ポケモン トレーナーズエピソード   作:やまもとやま

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第9話 シロナ編

 シロナのおかげでマーズはエムリットを手に入れた。

 マーズにとっては大きな手柄であり、エムリットを手土産にすれば、必ずアカギは評価してくれる。

 

 マーズは飛ぶような思いでギンガ団のアジトへ戻った。

 アカギからエムリットとユクシーの捜索を依頼されて以来、数日ぶりのアジトだった。

 

 ギンガ団のアジトは宇宙開発会社ということでロケットの打ち上げ場がある。

 もう何年もロケットは飛んでいない。

 数年前までは毎年のようにロケットが飛び、多くのスポンサーがついていた。

 しかし、そのころのギンガ団の輝きはなく、いまや金融ファンドと部品を作る一次工場で何とかやりくりしているレベルの団体にとどまっている。

 思えば、アカギが大きく変わってしまったのも、ギンガ団の業績の低迷が大きかったのかもしれない。

 新世界を望むアカギの心は、うまくいかない現実から逃避するために生まれたものなのかもしれない。

 

 しかし、アカギの狙いを良く知らないマーズはただただアカギの期待に応えるためだけに動いていた。

 ギンガ団のアジトに戻ると、ちょうどマーズと同じ幹部に所属するジュピターが経理の仕事をしていた。

 

 ジュピターはギンガ団の初期のころから科学者として働いている。

 無口でほとんど表情も変えないあたり、どこかアカギに似ているところがある。

 マーズがギンガ団にやってきたときは、マーズに仕事を教えるためにあれこれ世話を焼いてくれていたが、不愛想なその態度がマーズにはあまり良い印象に映らなかった。

 

「リーダーは?」

 

 マーズは弾ける笑顔でジュピターに尋ねた。

 

「さあ」

 

 ジュピターはそっけなく答えた。

 

「はあ、せっかく素晴らしい報告ができるってのに」

「……何かあったの?」

 

 ジュピターはマーズがいつも以上にはつらつなことに気が付いた。

 

「まあちょっとね」

「そう」

「……」

 

 マーズはジュピターが苦手だったので、すぐに部屋を後にした。

 

 アカギがアジトに戻ってきたのは夜遅くになってからだった。

 疲れた足取りで元気なさそうに社長室に向かった。

 社長室の前にはマーズが待ち構えていた。

 夕ご飯も忘れてアカギが戻ってくるのを待っていた。

 

「リーダー、待っておりました」

「マーズか。どうした?」

「大変良い報告があります。こちらをどうぞ」

 

 マーズは最高のモンスターボールをアカギにプレゼントした。

 

「なんだこれは?」

「リーダーの目でお確かめください」

「……」

 

 アカギは元気なくモンスターボールの中身を取り出した。

 そこから現れたのはエムリット。

 それはアカギに希望をもたらすポケモンだった。

 

 アカギはエムリットを見て目を大きく開いた。

 

「エムリット……」

「ええ、そうです。シンジ湖を捜索の末、ようやく発見したのです」

 

 すべてシロナのおかげなのだが、マーズは文字通り手柄を横取りにした。

 

「そうか。お前が新世界に導く光か」

 

 アカギはエムリットに輝かしい目を向けた。

 

「マーズ、よくやってくれた。お前のおかげで、ギンガ団は新たな世界に進んだ」

「ギンガ団に貢献できて光栄です」

「マーズ、君はギンガ団の光だ」

 

 アカギは人が変わったようにマーズを天使のようにあがめた。

 マーズにとってもそれは快感で、マーズが生きる意味はこの瞬間だけに依存していた。

 

「あとはユクシー。ユクシーが見つかれば、新世界の扉が開かれる」

「お任せください。必ずや、ユクシーも私が見つけ出してみせます」

「頼む、マーズ。おれを新世界に連れて行ってくれ。この世界はもう腐敗してしまった。おれたちの希望は新世界しかない」

「必ず、リーダーを新世界にお連れください。すべてこのマーズにお任せください」

 

 マーズはアカギの手前、力強くそう宣言した。

 しかし、いまのマーズにはあてがある。シロナという最強の武器がある。

 マーズはユクシー発見についても、シロナの力を借りるつもりだった。

 

 アカギの寵愛を受けたマーズはルンルン気分で自分の部屋に戻った。

 

「ふふふ、今日は最高の夜ね」

 

 マーズの気分は最高潮だったが、マーズの部屋の前に待ち構える存在があった。

 マーズの部屋の扉をとおせんぼうするように立っていたのはジュピターだった。

 

「なに?」

「何事かと思っていたらそういうことだったのね」

「だからなに?」

 

 マーズは迷惑だと言いたげに険しい顔をした。

 

「あなたにエムリットを見つけ出せるはずがない。誰の力を借りているの?」

「はあ?」

 

 ジュピターの話から察するに、どうやら、ジュピターはアカギとのやり取りを聞いていたようだった。

 さらに、ジュピターはマーズの能力を完璧に見極めていて、シロナの存在を疑っていた。

 

「なに言ってるかわかんないんだけど。どいてくれる?」

「嫌」

「だからなんで?」

「協力者を教えなさい」

「まったく何なのよ、あんたは。不愛想かと思ったらしつこく付きまとってきたり」

「警告する。ユクシーを見つけてはダメ」

「なんでよ?」

「いいから。もうそんなことはやめて真面目に働きなさい」

 

 ジュピターはアカギが計画している新世界への扉を開くプロジェクトに反対の立場を取っているようだった。

 

「なに言ってるの? リーダーが直々に私に仕事を命じてるのよ」

「だったら否定して。私の言葉はリーダーには届かないから、あなたが否定して」

「はあ、狙いがさっぱりわからないわ。はっきり言いなさいよ。私、馬鹿だからさっぱりわかんないんだけど」

「……」

 

 ジュピターはしばらく黙り込んだ後言った。

 

「来て。あなたに見せたいものがある」

「はあ……」

 

 マーズは仕方なくジュピターについていくことにした。

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