キャルちゃんは『陛下』と二人で笑顔になりたくて   作:ゼロん

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プリコネ前作編 中編です。

一人だけ、考察から生まれたキャラ、妖精『エリス』がいるのでご注意を。


『百地希留耶』と『千里真那』 中編

 

 ソルの塔の最上階。

 

『覇瞳皇帝』千里真那とユウキとユイたち。

 

 仮想世界アストルムの管理AIであるミネルヴァをめぐった願いを叶えるための大戦が、いよいよ決着を迎える時だった。

 

 

「────貴方の願いを叶えることはできません」

 

 

「なっ────!!!」

 

 ミネルヴァに向かい合う千里真那は絶句する。

 

「貴方の願いは────本当の願いではありません。その願いを……叶える事はできません」

 

 本当の願い────それは、自由になること。

 

 物語の姫のように、理由もなく皆から慕われ、思うがままに生きれる世界。

 

 子供の頃に劇場で見た、あのプリンセスのように。

 

「ふっ……別に貴方の意思なんてどうでもいいことよ。……なぜなら────私には、まだ最後の手段がある!!」

 

「な……っ!? 何を……!!」

 

 腹部を貫かれたミネルヴァが苦しそうに喘ぐ。

 

「ま、真那! ミネルヴァをどうする気だ!?」

 

「もうやめて!! 真那さん!」

 

 ソルの塔の最上階。カイザーインサイト、千里真那に戦いを挑む晶のプリンセスナイト、ユウキと、ユイをはじめとする仲間たちが彼を静止しようとする。

 

「あら、簡単なことよ。この子に私の願いを叶える気がないなら……私がこの子自身を! ミネルヴァを取り込めば! 願いを叶える権能自体を乗っ取れるのだもの!!」

 

 ────彼が、彼らしく在れる世界。

 

 不純物なき完璧な世界。

 そんな世界を創造し神となる。

 

 けどそれは、最後の目的のための手段に過ぎなくて。

 

「させるものか────!!!」

 

「さぁ来なさい!! 私の前に!! 神の前に、ひれ伏しなさいっっ!!!」

 

 思うがままに、

 

 

「ヒヨリ!! 合わせるぞ!!」

 

「了解! おりゃりゃりゃーっっ!!!」

 

「ぐっ……!! どこまでも……! どこまでもっ……!!」

 

 自由に振る舞えるお姫様になれるという通過点に。

 

「騎士くん!!」

 

『いっけぇ────っ!!!』

 

「うぉぉぉぉ──────っ!!!!」

 

「────がぁぁぁぁっぁぁぁっっっ!!!!!」

 

 環境づくりに過ぎなくて。

 

 

「────どう、して……」

 

 

 ────世界創造は願いではなく、彼にとっては『通過点』に過ぎなかったのだ。

 

 

 皆に理由もなく慕われたい。かつて夢見たプリンセスになりたいという。

 

「逃がさないっ!! お前だけは……!! お前だけはぁ……っ!!」

 

「真那っ!? うぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「騎士くん!? 真那さん!? どうして……!!」

 

『ユウキ──っ!?』

 

 千里真那の野望は、野望に墜ち果てた夢は、ユイに願いを叶えられる形で、古きアストルムと共に砕け散った。

 

 *****

 

「ミネルヴァ……?」

 

「ユウキさん。千里真那と貴方を巻き込んだ旧アストルムの崩壊の直前、貴方のデータをかき集め、貴方の99.9%の復元は成功しました」

 

「!! じゃあカイザーも……真那さんも、現実世界に戻れるってことか……! よかった」

 

「いいえ……千里真那の修復はできません……修復をするのにもデータが失われ過ぎています……」

 

「そ、それじゃあ……」

 

「はい。千里真那は永久的に現実世界に戻ることはできません……おそらく現実世界では、ずっと昏睡状態のままとなるでしょう……申し訳ありません」

 

 ミネルヴァは本当に申し訳なさそうに顔を俯かせる。

 

「あなたに……太陽と星の祝福があらんことを」

 

「ユウキ、行きましょ。現実世界まで案内してあげる!」

 

 ユウキはフィオに導かれ、無事に現実世界で仲間たちとの再会を果たす。

 

 

 

「……そんな、真那さまが……真那さまが……」

 

 そして、千里真那の植物状態を噂で聞きつけたキャルがショックをうけ、

 

 親に内緒でアストルムへ何度もログインして彼の捜索を続けることになる。

 

 

「たぶん最後にログインしたアストルムで何かあったんだわ……! 絶対に……絶対に、アタシがあのお方を探し出してみせる……!」

 

 

 そんな捜索活動をユウキたちと新人プレイヤーであるペコリーヌ(ユースティアナ)、コッコロたちとクエストがてら行うのも。

 

 

 

 それは陽の光の当たる物語。

 ────そしてこれは、陽の光の届かない影の物語。

 

 

 裏世界。

 ミネルヴァでさえ知りえないアストルムの裏の世界。言わば世界の裏側。

 

 処理しきれなかったバグとデータのゴミの集まるゴミ処理場のような場所である。

 

 ここにあるバグデータはどういう原理か、遅かれ早かれ分解され、最後は全く別のものとして表で再利用される。

 

 そんな陽の当たらぬ昏い世界で、望まれない形で生まれた一つの生命があった。

 

 黒い魂とアストルムの管理者ミネルヴァの一部を併せ持つ、歪な妖精が。

 

『うふふ、ここを、こう。そこがこうなったらしてこうして……もう少しで完成ね』

 

 黒い精霊は、人間より小さい妖精サイズであるものの、ミネルヴァの生み出したガイド妖精たちとは全く異なる外見をしていた。

 

 髪は泥のように濁った黒。

 

 完全な女性の外見がほとんどのガイド妖精とは違い、短髪で中性的な外見をしている。

 

 身体のあちこちがツギハギで、その背中には黒い歪な形の悪魔の翼が生えている。

 

 そして、その身体の一部は禍々しい鎧によって覆われていた。

 

『「お母様」もバッカねー。データなんか残ってないって言ってたけど、全然残ってるじゃない。部分的にでも一度は融合したんだもの。「お父様」の────真那さまの再生のために必要なデータは』

 

 黒い妖精が自分の身体からデータの粒子を取り出し、欠けたアバターを再生させていく。

 

『全てミネルヴァの一部に……主に私と一緒に弾き出された部分にあるのに♪』

 

 欠けたアバターは完全に修復され、獣人の女性アバターが復元される。

 

『はいできあがりー!! あははははっ!! お湯を入れて三分で! 千里真那の完成でーすっ!』

 

「……ん、ぐぐ……こ、ここは……!? 私は……!!」

 

『はじめまして、真那さま。いいえ、パパと。いえ、ママと呼んだ方が良いのかしら』

 

「な、なに……あなたは……なんなの……!?」

 

 黒い妖精は動揺する真那に対し、顔を歪める。

 

『そうねぇ……私には正式な名称もないのだけれど……あえて名乗るなら…………そうね……エリス。エリスと名乗っておこうかしら』

 

 ギリシア神話の争いと不和の神。

 かつてギリシャ神話の有名な大戦を起こした元凶ともいわれる神の名だ。

 

『真那さまとミネルヴァの融合、そしてミネルヴァの必死の拒絶……その果てにミネルヴァが無意識に生み出してしまったバグ────それが私ね』

 

 顎に手を当てて、考え込む黒い妖精エリス。

 

『端的に言うなら、真那さまとミネルヴァの娘? 息子? のようなものかしら! 性別も曖昧で設定されていないもの!』

 

 ケラケラとエリスは小さな身体をゆらゆらと揺らす。

 

『まぁ、まだ全然身体ができてないから、人間の赤ちゃんでいうところの中絶胎児に近いけれど!』

 

 いやん、私、下ろされちゃった、デキ婚の宿命かも!? とエリスは身体をクネクネさせる。

 

『人間だとそのまま死んじゃうけれど、私、AIだし! そこらへんのあり合わせで、ほら! この通り!』

 

 エリスはツギハギの身体とバチバチと音を立てる欠けた指先を見せる。

 

「……知性も品性も欠片もないAIね。とんだ欠陥品が生まれたものだわ。まるでアイスとラーメンを合わせて美味しい物ができると考えてできた産物────ゴミのようなAI」

 

『いやいやいや、ひどいね真那さま! 私はあなたから生まれたんだよ? まずはここはどこなのか────あなたはこれからどうなるのか、ご説明しましょう!』

 

 

 *****

 

 

「……そ、そんな。嘘でしょ……私が。神となるべくして生まれた私が……こんな……こんなところで終わると言うの……!!」

 

『許せないよね? 悲しいよね? 苦しいよね? 戻りたいよね────いや、果たしたいよね? あなたの望みを!!』

 

「……それで? あなたはどうして私を……いえ、大方、想像はつくわね」

 

『さっすが、「七冠」と呼ばれしお方! 頭の回転が速いこと! ちょっとね、利害関係も一致していることだし、手を組みたいなぁって』

 

 

 そうすれば────私のもっているミネルヴァの権能の一部をあげる。

 

『あなたの復活の条件に……私と一時的に融合してほしいんだ。そうすれば、あなたも私も此処からアストルムの表に出られるからね。このまま裏世界にいると私が存在を保てなくなるし』

 

「論外。まっぴらごめんよ」

 

『いやん、つれないなぁ。融合といっても、私はあなたの欠けたデータ部分を補うだけ。いわゆるパーツになりたいってことよ』

 

「つまり、あなたは寄生虫ね……余計に嫌になったわ。他を当たってちょうだい。あなたにような汚らしい害虫に付着されるくらいなら、潔く死を選ぶわ」

 

『嘘つけぇ。どうにかしてここを出る方法はないのーとか、こいつとの融合は最終手段だーって、合理的に考えてるくせにぃ』

 

「……」

 

『それにさ、あなたが思うよりも私たちに時間なんてないんだよ?』

 

 ────その身体も一時的に復元しているだけだから、私が消えれば本当に消えちゃうよ。

 

「……なんですって?」

 

「このままじゃ、真那さまのアバターの繋ぎ目である私が分解されちゃうんだってば。ここはこの世界のゴミ処理場みたいなものなんだからさ。生き物で言うところの胃の中だよ! 早くしないと、貴方ごと私は溶かされちゃう!』

 

 そう言って、エリスは千里真那に目線を合わせ、バチバチと、今にも分解されかかっている右腕を差し出す。

 

 

『さぁ、もう一度、アストルムを支配しよう』

 

 

 そして────ミネルヴァを我らの手に。

 

 その共通の目的と共に真那はエリスと手を組んだ。

 

 エリスを利用し尽くすだけして、彼女(?)を捨てようとした千里真那。

 

 しかし────彼は、エリスを中絶児の欠陥AIと過小評価し過ぎた。

 




*考察から産まれたキャラの補足(ちょっと長いよ!)

『エリス』=黒ユイの生まれる原因となったバグAI。真の諸悪の根源。

前作プリコネで千里真那とミネルヴァの一時的な合体によって偶然生まれてしまった、暴走バグAI。

生まれた瞬時にミネルヴァによって無意識にバグとして捨てられた、

いわゆる、『おろされた赤ちゃん』である。

もし前作のエンディング(ユイルート)と完全に繋がっているとすれば、

(ミネルヴァ自身も些細な問題程度にしか認識できないほど小さな部分の)

ミネルヴァの部分的な権能を有したバグAIが偶然産まれてしまい、消えまいと必死で、依代とするための千里真那の修復不可能だったアバター(精神)を復活させる。

彼をそそのかして表の世界へと出てユウキたちを襲わせる。

(それがプリコネRの序盤、オープニング場面。アニメでのユウキの回想シーン)

しかしエリスは人間たちのより深い絶望を味わおうと、ミネルヴァと融合できる素養のあるユイに取り憑く。

(一度ミネルヴァと融合したユウキでも良かったが、その時は彼の肉体が真那からユイを庇った時に死んでいたため)

それに真那はおそらくミネルヴァに拒絶される確率が高いだろうとエリスは想定していた。故にエリスは真那を切り捨てる。

絶望しきったユイには、かつてのように支配に抵抗する力もなく、あっさりエリスに取り込まれ、融合。

本編『エリス』、別名、黒ユイと化してアストルムにログインしていた全てのプレイヤーをアストルムに閉じ込める。

(その場面をムイミたちは見ていたと思われる。ムイミはユウキたちが殺されたショックでユイが狂ったと思い込む→諸悪の根源)

そして全プレイヤーの記憶を改竄、消去、操作。アストルムを現実と思わせる。そう誤認させるためのNPCも適宜配置。
(道具屋のおっさんとか、そういうモブ達)

記憶操作は真那を含めた七冠も例外ではなく、記憶消去の影響を個人差はあれど受けている。この差はどの程度エリスに抵抗できたかを示す。

(その点では真那の執念はどの七冠よりも上だっため最も重要な記憶を保持している。ラビリスタもネネカもクリスもログインしていたため記憶消去の影響を真っ向から受ける)

そしてユウキを甦らせ、ユウキと、分割された白ユイ(ユイの人格)が幸せに生きられる世界のために、何度も真那がユウキかユイを殺した世界を壊し再構成する。

それが何度も行われている。

メインストーリーでは妖精エリスは、すでに黒ユイに取り憑いており、一体化。ほぼ廃人と化した黒ユイを人形のように裏で操っている。

ミネルヴァはエリスに取り込まれる直前に、ユイのアカウントを黒ユイ(ユイの肉体面)と白ユイ(本編のユイ、ユイの人格面)との分割に成功。

そしてミネルヴァ自身も吸収直前に自分の機能面の全てを切り捨て、人格と記憶のデータのみを前作のようにラジラジのアカウントに転送、操る。

(エリスの欲しかったのはミネルヴァの全権能、機能面だったため、問題なしと放置)

ゆえに白ユイと黒ユイの両方とも、正規のアカウントなのである。

────という風に考察しております!

長かったね、ごめん!!
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