ツイッターで開催された天華百剣二次創作企画、禍憑交換合作より
波風さんのオリジナル禍憑を題材にしたSSです!

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禍憑交換合作~掛根無編~

某日.観察方からある報告書が届いた.

報告書によると、街道に禍憑が露店を開いている可能性があるとのことだ.

彼がそう判断した訳も書かれていたが、なんとも突拍子もない話だ.禍憑が店を開くという話は聞いたことがない…

確かにひょっとこの面を被り、異常なまでに安い商品を売る露店商が怪しいのはわかるが、

これを禍憑によるものだと断定するのは危険だろう.

「だが観察方がわざわざ報告すべきと判断したのだから、念のため調査はするべきか」

俺は報告書を机に置き、軽く肩を回した.

今日は誰が時間あるんだっけな…

□□□

この日は日差しも暖かい、穏やかな買い物日和である.

水心子正秀は茶房の消耗品を仕入れに行き、ちょうど帰ったところであった.

「Im back. ただいま戻りました、先輩!」

「あら?水心子じゃないの、おかえりなさい.買い物どうだった?」

彼女を迎えたのは中庭で稽古中だった城和泉正宗だ.

余談だが水心子は城和泉のことを先輩と呼ぶのが普通になっている.

「それがですね先輩!So cheap.どこもとても安く売ってたんですよ!」

「安く?いつものお店で買ったのよね?」

城和泉が刀を納めつつ不思議そうに尋ねた.

実際仕入れ先である店は店主の意向で早々値引きするような店でもないのだ.

「In fact. 実はですね?近所に新しくできた露店に対抗してるみたいです.その露店が極端に安いらしくて…」

「ふーん、そんな事もあるのね…」

「…水心子、その話もう少し詳しく聞いてもいいか?」

「Of course 勿論です…って主さん⁉」

いつの間にか二人の横に隊長が立っていた.

「私は気づいてたけどね…それより、何か気になることでもあるの?」

「城和泉の言う通りだ.実はな…」

隊長は報告書の件を二人に話した.そして水心子の話していた露店が報告書の“それ”なのではないかと考えが至るのにそう時間はかからなかった.

「…禍憑が露店を?そんな事ってあるのかしら…」

「Thats incredible 信じられない話ですが、本当だとしたら危険です!今すぐ調査に行きましょう!」

「最初からそのつもりだ.二人とも支度してくれ」

程なくして三人は街へと調査に向かった.

しかし当の露店はあちこち探せど見つからず、せいぜい道中発見した禍憑を討伐するのみに終わったのだった.

□□□

それから数日、巡回の巫剣にも調査を頼んだが目立った成果は得られていなかった.

あった事といえば石田切込正宗が向かった際に霧に出くわしてしばらく凹んでしまったことくらいであった.

そして隊長と城和泉、水心子は稽古しながら会議をしていた.

「こんなに探しても手掛かり一つ無いなんて、本当にいるのかも不安になって来たわねっ」

城和泉の木刀が迫るが、隊長はそれを寸前で躱す.

「おっと、だが日に日に噂ばかり伝播している.確かに存在するはずなんだ」

そんな二人の稽古を縁側に座る水心子が城和泉の応援をしながら見ている.

「Mystery... 不思議です.街の人は見た事あるのになぜ私たちは見る事すらかなわないのでしょう…あ、先輩今です!」

「主、隙あり!」

ビシッと水心子が指さすのと同時に城和泉の木刀の切っ先が隊長の喉元につきつけられる.

「ぐっ…参った。その拵えになってからますます鋭くなったな、城和泉」

「まあね、でもあなたも前より手強くなってるわよ」

二人は互いを労うと、水心子同様縁側に腰かけた.

「天華神明拵…これになってから奥義もすさまじいものになったよな」

「主とだからできた事なんだけどね、でもあれは多数を一度に攻撃できるから一発逆転…みたいな感じで主を守れるのよ」

城和泉の奥義・焔華火炎焦は城和泉自身が炎を纏って空高く飛び上がった後、流星のごとく地表に突撃して辺り一面の敵を焼き焦がすものだ.広範囲の敵を一網打尽にする強力な技でもある.

ふと気づくと水心子が目をキラキラさせていた.

「So cool ! 先輩の奥義、かっこいいですよね!like a Shooting star…」

「水心子、そんなに褒めても何も出ないわよ?それにあなたのだって大爆発してるじゃない」

水心子の奥義、H.O.B.も広範囲攻撃だ.超越後の城和泉には及ばないものの、十分威力の高い、頼れる火力と言える.

「…そういえば二人が同時に奥義発動したらどうなるんだ?」

「そうね…私も水心子も火炎の技だし、もしかしたら相互に作用するのかしら」

城和泉が水心子に視線を向ける.

「主さん、これはあくまで推測ですが先輩の焔華火炎焦の威力を底上げできるかもしれません.」

「ほう?続けてくれ」

水心子は彼女なりの予測を話してくれた.その話をまとめると威力・範囲の向上は望めるが狙いが大雑把なものになるうえに、二人の奥義発動が重なる瞬間を狙うために隙が生じてしまうとのことだった.

つまりは実用性に欠けるだろう.

「話がそれてしまったな.かの露店についての調査方法はまた考えておく.二人は別命あるまで待機してくれ」

その後隊長は二人と別れ、考え事をすると言い一人散歩へ行った.

□□□

「ん?あれは…」

隊長は歩いていくうちに大きな人だかりを見つけた.

どうやら一つの露店に客が殺到しているようだ.

「すみません、皆さんどうしてこの露店に?」

「あら軍人のお兄さん、なんたってこの店はすごく安いのよ!他とは比べ物にならないほどにね!ほらこれとか」

「どれどれ…この布地が五厘⁉一円でもおかしくない代物だぞこれは!」

これは安いどころではない…異常な値段だ.全く利益になり得ないどころか損する一方なのではないか?

他の商品も同様に破格、そんな言葉では力不足なほど安く売られていた.

「いらっしゃい!安いよ安いよ!」

そんな露店の店主はボロボロの半纏を羽織り、ひょっとこの仮面をかぶった男だ.威勢のいい声で客寄せをしている.

次々と押し寄せる客で忙しいのだろう、同じような言葉しか聞こえてこない.

「そういえばあの面…それに異常なほどに安い商品…いやまさか、こんな目立つ物を彼女たちは見逃したのか?」

特徴は報告書で見た怪しい露店と一致する.妙なのが近くに来ただけでわかるほど目立つこの露店に、街をくまなく巡回した巫剣が誰一人として出会っていない事だ.

「…仮にこいつが禍憑だとしても俺一人ではどうしようもない、か…」

隊長は出店場所を記録し、巫剣を呼びに戻った.

即座に動けたのは待機していた城和泉と水心子であった.

「それで主、その禍憑…かもしれないやつはどんな見た目なの?」

「あぁ、ひょっとこのお面にぼろい半纏姿だ.体躯は小柄な人間に見えたな」

「That is strange. 変な姿の禍憑ですね…擬態なのでしょうか?」

三人は街を駆けていく.その露店がある場所につくまでそう時間はかからなかった.

「あれが…うわ、本当に大盛況ね」

「お客さんで露店が見えませんね…」

まずはやや離れた地点から偵察することにしたのだが、隊長が離れたときよりも人だかりが大きくなっていた.

「これでは目視できないな…もう少し近づくか」

その時であった.三人が露店へと歩を進めたのと同時に辺りに霧が発生し始めたのだ.

「霧?なんでこんなときに…」

「先輩、主さん!禍魂の気配です!どんどん遠ざかってます!」

「なんだと⁉」

隊長は咄嗟に露店のほうを見るが、瞬く間に広がった濃霧で一寸先さえも見えない.

「城和泉!気配で追えるか!」

「まだ察知でき…いや待って、別の気配がするわ!」

城和泉と水心子が隊長を背にして抜刀した.

「Maybeおそらくさっきの露店のとは別の禍憑ですね…」

『グギャア…』

水心子の言う通り霧の向こうに禍憑がいるらしい.だが気配はわかっても濃霧で視界が悪い.

「とにかくこの場を斬り抜けるしかない、二人に陵威を送る!やるぞ!」

「任せて!」「Leave it to me !」

隊長の陵威能力は簡単に言えば敵の感知能力である.視力をほとんど失った右目は代わりに敵の気配を見る事が可能になっているのだ.また、その視覚情報は巫剣へと共有することができる.巫剣使いの能力としては地味な部類になるが、有視界戦闘が難しい今の状況でこそ本領が発揮されるのだ.

陵威能力のおかげか戦闘は濃霧下でも危なげなく進み、禍憑はすべて祓われた.

だが当初の目標であった露店商は霧が晴れるころには影も形もなかった.

「逃がしたか…」

「お客さんも既にいませんね…」

二人が刀を納めた.ついさっきまであれほどにぎわっていたのに周囲には人っ子一人いなくなっていた

「でも主も無事だし、いったん戻りましょ」

「そうだな.状況を整理しよう」

□□□

「情報をまとめると、あの露店商は禍憑が擬態している可能性が高い.巫剣の気配を察知可能であり、逃げる際に霧を出すと考えられる.そして霧が発生すると禍憑も出現した.といったところかな」

隊長は自室で城和泉、水心子と話していた.

「霧の中で突然現れた禍憑はどこから来たのかしら…」

「先輩!それについては私が!」

「え…あ、そう?じゃあ頼むわね」

「はい!!!」

水心子が元気よく答えると、一つのかんざしを取り出して見せた.

「Look at thisこれを見てください.これはあの露店で売ってたものなんですが、わずかに禍魂が感じられるのです.」

「商品に禍魂が?それってつまり普通の人間が手にしたら…」

「Exactly その通りです先輩、わずかとはいえ大量に触れれば禍憑化してしまうかもしれません…」

その場を沈黙が包む.

水心子の予想が正しければ霧の中で斬った禍憑はもともと人だった可能性が高い.

「…早急にあの禍憑を祓う必要があるな」

「そうね…でも私たちが近づいただけで逃げられちゃうのよ?」

「禍憑に察知されても逃げる間もなく仕留められる速度は、私も先輩でさえも難しいですからね…菊さんならもしかしたらですが」

「菊はいまちょうど他支部に応援に行ってるところだ.帰るのは来月になるだろう」

三人は同じような格好で考え込む.

「…Out range 禍憑が察知できない範囲からの急襲ができたらいいんですが、場所がわからない以上は不可能ですよね…」

「禍憑に見つからない距離じゃ私たちも見つけられないものね…」

二人はそういってため息をついた.

だが隊長は違った.彼はしばらく沈黙した後、口を開いた.

「…城和泉、位置が分かれば禍憑の察知範囲外からでも攻撃できるのか?」

「ふぇ?えーっと…私の奥義なら、飛び上がった後で空中から降下する場所を決めれば行ける…と思う」

「水心子、君は海外の知識は豊富だったな」

「Of course ! もちろんです!でも何かお役に立ちますか…?」

「もちろんだとも.城和泉にも頑張ってもらうが」

隊長はスクッと立ち上がった.その顔は不適に笑っている.

「まさかあの経験がこんな風に役立つ日が来るとはな…今から二人に作戦を説明しよう」

□□□

隊長は一人、街を歩いていた.

軍人が街にいるのは珍しいことでもないので誰もそこまで気にはしない.

隊長が向かったのは当然あの露店である.

露店には安い商品に釣られた客が異常なほどに殺到しているので、見つけるのはさして難しいことではない.

「あの店主が禍憑、か」

威勢よく叫んでいるひょっとこ面の禍憑.意識して聞くとその声はどこか無機質なものに感じられた.

「…ふむ、この辺りか」

隊長はその露店の手前で周囲を見回した.

そして懐から街の地図を取り出し、位置を確認する.

「おや、軍人さんもこの店が目当てかい?」

そんな彼に年老いた男性が話しかけてきた.

「ええ、その通りです.もっとも買い物に来たわけではないのですが…」

「え、それはどういう…」

「おじいさん、少し離れていた方がいいですよ」

隊長はそう言うと懐から拳銃を取り出した.

お爺さんは短い悲鳴を上げ、すぐにその場を離れていった.

「驚かせちゃったな…だが好都合だ」

隊長はその拳銃を天に向け二発、発砲した.

「陸軍だ!全員、商品を置いて速やかに去れ!」

突然の銃声と怒号に露店の客は呆然としている.

だが隊長はさらに三発発砲.

それをきっかけに客は口々に悲鳴を上げ、一目散に逃げていった.

残ったのは散乱した露店の商品…禍魂付きの商品である.

あまりに突然のことに店主は状況を理解できていないようだった.

隊長は銃を仕舞い、がらんとした露店に近づく.

「ギ…い、いらっしゃいませ!」

店主のフリをした禍憑が応対する.

「普通に聞いたらおかしいとは思えないな…陳列もしっかりしてる」

露店とはいえ商品がとても綺麗に並んでいた.そこについている値札はどれも書き間違いではないかと疑うほどに安かった.一体どこから仕入れてきたのだろう.

「だがそろそろ年貢の納め時だ.店じまいを手伝ってやるよ」

隊長が空を見上げると赤い流れ星のようなモノが見えたところだった.

□□□

時は少々遡る.

城和泉と水心子はめいじ館の屋根の上にいた.

「主は相変わらず無茶な作戦とるわね…禍憑の元に一人で行くなんて」

「Frustrating主さんと共にいけないのがもどかしいです。でも今度の禍憑は巫剣の接近を察知してしまいますからね…」

「見つけたら場所を知らせるって言ってたけど、小烏丸の烏もなしでどうするのかしら.

さっき主となに話してたの?」

「Let me explain 先輩、主さんとはこの街の場所を示す座標を決めていたのです!」

「この街の、ざ、座標?」

「簡単に言えば地図を将棋盤に重ねるんです.将棋の駒の位置は縦を段、横を筋で表すのはご存じですよね?」

「将棋はあんまり詳しくないけど…き、聞いたことはあるわ」

「それで駒を進めるときに、二段目五節目の歩を一つ進める場合は二六歩と言ったりするのです!」

「確かにその言い方は聞いたことあるわね!でもそれがどう関係するの?」

「はい、ここで将棋盤を地図に置き換えますね.Look at this こうすると街の位置を将棋盤のように示すことができるんです!」

「あ、そういう事なのね!じゃあ主がその位置を教えてくれれば…って主の声なんて届かない距離じゃないの!」

「そこで私の出番なんです先輩!私はモールス通信の翻訳もできるんです!」

「もーるす…?」

「そうですね…音だけで会話する方法って感じで…」

その時、遠くのほうから銃声が響いた.銃声は最初に二発、続けて三発だ.

「今の主が撃ったの⁉主が撃っても効かないしそもそも当たらないのに!」

「いえ先輩、今のが主さんからの合図です!銃声は二発と間隔開けて三発…座標は二段目の三節目、ここです!」

水心子が地図を指し示す.そこは大通りからやや離れた人が集まりやすい位置であった.

「じゃあ主は、その禍憑はここに居るってことね!」

「Exactly ! 行きましょう先輩!」

そして城和泉はその身の内側に霊力を集中させ、奥義を準備する.

「水心子、しっかり捕まってなさいよ!」

「Amazingまさか先輩と手をつなげるなんて…」

「…水心子?」

「え、ア、ハイ!場所は私が誘導します!先輩は気にせず飛んでください!」

「はぁ…もう行くわよ!【焔華火炎焦】!」

瞬間、城和泉の全身が紅蓮の炎に包まれ天高く飛び上がった.手をつないだ水心子もろとも遥か空中へあがり、眼下の街が模型ほどの大きさになったところで上昇が止まった.

「水心子!場所は⁉」

「あの高い建物から東へ三軒行ったところです!」

「わかったわ!」

城和泉は降下地点を定めると一気に加速した.

水心子と共に、さながら赤い流星のごとく落ちていく。

その向かう先には隊長と露店に扮した禍憑がいた.

「お、来たな…ってコイツ!もう気づいたのか!」

禍憑はそのお面を捨て、根無型と似た姿を晒しながら逃げ始めていた.

「だめ、逃げられちゃう!」

「そんな!軌道修正…は間に合いません…!」

隊長は禍憑を追いつつ、降下する二人を見る.

「くっ…あいつを少しでも足止めできれば!」

すると水心子がハッとしたように本を広げた.

「水心子⁉何する気⁉」

「先輩!一か八かH.O.B.を先輩の着地と同時に撃ちます!うまくいけばあの禍憑を巻き込めますっ!」

そういうと彼女は空中で城和泉の手を振りほどいた.

「I cannot fly!! でもきっと大丈夫です!」

「ちょっ、水心子っ‼」

空中に放り出された水心子をよそに、瞬く間に城和泉は降下していく.

この場合、城和泉は飛行できなくとも自身の力で着地は容易だ.だが水心子はただの自由落下をすることになる.

「ばっ…あいつは何をしてるんだ‼」

隊長は即座に方向転換、水心子の落下地点を目指して走り出した.

「ああもう!とりあえずあの禍憑を焼き祓う!燃え上れ、巫魂ァ!」

城和泉の全身がさらに炎で包まれる.

「それでいいんです先輩!Its all over !」

落下しながらも水心子から霊力が放出される.

「Heart Of BlackSmith !!」「喰らええっ‼」

城和泉が着地した瞬間、寸分違わず同じ地点に巨大な炎が呼び出された.

それは焔華火炎焦の爆発と合わさったことで大爆発となり、空すらも焦がせるのではないかという巨大な火柱となった.

『グギャァアアァアッ!』

一瞬の事ではあったが、その爆発があまりに広大な範囲であった為、懸命に逃げていた禍憑は一瞬で消し炭になった.不幸にも根無型だったためによく燃えたようだ.

「ぐあああああっ!」

隊長もその場にはいたのだが、咄嗟に身を隠したので爆炎からは難を逃れていた.

「Thank you for your help...あ、主さん、大丈夫ですか?」

しかし落下してきた水心子を、受け止めた…というよりは下敷きになる形で助けていたのだった.

爆発による土煙が舞いあがっている.

辺り一面焦げたような匂いの広がる中、城和泉が駆け寄ってきた.

「水心子!無事なの⁉」

「あ、先輩!Im fine ! 主さんが助けてくださったので…」

「この馬鹿!あんな無茶して…無事でよかった…」

城和泉が水心子を抱きしめる.一瞬で水心子が真っ赤になって固まってしまったのは言うまでもない.

隊長がむくりと起き上がった.

「いてて…これでなんとか討伐できたかな…城和泉、どうだ?」

「…そうね、気配は感じないわ」

「そりゃ、良かった…これで成果なしだったらどうなってたか」

「成功したからいいけど!今回の主はちょっとやり過ぎだと思う…」

城和泉が周囲を見渡す.あれほどの火柱を生み出した割りには、どこも火事には至ってない.

だが辺り一帯が住宅や建造物の表面が黒く焦げている.地面は一部くすぶっている程だ.

あとからわかった事だが、幸いにも人的被害はなかったらしい.

だがこの後、すごい顔した副指令から呼び出されたのは言うまでもない.

□□□

後に新聞にも載った大爆発事件から三日が経った.

隊長は自室でひたすら書類などの事後処理、城和泉はその補佐をしていた.

「始末書はこれで最後…か.やっと終わった…」

「お疲れ様って言いたいんだけど、今回は主が悪いと思う…」

「ほぼ計画通りではあったんだがな…」

かの作戦の元となったのは弾着観測射撃だ.もっとも、砲弾としての巫剣は一発限りなので弾着観測は行っていないのだが.

隊長は過去にその観測員をやっていたこともあるらしい.

「私、砲弾じゃなくて刀なんだけどなぁ…」

「それに関してはすまなかった.だがあの禍憑、掛根無と呼ぶことになったやつはああでもしなければ仕留めるのは難しかったと思うぞ」

「確かに逃げ足は速かったし、私たちを感知してきたからね」

「何より、掛根無があのまま商売を続けていたら、禍魂入りの商品が溢れてもっと大変なことになったかもしれない.あの時はああするのが最善だったと思う.」

城和泉がまあねとため息交じりにぼやいた.

すると部屋の戸がコンコンと叩かれる.

「主様、今少しお時間よろしいですの?」

「大典太か、どうかしたか?」

彼女、大典太光世は一週間前程からこのめいじ館に滞在していた.

この日も工房の手伝いをしてくれていて、その報告に来たのだった.

天下五剣でありながら、非常によくしてくれている彼女が去った後、城和泉がぽつりとつぶやいた.

「…大典太さんならもっと手早くできたんじゃないかしら」

「やめろよ…俺も少しそう思っちゃったんだから」

もしもまた、似た禍憑が出たときには愛刀だからではなく相手に適した編成かどうか見直そうと、隊長はひそかに決意したのだった.

 

 


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