憑依物語   作:そりゃないわ

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#前回のあらすじ

木の枝でほっぺたピチューン


4話『大成、わるものをやっつける』

「は?」

 

レベル3の駆け出し冒険者が元とはいえCランク冒険者を一瞬で下した。

 

あまりにも有り得ない光景なのだろう。

 

奴隷商人も手下達も、奴隷の少女すらも目を皿にして固まっていた。

 

「間抜けが」

 

その隙を突いて、固まっている手下一人のもとに向かい足払いをかける

 

「どわっ!?」

 

もう一人が気付き慌ててサーベルを突き刺そうとしてくるが、その前に肘を上に振りかぶるような体勢を体を捻って作ったレイグが放った肘鉄が倒れかけている手下の鼻っ面に思い切り突き刺さる。

 

「っぶばぁ!?」

 

鼻血が吹き出しそのまま頭から地面に叩きつけられ悶絶する手下その2

 

レイグは横から迫り来るサーベルにも完璧に対応した。あっさりと右手に持つ木の枝の表面に刃が触れたタイミングで手下その3がいる方とは反対側に体を回して受け流した。

 

「へぁ?」

 

気付けば前傾姿勢になっている自分の真下にいるであろうレイグを確認すると同時に顎が拳に押し上げられて歯と歯がぶつかりガチンとなった。

 

ついでに簡単に脳を揺さぶられフラフラになり地面に倒れる。

 

「あ······な、あ?」

 

グワングワンに揺れる視界の中バギャア!と何かが折れる音と同時に狂おしい程の激痛が手下その3を襲った。

 

「ぎゃああああああああああああああ!!!!」

 

パニックになってる状態でのたうち回り折られた腕を地面にぶつけ更にのたうち回る悪循環に陥る手下その3を無視してレイグは奴隷商人の方に向き直るのと同時にポーチに入っている剥ぎ取りナイフを投擲した。

 

 

────カッ!

 

「ヒィッ!」

 

「───っ!?」

 

呆然としていたダリアがそばで挙がった汚い悲鳴にぎょっとして慌ててそちらを向くと、自分から後2mほどの距離でこちらに手を伸ばした奴隷商人の顔の真ん前にビイィィィィィンと木に刺さったナイフの柄が震えていた。

 

 

 

 

「─────そこから動くな」

 

まるで地獄のそこを這うような低い声音に奴隷商人はおろか少女でさえ体が金縛りにでもあったかのように動かなくなった。

 

目を向けると、件の少年は何かを我慢するような顔で奴隷商人を見つめていた。

 

そしてこちらに来ようと足を動かした瞬間顔を押さえていた手下その2が苦し紛れの抵抗とばかりにレイグの足首を捕まえようと片手を伸ばそうとした。

 

「あ!!───」

 

思わず声を挙げようとしたと同時にレイグが煩わしそうな顔で動かした足を体を少し捻って手下その2の顎を角度を付けて蹴り付けた。

 

手下その2は呆気なく鼻血を垂れ流したまま白目を剥いてカクンと倒れた。

 

「ばっちぃ手で触んなボケが」

 

まるでチンピラみたいな言い方で罵声を放つレイグはついでと言わんばかりにその手からこぼれ落ちたサーベルを拾い上げる

 

奴隷商人の顔が分かりやすく青ざめ始めたのを見てダリアはちょっと内心(ざまぁ!)と笑った。

 

やがてレイグは奴隷商人の前まで来ると、相変わらず何かに堪えるような表情で尋ねた。

 

「分かるな?」

 

「は、はい?」

 

主語も何もない疑問文、当然奴隷商人もどう言うことかと聞き直すが。

 

「 わ か る な!?」

 

「ヒイィ!?」

 

鬼のような形相で怒鳴り返された、これには関係ないダリアも恐怖で涙目になった。

 

奴隷商人にとっての理不尽は留まりを知らない

 

「どっちなんだ!?」

 

「は、はい!承知しましたぁぁあ!」

 

思わず了承の意を伝える奴隷商人、その反応にレイグはウムと頷き。

 

「やれ」と少女に向けて顎をしゃくった。

 

「「何を!?」」

 

流石に今回は奴隷商人とダリアの突っ込みが被った。

 

「あぁん?んなもんその子の胸元にある奴隷紋の破棄に決まってんだろうが」

 

「!?」

 

「っい、いやぁそれは····」

 

レイグの発言に驚愕の表情を浮かべ、奴隷商人を見るダリア奴隷商人は冷や汗を流してレイグを見上げていた。その顔は「勘弁してくれ」ではなく「どうしよう」とそんな顔に見えた。

 

「········っち、何で奴隷紋は刻めんのに破棄は出来ないんだよ」

 

それを察したレイグがため息を吐きながらサーベルの刃の平らな部分で奴隷商人の頬をペチペチ叩く。

 

ダリアはレイグの言葉を聞いて奴隷商人の顔を見て察したのか俯いた。

 

レイグはダリアのその様子を見て(しゃあないか)と一人納得してサーベルを持ってない手の方で奴隷商人の顎を打ち抜いた。

 

「あがっ!?───·········」

 

短い悲鳴と共に気を失う奴隷商人を見届けて、ダリアの方に体を向ける。

 

「────大丈夫か?」

 

堅い声音だけど、先程よりも断然優しい声音でダリアは初めてそこで気付いた。

 

「(私······助かったんだ····)」

 

「お、おい」

 

戸惑った声を挙げるレイグにダリアはどうしたのかと尋ねようとして、自分が泣いている事に気付いた。

 

その声を聞いて急に助かった実感が沸いてきた、涙は止まることを知らなかった。

 

「う、う······」

 

レイグはその様子を見て、安心させるように笑ってゆっくり頭を撫でて泣き止み落ち着くのを待った。

 




グギュルゴオオオォォォォ········

レイグ「··········」丶(・ω・`) ヨシヨシ

ダリア「う····うぅ····」

グギュルゴオオオォォォォ········

レイグ「───っく·····」
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