺れが襲いかかる
衝撃の強さに肩が持って行かれそうになるが。何とか踏みとどまる。
「ぐぅ····あ····」
衝撃の余韻が強すぎて、そのまま棒立ちになってしまうカーラ、寧ろその程度ですんだだけで驚愕に値した、急斜面の道を100m程転がり落ちた等身大の鉄球の衝撃を受け止めているのと一緒である。カーラの衝撃の逃がし方か上手いことの証明だ。
しかしここは戦場、その棒立ちは致命的なまでに隙を紅黒蜥蜴に与えていた。
ガギン!背後からレイグが斬りかかるが、後ろ足による蹴り上げに防がれてしまう。魔力ブーストによる筋力の底上げによりそのまま斬り結ぶが魔法に防がれてしまう。
再度振るわれた尻尾がカーラの顔を狙った。
「あ」
「風よ!!」
刹那の差で、ダリアが発動した風魔法により吹き飛ばされ、地面に打ち付けられるが尻尾による薙ぎ払いを回避したカーラ
「今は集中しなさい!」と礼を言おうとしたカーラにダリアが声を荒げる。
レイグはダリアに内心感謝しながらも今度は落ち着いて、後ろ足の膝の裏側を狙った。
ザシュッと肉を切り裂く音が聞こえ、次いで呻き声をあげる紅黒蜥蜴。しかし構うことなく、カーラに向けて凄まじい速度で駆け出す。
「───っくそがぁ!」
紅黒蜥蜴の「復讐」の意図が分かってしまったレイグは顔を青くして焦燥感にまみれた顔を晒し、魔力によってブーストして紅黒蜥蜴を追いかけた。
そして、紅黒蜥蜴の口元がガパァっと僅かに、開き嗤っているのを見た。
しまったと思った時には、目の前を駆ける紅黒蜥蜴の後ろ足の片方が持ち上がり
「───あ」
深々と足の凶爪がレイグの腹部に突き刺さっていた。
。
『つぎはオマエのばンダ』
目には目を、歯には歯を
by紅黒蜥蜴