ポケモン トレーナーズエピソード   作:やまもとやま

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18話 シロナ編

 ガブリアスの一撃がディアルガを転倒させた。

 シンオウリーグの絶対王者が放つ一撃は強大だった。

 

 しかし、ディアルガはすぐに起き上がり、反撃を繰り出した。

 ディアルガに、ポケモンバトルのルールなどない。

 ディアルガの生み出した波動は明確にトレーナーであるシロナに向けて撃ち込まれた。

 

 トレーナーの安全が約束された競技対戦と違い、ディアルガの一撃には明確な殺意がにじんでいる。

 ガブリアスはその攻撃を受け止めきれず、余波がシロナを吹き飛ばした。

 

 競技対戦では決して経験することのない激痛が走った。

 

「……」

 

 視界がゆがんで立ち上がることもままならない。

 そんな中、シロナは手探りにモンスターボールを取り出し、ミロカロスを繰り出した。

 

 ディアルガとパルキアはシロナのポケモンに怖気づくことなく、それぞれガブリアスとミロカロスをターゲッティングした。

 トレーナーに支配されていないディアルガとパルキアの攻撃は力ずくで単調だったが、その破壊力は高く、ガブリアスもミロカロスも受け止めきれない。

 

 シロナの扱うミロカロスは特に守りが堅く、敵の攻撃をうまくいなすことができるが、パルキアが放つ空間をゆがませるほどの力を阻止することができなかった。

 シロナの主力ポケモンであるガブリアスとミロカロスが防戦一方になる中、戦場に介入する存在があった。

 

「ちょっと待ちなさい、卑怯よ!」

 

 マーズはディアルガ、パルキアが仁王立ちする間に割って入った。

 

「どっちがどっちだっけ? あんたがパルキア? あんたの相手は私よ」

 

 マーズはパルキアのほうを指さした。

 

 シロナは戻ってきたマーズのほうに目を向けた。

 ちょうど、マーズが振り返ったので目が合った。

 

「あんたにはずいぶん借りがあったものね。まとめて返すわ」

「……」

 

 マーズは奮い立っているが、相手はマーズに何とかできる相手ではない。

 シロナは無理に立ち上がった。足首がひどく痛んだ。

 

「あの二人は?」

「さあね、闇の中でさまよってんじゃないの?」

 

 マーズは他人事のように言った。これまでのマーズとは違い、大人びた表情をしているように見えた。

 

「バカみたいよね。さんざん苦労してようやく夢の世界にたどり着いたと思ったら、こんな真っ暗な場所に閉じ込められるんだから」

 

 マーズはそう言って微笑した。

 

「つくづくわかったわ。こんなことで夢の世界にたどり着けるわけない。私はおかしな夢を見てたんだわ」

 

 マーズはこれまでの自分の行いを回想した。

 

 思えばずいぶんと長い間、闇の中にいた。

 何もない世界。マーズの幼年期はちょうどこの暗闇の世界に似ていた。

 アカギがその暗闇の世界から抜け出せてくれた。

 だから、マーズは迷うことなくアカギを追いかけ続けた。

 

 しかし、それも暗闇の世界の続きだった。

 それに気づいたマーズはパルキアをまっすぐと見据えた。

 その神々しいドラゴンは真の意味でマーズが暗闇の世界から抜け出すために通り抜けなければならない登竜門だった。

 

 マーズの真剣な姿を見て、シロナも今一度闘争心を取り戻した。

 思えば、アカギと出会ったときから夢を見ていた気がする。厳密に言えば、その前から、あるいはずっと何十年も夢を見ていたのかもしれない。

 シロナもまた夢から覚めるための道筋を見つけ出していた。

 

「私がパルキアをやるわ」

「わかりました」

 

 シロナはディアルガをまっすぐ見据えた。

 

「マーズ、うまくいくかはわかりませんが、あなたにこれを授けます」

 

 シロナはマーズの右手首を掴んで、1つのモンスターボールを握らせた。

 

「これって?」

「あなた次第です」

 

 マーズは手に入れたモンスターボールを見つめた。

 それはマスターボールだった。

 マスターボールはポケモンにとって、最も快適なボールと言われている。

 高価なので一般には出回らないが、一流のトレーナーは自分が育てるポケモンの頭数分だけそろえている。

 

 パルキアを捕獲できるかはわからないが、マーズはマスターボールを握り締めた。

 

 ディアルガとパルキアは容赦なく、マーズとシロナに向けて攻撃を繰り出してきた。

 対して、シロナはルカリオを繰り出した。

 

 ルカリオは飛び出すなり、ディアルガの懐に飛び込み、攻撃態勢に入ろうとしたディアルガをめくるように拳を突き上げた。

 ディアルガが後ろに後退する。すかさず、ルカリオは追撃を繰り出した。

 だが、ディアルガの強固な体にはダメージが認められない。

 やはり、打ち倒すことはできそうもない。ディアルガを止めることができるとすれば、トレーナーに従わせること。シロナはディアルガを捕獲するために、無謀にもディアルガのもとに走った。

 

「黙って従ってくれればいいのですが」

 

 シロナは学生時代、ポケモンレインジャーのアルバイトをしていたことがあった。ハブネークやフライゴンを捕獲する仕事をしたこともあったが、ディアルガの捕獲は未知の領域になる。

 ルカリオは飛び跳ねて、ディアルガの頭を強く叩きつけた。

 その機を見て、シロナはマスターボールを投げた。

 絶妙なタイミングだったが、特殊な波動がディアルガから放たれ、マスターボールが弾き飛ばされた。

 

 そして、ディアルガの目に炎が灯る。

 獰猛なオーラを放つようになったディアルガはより強力な波動を撃ちだした。

 ルカリオの防御を弾き飛ばし、シロナを容赦なく襲った。シロナは頭に強い衝撃を受けた。

 目の前が真っ黒になり、やがて意識が完全に消滅した。

 

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