憑依物語   作:そりゃないわ

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#前回のあらすじ


不審者=領主




42話的な話

「リデア村?」

 

「ああ、知ってるか?」

 

 カサブの街はストルの街から北に進み、リデア村を越えて、更に半日程先にある「カルム村」と言う村を越えてから西に大きく回るように進み、約1日程進んだ所にあると言う。

 

 リデア村、以前フォレストウルフに怯えていた村、最後には村本来の活気を取り戻していたが、最初の覇気の無さや、村の活気が全く無かった事を考えると心配するわけじゃないが、気になってしまう。

 

 カーラに訊いてみた所、しょっぱいクエスト(塩漬け案件)故に、誰も全く触れないクエストの依頼元として有名だったようだ······マジであの村危なかったんだなと、実際に目にした100匹を優に超えるフォレストウルフを思い出し顔が轢き吊った。

 

 別れる際に村の皆が浮かべていた笑みに改めて良かったと思う。

 

「レン君やギョシャさん達元気にやってますかね?」

 

「どうせ今日中にカサブの街に着くわけでも無いし、少し寄ってくか······俺も気になるし」

 

 ダリアがうれしそうに「はい!」と笑顔で返すのを見て、俺も口が緩むのがわかった。

 

 まだ10日程しかたってはいない上に滞在した日数はたった1日にしか満たないが、予想以上に湧いていた情に内心苦笑いする。

 

 思わず森の一件でダリアに膝枕されていた事を思い出してしまった、柔らかかったな·····何がとは言わないが。

 

 しかし何だろうな?あの森で大事な事があった筈なんだが·····思い出せん、時折思い出そうとはしているけど、フォレストウルフを全滅させてから、ダリアに介抱されている迄の記憶がごっそり抜けているんだよな。

 

 まぁ、大抵こう言うのは前任者関連の事だし、俺が気にしたところで意味は無いんだろうが。

 

「────むぅ」

 

 横を歩いているカーラの頬が僅かにむくれているのが分かった、どうした?

 

「·····2人が私の知らない話をしてる」

 

 目尻を僅かに下げて、険のある声ではあるが物淋しさを感じさせる声で責めるように俺とダリアを見ていた、俺とダリアはキョトンとして顔を見合わせてから笑った。

 

 リデア村までの道すがら、俺とダリアが依頼を受けてから、リデア村を発つところまでの話を聞かせる事にした。

 

 リデア村に行く途中でゴブリン達に襲われたりした話、リデア村の活気の無さに覇気の無い村民の事、冒険者に強い敵意を抱いていた少年の話から始まって。

 

 最後はダリアが説き伏せた村人達の力だけで、森に潜んでいたフォレストウルフの残党全てを森から追い払い、敵討に村を飛び出した少年とも仲直りして無事村に帰還と言うところまで話してやった。

 

 俺達の話をカーラは食いついたように俺達を見ながら目を輝かせていた、こら、危ないから前を見て歩きなさいって言ってるでしょ。

 

 たった10日間とはいえ、こうして思い出すと何故か懐かしく感じてしまうな。

 

 そう感慨に耽っていると、視界に丸太を隙間余すこと無く何かを囲うように地面に打ち込まれている光景が入った、遠目でしか分からないが正面の一部が空いていて、そこから左右に広がっている感じだ。

 

 思わず俺とダリアは「おぉ!」と関心してしまった。

 

 近づいていくと、段々と細部までハッキリ見えてくる、入り口部分に先端が尖った太い木の枝が地面に刺さっていて、その棒が突き刺さっているようにフォレストウルフの死骸が引っ掛かっている。

 

 入り口だけで無く、ある程度間隔を空けて設置されている様は、モンスター避けには抜群だろうし、他の外敵にも攻撃的な印象を与える。

 

 しかも入り口に門番のような装いをした人がいるのだ。

 

 たった一週間やそこらでここまで変わるもんなのか····?

 

 唖然とした様子の俺とダリア、そして緊張した様子のカーラは村の入り口までやって来た。門番らしき男も最初はその手に持つ木の槍を構えていたが、俺とダリアの顔を見ると、同じく唖然とした様子でこちらを見ていた。

 

 と言うかこの人、あの時の御者のおっちゃんじゃねえか!御者のおっちゃんの後ろには、どこか騒がしさを感じるが活気を感じさせる騒がしさで、何か作業をしているのだろう、時折男の声が響く。

 

 震える声で御者のおっちゃんが口を開いた。

 

「レイグの兄ちゃんにダリアの嬢ちゃんか···?」

 

「久しぶりって程でも無いけど、久しぶりだなおっちゃん」

 

「久しぶりですギョシャさん」

 

 おっちゃんに返事を返すと、おっちゃんは深呼吸をし

始めた、少し落ち着いたのか笑みを浮かべて「おう!」と返してくれた。

 

 「遊びに来てくれたのか」と聞かれたので依頼による遠征だから、本当に顔出ししか出来ないと伝える。

 

 おっちゃんは残念そうにしていたが気を取り直すように頭を振った。

 

「何はともあれ、来てくれただけでも嬉しいさ、所で彼女は?」

 

「ああ、新しい仲間でおっちゃんと別れた後でパーティーに入ってくれたんだ」

 

 そこでようやくカーラに気付いたのか、カーラを見ながら尋ねてきたので、俺が先に答えてからカーラにバトンを渡す。

 

 カーラは幾らか緊張した面持ちで「カーラ·ヴァネスティラ、よろしく」と答え、よろしくな!と気持ち良く答えてくれたおっちゃんに幾らか緊張が解れたのか真一文字に結んでいた口を緩めた。

 

「随分と見違えたんじゃないか?」

 

「だろ?あんたらが帰った後さ、まず何をやるかって皆で意見出しあってさ、まぁ勿論作物作りはいつも以上に頑張って、魔物避けとか考えたりしてさ!

 

 

──っとまぁ、まずは中に入ってくれよ!」

 

 とおっちゃんの案内で俺達はリデア村に再び入った。

 

 まず目に入ったのは、農作物の手入れをしている子供や女性、老人だった。ちゃんと水やり等の管理が行き届いているのか土は水をしっかり染み込ませて変色しており、出来ている野菜の葉は瑞々しい。

 

 手入れと言ってもやることは細かい草むしりや、害虫の駆除など、地味な作業ばかりだと言うのに皆笑顔を浮かべている。

 

 以前のリデア村ならまず見られない光景だ。

 

「───あれは?」

 

 カーラが「良い雰囲気の村だね」と和やかに言っているのを聞き俺も「あぁ」と味気ない返事しか返せないでいると、ダリアが何か気になる何かを見つけたのかそちらの方を指差していた。

 

 俺とカーラも気になりそちらを見ると、村の端の方にあるスペースに生えているそこそこの大きさの木に、長い物干し棒が何本かを引っ掛けてそれを外塀に打ち込まれている受け材に載せ紐で固定してある。

 

 そしてその物干し棒には、毛皮が干されていた。見たことのある灰色の毛並みに俺は思い当たった名前を口にしていた。

 

「この毛皮、フォレストウルフの···?」

 

「そうじゃよレイグ殿、ダリア殿」

 

 まさかあの森に置き去りにした死骸全部を?なんて呆然としている俺とダリア、それに毛並みの良さを見て関心しているカーラにおっちゃんとは別の声がかかった。

 

 聞き覚えのある声に振り向くと、村長が立っていた。以前来た時とは違い、腰も曲がっておらず全てを諦めていたような目は爛々と歓迎の光を帯びていた。

 

 イキイキとしたその変わりように俺とダリアが再び固まってる間にカーラが自己紹介をして村長と握手をかわしていた。

 

 村長はそんな俺達にニヤリと悪戯を思い付いたような顔をして農作業をしている人達に向けて口元を両手で囲うような形を造り。

 

「え、ちょ───」

 

「作業は中止じゃあ!英雄御一行がおいでなすったぞぉ!!」

 

「ちょっと!?」

 

 何で俺の周りは、こうも叫ぶ奴が多いんだ!!

 

 

ーーーーーーーー

 

 その後俺達は案の定、村の人達に囲まれた、矢継ぎ早に送られてくる言葉に苦笑いを溢す、ダリアも同じような状況で目を回している。

 

「元気にしてたかい?」

 

「こっち見なって!」

 

「またかっこ良くなったんじゃない?」

 

「どう?うちの娘とか」

 

「この後、私とどうだい?」

 

「誰だ今レイグ様誘惑した奴!?」

 

 気付けば混沌と化していた状況、カーラとおっちゃんと村長は少し離れた所でこちらを助けるでも無く見ているだけだし。

 

 カーラに至ってはさっきから目を逸らされてる。

 

「ほれ、皆そう囲んで揉みくちゃにしていたら英雄殿が休めんぞ?」

 

 パンパンと小気味良く音を響かせて、一旦その場を収める村長、名残惜しそうにしながらも俺とダリアから離れていく村の人達。

 

 村長としてのカリスマを十全に発揮する村長をダリア共に睨むが、ニコニコと見返すのみ、いつの間にこんな強かになったんだこの人····

 

「ホッホ、皆、レイグ殿達は依頼のついででこの村に立ち寄ってくれたようでな、長居は出来ないそうじゃ」

 

 村長がそう言うと残念がる答えが返ってくるが、皆あっさりと引き下がっていく。

 

 その後農作業に戻っていく村の人達を見届け、その後門番の仕事に戻るおっちゃんと別れてから俺達は軽くではあるが村長に村のなかを案内して貰う事にした。

 

 基本的に建物等が変わった様子は無いし、何か新しく建っている建物も無い、森から伐採したのか均一の長さで丸太が纏まって置いてある保管場所が増えたぐらいだ、それでも大きな変化であり大きな進歩だと村長は言った。

 

 しかもつい昨日の事であるが、小規模ながら商人がこの村に興味を引かれ立ち寄ったのだと言う。

 

 そこで目を付けたのがフォレストウルフの毛皮である、綺麗に剥ぎ取られていて、血や汚れなども綺麗に洗い流されており状態も良かったらしく、その日は物々交換ではあるが剣や槍などの武器を貰ったらしい。

 

 村の男達は修練場的な広場で、思い思いに貰った武器を手に取り振るっていたり、体を鍛えたりしていた。

 

 練度は決して高いとは言えない、寧ろ元々が戦闘とは無縁の生活を送っていたからか型も何もない酷いものだった。

 

 しかし、ただ強くなりたい、その一心で武器を振るい拳を放ち、時に蹴りを飛ばす姿は拙いながらも何故か目を引くものがあった。

 

 大人の男達が鍛練するなか、何とレンが中に混じっているのを確認した、剣では無く木で造られた柄の無い剣を振るっていた。

 

 ダリアがレンに気付いたのか手を振ろうとしていたが、それを手で制す。

 

 何度も振るったのだろう、良くは見えないが剣だこは出来ているし、指の皮が向けているのか赤い染みみたいな物が木の剣に付いているし、握る手は小刻みに震えスルッと何度か手から離れかける場面があるもののその都度握り直している。

 

 一度は諦めたクソガキ(レン)が、たった10日程目を話していた間に、あれほどの気迫を出して、必死な顔をするようになったことがどうしようもなく嬉しかった。

 

 ダリアは最初どこか不満そうに俺を見ていたが俺の様子を見て何かを悟ったのだろうか、微笑みを浮かべていた、恥ずかしいからこっちを見ないでください、あ、カーラお前もか。

 

 村長も何かを悟ったように、何も言わずにその場をゆっくり離れ始めた、何かカッケェなおい。

 

 ダリアとカーラがそれに続いていく中、俺も着いていく。

 

 

 

 

 

 

 レン、次会うとき「真剣同士」、稽古を付けてやるよ

 

 

ーーーーーーーー

 

「村長、案内ありがとう」

 

「ありがとうございます」

 

「ありがとう」

 

「いやいや、仕方ないとは言え大したもてなしが出来なかったことが恥ずかしいわい」

 

 村を見回った俺達は再び出口まで来ていた。

 

 礼を言うも村長は申し訳なさそうに、恥ずかしそうに後頭部を掻きながら苦笑いした。

 

「寧ろ、カーラ殿には謝罪をしたい」

 

「え?」

 

 俺も謝っておこう、ごめんカーラ、別にふざけている訳ではない。

 

 元々、ここの村は閉鎖的な村だ、一度は関わった俺とダリアならともかく、初めて来たカーラに対してどういう対応をするのかは明白だった。

 

 別に彼等を責めるつもりは無い悪気は無いのだろうし、でもカーラが明らかに浮いてしまっているのは分かっていた筈だし。フォローぐらい出来る筈だった。

 

「別に気にしていないから大丈夫·····それに村の人達は私のことも気にしてくれていた」

 

 え?

 

「何回か目もあってるし、気まずそうに逸らされてたけど、不快感とかは感じなかったし寧ろ申し訳なさを感じた、だから気にする必要は無い

 

 

 

それに、私はレイグさんとダリアがどんなことをしたのかが知れて嬉しいの、村の人達が2人を見る目が私にとって凄く誇らしいんだ、だから礼を言うのは私」

 

 見守っていた御者のおっちゃんも俺もダリアも、村長も唖然としたようにカーラを見ていた。

 

 次第にむず痒くなってきた俺は「また来るわ」とだけ言って出口を潜っていく。

 

 その際口角を吊り上げニヤニヤしていたおっちゃんが「愛されてるね」とからかってきたのでデコピンをして沈めた俺は悪くない!

 

  





ギョシャ「ぅぐわああああああああああ!?」
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