Fate/beyond【日本史fate】   作:たたこ

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11月30日⑥ 兵は凶器

 明からの電話を切った後、一成はつい先ほど準備をしたリュックサックを背負うと、勢いよくアパートを飛び出した。

 

 春日駅から二駅離れた駅から新幹線に乗ることができる。そこまでは普通の電車で向かった。

 新幹線に人はまばらだ。土曜日の夜、都市から離れる方向に向かう新幹線に乗る客はそう多くなかった。

 自由席は座り放題で、一成と実体化したアーチャーは隣の席に腰かけた。ちなみに新幹線の代金は一成の分しか払っていない。一成とアーチャーは真っ暗になった空と景色を眺めている間に、新幹線は春日をどんどん離れていく。

 到着するまで時間もあり、一成は念話で(他の乗客に聞かれないように)アーチャーにキリエから聞いた春日の聖杯戦争についての話を説明した。

 

「ほう、話は大体わかった。だが、そなたは実家に戻ってどうするつもりじゃ」

「アインツベルンの言ってたことを確かめたい。そして、なんでそんなにまでして聖杯戦争するのか聞くんだよ」

 

 土御門家の真意は実家に聞くしかない。自らの妻――一成にとっては祖母――を人柱にしてまで聖杯を願う。魔術とは、魔術師とは、そんな非人道を良しとするのか。

 

 しかし、アーチャーは冷ややかなまでに冷静に問うた。

 

「聞いてそなたはどうするのだ」

「どうするって、」

「そなたは根源に至ることが目的と言った。だが土御門の家が本当にそなたのいう「非人道」であれば、そなたはそれでも根源に至るために戦うのか?」

「……それは」

 

 枯れ行くわが魔導の家を繋ぎたいという気持ちは本当だ。だが、人を生贄にしてまでかなえたい願いかと聞かれたら、素直に頷くことができない。何より自分の家がそのようなことを許容してきたと信じたくもない。しかし、アーチャーは戸惑う一成を納得気に眺めた。

 

「先のアインツベルンの姫君との話を聞いた故に合点はいったがな。祖父からは魔術を仕込まれ、土御門の伝統を教えられる。かたや両親は魔術などしなくてよいと言う。なるほど、矛盾したことを聞き続けて育っただけあるわ。だがな」

 

 普段のふざけた態度は微塵もない。暗闇に落ちた景色を背に、アーチャーははっきりと一成に告げる。避けては通れない道を指し示すように。

 

「もし根源を諦めるとしても、そなたは自分で願いを決めなければならぬ。魔導が非人道的であれなんであれ、そなたはこの戦争に身を投じたマスターじゃ」

「……おう」

 

 己の家と、魔導と、願いを見つめなおさなければならない。時間のない聖杯戦争の中でも、それをしなければ一成は戦えない。いつも両親からも祖父からも友からも、先走りすぎだと良く言われる。

 多分、また自分は先走ってしまったのだろう。だが、まだ取り返しはつく筈だ。

 

「……あとさ、ちゃんと親に言う。事後承諾になっちったけど、やっぱり、内緒ってのはよくねーよな」

 

 自分の力でやりたいなどと思っていたことも今となっては馬鹿馬鹿しい。つまらない意地や、心配をかけたくないということよりも優先することがある。アーチャーは手持ちの扇で一成の頭を叩いた。

 

「馬鹿者、当たり前じゃ。黙って旅行に行ってきたのとは訳が違うぞ。心配かけたくないと言うが、いきなり息子が死体になってきた親の気持ちを考えよ」

「……お前、本当に親みたいになってきたな……」

「そなたがあまりにも不甲斐ないからだ。全く仕様のないマスターよ」

 

 珍しく不機嫌なアーチャーは、腕を組んでそのままそっぽを向いてしまった。一成も新幹線が目的地に到着するまで、暫し微睡に身を委ねることにした。

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「他のサーヴァント同士の戦いを観察する」との目的の為、今宵、アサシンと悟は春日の街に打って出た。アサシンは黒の雨合羽をすっぽりとかぶり、派手な格好を覆い隠している。

 悟はワイシャツにGパンの上に黒いコートを着ている。アサシンに抱えられ、悟は夜の街を走る。ビルからビルへ、屋根から屋根へひた駆けるアサシンの姿は子供の頃に憧れた忍者のようだ。

 

「……お前って本当に人間じゃなかったんだな……」

「気づくのが遅せぇ!!」

 

 本格的に「魔術」なる世界に足を踏み込んでしまったことが実感され、悟は身を震わせた。ついでにアサシンに頭を叩かれそうになった。

 

 眼下を流れていく家家の光。まだ午後六時過ぎで家族のだんらんに相応しい時間帯だが、その光は今の悟には毒だった。かつて、自分もあのような光の中の一つだったはずなのに、もう取り戻せない。

 

 何でも願いがかなうと言う「聖杯」――。悟に明確な願いがあったわけではない。

 

 だが、そんな奇跡の代物を手に入れれば、昔に戻れると夢想した。時を巻き戻して、全てをやり直すことができると。

 

「……アサシン、交戦中のサーヴァントを見るって、当てがあるのか?」

「ああ?んなもんねーよ。巡回してサーヴァントの気配を探るくらいしか思いつかねー。そもそも今日、交戦が行われるかもわかんねーしな」

「そ、そんな適当な感じなのか!?」

 

 再びアサシンのげんこつが頭に落ちてきた。「どんなサーヴァントが呼ばれてどんなマスターがいるのかも教えてもらえるわけじゃねーんだ。テメーで調べるにゃ足使うしかねーよ!」

「何刑事ドラマみたいなこと言ってんだ……」

 

 とはいえ、上空から春日の街を眺めるのはそれだけでも楽しい。しかし、何時もの春日も街と比べて何か暗いような感じがする。最近は夜、住宅街も水を打ったように静まり返り、まるで魔物が外を通っているかのように家に人々は閉じこもる。

 実際、最近の春日は不穏だ。医療事故、通り魔事件、連続惨殺事件とただならぬ出来事が次々と起こっている。今日、ネットを徘徊すると春日市にまつわる都市伝説の類が腐るほど出ていた。

 

「なぁ、アサシン。最近春日で急に妙な事件が増えたんだが、それってこの戦争に関係あるのか?」

 アサシンは空いた手で顎を撫でた。「……わかんねーな。だが無関係ともいえねー。サーヴァントに人間の魂を食わせて強化するヤツもいるかもしんねーし」

 

 自らの願いを叶えるために人の命を犠牲にする。悟は憤りを感じるが、自分もその殺し合いの中に足を踏み入れている人間だ。関係ない人を殺そうとは思わないし思いたくもないが、戦争を戦うと決めた時点で、人の命を踏み台にしようとしているのではないか。

 

 悟が悶々としていることを知ってか知らずか、アサシンは駅前近いフィットネスクラブビルの屋上で止まり、肩を落とした。

 

「……しかしいねーなー。景気よく宝具でもぶちかましてくれりゃわかりやすい……んん?」

 

 アサシンは鼻をひくつかせ、春日駅から北の方面を見た。悟には何の変りもないように見えるが、サーヴァントは異変を感じている。

 

「おい、交戦中とは思えねーがサーヴァントがいるぞ。このまま手ぶらで帰るのも何だし、ちょっとやってみっか」

「え!?やってみっかって、俺たちが戦うのか!?」

「何バカ言ってんだ、俺たち以外に誰がいるんだよ。安心しろ、俺は弱いが逃げ足にかけては最強だ」

 

 謎の自信で胸を張るアサシンだが、悟は不安をぬぐえない。不安をぬぐえないが、悟は聖杯が欲しいと願っている。悟はサーヴァントに念を押した。

 

「……危なくなったら逃げるぞ」

「当り前よ。あと戦闘中は俺をアサシンって呼ぶなよ。昼間辞書めくってたらいいの見つけたから、ガンナー(射手)とでも呼んどけ」

「は?何でだ?」

 

 アサシンは得意げにチッチッチと指を振った。「サーヴァントは真名を秘匿するのは、真名から弱点を割り出されるからだつったろ。だからクラス名で呼ぶんだが、クラス名でも剣の伝説~とか弓の伝説~持ちとかわかんだろ?だったらそっちまで隠しちまえって思ってな。お前さんはハイパーな初心者でもあるしな」

「……そういうもんか、ガンナー」

「そういうもんだ。ま、俺自体は目立つ方が性にあってるんだがな」

 

 アサシン、もといガンナーの服装は歌舞伎役者のそれに近いので確かにそうだろうと思われた。

 聖杯戦争についてはアサシンの方が圧倒的に詳しいのだから、悟は大人しくそれに従う。

 

 

「じゃ、行くぞ。舌噛むんじゃねーぞ悟!!」

 

 高所の風が吹きすさぶ。アサシンは闇から闇へ走る忍びのように音もなく春日の街を疾駆する。走りたどり着いたのは、春日駅前の高層ホテル「春日イノセントホテル」のはす向かいにあるオフィスビルだ。今日は土曜、かつ不穏極まる情勢の為、残業で残る人間は幸いにもいないようでどの階も電気が消えている。

 軽々と屋上に着地すると、アサシンは悟を抱えていた腕をぱっと離した。悟はそのまま屋上と熱烈なキスをかます羽目になる。

 

「グエ!!」

「ったく決まんねー野郎だな」

「お前のせいだろうが!……っ!?」

 

 アサシンと悟の立つ屋上の端とは、真逆の端。距離はおよそ五十メートルあるだろう。大きな男がいることが、暗い中でもわかる。三メートルほどの棒状のもの――先についた刃が月光を受けてきらめく――槍を手にした男は勢いよく振り向いた。

 

「……あれが、サーヴァント」

「俺もサーヴァントだっつの」

 

 アサシンの軽口も、耳に入らない。距離を隔てた男の放つ圧倒的な威圧感が、悟の足を、心を竦ませた。相手は今殺そうとしているわけではないのに、それでも放たれる闘気が悟の全身を縛るほどの畏怖を抱かせる。長い槍を持った男は、立派な体躯に似合いの朗々たる声で名乗りを上げた。

 

 槍を軽々と振り回し、切っ先を違わずアサシンに向ける。

 

「応応、名のある英霊と見えるが、何者だ!儂はランサー!いざ、尋常に勝負!」

「俺はガンナー。ランサー……げっ」

 

 前の宣言どおり、偽りのクラス名を口にするアサシン。途端、アサシンは苦虫をかみつぶしたような声を上げた。それには気づかず、ランサーは効きなれないクラス名に当然の如く聞き返す。

 

「ガンナー!?そんなクラス聞いたことないが!!」

 

 アサシンはすぐに苦い顔を元に戻した。「エクストラクラスってやつだぜ!ま、既存のクラスに収まる俺様じゃねぇってこった」

 

 自分で激弱と言っておきながら、自信たっぷりのアサシンである。黒い雨合羽着用中とはいえ、中身の歌舞伎役者の格好知っている悟には、見栄を張る姿は堂に入って見える。

 歌舞伎で張る、もとい切るのは見得だと突っ込むのは野暮である。

 

「ほう!面白い。ならばガンナーとやら、手合せ願おう!!」

「嫌だ!」

「ならいざ尋常に……っておい!?」

 

 威勢よく返事を返されてしまったが、アサシンはランサーの挑戦を却下した。ランサーはあきらめることなくその槍を振りかざした。

 

「む!なら何故お前たちはここに出てきたのだ!」

「いや、ちろーっと他の陣営観察してーなって思って出てきただけ。それに俺、負けるって決まってる勝負は……するときもあっけど、今はそういう場合でもねーしな」

 

 アサシンは元々サーヴァント戦向きではない。どのサーヴァントが出てきても、偵察程度の戦いの後自慢の逃げ足で逃走する心づもりであった。そしてこのランサーを見た時、「あ、こりゃ無理だわ」と感覚でわかってしまった。

 悪戯に刀を交えては一刀のもとに退けられるのは、火を見るより明らかだ。

 後ろに控えていた悟は、小声でおそるおそる口を開いた。

 

「おい、ア、ガンナー、アレ、そんなに強いのか?」

「あん?パラメータ見りゃお前にだって……ってそれすらわかんねーのか。まあそりゃあとで……とにかく、あれは白兵戦、特に一対一の戦闘に置いて右に出る奴はいねーな。つか、俺あれ誰だかわかったわ。そんで、無理」

 

 それにあの纏う魔力を見れば、おそらくは十全な魔術師をマスターに持っていることがわかる。圧倒的にあちらが有利で、アサシンは圧倒的不利。生前のランサーを思えば正々堂々、戦いを求めてここにいることが予想できるため、マスターによる不意打ちを好まないだろうが、彼のマスターが見えない以上その危険性もある。アサシンは悟の腕を強く掴んだ。

 

「じゃ、そういうことで!俺は帰る……!」

 

 しかし、ランサーはそれを許さなかった。その神速の如き一撃を回避しえたのは、アサシンの持つ高い敏捷ゆえだった。悟は何が起こったかすらわからず、気づいたらアサシンに襟首を掴まれて引きずられていたありさまだった。

 五十メートルあった距離はいつのまにかなくなって、僅か十メートルほどの離れてランサーが立っている。

 

 

「……そうつれないことを言うな、ガンナーとやら。英霊同士、出会えば戦う運命だろう」

 

 ランサーの声に先ほどまでの朗らかさがなかった。しかしランサーはすぐに口角を釣り上げて、今度は呼びかけにアサシンが答えることさえ求めなかった。

 

「……!クソが!」

 

 アサシンはどこからともなく――瞬時に雨合羽の袖から黄金造の太刀を二本取り出し、構えた。悟はそれを見たのが最後で、次の瞬間には再び首根っこを引っ掴まれたと思えば、真っ暗な闇に放り込まれた。

 

「うわああああああ!!」

「るせーなお前は!大人しくしてろ!」

 

 アサシンは騒ぎ立てる悟を自らの宝具である褞袍の中に放り込んだのだ。その最中に、ランサーがあっという間に接近してその手がアサシンの雨合羽を剥ぎ取りにかかった。

 

「まずはその姿、見せてもらおう!」

 

 しかしランサーの手は空を切る――いや、アサシンのいた場所には代わりに丸太が忽然と現れていた。ランサーの手は丸太を掴むだけ――しかし、歴戦の武士たるランサーは異変に気付く。

 

 アサシンは背後にいる。眼にもとまらぬ速さでランサーは背後へ振り返る。雨合羽をまとったアサシンが宙に浮き、その両脇にはずらりと銃――火縄銃が浮かんでいる。

 

「発射!」

 

 アサシンの掛け声と共に、火薬の匂いと煙と火花が炸裂した。耳を裂くような破裂音が轟く度と同時に改造されている銃は煙を掃出し、二人のサーヴァントを靄の中に隠す。

 

 槍を振るう勢いで煙幕を散らしたランサーが、猛烈な勢いでアサシンに迫る。其の顔は先ほどまでとは打って変わって喜びににあふれ、猛禽のように笑っていた。

 しかしアサシンはそれに付き合わない。

 

 彼は屋上の端から跳ぼうとした、が、それよりもランサーの方が速い。槍兵の腕が暗殺者の雨合羽を掴み、それが破れて暗殺者は屋上から自由落下する。

 降下するエレベーターのエレベーターがない感覚――といえばそのままだが、空に放り出されたアサシンはは真下に映った街灯と道路を見た。

 

 顔を上に向けて振り返ったアサシンが見るのは、同じく屋上から飛び降りて迫るランサーだ。やはりその顔は笑っていて、こうして干戈を交えることが嬉しくてたまらないことが良くわかる。

 そして、やはり先ほどの銃撃は傷一つ彼の英霊にはつけられなかった。

 

 

(ま、てめーの願いなんて想像がつくぜ、戦国最強)

 

 生前のランサーを知るアサシンからすれば、この喜びようも納得がいく。東にランサーありと勇名を馳せたことは、生前から知っている。

 されど、その晩年は寂しいものであったことも英霊となった今、わかるのである。

 

 片や勇名を馳せ主人に忠誠を尽くし、生前の功績で英霊の座についたランサー。方や一介の庶民に生まれて一盗賊として生涯を終え、生前の功績ではなく庶民の想念によって英霊と化したアサシン。

 同時代を生きたとはいえ、その在り方は全く異なる。

 

 アサシンはにやりと笑って天を仰いだ。「仕方ねーな!ちょっとだけだぜ!」

「そうこなくては面白くない!」

 

 アサシンとランサーはビルの側面を駆ける。アサシンは黄金の太刀を片手に、もう片手にはクナイを持って。ランサーは自慢の槍を掲げて。地面に垂直とはいえ、ビルという足場があれば彼らは落下するばかりではない。ビルの側面を舞台に彼らは己が武具で火花を散らす。

 

 もちろんアサシンは逃げる気なのだが、仮に戦うとするなら平地よりもビルの壁面のような、トリッキーな場所の方が性に合っている。

 

「むん!」

 

 ランサーの槍は想像を超える冴えでアサシンを屠るべく走る。アサシンは太刀とクナイをしまうと、代わりに改造火縄銃に持ちかえる。ビルを駆けてランサーの上を取り撃つ。使い終われば褞袍の中から別の銃を取り出して連続射撃を行う。ビルの壁面は屋上と同じように煙幕に覆われるが、銃弾を槍の一薙ぎで振り払うランサーには効き目が薄い。

 

(アイツと近づいてやりあうのはバカだな)

 

 それでも時間稼ぎにはなる。アサシンはビルの窓を突き破りオフィス内に転がり込んだ。すぐにランサーが追ってくることは目に見えていたが、ランサー相手に後手後手に回ったらそれこそアサシンは死にかねない。ランサーはまだ戦いを楽しむ、という段階なのだ。

 

 アサシンは整然としたオフィス内のデスクや植物を散らして奥へと走る。ランサーからすれば逃げられているように感じるだろう。

 

「待たんかガンナー!!」

 

 早くもアサシンの逃げ込んだフロアに突窮してきたランサーは、所構わず槍で障害を薙いでいく。あの槍はおよそ六メートルから一メートルの長さにまで、自由自在に変化する。

 厄介で直接やりあうにはいかないのだ。

 

 

「直接やりあいたいならセイバーにでもあたるんだな!残念ながら俺はガンナーだ!」

 

 アサシンが軽口を言い指を鳴らした瞬間、ビルから爆音が轟いた。

 

 

 

 

 

 

 

『おい!ガンナー!ここは何だ!』

『大人しくしろって、俺の宝具の中だ。家に戻ったら出す』

 

 アサシンの宝具『金襴褞袍(かぶきのいしょう)』は、生前・死後の伝承にあるアサシン盗品の盗品を納める蔵に繋がっている。アサシンは袖の中から貯蔵されているものを引き出して戦う。先ほどの黄金の太刀も火縄銃も丸太もそれである。

 

 バビロニアの英雄王の宝具の一つに同種の蔵があるが、アサシンの蔵は性質を異にする。

 

 英雄王の蔵は「貯蔵する」ための蔵だが、アサシンの蔵は「一時保管」の蔵である。「全ては天下の廻り物」だとするアサシンの蔵には、溜め込む性質がない。

 ゆえに、意思のあるものを蔵に入れたとして、「出たい」と思えばすぐに出られる。

 

 

『それにお前一体あのランサーと何やってたんだよ!』

『いやちょっと相手をしたやっただけだぜ?』

 

 宝具の中に入れられると外界とはシャットダウンされ、様子は全く分からなくなる。確かに悟は不安だったことだろう。ビルの中に戦場を移したアサシンとランサーだが、先に乗り込み焙烙玉(爆弾)を仕掛けたアサシンが爆発に乗じて脱出して逃げたのが顛末である。

 今頃あのビルは火災騒ぎになっていることだろう。しかしランサーがあれ如きで倒れるとは思えない。

 

 とにかく急いで悟のアパートまで戻り、宝具の中から悟を出した。夜はそろそろ暖房が欲しくなってくる季節で、アパートは寒い。

 畳に座り込んだ悟は、放心したようにどこともない場所を見ていた。アサシンが頭を叩くとやっと気づいたように振り返った。

 

「あ、ガ、アサシン」

「予想以上にヤバイやつだったからほとんど見れなかっただろーが、敵サーヴァントがどんなんかはわかっただろ。それに運が良かったな、ランサーは真っ向勝負大好きなヤツだろうし、アイツもまだ他サーヴァントの調査の段階なんだろうよ。戦うこと自体を楽しんでます感すごかったしな。まだ全然本気じゃなかった」

 

 アサシンの前マスターを殺したような謎のサーヴァントのように手段を選ばないサーヴァント・マスターであれば、呑気に悟を放っておいて戦うこともできない。

 その点ランサーと行き会ったのは、戦いを見せる上では悪いがまだ運は良かった。

 

「……あれが、敵のサーヴァント」

 

 今でも悟の手は小刻みに震えている。アサシンは悟に敵意を持っていないが、敵意を持つ敵のサーヴァントが、マスターが、悟を殺そうと襲い掛かってくるのだ。

 

「魔術さえも知らなかったお前ならそんなもんだろ。で、だ、」

 

 まだ呆けている様子の悟の前に腰をおろし、アサシンはその肩を強く掴んだ。

 

「あんなんが他にも五騎いるわけだ。お前はそれと戦うことになる」

 

 聖杯戦争。今宵の戦いなどお互いの力を見るくらいの小手調べに過ぎない。さらに戦いは過酷になっていく。その命を危険にさらしても、叶えたい願いがあるのか。

 悟は自分にもう一度問い返したが、答えは決まっていた。

 

「魔術とか全然わからないけど、俺は戦いたい」

「……マジでか」

 

 アサシンなら喜ぶだろうと思っていたが、なぜか予想外という顔をされて悟も戸惑う。しかしその表情はすぐに消え、暗殺者は眉間に指を当てて唸った。

 

「最弱のサーヴァントと魔術のマの字もしらないマスター。くー!これ以上弱そうな陣営はねぇな!」

「……お前、それは俺がマスターってのじゃいやだってことか?」

「いや別に。俺は応援するなら巨人より阪神派だから全然」

 

 アサシンは気分を切り替えるように咳ばらいをした。つかみどころのないサーヴァントは珍しく真摯な眼差しでいる。

 

 

「俺はサーヴァントだ。俺の人生は、もう終わった。今ここに呼ばれて願いを叶えるチャンスを与えられてるのは、ボーナスみたいなもんだ。現世を楽しんでみてーとは思うが、俺自身にそこまでの未練はねーんだ。だけどお前は違う」

 

 勿論、生前に大きな未練を残して、それを取り戻すべく聖杯をどんな手を使っても狙うサーヴァントもいる。しかしアサシンは違うと告げる。アサシンは自分自身の願いよりも、悟の願いを問う。

 

「お前の人生は今だろう。まだ三十いくつかで、先もあるだろ。その今と先を失うかもしれない危険をも背負ってまで叶えたい願いがあるなら、まずそれを聞かせてもらおうか」

 

 悟は息をつく。今でも思い出したくないことを、このサーヴァントに告げなくてはならない。それでも願いを掴むために、己が従者とともに戦うことを望んだ。

 狭いアパートに張り詰めていくのは、緊張と不安を孕んだ沈黙だった。

 

 悟の声は静かに、深い願いを告げた。

 

「俺はな、アサシン。過去を、やり直したい」

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

「逃げ足の速いサーヴァントよ!」

 

 ランサーは春日イノセントホテルの屋上で、不完全燃焼気味に文句を垂れた。はす向かい、先程戦場になったビルは今も灰色の煙を上げている。すでに鎮火されているようだが、これから警察などが乗り込んできて騒がしくなるだろう。

 

 ガンナーと名乗るサーヴァントは、今思えばセイバーから戦ったと聞いたアサシンと特徴が似ている。しかしアサシンは疾うに消えたはずである。となればガンナーは本当にガンナーなる者なのか。

 

(しかし、もう気配がない)

 

 煙幕を使っているとはいえ、敏捷さではトップクラスであるランサーから逃げおおせるほどの素早さを持っていた。それにガンナーはアサシンクラスのように気配遮断に類するスキルを所持しているのか、すぐに気配は杳として知れなくなった。

 

 ランサーはアーチャー、ガンナーと手合せをしたとはいえ、まだ偵察、の命令が出ている。全力を出して戦うまでに至らないことが重なりランサーは不満を溜めている。

 

「早く戦いたいものだな……待ちの時間と言うわけか」

 

 槍を消すと、さてこれからはどちらを見て回ろうかと思案する。西の住宅街は今日もひととおり回っていたが、特に異変はなかった。昼間の神父からの報告で、バーサーカーのマスターは病院に入院している娘と聞いていたランサーは、それを思い出し件の病院を観察していくことにした。

 

(やはり、街自体が沈んでいるかのようだ)

 

 住宅街だけでなく、栄えているはずの駅前も当初に比べたら活気がなくなっている。何か暗い影が春日の街全体を包んでいるような、錯覚。魔術師ではない一般人も、ここのところたて続いている怪事件に何かがおかしいと思っているのだ。

 

 ビルとビルを足場にして宙を飛べば、移動は早い。もとより人外の身である。春日総合病院近くのビルから、その大きな病院を見たランサーは一目で違和感を覚えた。

 

 住宅街を回った時も、人一人いないような感じを受けた。だが、病院は本当に誰もいない。生きている者の気配がない。普通、病院に明かりが多少はついていないとおかしいのに、完全に闇に沈んでいる。同時に、隠しようもなく濃い血の匂いが漂っている。

 

 ランサーはビルからビルに飛び移り、瞬間移動の如き素早さで病院の正面玄関へと着地した。

 その時、目にしたのは教会の神父とシスター――御雄と美琴の姿だった。二人とも相当急いでやってきたのか、息を切らせていた。

 

 

「おや、なぜお前たちがいるのだ」

「お前こそ何故――ああ、偵察をこなしていたのか」

 

 ランサーにも、二人の顔色から異常事態が察せられた。このどうしようもなく強い血の匂いの大本はこの病院の中であると分かっているのだ。三人は、言葉を交わすこともなくそのまま病院の中に足を踏み入れた。

 

 ランサーの予感は間違いではなかったと知れた。一階から病室を確認してまわったのだが、生きている人間がいない。病室に横になっている入院患者は、悉く殺人事件のニュースでやっていたように――ただの肉塊と成り果て、部屋を赤く染め上げていた。飛び散った血液と臓物が湯気をまだうっすら立てていることから、この惨劇が行われて時が経っていないことを示している。

 

 ナースステーションに勤務していた健康なはずの看護婦も、患者と同様に原型を失って死んでいた。病室はことごとく赤黒く、ナースステーションも同様で、あるべき病院の色が思い出せないほどの変貌である。巨大な力を加え、其れ任せに人体を破壊するバーサーカーの殺し方そのものだ。

 しかし、少なくとも既にこの棟にバーサーカーらしき気配はない。

 

 ランサー・御雄、美琴は自然と、生存者の捜索と状態の把握に努めるべく散った。そしてすぐにランサーと御雄は一階のナースステーションに再集合していた。

 

 むせかえるような血の匂いの中、自然とランサーは神父と言葉を交わした。

 

「……お前たちはなぜここに?」

「私たちが街に使い魔を放っていることは言っただろう?その中の一匹がここに異常な魔力を感知して、その映像を見たというわけだ」

 

 そういえば聖杯戦争による被害の後始末・神秘の秘匿は彼らの役割である。あまり魔術師の営みに詳しくないランサーは今更のように思い出した。この大惨事にもかかわらず、この病棟以外の人間はまだ誰も気づいていない様子だ。それは明らかに異状である。

 

 そのとき、病院正面玄関の自動ドアが開き、新たな人物が現れた。マスターである碓氷明を背負ったセイバーが、ものすごい勢いで滑り込んできて目の前で止まったのだ。

 

 

「マスター、着いたぞ」

「…うん、ありがとう」

 

 明はむせ返るような血の匂いに気分を悪くしたのか、白い顔のままセイバーの背から床に足を降ろした。彼女は神父から使い魔により急報を受けてここへやってきたのだ。

 

「……神父、これは」

「間違いない。この殺し方、場所をとっても――バーサーカーの仕業だろう」

 

 言葉もなく、沈黙があたりを包んだ。

 明は、半ばわかりきっているから聞きたくないと言いたげな顔で、問いを発した。

 

「……生きている人は?」

「中庭に倒れている者はまだ生きていたぞ。それに、ここ以外の病棟は普通だった」

 

 ランサーは少しでも慰めるように言ったが、それすなわちこの病棟内は全滅だということをはっきり示していた。

 

「……この異常事態を知らせない為に、この一棟にまるごと結界を張っているみたい」

 

 明は気丈にもいつも通りに答えた。その時、状況把握に出ていた最後の一人――美琴がようやく戻ってきた。いつも溌剌とした彼女の顔も今は青白く、そのくせ息は荒かった。

 

「ご苦労だった。三階はどうだったか」

「そ、それが」

 

 神父の言葉にもまともに返せず、修道女は震え声で闇に沈んだ廊下を指示した。ランサー、セイバー、明、御雄共に顔を見合わせたが、彼らはそろって三階へ急いだ。

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 見れば見るほど、この一棟の状況は酸鼻を極めた。生きている者の気配なく、そのくせ熱気が妙に漂っている。それはすぐ先ほどまで生きていた人間が大量にいたという事実であり、今は全てがいなくなったことを如実に示していた。明とて今更これしきのことで吐くほど軟にはできていないつもりだが、それでも気分が悪くなるのはどうしようもないことだった。

 病室内は阿鼻叫喚が広がっているが、廊下は病室内ほどではない。だが、病室から漏れて出た血と油が間違いなく、ここは地獄であったことを知らせている。

 

 美琴の後について、一行がたどり着いたのは三階の行き止まりであった。その行く手を塞ぐ壁を見た時、全員が言葉を失った。

 

 

 それはあくまで挑発的に、禍々しく。そして毒々しく、その存在を際立たせて。

 元は白かった壁に映える赤い色は、嫌がおうにも全員の目を引き寄せた。

 

 

「明日十一時 倉庫街で待つ ウスイアキラ」

 

 

 血液で綴られたその宣戦布告は、敵意と憎悪に満ちて明を指示していた。それを見て、再び全員が言葉を失った。ランサーやセイバーが明の様子を伺ったが、彼女の顔はいつもより遥かに悪いものの、その表情は変わらない。

 

 否、だからこそ。この状態を目撃して、何の変化もないことが奇妙だった。明は無言で壁に近づくと、まだ乾ききっていないその文字に、肉のかけらさえ貼りつけたその文字に触れた。

 

 

「……畜生が……」

「七代目。とにかく私たちはこの状況の処理をする。美琴、教会のスタッフを至急ここへ集めろ」

 美琴は急いで頷くと、その場を去った。明は一度頭を振ると、何事もなかったかのように神父に向かって振り返った。

 

「わかった。私も手伝うよ」

「助かる」

 

 神父は神父で電話でどこかしらへ連絡を取りはじめた。その時明は何か思い出したのか、慌てて携帯電話を取り出した。

 

「そうだ、土御門に連絡しないと」

 

 かなり慌てた状態で連絡をとり、半ば無理やり電話を切る形で話がおわった。明はセイバーをひっぱり、明日の十時半に集合と告げた。

 それから先ほどの挑戦状――壁に書きなぐられた血文字を調べている神父の下へ歩いた。

 

 神父も言うことがあるようで、明が話し掛けるよりも先に振り返った。

 

「……流石に褒賞とする令呪がない、と言っている場合でもない」

 

 まさか病院一棟を食い尽くす蛮行にでることを予想しておらず、神父は厳しい顔で言った。予想をはるかに超えた状態に二の句が継げない状態だ。とにかく他陣営の協力も仰ぐべく、信号弾を飛ばして知らせ、ハルカにも再度協力を要請すると神父は告げた。

 

 しかし、明は能面のような顔で、さらに低い声で言葉を放った。

 

「……無理にしなくてもいい」

「……何と?」

「アーチャー陣営とバーサーカーを倒すまでの同盟を結んだ。明日、倒しに行く。真名だってわかってる」

 

 ライダー陣営・アサシン陣営はなく、セイバー・ランサーは情報のやり取りをしている。そして今日アーチャーと同盟を結んだ。ここで他陣営に知らせるとしてもキャスター陣営しか残っていない。それにキャスター陣地でなければ力を発揮できないと思われ、強い助力とはなりえない。

 

 そういう意味で、明はしなくてもいいと判断した。

 

「……勝算は?」

「ない勝負はしないよ」

 

 明はくるりと踵を返すと、直ぐ近くの病室に足を踏み入れた。例にもれず一面の赤に塗れ、歩けばぬるりと人の油で滑りそうですらある。肉片となった死体を歯牙にもかけず、明は窓を開け放った。

 

「……人払いの結界が切れそう。神父、かけなおしておくよ」

「……ひとつ聞きたいのだが、お前はあのハルカ・エーデルフェルトについて何か思うところはないか?」

 

 唐突に神父はわけのわからないことを聞いてきた。ハルカに何か思うところがあるのか。あれは明の父とは親交があるようで、春日にやってきたこともあるそうだが、明のまだ幼いころであり彼女は覚えていない。

 

「……何でバーサーカー討伐協力に乗り気じゃないのかわからないけど、それ以外は特に……」

 

 神父は何か思案気に宙を睨んでいる。「今、影景は時計塔にいるか?」

「……どうだろ。所属は勿論そうだけど、周辺に出回っているかも」

 

 セイバーを召喚する前、戦争について詳細を聞くべく時計塔に電話をかけたが、父はいなかった。いつ時計塔に戻ってくるかもわからなかったため、手紙を出してその返答を待つということをしていた。

 

「何か聞きたいことでもあるの?」

「捕まらないのならばそれはいい。結界のかけなおし、頼むぞ」

 

 神父はくるりと踵を返すと、急ぎ足に階段を駆け下りていってしまった。明が窓から見下ろせば、神父と同じようなカソックを身に着けた者が複数人急ぎ足でやってくるのが見えた。

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 神父とシスターはこの事態の後始末をすべくそれぞれ動きだし、明もその手伝いをしている。現在この状況はサーヴァントにとっては戦の終わったあとであり、ランサーとセイバーは手持無沙汰であった。双方とも魔術にはとんと縁のない英霊であることもあり、することがない。

 しかし、それをいいタイミングとランサーはセイバーを壁の隅に引っ張った。

 

「……なんだランサー」

 

 ランサーは壁の挑戦状を示した。「お前、明日、この時間の通りに戦いに赴くのだろう?」

「そうに決まっている」

「お前のマスターがさっき言っていたが、アーチャー陣営と組んだのか」

「そうだ」

 

 ふむ、とランサーは思案気に顎を撫でた。

 

「……儂も混ぜてくれんか?」

「お前のマスターは協力しないと言っていたが」

 

 セイバーはランサーの言葉を全く予想できておらず、思い切り眉をひそめた。それはランサーのマスター・ハルカ=エーデルフェルトは対バーサーカーにおいて協力を拒んでいるからだ。

 

 そしてランサーとて本当に望むものは一対一、邪魔立てなしの尋常な勝負である――セイバーに協力する時点で一対二、さらにアーチャーもいれば一対三となり、バーサーカー戦は彼の望むものではなくなる。

 それでも、ランサーはこれだけの乱行を働くバーサーカーを放置したくない。最早バーサーカー陣営は尋常な勝負を望むべくもない殺戮者である。

 

「そうだ。だから、十全の活躍は約束できない。だが、偵察中に偶然行き会ったことにすればある程度役には立てる。このランサー、頑丈さには自信があるぞ」

 

 セイバーはランサーの目をじっと覗き込んだ。セイバーはランサーが質の悪いなにかではないことくらい最初から知っている。それでもサーヴァントは令呪の縛りからは逃れられない。

 

 ランサーが共に戦うとすれば問題は、ランサーがバーサーカーと戦っていることに気づいたハルカがどうするかだ。

 バーサーカーとセイバーが戦っているときに、どさくさに紛れてセイバーを攻撃する。これは可能性としては低い。何故ならセイバーを倒したところで、バーサーカーがいるのではその相手をランサーが一手に引き受けることになる。また、戦いが終わりバーサーカーが消滅した後にセイバーを襲うのでは、あまり割がよくない。同じ白兵戦サーヴァント同士、疲労度は同じ程度になるだろう。そして、セイバーのマスターもちゃんと令呪を残している。

 

 それに、人を食って強化されたバーサーカーを倒すことそのものは益になる。

 

 何故ランサーのマスターが共闘を断ったのかあまり把握しきれていないのだが、ランサーたちににとっても協力してバーサーカーを倒すことに損はないはずなのだ。セイバーは彼の願いに頷いた。

 

「……わかった。マスターには伝えておく」

「それは重畳!」

 

 ランサーは呵々と笑って見せた。そして、この場ですることのないランサーは早々と病院から立ち去り、セイバーは明が残っている為彼女を待つことにした。

 




こじらせてない系サーヴァント・アサシン 
敏捷:A+(普段はAで逃走時は+)

【宝具】
『金襴褞袍(かぶきのいしょう)』
ランク:E~B
レンジ:2~3 最大補足 ――
種別:対人宝具

スキル「無辜の怪物」の産物。
袖の中が蔵のようになっており、何でも入れておくことができる。主に収納されているのはアサシンが生前盗んだ物品の数々。
意思のある生き物でもサーヴァントでも人間でも入れられる(しかし内部から外を見ることはできず、また蔵の中の環境は名のある逸品からゴミまで様々にとっちらかっており、居住性は最悪)
仮に現世で手に入れたものをを収納したまま現界を保てなくなった場合、座に戻る直前に異物として吐き出される。
某英雄王のそれとは違い「溜め込む蔵」の性格がない(「全ては天下の廻り物」「宵越しの金は持たない」というアサシンにとって、溜め込むことが意味を持たない)ため、入れられたモノが意志を持つ生物だった場合、「出たい」と思えばすぐに宝具から出ることができる。
また、あまりに長い間保管しかつ使用していないといつの間にかその物品は消える。どこに消えるのかはアサシンにもわからない。
収納物的にゲートオブバビロンの下位互換四次元ポケット。

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