ポケモン トレーナーズエピソード   作:やまもとやま

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第15話 シロナ編

 アカギは容赦なくマーズを攻撃した。

 マーズはアカギのために、エムリットとユクシーを見つけ出した立役者である。しかし、アカギはもうこの世界のすべてを捨てていた。

 

 アカギが繰り出したマニューラは鋭い爪を振るった。

 マーズはその一撃を瞬き一つせず受け止めようとした。

 

 しかし、マニューラの攻撃は何者かの介入によってはじかれた。

 何者かはマーズを守り、アカギの前に立ちはだかった。

 

「……何のつもりだ?」

 

 アカギはマーズの前に立ちはだかったエムリットをにらみつけた。

 

「新世界の神はこの私だ。その私に逆らうというのか?」

 

 エムリットはアカギに敵対したが、アグノムとユクシーはアカギの隣についた。

 

「ちっ」

 

 アカギはマニューラをモンスターボールに戻した。

 

「仕方ない。いいだろう。特別にお前だけは新世界に存在することを認めてやろう」

 

 アカギは態度を一変させた。

 それは新世界の扉を開くために仕方なく取った態度だったが、それでもマーズはその気持ちが嬉しかった。

 アカギがたとえ自分のことを邪魔だと思っていても、マーズはアカギのそばにいたかった。

 

「ありがとうございます、リーダー」

「では改めて始めるぞ」

 

 アグノム、エムリット、ユクシーは再び配置についた。

 

 そのころ、シロナもテンガン山にやってきていた。午後7時、すでに山頂へのロープウェイは止まっている時間だ。

 しかし、乗り場のあたりに明かりがついているのがわかった。

 

 シロナは乗り場のほうに近づいた。

 

「こんばんは」

 

 人気のない静かな空気の中にそっけない声が広がった。

 シロナは声のほうに目を向けた。

 視線の先にたたずんでいたのはジュピターだった。

 

 ジュピターはずっとシロナがやってくるのを待っていたようだった。

 

「やっぱり来たのね、泥棒猫」

「……」

 

 シロナは言葉を返す代わりに目をそらした。

 

「別にいいわ、この前言ったことは嘘だから」

 

 シロナはジュピターのほうに視線を戻した。

 

「別に結婚なんてしていない。私とリーダーは何の関係もない」

「……」

「リーダーは上ってったわ。たぶん、あの子も」

「マーズ?」

「ええ、あの子もあなたと同じ。見た目、あなたたちは対照的だけど、心はまったく同じ。子供」

 

 ジュピターはそう言うと、ロープウェイの主電源をオンにした。

 

「これ私が造ったものなのよ。勝手に触ったら違法だけど、あなた共犯者になる?」

 

 シロナはしばらく黙り込んでいたが、やがて小さくうなずいた。

 

 ロープウェイは二人を乗せて静かに闇の中を進んだ。

 ジュピターもシロナも何もしゃべらなかったので、まるで時が止まってしまったように静かだった。

 

「どうしてリーダーに目をつけたの?」

 

 突然ジュピターが質問した。

 

「あなた有名なポケモントレーナーだから、こんなところに来なくてもいいはず」

 

 シロナはシンオウリーグの絶対王者であり、トレーナーの世界で華々しく成功した身。

 普通に考えれば、半分傾いた状態のギンガ団に関わるのはおかしい。

 

「アカギ様は私と同じ世界を見ていたのです。私と同じ世界を見ていた初めての人でした」

「ふーん」

「でもあなたが言った通り、私は子供だったのです。頭ではわかっていたのに結局引き返せなかった……」

 

 シロナは独り言のように小さな声で言った。

 いまこの瞬間でもまだアカギと新しい世界に行くことを望んでいた。美しい夢の世界にとどまっていたかった。

 

「愚かな人たちばかりね」

 

 ジュピターはそう言ったが、その言葉は自分自身に向けられたものでもあった。

 

 

 アグノム、エムリット、ユクシーから解放された光が再び、新世界の扉を開こうとした。

 光は増幅され、あたりの空間を捻じ曲げた。

 

「なんだか怖い……」

 

 マーズは不安そうにあたりの様子をうかがった。まるで世界が崩壊していくように見えた。

 

「この世界が終わりを迎えるのだ。その先に広がる世界はおれの理想の世界」

「理想の世界」

 

 マーズはアカギの隣に並んだ。

 

「どんなところでも、リーダーと一緒にいられるなら」

 

 マーズはアカギに寄り添って目を閉じた。

 もう引き返す気持ちはなかった。

 

 妖精たちの放った光はやがて周囲を暗黒に包み込んでしまった。

 あたりは真っ暗になり、何も見えなくなった。

 

「ここどこ? 真っ暗だわ」

「これこそが理想だ」

 

 アカギはそう言うと、暗闇の中を歩き始めた。

 

「でも、何も見えません」

「見る必要はない。このおれが創り上げるのだ」

 

 アカギは何かを予感して立ち止まった。

 

「感じるぞ……なんて力だ。そう、時間を司る者パルキア、空間を司る者ディアルガ。その大いなる力を使えば、おれは望む世界を想像することができる。さあ、降臨せよ、ディアルガ、そしてパルキアよ」

 

 アカギは伝説の一説にある大いなる力に呼びかけた。

 アカギの声が届いたのか、暗闇の中に白い光と青い光が浮かび上がった。

 

 伝説の一説によると、「パルキアの咆哮が時間を生み出し、ディアルガの咆哮が空間を生み出した。この世界は最も理想的な時間の流れ、空間の広さによって調和した」とある。

 しかし、アカギはその一説を否定した。

 

「理想ではない。時間は止まった。空間は失われた。灰色に包まれた世界だ。いまその世界をつくりかえなければならぬ。そのために、おれはここに来た。さあ、おれにその力を授けるのだ」

 

 アカギの声に呼応して、白い光と青い光が徐々に近づいてきた。

 マーズはそれに大きな恐怖を覚えた。呼び出してはいけないような気がしてならなかった。

 

「アカギリーダー……」

「さあ、早く姿を現すのだ」

 

 アカギがそう言うと、大きな地響きが発生した。

 立っていられないほどの揺れだったので、マーズは転倒した。

 アカギはかろうじてバランスを取って前方を見つめた。

 

「いいぞ、さあその姿を神の前へ」

 

 地響きと共にパルキア、ディアルガは姿を現した。

 その神々しい姿はすべての者を注目させた。

 

 マーズはパルキアとディアルガを見て大きく目を見開いた。

 

「あれが伝説のパルキアとディアルガ?」

 

 伝説は本当だった。本当にこの世界に封印されていた。

 パルキア、ディアルガの眠りを決して妨げてはいけないという言い伝えもあるが、アカギは2体を目覚めさせてしまった。

 

 すべては世界をつくりかえるために。

 

「聞け、ディアルガ、パルキア。おれがこの新世界の神だ。おれに従うのだ」

 

 アカギは2体のポケモンにそう言った。

 しかし……ディアルガ、パルキアの答えはノーだった。

 

 ディアルガとパルキアはアカギを見下ろすと、それに向けて攻撃的な咆哮を上げた。

 

「アカギリーダー……なんだか怒ってるように見えます」

「馬鹿な、神に逆らうというのか?」

 

 ディアルガとパルキアはアカギになびき従う態度を取らなかった。

 

 パルキアの攻撃。

 パルキアは念力によってアカギを大地にたたきつけた。

 その力を徐々に高めてアカギを叩きつぶそうとした。

 

「リーダー!」

 

 マーズはとっさに最大の相棒であるブニャットを繰り出した。

 通用するか不明だが、ブニャットはパルキアに向けて飛びかかっていた。

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