ポケモン トレーナーズエピソード   作:やまもとやま

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11、カントーへ

 ククイはアローラ地方の貧しい地域であるメレメレ島に生まれた。

 アローラ地方は発展途上地方であり、カントー地方から多額の援助を受けて、現在急成長している地方である。

 

 アローラ地方の発展が遅れた経緯には、戦争があった。

 かつて、世界大戦では非常に多くのポケモンが軍事的に利用されてきた。

 当時、海洋戦力が重視され、豊富な水ポケが生息していたアローラ地方は、カントー地方に軍事的に利用された。

 

 アローラ住民は生活が厳しく制限された。

 

1、住民のポケモンの単純所持を禁じる。違反者は死刑。

2、住民はカントー政府の定める労働に従事しなければならない。違反者は死刑。

 

 こうした厳しい制限の中で、管理されてきた。

 そのため、あらゆる産業は発展が止まってしまった。特にポケモンを奪われたことで、アローラ住民の生活は大きく変わってしまった。

 アローラの住民はポケモンと共に暮らしてきたため、ポケモンを奪われての生活は誰よりも過酷だった。

 

 戦争が終わると、あらゆる制約が解除され、今では急成長地方となったが、それでも人々の心は「反カントー」でまとまってしまった。

 アローラ地方はカントー地方と同盟を結びながらも、住民の過半数が反カントーの思想を持っていて、カントー系移民には厳しい目が向けられることもあった。

 

 ククイも物心ついたときから、反カントーの空気を受けて閉鎖的に暮らしてきたので、「反カントー」が自然に身についていた。

 

 ククイの夢は少しいびつだった。

 

「世界一のトレーナーになる」

 

 これは多くの少年少女が語る夢だが、ククイはそれに一言付け加える要素があった。

 

「カントー・ジョウトのトレーナーをコテンパンにやっつけて、アローラの偉大さを証明する」

 

 ククイは反カントーの閉鎖的なコミュニティの中で暮らしてきたからこそ、誰よりもその意識が強かった。

 それはある意味で、ククイに強い向上心を植え付けたが、ある意味で、強いトラウマをも作ることになった。

 

 ククイはトレーナーとしてすぐに頭角を現した。

 アローラ伝統の島巡りを史上最年少で踏破すると、弱冠14歳にしてアローラ最強のトレーナーとまで言われるようになった。

 

 そんなククイの次なる目標はただ1つ。

 

「カントーに進出して、アローラの偉大さを連中に見せつける」

 

 ククイはアローラのプライドを背負い、その実力をカントー・ジョウトの連中に見せつけるためということで、カントー地方への旅を決意した。

 

 ククイは友人だったマーレインにカントー進出の意思を告げた。

 

「カントー地方に?」

 

 マーレインは島巡りの途中で出会った少年だった。

 どこか抜けたようなおっとりした少年で、ポケモントレーナーとしての実力は高いが、生まれつき頭が良かったということもあり、ポケモンのITサービスのエンジニアになるための勉強を始めていた。

 

「マーレインも来いよ。おれたちの実力を都会のやつらに見せてやろうぜ」

「おれにはそんな闘争心はないよ。トレーナーよりもいまは受験勉強さ」

「なんだよ、せっかく島巡りを踏破したってのに、トレーナーの道をあきらめるのか?」

「まあね。おれの分まで頑張ってくれよ。応援してるぜ」

 

 マーレインはグローバルな人間だったので、カントー地方へのライバル心もなければ、トレーナーを志す意欲もなかった。ぼちぼちと勉強する普通の少年になっていた。

 

 ククイはカントーに向かうため、世話になった師匠でもあるハラに挨拶に向かった。

 ハラはアローラを代表するトレーナーであり、オーキド世代の一人でもある。

 戦後まもなくの混沌期に活躍したトレーナーであり、アローラ地方の中で五指に入る実力者である。

 

 だが、アローラ地方は全体的に後進国。

 アローラで五指に入るハラでも、オーキド、キクコ、ヤナギ、カツラ、アデクなどの一流には後れを取っていた。

 アローラ地方はまだチャンピオンを一人も輩出していなかった。

 ククイはその師匠の仇を取るためにも、カントー・ジョウトのすべての名トレーナーを倒してチャンピオンになりたいと思っていた。

 

「じっちゃん」

 

 ククイがやってくると、ハラは家の中庭で武術の一人稽古をしているところだった。老齢になったが、まだたくましい体つきをしていた。

 

「おれ、カントーに行くことにしたよ」

「そうか」

 

 ハラはそう言って、力強く拳を突き出した。

 

「ククイも広き世界を知る時か」

「おれ、負けねえぜ。どんなやつもなぎ倒してアローラの偉大さを見せつけてやるからよ」

 

 ククイもハラを真似て拳を突き出した。

 

「威勢がいいな。ワシからは何も言うことはない。その目で世界の広さを確かめてくるがいい」

「うん、一旗揚げるまでは帰って来ないよ」

 

 ククイには自信があった。自分の実力ならば、誰にでも勝てると考えていた。

 

 ◇◇◇

 

 ククイはハラの知り合いのオーキドの助けを借りて、カントーのマサラタウンにやってきた。

 オーキドはかつて最強のトレーナーとして活躍した名トレーナーである。今は引退して、田舎でポケモンの研究所を営んでいた。

 カントー地方の世話になるのは気が引けたが、ククイはまだ子供だったので、オーキドの世話になることにした。

 

 船でマサラの港に到着したククイは検疫を受けて、マサラの野道に立った。

 マサラタウンはのどかな港町で、どこかアローラ地方の面影があって、ククイにはなじんだ。

 

「えーっと、オーキド博士の家は……」

 

 ククイは地図を開いたが、マサラの地図はいい加減でわかりにくかった。

 なので、ククイは通りすがりの少年に道を尋ねることにした。

 

「あのー、すみません」

「ああん?」

 

 青年は上から目線に返してきた。

 

「ひなびた格好してやがんな。お前、地元の人間じゃねえな?」

「アローラから来たんだよ。それが何か?」

 

 ククイは一瞬で嫌悪感を覚えたので、少年をにらみかえした。

 

「はははは、アローラからか。さては出世して一旗揚げようと思って上京してきやがった留学組だな。ったく、お前みてえなやつのせいで、マサラが余計さび付いちまうんだ。まあ、おれには関係ないけどな」

「お前、何様だ?」

「だいたい、おれを知らないとは、とんだ田舎もんだな、お前は。これが目に入らねえのか?」

 

 少年はカントーリーグのチャンピオンメダルを取り出して見せた。

 

「それは」

「そうだ、おれが今年チャンピオンになったグリーン様だ。ダイゴもシロナもなぎ倒して天下を取ったのさ」

「グリー?」

「グリーンだよ! おいおい、チャンピオンも知らねえとはお前んとこはどうなってんだ?」

「あいにく、おれん家にはテレビも新聞もねえよ。ポケベルは買ってもらったけどな」

 

 ククイがガラパゴスポケベルを見せると、グリーンは高笑いした。

 

「お前、おもしれえやつだな。逆に気に入ったぜ。で、どこに行く気だ?」

「オーキド博士の研究所。いーよ、おれ一人で探すからよ」

「なんだよ、じいさんとこかよ。ちょうど、おれもじいさんとこにチャンピオンメダルを見せつけに行くとこだったんだ。ついて来な」

 

 グリーンはオーキドの孫だった。

 グリーンはオーキドのDNAを引き継ぎ、そのDNAの威光のままに実力をつけ、史上最年少のカントーチャンピオンになっていた。

 その実力から、最強のトレーナーとして注目されていた。

 翌年には、ワタルに負けてチャンピオンの座から退くことになるが、このときから8年後にあたる現在でも活躍する名トレーナーの一人でもある。

 

 グリーンはククイを研究所に連れて行った。

 

「おい、じいさん、田舎もんが尋ねてきてるぜ」

「田舎もん言うな!」

 

 ククイはチャンピオンのグリーンをあまり尊敬することができなかった。

 

「おー、君がククイか?」

 

 オーキドは笑みを浮かべながらやってきた。その姿からは、かつて最強のトレーナーだった事実が創造できなかった。

 

「はい、今日からお世話になります」

「世話にってここに住むのか?」

「ハラ君からお願いされてね、しばらく面倒を見ることになったんだ。うんうん、聞いていたとおりトレーナーとしての素質を感じさせる目をしておる」

 

 オーキドは一目でククイの可能性を感じ取った。

 

「こんな田舎もんがトレーナーになれるわけねえよ。せいぜいバッジを2つ取ったところでホームシックになって帰るのがオチだよ」

 

 グリーンはバカにするようにそう言って、ククイの頭を押さえた。

 

「誰が。おれはチャンピオンになるんだ。お前だって絶対に倒してやるからな」

「無理だな」

「いや、可能だ」

 

 オーキドが口を挟んだ。その後、グリーンのほうを見た。

 

「グリーン、お前は最近調子に乗りすぎておる。それにポケモンへの信頼と愛情を忘れているのではないか?」

「信頼、愛情だぁ? じいさんぼけたのか。勝負の世界で、そんなもん役に立つもんか」

「信頼と愛情を忘れた者はどんなに頑張ってもトップには立てん。お前がそれに気づかないなら、その天下もほんの一瞬の夢で終わるだろう」

 

 オーキドのその言葉が当たることになる。

 

「ククイ、君はここのポンコツチャンピオンと違って、ポケモンへの信頼と愛情を知っているようだな。君ならこのポンコツチャンピオンにもきっと勝つことができるだろう」

「おい、じいさん。孫をポンコツ呼ばわりするなよ」

「なにを言うか。いつもポンコツじいさん扱いしておるお前に言えたことか。ワシの金をどんだけ浪費したと思っておる」

「こうしてチャンピオンになれたんだからいいだろ」

 

 ククイは二人を見て、前途多難を予感した。

 

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