憑依物語   作:そりゃないわ

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サブタイに言葉を足した方が分かりやすいですかね?


45話的な話

 

「「魔薬」、ですか?」

 

 「カサブの街」の中で、石造りの階段を登りながらダリアが前を歩くレイグに聞いた、頷くレイグの渋い顔と先程の商人の反応を見るにロクなモノでは無いだろうと当たりをつける。

 

  登りきった先に見えた通路を歩きながら、街の案内地図を見ながらレイグが「まぁ、普通に出回るモノではないからな」とダリアとカーラの顔を見て言った。

 

 「魔薬」、名前からして不吉極まりないがその効能も酷いものである。

 

 そしてその効果は「モンスターをおびき寄せる」と言う「際限が無い」ものだった、匂いがするわけでも、空気に晒したら奇っ怪な音を発する訳でも無い、ただそこにあるだけでモンスターを何処からともなく呼び寄せるのだ。

 

 「魔薬」の製造方は至極簡単、「テンタリオン」と言うモンスターの生き血を一定量以上溜めて、魔力を一定量以上注ぐだけだ。

 

 「テンタリオン」と言うのは、火山地帯等に生息地を持つ蟻地獄のような見た目のモンスターである。

 

 不思議な事に、このモンスターを討伐すると、その血を求めて、同じ昆虫種のモンスターや赤蜥蜴(レッドリザード)等の爬虫類種が集まって来る上に、普通に討伐した場合と、魔法で討伐した場合で集まる数が違う。

 

 と言うのがレイグが前いた世界での「魔薬」の生成方である。一般的とは言えないが、知っている奴はわりと知っていた。

 

 この世界でも同じなのかは分からないが、でもあの商人の反応と魔物か襲いかかる頻度、「必ず荷馬車を狙って」襲ってくると言う事実から、「魔薬」と似たような物を扱っている可能性は高い。

 

 「魔薬」が使われている主な用途を思いだし、関わる事は無いだろうが、用心するに越したことは無い、そうダリア達に伝えるレイグに頷いて理解を示すダリアとカーラ。

 

 口元に笑みを浮かべ、頷き返したレイグはそこで改めて街を見渡し、感心の声を上げた。

 

 ストルの街のように入り口から奥まで一本道の大通りから木の枝分かれのように小路が広がっている訳では無く、「カサブの街」は入り口から奥にかけて、登るような造りをしている、大通りはちゃんとあるのだが、真っ直ぐでは無く、所々右に曲がったり左に曲がったりしているのだ。

 

「何か面白い街ですね」

 

「面倒臭い造りではあるけどな」

 

 同じ事を思っていたダリアの言葉にレイグは苦笑して返した。

 

「地図だとそろそろ···」

 

 レイグが持つ地図を横から覗き見て、位置を確認するカーラ、カーラが見やすい様に止まり3人でもう一度見る。

 

 地図を確認した3人は目の前の階段を登り始めた。後ろから新人冒険者パーティーなのか、元気が良く、そわそわしている4人程の集団が追い越して行くのを微笑ましく感じ。

 

 階段を登りきると、だだっ広い空間が広がっており、一番奥にギルドらしき大きな建造物が建っており、冒険者らしき人が出入りしているが、時間帯も昼に差し掛かっているからかその数は少なく、広い空間には左右に立派な噴水広場があり、その周辺に冒険者がいれば、一般人だろうか、子連れの夫婦がいたり、子供同士が遊んでいたりしていた。

 

 ストルとはまた、違った活気の良さに感心するレイグ達、先程の新米冒険者達の様子と良い·····

 

「ストルとは違うだろう?」

 

「あぁ、何と言うか平和だな」

 

「皮肉にもとれる誉め言葉だね····」

 

 いつの間にか隣にいた痩身の男に声をかけられ、ダリアとカーラはギョッと痩身の男を見るが、レイグは当たり前に答えた事に男は感心とも呆れともとれる複雑な声を出した。

 

 レイグは改めて隣に立つ、長身で痩身の男を視る、荒々しい言葉では無く、寧ろ聞く人を安心させるような声音だった男はレイグの視線に寧ろ興味深そうな目を向けた。

 

 格好は如何にも「一般人です」とばかりな服装であり、身長は180後半はあり、痩身と称するように細い、しかしその優しげな声音に相反するように目は爬虫類のように細められレイグの相貌を見つめていた。

 

 不意にダリアとカーラがレイグの背後に回り込み隠れ·····たと言うより何かを守るかのような目で痩身の男を睨み付けていた。

 

 そんな様子の2人に訝しげだったレイグだが、その意図を察したのか顔を青褪めさせてバッと痩身の男を見た。

 

「違うから

 

 これ程ないじっとりとした目に、カーラが「ホモじゃないの?」と問いかけ速攻で頷いた男の態度に安心したようにダリアとアイコンタクトを取り頷き合い、再びレイグの隣に並んだ。

 

 何で絡んだこっちが疲れるんだ····と内心頭を抱えながら痩身の男──カサブのギルドマスターは目の前にいる黒髪の少年の察知能力に舌を巻いていた。

 

 カサブのギルドマスターは気配を消すスキルに秀でており、冒険者時代は珍しい暗殺タイプの冒険者で有名だったりする。

 

 ギルドマスターに任命されてからも、もともと悪戯好きという性格もあってか冒険者に絡み、一般人に絡むと言うかなり面倒臭い性格をしているが、わりと受け入れられている。

 

 そんな中、勇者パーティーの話で勢いは殺されているが、それでも噂にはなっている冒険者パーティーがカサブに来たとの連絡に彼の悪戯心が刺激され、早速見つけて尾行したのだが。

 

「(まさか、最初から気付かれているとはね)」

 

 最初に見つけ、距離を取って見始めた時から目の前の少年が時折何かを探すような仕草をしていた意味がわかったカサブのギルマスは乾いた笑いが漏れるのを自覚した。

 

「んで?わざわざ尾行していた奴が人目が在るところに、しかも監視の目があるギルドの前で姿を見せるってことは、アンタそれなりの立場の人間何だろ?何のようなんだ?」

 

「(頭もキレるらしい)」

 

 レイグの冷徹なまでの慧眼にわざとらしく両手を挙げて「降参」と言った。

 

 ギルドから感じていた視線が驚愕に変わった事にレイグは目の前の痩身の男が自分の予想通り只者では無いことに溜め息を吐いた。

 

 疲れたように溜め息を吐いたレイグを興味深い目を向けていたカサブのギルマスだがやがて、演説をするように両手を広げにこやかに笑った。

 

 

 

「ようこそ!カサブの冒険者ギルドへ!有望な冒険者である君達を我がギルド及びギルドマスターである僕「ヨウキ·ヤー」は歓迎するよ!」

 

「あー!まま!ぎるますがまたへんなことしてるよ?」

 

「あれはお仕事してるだけだから邪魔しちゃ駄目よ?」

 

「わかったー!じゃあミミおうえんするぅ!ままもいっしょ!」

 

「ふふ、しょうがないわねぇ」

 

 

 

「「がんばって~!」」

 

 全身が氷に包まれたような冷たさを体中に感じながらカサブのギルマス─ヨウキは応援してくれた親子に向かって梅干しを10個ぐらい噛み締め咀嚼したような顔で無理矢理笑顔を造り手を振り返した。

 

 ぶふっ、と何かを堪えきれずに吹き出したような声がすぐ側から聞こえて、震える顔でそちらを見るヨウキ。

 

 勿論吹き出したのはレイグであり、ダリアとカーラは生暖かい目でヨウキを見守るように見ていた。

 

 その視線が次第に周りにいる他の冒険者や家族、休憩中の商人から向けられ始めたのを感じて顔に熱が集まっていく。

 

 ヨウキが顔を隠すのとギルドに駆け込むのが同時だった。

 

 

ーーーーーーーーー

 

「マッ──ストルのギルマスからの?」

 

 ヨウキがギルドに逃げ込んだあとに、ヨウキが自らギルマスと言っていたのを思いだし、慌ててその後を追いかけたレイグ達は。不貞腐れたギルマスを宥めるという、ある意味レアな体験をした後、ギルマスに渡すよう頼まれていた便箋を懐から取り出した。

 

 頷いたレイグを尻目に「失礼」とだけ言って、便箋を開き中から一通の紙を取り出しその場で目を通し始めた。

 

「ん?」

 

「レイグ様?」

 

「あぁいや、「お帰りなすった」みたいだ」

 

「?」

 

 ヨウキが小難しい顔で手紙を黙読している中、レイグは何となく街の気配を探ってみた、勇者パーティーが滞在していると聞いた時からレイグは考えていた。

 

 この世界のアリスを見れば、何かが変わるんじゃないか?それは別にレイグ本来の目的に関係すらしていない、曖昧な感情だった。

 

 あの瞬間、最後まで想い続けた彼女がもし中身は違い性格まで違ったとしても。

 

 もし、隣にいるのが「奴」()じゃなくて違う奴だったとしても、それでアリスが幸せなら、幸せそうな顔をしていたら、「違う世界のアリス」でもあの太陽のような笑顔を見れたのなら。

 

 そう思って気配を探ったのだが、引っ掛かったのは彼女以外の勇者パーティーだった。

 

 今もこのギルドに向かって来ている辺り、何か依頼でも受けていたのだろうか、それにしても何故アリスがいないんだろうか?

 

 アリスは元気なんだろうか?

 

「────」

 

 やはり無理だ、とレイグは結論を出した。例え違う世界のアリスだとしても、その隣に「奴」がいない未来なんて考えられない。

 

 例えどれだけ愚かで滑稽で最低な「奴」でも、夢の中の「奴」がアリスに向けた感情は本物だった。

 

 ·······恋のキューピット何てガラじゃないんだが。

 

 「追加」された目的にうんざりしたレイグ、しかしその顔は僅かな苦悩の末、幾分か晴れやかだった。

 

 ふと視線が向いている事に気付き、横を見るとダリアとカーラがレイグをじぃっと見ていた。

 

 レイグが何かを吹っ切れたのを表情で悟ったのか、2人顔を見合わせて笑っている、気恥ずかしくなったレイグは2人を視界から外すように手紙に目を通すヨウキへと視線を向ける。

 

 ヨウキはどこか険がある顔付きをしていて、未だに手紙に目を通してる。

 

 ヨウキはレイグ達の視線に気付いたのか慌てて申し訳無さそうな顔で苦笑いを浮かべた。

 

「すまないね、3人とも、大したもてなしも出来ずに······そういえばこの後は?帰るのかい?」

 

「気にしないでくれ、いきなり来た身としては申し訳無くは思ってるんだ、時間も時間だしな今日は泊まって行こうって思ってる」

 

「うん、分かった僕が懇意にしている友人がやってる宿屋があってな、声を掛けとくよ、夕方頃、受付には話を通しておくから手間をかけるけどもう一度くるといい」

 

 部屋の中の壁に付けられた時計を見ながらヨウキが言った。

 

 午後の一時を短針が刺しかけている所を見ると、昼食を取っていない事を認識したからか、空腹が3人を訴えかける。

 

 ヨウキは笑って「僕は大丈夫だから行っておいで」と恥ずかしそうにしているダリアとカーラ、そしてレイグに話しかけた。

 

 ヨウキの発言を受け入れたダリア達が頷き、ヨウキに頭を下げて部屋を退出する、レイグもそれに習って低頭してダリア達を追いかけて行こうとして「レイグ」とヨウキに呼び止められた。

 

「?」

 

「───いや、すまない何でもないよ」

 

 レイグが訝しむような目になるが、笑みを崩さないヨウキの顔を見て苦笑いを溢して「分かったよ」と言ってダリア達を追いかけていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく、何であのバカはヴァリエン国じゃなくて僕にこういう情報を持ってくるんだ」

 

 渡された手紙に向けて、誰も居なくなった部屋にヨウキの呟いた言葉がむなしく響いた。

 

 

 ──元気してるか?

 

 

 そんな気が抜けたようなメッセージから始まり中々な情報が書き殴られている。

 

 勇者パーティーが倒した魔人が一般兵レベル?勇者パーティーが本気じゃないにしても全滅仕掛けたって言ってたぞ?

 

 幹部らしき魔人が竜種を殺せる程の蜥蜴王(キングリザード)の強化を施した?しかもその魔人にギルドに侵入されてましてや何も出来なかった?おいおい現状勇者様より遥かに強いお前が何も出来ないって···しかも何だよ····

 

 その竜種を殺せる程の蜥蜴王を倒したのがレイグ達のパーティーで、しかもその幹部がレイグ達をターゲットにしているかも知れないから、もしそっちで何かあったら気を付けてくれって·····

 

 

 

 

 

 

 

 何なんだよ「大成の器について調べてみてくれ」って

 





憑依物語(どうでもいい)豆知識

ヨウキ·ヤー

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