憑依物語   作:そりゃないわ

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#前回のあらすじ


ダリアの地雷を踏み抜いた。


『その後』

 

「·····勝つのは予想外だったな······」

 

 黒い肌を持つ男、先程までストルのギルドにいた魔人の男が自身の「居城」の自室でボソリと呟いた。

 

 ギルドにいたときとは違い、飄々とした口調は僅かに呆然とした口調になっていた。

 

 予想外とは言ったが、それはレイグに言ったわけではない、「パーティーに対して」言ったものだった。レイグに対しては予想通り、というか予想以上の動きをしていた。

 

 あそこで、「契約獣」である紅黒蜥蜴の怒りによるパワーアップがなければ、レイグは確実に単体で倒せていた。故の予想外

 

 レイグを監視するに当たって勿論、パーティーメンバーであるダリアとカーラにも一応目を向けてはいた。

 

 確かに二人とも強い、同レベルの冒険者とは段違いに、だがあくまでその程度の認識だった。

 

「───く·····く········」

 

 カーラは迫り来る危機を乗り越え、自身ですら把握できない埒外のスキル(ゲオルギウス)を取得し、ダリアは自身の限界を越え「使用難易度S」である、上級魔法を発動した。

 

 男は歓喜に震えた、少し前まで注目していた勇者パーティーなど最早頭にすら無かった、「賢者」だけは他の勇者パーティーと比べたら別格だったが、そんなことすらどうでも良いと思ってしまっていた。

 

 今日は良いこと尽くめである。

 

「っくくく───はぁっははははははははははは!!」

 

「今日は随分とご機嫌ね、仕事も忘れて」

 

「どぉわああああああああ!?」

 

 

 座っている男の脇にいつの間にかいたのか一人の少女がいた、10歳前後の少女で黒色の髪を背中まで伸ばし、赤いドレスのような服を来ている、顔立ちが整っていて一般的にも美少女と言われる部類だった。

 

 少女は腕を組んで絶叫を上げた男を下から冷たいじっとりとした目で見上げ「うるさいわね」と苦言を呈していた。

 

「お、お前はまた·····いつもノックをしろって言ってるだろ?テーシー」

 

「あら、いつもノックをしてるじゃない、貴方が毎回自己陶酔絶頂顔晒してるから、私は空気を読んで収まるのを待って上げてるんじゃない、感謝しなさい?サイラス」

 

「え?待って?何その悪意たっぷり顔面表現、マジで?俺そんな顔してたの?」

 

「サイラス黙りなさい、本題に入れないじゃない」

 

「あ······すいません·····」

 

 テーシーと呼ばれた少女がピシャリとサイラスと呼ばれた男に言って、理不尽と嘆きながらも、速く本題を終わらせて「この同輩」にはおかえり頂こうと、サイラスは口を開いた。

 

「で?用件は何だ」

 

「さっきも言ったでしょ?仕事も忘れてって?」

 

 疲れた様にテーシーから紡がれた言葉にサイラスは「うげ」と低い声でうめいた。心当たりがある、というか有りすぎた。

 

 何のことは無い、ただ勇者パーティーの動向を探る事である、ここ数日間の間だけだが定期報告をしなかった故の目の前にいる同輩が来たのだろう。

 

 確かに「大成者に「だけ」注意を払え」とは言ってない。

 

「あー、気を付けます」

 

「────で?」

 

「ん?」

 

「貴方がお熱の「大成者」とやらはどうなの?」

 

 どうやら本題は違うみたいだ、と苦笑したサイラスはテーシーを見下ろした。冷静な顔をしてはいるがどこか食い気味な様子を隠せていない同輩。

 

 無理もない、とサイラスは思った、「あの方」は知らないが自分とテーシーの「願望」は一緒なのだ、特にテーシーは「体質上」、不確定要素に興味を持つのは仕方ないだろう。

 

 彼らなら、きっと彼らなら。

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ、彼等ならきっと「       」」

 

 サイラスの言葉に、同じく黒い肌を持つ同輩は「だと良いけど」と嘆息した。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 あの至急印クエスト対決から、一週間が過ぎた。

 

 あのあと?大変だったぞ?またカーラは泣き始めてしまったし、俺とダリアは暫く動けなかったし、途中から気絶から立ち直った男達が激痛とパニックで喚き散らかすし、カーラの泣き声と男達の泣き声を同時に聞いて精神力がゴリゴリ削られるし。

 

 そのあと、男達の足を治してやって下山した。

 

 あと一応、殺された男達の仲間、パーティーリーダーだったらしいあの男の遺品を回収してやった。

 

 何でも4人はストルで結成したパーティーらしく、リーダーである男の存在のお蔭で、自分達はBランクまでのしあがる事が出来たと涙ながらに語っていた。

 

 回収した遺品は、ストルの街郊外にある共同墓地に埋葬摩するらしい。

 

 で、改まって謝罪を貰った、ダリアとカーラは何とも言えない顔をしていたが、最後に笑って許した。その整った顔立ちにおける笑みと対応に男達は何を思ったのか「姐御」と敬うようになった。

 

 で、帰って一旦着替えてからギルドに戻ると、アンナさんを筆頭に職員全員に謝罪を受けた。

 

 どうやら、ギルマスが俺達の監視用に放っていた視界共有のマジックアイテムを使って映像を職員に提供したらしく、顔を真っ青にしながら頭を下げていた。

 

 勿論、俺達は許した、今回の一件でレベルも上がっただろうし、紅黒蜥蜴を通して割と本音をさらけ出せたし得るものは大きかった。

 

 男達はリーダーが死んだことに思う事があったのだろう、暫く難しい顔をしていて結局謝罪を受け入れる事は無かったが「前向きに考える」とは言っていたから大丈夫だろ。

 

 そのあとアンナさんに抱き付かれあっちこっち触られた、変な所?あのなぁ、アンナさんは俺を「そういう」目で見てはいねえよ(エッチなのはいけないと思います!)

 

だからダリアさんとカーラさん、そんな目で見ないでくれませんかね?ぞくぞくしちゃうの······

 

 そのあと、事情を知らない冒険者達からもの凄い数の視線を貰いながら俺達パーティーと男達はギルド長執務室へと通された。

 

 労いの言葉、そして謝罪の言葉をギルマスから貰った、男達はギルマスのそんな姿に口をあんぐりと空けていたが。ギルマス以外にも商人風な男がいた、依頼主だ。

 

 依頼の後処理だが、依頼主の情報詐欺と言うかかなりグレーな依頼問題はあっさりと解決した、依頼内容は赤蜥蜴の討伐に出来れば蜥蜴王妃の撃退としか無かったからである。実際に紅黒蜥蜴が出てきた映像を提供したことで顔を真っ青にした依頼主が謝罪し、報酬額の改訂にペナルティ料金、更には慰謝料を上乗せすると誠意と謝意を示した事で事は収まった。

 

 あまりに必死な謝罪過ぎて、毒気を抜かれた男達は、渋々ではあるものの謝罪を受け入れた。

 

 「この金で、野郎の墓を豪華にしてやるんだ」と息巻いていた男達を見て少し微笑ましく思ったのは内緒だ。

 

 更にギルド側からも、慰謝料が払われた。依頼報酬額混み全額で大金貨1枚に、金貨20枚と言う大金である。流石の多さに俺も動揺したし、お嬢様であるカーラも驚愕していた。何よりダリアが白目を向いて倒れたのがある意味一番の驚愕だ。

 

 後、ランクアップに関しても俺がDランク、ダリアがBランク、カーラがCランクに上がった。本当はギルマスも「2段階は最低でも上げたかった」と言っていたが。流石にギルドの規定により、許可出来ないとの事だった。

 

 そのあと、俺達は「沈む太陽」に帰り体の疲れを癒すように眠りに着いた。

 

 そのあとは、一日休みにして、次の日からまた依頼を請けはじめた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

「ダリア!」

 

「はい!」

 

 木々が生い茂る中、木の上に立ち下で魔方陣を構築したダリアがまるで何かに狙いを定めるように人差し指を標的に向けていた。

 

 次第にズンッと地響きが、俺達にも届いてきた、やがて現れたのは、全身血に染まったような紅い肌、二足歩行で歩き筋骨隆々な体躯は、俺達の2倍近くはあるだろう、手には血に塗れた戦斧を持ち浅く低い呼吸を繰り返しながら俺達に向かって歩いてくる。

 

 暴鬼(オーガ)、ランクAのモンスターだ、しかも2体である。

 

 圧倒的有利な状況故に余裕そうにゲラゲラ笑いながらゆっくり恐怖を刻むように歩いてくる。

 

 つか······

 

「おい糞鬼ども!さっきからちんたらあるってんじゃねえぞごらあ!こちとらてめぇら殺すためにわざわざこんな森深くまで来てんだぞ!?」

 

『!?』

 

『!?』

 

 怒鳴り込まれた困惑からかたたらを踏む暴鬼たちは、動揺した様子がありはしたが、自分より弱い筈の人間に怒鳴られた事が怒りに繋がったらしく。

 

 「グオオオオ!」と喚きながら、ドスドスッと地面を揺ら迫る2体の暴鬼は恐怖を煽る光景だろう。

 

「──滅びの雷よ、天より駆け冥界へと導きたまえ──

 

サンダー・ブラスト」

 

 この場にいる二人が普通の冒険者ならばではあるが。詠唱を終えたダリアから放たれたのは一閃する極太の雷の本流、容易く暴鬼達を飲み込む様は正に「天災」に近かった。

 

 ダリアが「調整」したお蔭で姿を保ったまま生き絶えた暴鬼を見てダリアとタッチした。

 

「カーラは大丈夫でしょうか?」

 

「大丈夫だろ」

 

 「別の個体」の元に向かった仲間を思ったダリアの言葉にそう返す。

 

 噂をすればなんとやら、だろうか。

 

 カーラが俺達の後ろ側から、上機嫌に鼻唄を歌いながら歩いてきた。どうやら上手くいったみたいだな。俺とダリアは笑いあって振り返り。

 

 暴鬼の生首の角の部分を掴み、笑顔を浮かべているカーラを見た。

 

「二人とも終わった?」

 

「あ、あぁ」

 

「·············」

 

「私も終わった♪」

 

「あ、あぁ」

 

「撫でて?」

 

「あ、あぁ」

 

「··············」

 

 ポカンとした俺は言われるがままに頭を撫でる、ダリアも同じくポカンとしているが、段々とじっとりとした目を向けたダリアにカーラは「にゅふ♪」と上機嫌に返した。

 

 この一週間で一番変わったのはカーラだった。 

 

  

 





ダリア「カーラ・・・?」
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