サブタイトルに文字を付け足してみました
どうですかね?
あと、今日は長いですm(_ _)m
「·······何かしら?」
時刻は午後3時を過ぎた頃、気分良くカサブの街近隣での討伐クエストを終えたアリスは中々の上機嫌で街へと帰ってきた。
鼻歌を口ずさみながら、スキップを踏むような足取りで歩いている姿は整った顔立ちに映えるような綺麗な金髪に周囲の視線を次々に集めていく。
女性や少女はどこか頬を染めてアリスを視線で追いかけており、その瞳には憧憬や羨望が含まれており、男性もアリスが行く先々にいる男全てがだらしなく顔を緩めてその場に立ち止まりアリスを見つめ続けている。
中には妻やら、恋人を隣に置いている男もおり脇腹をどつかれたり、靴を踏まれたり、怒鳴り散らされたりとプチ修羅場を起こしたりしていた。
上機嫌な理由はアリス本人にも良く分かっていない、朝クエストに向かうために街を降りている途中に果物屋のおばちゃんからサービスに果物を貰ったからという訳でもないし、クエストが過去最速で終わったからでもない。
上機嫌だけど理由は分からない、そんな彼女がギルドに向かうために街中を歩いていると、彼女の耳が僅かな騒々しさを拾った。
剣呑な雰囲気は無く、どこか興奮を含んだような騒々しさはアリスが歩いた道の先の広場から伝わってきて、周囲から何名かが騒ぎの中心であるその広場に向かおうとアリスを抜き去っていく。
「ちょっと良い?」
興味が出てきたアリスは同じく隣を抜き去ろうとしていた、女性を呼び止めた。
「あ、け、賢者様!?こ、こんにちは!」
呼び止められた女性は訝しげな視線をアリスに向けたが、アリスだと気付くと興奮したかのように顔を真っ赤にして挨拶をした。
未だに慣れない有名人扱いにアリスは苦笑いを溢し、興奮冷めやらない女性を落ち着かせようと宥めた。
「この先で何があったの?」と聞くと、女性が僅かに戸惑いを浮かべ、逡巡する様子を浮かべた。気まずそうな顔をしたまま女性は「勇者様が冒険者と喧嘩をしている」と思わず吹き出しそうになる程の事を言った。
「(勘弁してよぉ·····)」
その言葉を聞くや否や、突然走り出したアリスに「賢者様!?」と驚いたような声が後ろから声がかかるが、アリスに構っている余裕など無く、どこか悲鳴染みた愚痴が内心に染みていく。
半年間、勇者に言い続けている「悪い癖」が分かっていても治っていない事に溜め息を吐きたくなる。
「勇者が冒険者と喧嘩して、あまつさえ冒険者を撃ち据える」、世界を救うために活動している勇者パーティーとしてかなり外聞が悪いこの事態は頻繁に起きこそしないが、今現在聞いたことによりその回数を4回に増やしかけていた。
原因は女性関係、良くある相手の恋人を奪った、と言うあれである、毎回相手の冒険者然り一般人然りアレックスに対して恋人を奪われた、と言って襲いかかってくる。
何より厄介なのはアレックスが何もしていないのに対して、「何故か」相手側の恋人がアレックスに惚れてしまい「不貞行為」を働いてしまうと言うのが一番の原因なのである。
そしてアレックスは勇者である、レベルも高くスキルの特性でレベルの上がりも早い、ステータスも高い、 そこらの冒険者が太刀打ち出来る相手では無いのである。
当然返り討ちにしたアレックスは必ず、何かを相手に言って事態を収めているが、その後の相手を見ると悲惨である。
当然、破局して、「世界を救うために活動をしている勇者に喧嘩を売った馬鹿野郎」として周囲から白い目で見られてしまい。こちらを糾弾する気力すら無いほどに憔悴した顔をしていた。
仲間であるリサやリリアンも相手をフォローする事無く、寧ろ「恩知らず」等と追い討ちをかける始末。
3人に隠れて、必死に慰めた苦い記憶がアリスの脳内を過った「逸らないでよ」と焦る気持ち、そして焦る気持ちに相反するような。
───
何故か胸の内に沸き立つ高鳴る鼓動と共に家や店に挟まれた大通りを駆けていく。
近付くにつれ大きくなっていく喧騒、そしてアリスが
喧騒の中心である広場に出ると同時に「アレックス!」と怒鳴ろうとして。
「ぐわああああああああああああああああ!!!」
聖剣を振り下ろした状態で呆然としているアレックス、歓声を上げる周囲の住民、惚れ惚れした上気したような赤い顔でアレックスを見つめるリサとリリアン、若干演技かかったような悲鳴を上げる相手をジトッとした目で見ている2人の整った顔をした同い年であろう少女2人に。
「───────え」
叫び声を上げている相手の男──少年が大切な幼馴染みであるレイグだということにアリスは呆けたような声と共に頭が真っ白になった。
ーーーーーーーーーーー
俺は実はこの世界で重要な役割を持っているのかも知れない。
そんな阿呆な事を思った事を許して欲しい、自己陶酔してるわけでも自意識過剰になったわけでも無いんだ、そもそもこんな事を思ったのも、たった今だからね。
俺はね?そりゃあいずれは奴らとどこかで鉢合わせる事になるとは思っていたよ。
現状魔族の幹部らしき奴を探す過程で、「魔王討伐」を掲げて旅してる勇者パーティーと動きが被る可能性は高いからね。
でも今じゃないじゃん?ギルマスからカサブのギルマスへの依頼は終わったけど、依頼先(しかもギルマス)のお膝元で奴らと会うのは俺の精神衛生上よろしく無いわけなの。
奴らの俺に対する態度は一度見ている、とるに足らない存在とでも見下げ果ててくれて、忘れてくれてれば良いが、あいつからアリスを引き離した時の勇者の嗜虐的なゲスな笑みを思い出すと覚えているだろう。
だからね、カサブのギルマスの所にいて気配を拾った時にはね、余計なトラブルに成りかねないし、多分俺は勇者に「屈せない」、この世界の勇者がどの程度強いかは知らんが全力で抵抗してしまうだろう。
変に暴れて勇者パーティーの評判を落としてやろう、とは思ったが。アリスにも迷惑かけたくないし、カーラの冒険者ランクの昇格を近くにして問題事は起こしたく無かった。
そう思って気配が通る場所から多少離れた位置で飯屋を探して入ったというのに
「久しぶりだな?えっと····誰だったかな?アリスの腰巾着の·····」
「確かレイグ、だった筈だ、あのアリスの幼馴染みとは思えない程に腑抜けた奴だったから嫌でも覚えてしまった」
「私も覚えてますよ?と言うよりもアレックスさん以外の男以外覚える気もなかったのに、アリスさんをこの人から離す時のこの人の泣き顔が印象的過ぎて覚えてしまったって感じですけどね」
飯を食べ終えて、店から出た俺達に当たり前のように声をかけて、息を吸うように俺の悪口を言った彼らに対して自分は「重要な役割を持っているのかもと」思ってしまうのは仕方なくないですかね?ですよね(狂
周囲が勇者達の姿に沸き立つ中、ダリアとカーラが不安そうに俺の裾を掴むのが分かった、どうやら俺の心配をしてくれているようだ。
2人に振り返って安心させるように小さく笑みを浮かべる。
「おい、貴様!アレックスが話しかけたと言うのに無視とは何だ!生意気な!」
うっそぉ!?この女(多分剣聖)話し掛けて来て3秒でメンチ切ってんだけど!?おい勇者てめぇ「まぁまぁ」とか宥めてるけど口元笑ってんの見えてんだかんな?
うわ、こいつダリア達になんつー目向けてやがる·····
俺が背後に2人を隠すように前にゆっくり立つ。
勇者がそれに眉をピクリと潜めたがその前に口を開く。
「久しぶりですね勇者様、元気ですか?元気ですね!私も元気です!幼馴染みは居ないようですが元気ですか?元気ですね!あなた達の事は知りませんが益々の健闘を祈りますのでさっさと魔王を倒してくださいさようなら」
馬鹿じゃないの俺!アホなんじゃないの俺!?何で軽い社交辞令で済ませば良いのに、こんな煽り文句いれてんの!?
「~~~っ」
「っ!───」
ダリアとカーラはもう少し我慢して?馬鹿な事をしたのは謝るからまだ笑わないで。
俺の余りにもふざけた挨拶のせいか、にやけていた勇者の端正な顔が無表情になっていた。
いや、早まらないでくれ、こんな返しをしてしまったのは元と言えばお前らが俺と奴に悪印象を与えてしまったが故だと、つまり全てお前らが悪い!今ならダリア達に向けた視線の事も流してやるから、ね?
「──ふん、負け犬の遠吠えかな?まぁ安心しなよ?お前の幼馴染みとは仲良くさせて貰ってるよ」
「そうだな、アリスも貴様みたいな腰抜けよりも我々と共にいた方が幸せそうだ」
無表情だった顔が次第に嗜虐的な笑みに歪んでいって、勝ち誇ったように俺を見ながら言ってくる。
いや、ふざけた挨拶した俺が言うのも何だがお前らもマトモな挨拶できてないかんね?もっかい勉強やり直してこい、あ、俺もか。
それにしても負け犬?·····いやまぁ確かにそうなるのか······?
「しかしその格好、もしかしてお前冒険者やってるのか?」
「·····えぇ、まぁ」
質問されたので答えてやると、急に笑いだした。腹を抱えて勇者が笑い、赤髪の女と銀髪の女はクスクスと笑いを堪えている。
すごいな、人目が在るところでこんな狂ったように笑えるなんて、周りも勇者達の変貌に困惑しているのだろう。どこか不安そうな顔をしている。
「そこの可愛い女の子2人、お名前を窺っても良いかな?」
狂ったような笑みを引っ込めて落ち着いたのか、まるで俺は眼中に無いと言わんばかりに俺から視線をずらして、俺の後ろにいるダリアとカーラに目を合わせるようにして綺麗な笑みを浮かべて名前を聞いてきた。
いや、挨拶はしないんかい
思わず呆れた目を浮かべるが、慌てて無表情を作る、取り敢えずコイツらに俺達への興味を失って貰わないと。
そう思って、2人の前から横にずれる、俺と同じ無表情を浮かべたダリアとカーラが俺の横に並び「ダリア·ミルス」「カーラ·ヴァネスティラ」と淡々と答えた。
勇者パーティーへの態度·····強いて言えば勇者への態度が気に食わないのであろう、赤髪の女と銀髪の女は2人を睨んでいた。
勇者はよっぽど自分に自信があったのだろうか、酷く驚いた、もっと言えば酷く狼狽したようすでダリア達を見ていた。
「あの、アレックスさんが話し掛けて下さっているのにその反応は人としてどうなんでしょうか?」
「そうだ、貴様らアレックスの「寵愛」を無碍にする気か?」
我慢できなかったのか、苦言を呈した2人······「寵愛」?
俺が赤髪の発言の意図を考えようとする暇もなく勇者パーティーの赤髪の女が鼻で笑い見下すようにダリアとカーラを見た。
「ハッ、そんな腰抜けの雑魚と組んで底辺冒険者で終わってるような女だ、マトモな反応を期待する方が酷かな?」
「まぁ、そうですね、そもそもそんな常識を求めた私達が悪かったようですね?すいません」
「あ?」
「は?」
「あ?」
思わずそんな汚い声が漏れるが、向こうは嗤ったままだダリアとカーラが震えているのが分かる。
「·····まあ、俺達も魔王討伐の旅で忙しいからな、お前みたいな雑魚に、どこにでもいそうなレベルの低い女2人なんか相手にしている暇は無いんだわ」
止めと言わんばかりに、「仕方ないか」と小さく呟いた勇者が常識をあの世に置いていったような発言で続いた。
───────────
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決めた、コイツらここで懲らしめてやると
要は表だった面倒を起こさなければ良いんだろ?最終的に「丸く」収まってれば良いんだろ?やってやるよダリアとカーラをここまで侮辱したんだ。
「黙れよ暇人」
「何?」
「何が「暇は無い」、だよ?魔王の手下倒したんだろ?まさか情報も得られずに只倒してノウノウとこの街に居座っている訳じゃないだろうな?しかも一週間前の話しなのに、お前勇者様なんだろ?本当に魔王討伐する気あんの?」
まさか俺が口答えすると思ってもいなかったのか勇者も赤髪の女も銀髪の女も同じく呆けた顔を晒して口を半開きにしてフリーズしている。
ダリアとカーラがポカンと俺を見てくるが気にせず「それにな」と更に続ける。
「レベルが低いとか底辺とか、ろくに自己挨拶も出来ねぇで一方的な会話しか出来ない奴が何をほざく?会話のキャッチボールってのも全く分からねえのか、一辺母ちゃんの腹の中からやり直してこいや、お?」
勇者達が、ようやく自分達が責められている、と言う事実に顔を怒りに歪め震え始める。
銀髪の女に魔力が集まるが、まるで何かに掻き混ぜられたかのように四散した。唖然としている顔が笑いを誘う。
隣でダリアが何かをしたのか親指を立ててサムズアップしている、頼もしい限りだ。
「何がアリスと仲良くやってるだよ?どうせアリスに同行を断られたんだろ?何振られた事実を隠してんの?ダサいよ?あ!その整ったでキメ顔で誘ったのに断られたの?まぁ(俺の知ってる)アリスは下心見え見えの誘いには乗らないからねぇ!ごめんねぇ?素直過ぎてぇ」
「黙れ」
「黙れはこっちの台詞だよ、こちとら大切な幼馴染み騙られて、大事な仲間を侮辱されてんだよ」
「·······ここで斬っても良いんだぞ?」
そう言って腰に差した鞘から、光を纏った剣をスラリと抜き放った勇者、その表情は図星だったのか怒りに歪みきっており聖剣を持つ手は震えていた。
赤髪の女も腰の豪華な造りの鞘から剣を抜こうとしていたが、驚いたようにカーラを睨み付けていた。
睨み付けられているカーラはカーラで澄まし顔で赤髪の女を見返している、ダリア、カーラ、悪いがここは俺に預けてくれ。
そう思って勇者への返事として俺は直剣を勇者同様スラリと抜いた。
抜いた剣を肩に担ぎ、勇者達が歩いてきた方向に繋がる広場へ歩きだす。
意図を察したのか、赤髪と銀髪の女を宥めながら再び嗜虐的な笑みを浮かべて俺達の後に付いてくる。
背後に突き刺さる視線を感じながら、隣に並び立つ2人にまず勝手な事をしてしまった事を謝った。
「ダリア、カーラ、ごめん、我慢できなかった」
「良いですよ謝罪は、レイグ様が怒ってなかったらあの人達の顔を人前に出れないようにしようと思ってましたから」
「私も、多分顔に後三つは穴を空けようかなって考えてた」
「あ"、ありがとう······」
笑顔で間髪いれずに返ってきた2人の回答に内心「マジで良かった、俺怒って良かった!」と叫んだ。
こうして騒ぎになった俺と勇者の諍いは周囲に伝染していって。
カサブのギルド前にあるような広さの広場には数分後、ギャラリーが完成していた。住民や冒険者、中にはギルド職員らしき人までが集まり広場の外周に広がり中心が空くように円を作っている状態だ。
どうやら民衆的には「冒険者が勇者に対する嫉妬心が暴走して勇者に一騎討ちを挑んだ」という事になっているらしい。
騒がしいまでの喧騒の中、やたらと呆れたような、同情するような、励ますようなそんな視線が集まってくる訳だよな·····
態々、ギャラリーが集まるまで待っていたのか、幾分か落ち着いた様子を顔に浮かべた勇者がにやけた顔で問いかけてきた。
「悪いが俺は怒っているからな、今更引き返せないぞ?」
「良いからかかってこいよ、勇者だろ?敵相手に態々そんな下らない問答してんの?そんなんで勝てる程甘いのか?」
「────────」
本当にそんな感じ、今の勇者、前の世界の俺だったら何回切り捨てていたか。
にべもなく煽り文句を挟むと勇者は目を見開いて、剣を振り上げ瞬く間に距離を詰めてきた。その速さに周囲が色めき立つ。
「ふむ」
手に持つ直剣で聖剣とマトモに刃を合わせないようにして右にあっさりと受け流した。
「え?」と固まる勇者に俺は内心がっかりしながら、どう料理してやろうと左拳に力をいれるのだった。
続きは明日出せるかどうか······