憑依物語   作:そりゃないわ

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 投稿が遅れてしまいましたm(_ _)m

 お気に入り感謝です。

 誤字報告感謝です。
 気を付けてはいるんですがね(;^o^)

 難産故に変な所があるかもしれませんが、続きです


『決意と一つの疑問』

 

 今、目の前でレイグ様が私が見覚えの無い少女に愛を囁かれてキスをされていた。

 

 少女の容姿はとても可愛らしく、赤みを帯び始めた陽射しに照らされている金色の髪は、見たことは無いけど本物の黄金のような美しさと鮮やかさを醸し出し。

 

 着ている良さげなローブに隠れて分からないけど、スタイルも良さそうだった、間違いなくおっぱいは大きい方、もう盛り上がってるから分かる、何がとは言わないけど

 

 一番印象的なのはその整った顔立ちの鼻の上にある僅かなそばかす、それがこの少女の印象を作っていると言っても良いかもしれない。

 

 この人が何者なのかは分かりきっていた、レイグ様の反応が誰なのか顕著に表していた、今は驚愕に目を見開いているけど、その前に、この人に唇を奪われる前に見せた「何故ここに?」と言いたげな驚愕に震えた仕草、再会を喜ぶような歓喜に溢れた微笑み。

 

「(この人がアリスさん····)」

 

 アリスさんの表情が見えた時、思わず同性の私でさえもドキッと高鳴った気がした。

 

 隣にいるカーラも、その心中は察することは出来ないが息を飲み込んでその表情を凝視していた、それほどに、それほどまでに。

 

 アリスさんはレイグ様と口づけをしたまま、情愛に溶かされ、切なさを含んだ目でレイグ様を見つめていた、まるで今も過ぎていく時間の一秒すら惜しむように。

 

 何故だろう、愛しい人が自分以外の、それも知らない少女に唇を奪われているのに。

 

 私はこの時間が少しでも続いて欲しいと思ってしまった、嫉妬はしたし、内心ふざけるなとも思ったりもした。

 

 それでも、切なそうな目をしているのに、幸せそうでもあるアリスさんに対して邪険に扱うような気持ちいいにはなれなかった。

 

 それはもうアリスさんの心情が分かってしまうぐらいに、だ、目の前にいるアリスさんが「あっち」のアリスさんだったら、もし本当にそうならば。

 

「っ──」

 

 どういった思いで、「こっち」に来たのか、必死だった筈だ。

 

 愛しい人が、傍から消えていってしまう、想像しただけで体に震えが走った、アリスさんがこっちにどうやって来たのか分からないけど。

 

 見てしまったのだろう、魂が入っていない人形のように変貌してしまったレイグ様の姿を。

 

 だからか余計に、アリスさんとレイグ様の間に入ろうとは思わなかった。

 

 

 ───でも。

 

 

 思ってしまうのだ、そこは渡さない、渡したくないと、アリスさんとレイグ様の再会を讃えてあげたい気持ちと、そこは私の居場所なのだと声を張り上げたい独占欲に似た何かが私を縛り付ける。

 

 そんな葛藤を抱く私は、今も一方的にキスをしている

アリスさんと目があった、端正な顔に、金色の髪に良く映える碧眼が私を捉えた。

 

「──あ」

 

「───」

 

 アリスさんは、ゆっくりとレイグ様から離れ、私とカーラに体を向けた、その目にはどんな思いが含まれているかは分からない。

 

 敵意かもしれない、同じ人を愛してしまった私達に対しての、レイグ様の魂を連れてきてしまったこの世界に対しての

 

 寂寥にも感じる、まるでこれからまた別れが来るのが分かっているかのように、大切な人の傍にいることが出来ない事が分かっているかのように。

 

 ──それでも

 

「よろしくね」

 

 安心したような声で、そう呟くのが聞こえた、安心と言うには複雑な感情が入ったような声だったけど、それでも微笑んだ笑みでそう呟いた。

 

 レイグ様は、そんなアリスさんを見て、寂しげな笑みを浮かべて「またなアリス」と呟いた。

 

 レイグ様がそう言ったのが聞こえたのだろう、アリスさんは嬉しそうにレイグ様に振り返って。

 

 

 

 ボンッと聞こえて来そうな勢いで顔を真っ赤にした、唇を手で覆い隠しながら、レイグ様と私達を何度も見てわなわなと震えている。

 

 纏っていた空気がガラッと変わったのが、見て分かる程に顕著だった。

 

「あー、その、いきなり熱烈な挨拶だな」

 

「───ぃいいいやあああああああ!!!!」

 

 気を遣ったレイグ様がフォロー(になってない)をするために気軽な感じで「戻った」アリスさんに声をかけるが、逆に止めとなったのか、アリスさんは両手で顔を覆ったまま、走って逃げてしまった。

 

 「あっ·····」と言ってアリスさんが走り去っていった方向に手を伸ばしたレイグ様の姿は、何故かもの悲しかった。

 

 再び沈黙が訪れた、カーラはどう声を掛けようか迷っているし、いつも余裕のあるレイグ様も、内に溢れる感情をもて余しているように思えた。

 

 逆に私は何故だか不思議なくらいに落ち着いていた、確かに現実味の無い展開の連続に何とも言えない気持ちにもなるし、妙に浮き足立つような感覚もある、矛盾しているような感情を他所に私はレイグ様の元に歩みを進めていた。

 

 「よろしくね」、アリスさん、その言葉後悔しないでくださいね?

 

 

「レイグ様」

 

「っあぁ、悪いぼーっとして──」

 

 レイグ様が喋り出すのも構わずに、不意打ち気味にレイグ様の唇に私の唇を重ねる。

 

 流石にアリスさん程の熱いのは出来なかったけど、これは意思表明、アリスさんに対しても、カーラに対しても、レイグ様に対しても。

 

 再びレイグ様の目が驚愕に開かれた、その頬も赤く染まっているように見える。

 

 たったそれだけで、レイグ様が私を意識してくれているのが分かり歓喜が私の中で荒れ狂った。

 

 もう、アリスさんに操を立てるのは終わり、寧ろ譲歩した方です、レイグ様へのキスを邪魔すること無く見守ってあげたんだから。

 

「だ····りあ····」

 

 レイグ様も、確かに私は何時までも待つとは言いました。でも何もしないとは言ってませんよね?

 

 カーラも顔を真っ赤にしてるの可愛いけど、何もしないでいると私がレイグ様を独占しちゃうんだから。

 

 レイグ様は離れた私の様子から何かを感じ取ったのか

「マジか···」と小さく何度か呟いて、最終的に困ったような照れ臭いような笑みを浮かべて「お手柔らかにな」と懇願するように言ってきたので、思わず破顔してしまった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

「(あぁもう!どうして私はあんな事を·····)」

 

 一方、レイグ達から逃げ出したアリスは、使わせて貰っている宿に向けてトボトボと歩を進めていた、足取りは重く、しかし羞恥かそれ以外の何かが原因なのか、顔は赤く染まっており、あの感触を思い出さないように、勇者達への説教の内容も考えていた。

 

 不思議な感覚だった。

 

 あの広場に入って、レイグが倒されていた事、握手するレイグと勇者の元へ駆け寄り、勇者達を追い払い、魔法による遠隔通話であの場にいた憲兵達を動かして民衆を纏めたまではアリスもハッキリ覚えている、それは勿論アリスが自分の意思で行ったからである。

 

 でもそこから不思議な事が起きた、レイグの顔をはっきり近くで見た瞬間、アリスは確かに「自分の動きを自分が見ている」ような、妙な感覚に陥ったのだ。

 

 まるで意識が中に浮いているような感覚になり、自分がレイグの唇を奪う時にも、その場面をどこか他人事に見えてしまったのだ。

 

「(······でも·····)」

 

 

 階段を登る手前でアリスは来た道を振り返った、時刻も夕方に差し掛かり、子供が友達に別れを告げ家に入っていく姿や、主婦らしき女性が籠に野菜や魚が入った籠を手にして奥に進んでいく光景が映るが、アリスは違うどこかを見ているようだった。

 

 難しい顔をしたアリスが考えているのはやはり幼馴染みであるレイグの事だった。

 

 しかしその顔に浮かぶのは羞恥でも、再会への喜びでも、折角会えたのに一言も話せなかった事にたいする寂しさでもない。

 

「(·····やっぱり違う)」

 

 ほんの小さな疑問だった。

 

 落ち着きつつある頭がアリスに一つの疑問を産み出した、そしてその疑問は広がっていく。

 

 自分の記憶にあるレイグは、あんな同年代の少年少女ではなく大人びた雰囲気を出していただろうか。

 

 ──違う、約半年と言う期間があってもあそこまで、「まるで別人のような」雰囲気は出せない····と思う。

 

 口づけをした時に、離れた時、レイグはあそこまで落ち着いていられるか?

 

 ──違う、良くも悪くもヘタレなレイグが、ちょっとのボディタッチでも顔を真っ赤にしていたレイグが、あんな優しい顔で落ち着いた表情を出せる筈がない。

 

 

 

 

 

 レイグが自分に笑い掛ける時、あんな「似合わない」大人びた苦笑いを浮かべていただろうか、記憶を掘り返しても、幾ら振り返っても浮かぶのは。

 

 

 ──ハハッ、大丈夫?アリス

 

 心配するような笑いも。

 

 ──相変わらずだなぁ、アリスは

 

 安心しているような笑いも。

 

 ──ありがとうアリス!僕大事にするね!

 

 嬉しそうな笑いも。

 

 呆れたような笑いも、照れ臭そうな笑いも、苦笑いも、くすぐった時に見せる苦し気な笑いでさえも。

 

 年相応にはにかむような、人懐こいような笑みだった筈だ。

 

「(······やっぱりあの変な夢は、只の夢じゃ····)」

 

 疑問が広がる反面、アリスは「先程の」レイグに見覚えがあった、それも最近の事である「あるスキル」が変わり始めた頃からか、アリスはある夢を見るようになった。

 

 奇妙な事にその夢に主に出てくる人物はアリスとレイグだけなのである、夢の中のレイグは自分が知っているレイグとは正に正反対だった、野性的な雰囲気に勝ち気な性格、自信に溢れた笑み、大人びたような苦笑い、先程のレイグはこの夢に出てくるレイグに似通っていた。

 

 レイグは勇者であるアレックスすら瞬殺してしまうような、冒険者最高ランク「SSSランク」の剣豪。アリスも「賢者の器」と言う似たり寄ったりの名前であるスキルを持っていて、レイグと2人だけで怪物暴走(スタンピート)を沈めたりしてしまうような破天荒ぶりを夢で発揮していた。

 

 ある時はあの最強種である竜を倒し。

 

 奴隷を解放しては、その奴隷に「ご主人様」と呼ばれ冷たい目をするアリスに頭を抱えるレイグを見て。

 

 様々な事をしながら夢に出てくるアリスとレイグは、アリス自身が羨んでしまう程に幸せそうに日々を過ごしていたのだ。

 

 でもこの夢は、毎回同じ終わりを迎える。

 

 どこかの都市、それも王都のような大都市でアリスがその日の夕飯は何にしようと悩んでいる所に、どこかの王国エンブレムを着けた騎士甲冑を着た人が慌てた様子でアリスの元に訪れる。

 

 そこで光景は変わり、病院のような場所に繋がる、病院の中は慌ただしく、アリスが走っていても誰も咎める人がいない程だった。

 

 アリスは今にも泣き出しそうな顔をしていて、その光景を見ているアリスにも不安を植え付けてくる。

 

 やがて一つの扉の前で止まり、アリスは戸惑うこと無くその名を叫びながら扉を開け放ち───

 

 気付けば真っ暗な闇に包まれた世界にアリスはポツンと立っているのだ。

 

 足下に白い花弁の、アリスが好きな花を一輪咲かせて。

 

 夢はいつもそこで醒めて、アリスは複雑な思いがありながら、反対に体の調子は良くなったのである。

 

「(──やっぱり、話さなきゃ、もうこの時間だし流石に街を出ていったりしないよね?)」

 

 そう思いながらアリスは階段を登り始めたのだった。

 





カーラ「ちょっ!?」ガタッ
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