憑依物語   作:そりゃないわ

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#前回のあらすじ


いつの間にか姐御呼ばわりされているダリアとカーラ


41話的な話

 

 イチ達を見送った後ギルドの中に入るレイグ達、親しげに話しかけてくる冒険者達に一言、二言返しながら依頼掲示板(クエストボード)の元へ歩いていく。

 

 レイグ達がまともに活動を初めてまだ一週間ではあるが、その活躍故に周りが興味等の視線から関心等にシフトチェンジするのは早かった。

 

 まぁ逆に早すぎて、中には未だに疑惑に溢れていたり、面白くなさそうな冒険者の方がどちらかと言うとまだまだ多い。

 

 仕方ないことだろう、B、C、Dランクが1人ずつのパーティーが、明らかにランク適正外(身の丈に合わない)クエストを選び、その日の内に帰ってくるのだ。無論不正を疑われたし、中には「ギルドとグル」などと言い出す馬鹿もいた。

 

 中には綺麗所を持っていった(ダリアとカーラを侍らせた)レイグへの嫉妬心からか、元のレイグを知っているからだろうか立て続けにレイグに圧力をかけようとしてくる者も多かった。

 

 その都度、イチ達が「止めとけ、後悔するぞ」と全力で止めにかかっている事から、その手の馬鹿はあっさり手を引いたが、イチ達がBランクパーティーというのが大きかった。

 

「あ、レイグ君、ダリアさんにカーラさんも」

 

 依頼掲示板を前にして、早速何があるのか物色しようとして、そのタイミングで最早担当受付嬢と化しているアンナから声がかかった。

 

 いつも落ち着いた様子の彼女が、珍しく何処か興奮した様子で手招きしていたので、不思議に思いながらもレイグ達は受付カウンターまで足を運んだ。

 

 赤みがかかったブラウンの肩ほどまでかかったショートヘアを僅かに揺らしながら、アンナはレイグに挨拶もそこそこに便箋を2通程、用意していた。

 

 アンナは3人に顔を寄せて、周りに聞こえないように小声で話した。

 

「3人とも、驚かないでね?ギルマスから直々にあなた達への指名依頼よ?」

 

「ええ!?うっs───」

 

 アンナから告げられた事に、カーラが叫びそうになるがレイグによって口を塞がれ、何とか事なきを得る。

 

 顔を赤く染めたカーラの抗議の視線にレイグは「わ、悪い」と言って離れる。

 

 唇を抑えたカーラの視線から逃げるようにアンナに目を向けると、アンナも肝を冷やしたのかホッと息を吐いていた。

 

 本来ならば、ギルマスから話があるそうだが、今日は大事な会合があるのだと言う。緊急性が含まれる手紙なので、日数の限定はしないがなるべく速く、確実に届けてほしいとアンナ経由でレイグ達に伝えられた。

 

 緊急性のある手紙ならば、もっと高ランクのパーティーに頼んだ方が良いのでは?って言うレイグ達の視線が伝わったのか、アンナが口を開いた。

 

「ギルマスがもう一枚の便箋を確認してくれって言っていたわ····ふふ、あなた達ギルマスに信頼されているのね」

 

 ギルド最高責任者であり、事実上のレイグ達冒険者の雇用主であるギルマスからの指名依頼では「うん」か「はい」か「YES」しか無いだろうと、アンナから向けられる喜ばしい視線と便箋から感じる圧に苦笑いして、手に取った。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 「~♪」

 

 早速「沈む太陽」に戻り、ミランダさん夫婦に訳を話して荷造りを始めた、少し値が張ったが、収納領域が広い収納箱(アイテムボックス)にレイグはダリアとカーラと共に必要な物を積めていく。

 

 見た目はただの正方形の小箱だ、小さく魔方陣が刻まれている、「拡張」と「収縮」と「固定」と「吸収」の魔方陣らしく、購入する際、所有者契約と言って、購入者(認否で他の人も可)の血を媒介に魔方陣に登録するらしい。有り体に言えば他人による悪用防止である。

 

 本来は白金貨(大金貨100枚分)が数枚必要とされるほどの超高価な物なのだが、ギルマスが「もう使わないから」と言って格安でくれたのだ、まぁその事実があるからと言うわけでも無いが、ギルマスからの指名依頼を断れなかった要因の一つではある。

 

 簡易テントや、保存食等を入れていく、大きさ問わずに近づけると、豆粒程の大きさになって中に吸い込まれていくから不思議だ。

 

 鼻歌を歌いながら、上機嫌に荷物を積み込むカーラにダリアが話しかけた。

 

「嬉しそうだね、カーラ」

 

「自分の足で領の外に行くのは初めて、後はギルマスの指名依頼が嬉しくて」

 

 ギルドマスターと言ったら、「偉業」を認められ、王国からの支持もあるだろうし、国民、市民、町民、冒険者からの信頼から成り立つ役職である。

 

 そんな人物から、直々に依頼を貰いとても喜んでいる様子だった。当然ギルドからの評価は高い。

 

 荷造りが終わり、ベッドに座っていたレイグは「あ」と何かを思い出すように呟き、先程アンナから預かった2つの便箋の内、「レイグ達へ」とだけかかれた便箋を手に取る。

 

「まだ呼んでなかったな」

 

「あ、私も見ます」

 

「私も見る」

 

 ババッと集まったダリアとカーラを苦笑で迎えつつ、両脇に2人が座ったのを確認して、糊で閉じられた部分をペリッと小気味良い音を出しながら剥がして開封し、中から文字が綴られた一枚の折り畳まれた紙を取り出した。

 

 

 

──未来の英雄パーティー諸君へ

 

 まず、この依頼を直接手渡し出来なかったことの謝罪をさせてくれ、少し用事が重なっている上に、この間の「至急印クエスト」の一件で王都に召集命令を喰らってしまってな。会合含めて5日間ぐらいは帰ってこれないと思う······とまぁこんなもんか?

 

 まあ、どうして高ランクパーティーではなくお前らなのかって言うのは、這えある未来を歩むお前達への先行投資、って言う理由もあるが、あ、これは本当だからな?

 

 後は「ギルマスに指名依頼される冒険者」って言う箔があれば、お前らも動きやすい場面も出てくるだろう。

 

 

勿論カーラにとっても悪い話じゃ無い筈だ、Bランクアップの査定だって、以前よりスムーズになるだろうぜ?

 

 

 それと、依頼内容だがこの間のお前さん達が倒した蜥蜴王(キングリザード)の事と、「カサブの街」に滞在していると言う勇者パーティーへの注意勧告だな。

 

 ここだけの話、奴ら「賢者」を除いて何処か「色々嘗めている」所が目立っているんだよ····向こうのギルマスから気に掛けといて貰おうと思ってな。

 

 ······まあ、以上だ、じゃな!

 

 

 

───お前らの雇用主より。

 

 手紙を読み終えたレイグが、その紙を足が着かないように火を灯し、燃やしつくした。灰が散らばらないように器用に風魔法で空中にただよわせて熱を飛ばしてからゴミ箱へ捨てた。

 

 「冒険者っぽい」と目を輝かせるカーラに「何でだよ」と、突っ込みを入れるが、ふと、カーラが変な顔をしていることに気付き声をかける。

 

「······何でギルマスが私の事情を知ってるの?」

 

「······自分で言った訳じゃないんだよな?」

 

「それは間違いない」

 

「まあ、カーラが領主の娘ってのはギルドも分かってるだろ?」

 

 暗に登録者の細かい所はともかく、生年月日や名前、家名などはどう足掻いてもばれてしまうだろうと言うレイグ。

 

 カーラもそれは分かっているので、そういうことでは無いと否定した、カーラが言いたいのは「何で話してもいない事情をピンポイントで知っているか?」である。

 

 勿論レイグもダリアも言い触らして何かいないし、レイグ達と出会う前に、高ランクパーティーに入れて貰えるよう打診した時に、確かに「速くランクアップがしたい」とは説明したが。一度も「Bランクになりたい」とは言ってないのだ。

 

 どこか不安そうな、カーラにレイグは大丈夫だろ、と気軽に言った。

 

「プラスに考えとけ···とは言えないけど、少なくともカーラの事情を何らかの形で知ったのだとしても、ギルマスは別に邪魔とかするでもなく寧ろ推奨してくれてるんだ、ちょっと前向きになってもいいと思う」

 

「もし、カーラの家族が約束を破る何て事が起きたら、私がカーラの家を焼き払うから大丈夫だからね」

 

「励ましにもなんにもなってないからなそれ」

 

「レイグ様?冗談ですよ?」

 

「魔力を高めながら言う台詞じゃありませんね」

 

 そんな、どこかコント染みたやり取りを見たカーラは毒気を抜かれたような表情になり、やがてクスリと笑って「ありがとう」と言った。

 

 カーラ自身も分かっている、自分の父親がそんな反則をするような人では無いことも。ギルマスが打算と善意でこの依頼を回してくれたことも。

 

 色々考える事はあるけれど、まずは「Bランクにあがってからどう家族に向き合うか」、勿論カーラ自身はレイグ達に着いていくし、もし約束を反故にするようなら問答無用で「ヴァネスティラ」の名を捨てる所存である。でも、もし向き合う事が出来たら、その時は姉に一言言ってやりたいと思った。

 

 見返したいと言う気持ちがあっても、カーラは別に自分の家族が嫌いでは無いのだ。

 

 

 

 

 ──分かってからどうするかを考えた方が良い

 

 どこかの暖かくて優しい宿屋に女将さんが教えてくれた言葉を思い出しながら。

 

 こうして一行は、ストルの街を出たのであった。

 

 

 

ーーーーーーー

 

「久しぶりだな、ギルドマスター」

 

「ええ、「領主」様もご無沙汰しております、最後にお会いしたのは一月と半月程、でしたかな?」

 

 時刻は丁度お昼前、本来ならば忙しい時間帯の「沈む太陽」の食堂、しかしこの日は珍しい事に「臨時休業」と書かれた看板が、食堂の入り口前に侵入者を立ち入れんばかりに置かれていた。

 

 中に座っているのは、いつもの黒い革スボンにシンプルな白いシャツを羽織った引き締まった体つきをしている30代ぐらいの男性───ギルマスである。

 

「·····よしてくれ、お前にそんな言葉遣いをされると、背筋が凍る」

 

「容赦ねぇなおい」

 

 苦笑いを浮かべたギルマスに対峙するように向かい側に座る男は、水色の髪を男性にしては若干伸ばしていて綺麗にオールバックに整えられている、着ている服はパッと見た感じは、そこらの一般人が着ている服と変わらないが、良く見るとかなり上質な素材を使用しているのが分かる。

 

 しかし、目元はサングラスで隠れて降り、上品な佇まいが災いしてかなり怪しい見た目になっていた。

 

 朝方レイグが見かけた男だった。ギルマスは呟いた言葉に繋げるように「カイン」と続けた。

 

 やっと「友」に名前で呼んで貰えた事に口元を緩めるカインと呼ばれた男性。少し空気が緩和したように感じるなか、呆れたような声が2人に向けて大きく降り注いだ。

 

「ったく!久しぶりっつったって、んな期間が空いた訳じゃないだろうに!カインもマックスもんな辛気臭い雰囲気出してんじゃ無いよ!」

 

 宿屋側のロビーに繋がるドアを開け放ち、申し訳なさそうに笑う夫であるダインを引き連れ食堂無いに入ってきたのは、ミランダであった。

 

 折角作った雰囲気に酔っていたのに、とばかりに溜め息を吐いたギルマス──マックスはいじけたようでどこか咎めるように。

 

「お、お前ミランダ·····」

 

「·······」

 

 相変わらずだな、と呆れたような、安心したような目でカインはマックス、ミランダ、ダインを見つめて。その目を隠していたサングラスを外した、現れた瞳の色は紫色(菖蒲色)

 

「久しぶりだな3人とも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここら一体を統括する領主(カイン·ヴァネスティラ)がそう言った。

 

 

 







ダリア「コオオォォォォ···········」
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