憑依物語   作:そりゃないわ

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#前回のあらすじ


どうやら怒ってるんだって(ボソッ


39話的な話

 

「本当に勝っちまった····」

 

 その光景を媒介を通して見ていたギルマスがドカッと自分の椅子に座り込む。いつの間にか魔人は姿を消していて、ギルド長執務室の中に彼の呟きに応える者はいない。

 

 ギルマスは構わずに昂る気持ちを抑えようとする、勝った、たった3人の低ランク冒険者が擬きとは言え竜種に。

 

 今もギルマスの脳内では、先程見た光景がリプレイされていた、傷付きながらもカーラを助けたレイグが剣を後ろから紅黒蜥蜴に突き付け、ダリアが紅黒蜥蜴の頭上に上級魔法を待機させて、光る槍を持ち紅黒蜥蜴と向かい合うカーラ。

 

 正に冒険譚にでも出てきそうな一幕だった。

 

 今は、レイグとカーラが何かを話しているようだが、流石に音声までは拾えないので会話の盗聴を諦めたギルマス名残惜しそうではあるがマジックアイテムとの接続を切る。

 

「···········」

 

 少し冷静になると、同時に思い出す無力感、たった一人の魔人相手に圧され、ただ3人を見守ることしか出来なかった事に歯噛みする。

 

 室内の壁に飾られている、鞘入りの剣を眺めた。立派な装飾もなく無骨なまでの作りの剣を見て、フッと息を吐き、この依頼の後処理どうするかを考え始めた。

 

 

ーーーーーーー

 

「·····怒ってるって言うのは、「さっき」のも関係あるのか?」

 

 カーラから突然過ぎる事を言われたレイグは、数秒の間困惑してから尋ねるように口を開いた。

 

 確かにさっきのカーラは「色々」凄かった、とレイグは様子が激変したカーラを思い出した。

 

 突然の激昂もそうだが、気迫も凄く、身体能力の向上も凄まじかった。一瞬といえどレイグはカーラを見失ったのだ。

 

「(そしてあの光る槍)」

 

 カーラが持っているどこにでもあるパルチザン、何らかのスキルで光っていたのは明白だがそれが何なのかレイグには見当も付かない。

 

 だけどレイグにも、ダリアにも、恐らくカーラにもそれが通常とは計り知れない何かがあることは分かっていた。

 

 そんな異常な力を手に入れたカーラの突然の豹変、今は浮かない顔をしてはいるが落ち着いてはいる雰囲気だけど何かしら精神面で悪影響が?と心配しての言葉だったが、カーラはゆっくり首を左右に振った。

 

「違う···レイグさんが爪で刺された時に私固まっちゃって、その時に幻聴が聞こえたんだ」

 

 カーラは浮かない顔をしながらも、ゆっくり語った、自分が感じた負の感情、責め立てる幻聴、中にはレイグ達を今も心のどこかで疑っていると言う内容があり、レイグも眉を少し上げた。

 

 幻聴を言い訳に、レイグ達を巻き込んで危険な目に合わせた罪悪感を自分を責め立てて、勝手に折れた自分に怒り

 

「あの時レイグさんに助けられて、私多分安心したの「助かった」って「後はこの人に任せよう」って」

 

 そんなカーラをレイグは軽く叱咤した、ダリアと共にカーラを鼓舞してくれた、あれがなければカーラは本当に折れていただろう。

 

 そんな不甲斐ない自分に怒り、そんな下らない自分の為に命を張る2人に怒りが沸いた。あのただただ、怒りと殺意しか沸かない変なスキルは収まり、幾らか頭が冷えたが、それでもこの苛つきと罪悪感が消えることは無かった。

 

「だ、だから私もう2人とは·····」

 

 目から雫を滲ませ嗚咽混じりの声を続けるカーラ、レイグには続く言葉が分かった。更には既視感まで感じ始めて深い溜め息を吐いた。

 

 「呆れた」そう冷たくも取れるレイグの溜め息にカーラは肩を震わせた。

 

「───もう自分の我が儘のせいで俺達に迷惑かけたくないから、自分は大人しく実家に引きこもりますってか」

 

 図星を突かれたのか、ギクッと体を硬直させるカーラにレイグは寝転がったまま再び溜め息を吐いて顔を伏せてしまった。

 

 そのまま喋らなくなった、レイグにオロオロしてしまうカーラ。次第に震え出すレイグの体にカーラは悪感情を忘れてレイグに「大丈夫か?」と声をかけようとして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけんなよ」

 

 

まるで深い闇を漂わせるような暗い声が、カーラの体に悪寒を這わせた、一瞬頭が真っ白になったカーラが再びレイグを見て、「ひっ」と情けない声を出した。

 

 レイグの顔は今まで見たこと無いぐらいに冷たい顔をしていた。

 

 

「そんなの端からこっちは承知の上なんだよ」

 

 顔を轢き吊らせるカーラを全く気にせず、レイグは切り込んでいく、我慢できなかったのだ。

 

 レイグとダリアはとっくにカーラを仲間と迎え入れている気でいた、カーラのしたい事も分かっているし勿論「利用」されたって構わなかった、疑われる理由だって分かる、そもそもカーラがパーティーに入ってまだ数日、元々の友達でも親友でも何でもない他人なのだ。

 

 幾ら気軽に接しようと、信用どころか信頼を得ることすら出来ていないことは分かっていた。

 

 レイグは別に「実力の有無可、容姿の美醜」でパーティーに入れている訳ではない、カーラがあの宿屋の一室で涙ながらに語った本音があったから一緒に冒険したいと思ったのだ。それで自分の目的が遠回りになるとしても。

 

 だから、幾らでも仲間のために身を削るし、本気でしたいことを応援もするし可能ならば手助けもしてやりたいと思っていた。

 

 だからカーラの一方的に自分から離れて行こうとする優しさがレイグには癇に触った。

 

「それを言うなら、俺だって思いっきり旅に巻き込んでる、魔王陣営だって関わる可能性があるし、もしかして勇者パーティーとも対立関係なんて事もあるかもしれない、もしそうなったら色んな所が敵にまわる、カーラの事情より余程危険が多いんだよ」

 

 怯えような顔が、いつの間にかポカンとした顔に変わっているカーラに構わず続けるレイグ。

 

「お前が最低な奴なら、俺はそれ以上の屑だぞ」

 

 レイグの突然の自虐にむっとするカーラ。

 

「っそれは違う、それなら私は糞女」

 

「だったら俺はダリアの気持ちを知ってながらも逃げてるクッソ優柔不断野郎だぞ!」

 

「私だって、変なスキルって思っときながら、罪悪感だって感じてるのに、ちょっと内心で「ちょっとやばいスキルキター!」って喜んじゃってるどうしようもない女なの!」

 

「そしたら俺なんかどうなるんだよ!憑依なんかしちまってぶっちゃけ内心「物語みたい」ってワクワクしてた事だってあったんだぞ!」

 

「私なんか、冒険者になりたいからって一時期本当に「売ろう」としたことがあるの!つまり〇ッ〇!分かる?〇〇〇〇なの!」

 

「はぁ!?だったら俺は」

 

 

「さっきからなに言ってるんですか!?」 

 

 

 

 自分の罵りあいから始まり、実は途中から起きていたダリアがヤバイ罵り合いになる前に止めにかかった。

 

 「私なんて、他の奴隷仲間の安否なんて分からないのに今こうしてレイグ様とカーラと一緒にいて幸せを感じてる最低な女なんですよ······」

 

 止めに入っていなかった、暗い雰囲気でダリアが爆弾を投下した結果、静かになった。レイグとカーラは気まずそうに目線を逸らしボソッと謝った。

 

 乾いた笑いが少しばかり響いた後、ダリアはカーラに向き直った。

 

「で、どうでした?」

 

「え?」

 

 「え?じゃないですよ」と僅かに怒ったような声でダリアはカーラを睨んだ。

 

「さっきの罵り合い、レイグ様もカーラも本音を言い合った筈です、お互いにあんまし言えない内容ですが、貴女よりもレイグ様が必死に「自分の方が最低アピール」をしたのを見て、どう思ったんですか?」

 

 ダリアが何を言っているのか分からなかったカーラだが、それが「本音を言え」というのが分かった。

 

 ダリアとレイグはこう言いたいのだ、「お前が俺達(私達)から離れたい理由は消した、その上でお前はどうしたい?」と。

 

 レイグが「自分の方が最低アピール」と言う言葉に苦虫を食い潰したような顔をするが、気を取り直して続ける。

 

「言っとくけど、俺達の恥ずかしい本音を聞いちまったんだ、逃がしはしねぇからな?それに俺とダリアだけになっちまったら「最強」になれないし

 

 

何より、カーラの夢が叶わないってのは我慢ならねぇ」

 

「────」

 

 

 

 

 

 

 

 暫くの沈黙があったが、やがて啜り泣く声と共に、カーラは俯いて「よろしく·····お願いします」と言う声が広場に溶けていった。

 

 

 

 





レイグ君に質問です

レイグ「んだよ(キレ気味」

··········Q

「はぁ!?だったら俺は」→この続きは?

レイグ「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!」

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