チームが変わり始めた日
舞台はアメリカ。マイナーリーグのチームであるナチュラルグリーンズに所属している俺は新島冬矢。この国の自己紹介に倣うなら、トウヤ・アラシマと言うべきだろうか。
俺は高校卒業でプロの世界に入り、今ではマイナーリーグとはいえアメリカで野球をやっている……やっているんだけど、今では最早メジャーリーグに昇格は夢のまた夢。チームも下位クラスを抜け出す事すらままならない。グリーンズはそういうチームだ。
(まぁそんなチームでくすぶってる俺も紛れもない産廃な訳だが……)
積み重なるのは年齢だけで、実力の方は段々と衰える一方だ。
「今日はいっぱい飲むぞー!トウヤも来るか?」
「……遠慮しとくわ。なんか酒の気分じゃないし」
「そうか?じゃあまた明日な!」
「ああ……」
チームメイトも酒が娯楽になっているような始末。その内に問題を起こしたりしないだろうな……?
「トウヤ」
「ボス……。どうしたんですか?」
ふとグリーンズの監督が俺を呼び掛ける。監督はチームからはボスと慕われているが、今のチーム状況からだと悪い意味でしか捉えられないな……。
「なに、オーナーがトウヤをご指名だ。何かやらかしたんじゃないだろうな?」
「まさか!やらかす程試合に出た覚えがありませんよ」
「それもそうだ!」
俺の皮肉もボスには通用しないようで、内心溜め息を吐きつつ、オーナーの元へと行く事に……。
所変わってグリーンズ本部。ノックを忘れずに……。
「オーナー。トウヤ・アラシマ、入ります」
「許可する」
グリーンズのオーナーはクールな女性で、凍てつく視線が特徴的だ。何年経ってもその視線には慣れないぜ……。
「それでトウヤ・アラシマ。君を呼び出したのは他でもない。今日からウチのチームに入る選手の面倒を見てもらいたい」
「へ……?俺がですか?」
「そうだ。チームの監督の話によれば、今の君は『いてもいなくても変わらない』そうじゃないか」
「うぐっ……!」
実際ボスやチームメイトにも俺の存在意義を唱える声がよく聞こえる。ここ2、3年はそれが顕著だ。
「……正直引退して日本に帰る事も考えていますよ。俺の実力でアメリカだなんて、到底無理な話だったんです」
「ふむ……。まぁ君がそう決めたのなら問題ない。だがその前に1人の新人を教育してもらいたい……という訳だ。君と同じ日本人なのだから、ある程度壁はなくなると思うのだがね?」
この圧……。俺に断りの選択肢がないな?
「……了解しました。引退前の最後の仕事だと思って引き受けます」
「そう言ってくれてなによりだ。では件の選手を呼びに行ってくるから、掛けて待つと良い」
そう言ってオーナーは新人とやらを呼びに行った。
(引退か……。実家の畑を耕すのも悪くはないかもな)
実家は農業をしていて、野菜や果物を作っている。昔は主食のように食べていたっけか……。
ガチャッ!
「待たせたな」
「そちらにいるのが……?」
「ああ。今日からナチュラルグリーンズに所属する新人だ。自己紹介を頼む」
オーナーの横には1人の女性が……。まだ高校生くらいじゃないのか?
「初めまして!今日からグリーンズに所属するカナタ・カザナギです!よろしくお願いします!」
このカナタ・カザナギ(風薙彼方)との出会いがチームを、俺の運命を変える切欠になろうとは、この時の俺は知らなかったのだ……。
(0)アンケート埋まらなかったので、投稿延期……。次回の投稿3月15日予定(少し投稿頻度を上げるかも?))は……?締め切りは投稿予定日の3日前
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