キャルちゃんは『陛下』と二人で笑顔になりたくて   作:ゼロん

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プリコネ 前作編 後編です。

次回からはプリコネR編へと移っていきます。


『百地希留耶』と『千里真那』 後編

****

 

 

ペコリーヌ……もといユースティアナ、キャル、コッコロ。

 

まだまだ始めたて、もしくは長らくログインしていなかったプレイヤーと一緒に、ユウキとユイたちは楽しく皆でクエストに出かけようとしていた日のことだった。

 

────千里真那が突如として新たなアストルムの世界に復活したのだ。

 

 

復活した千里真那の前に再びユウキたちは立ち塞がる。

 

「少年!! 少年!! 一体どうしたんだ!? くっ────私もすぐにそっちへ……!!」

 

『ふふ……♪ おばあちゃんったら、間に合うはずがないのに。さぁ世界崩壊は目の前よ……!』

 

エリスと融合し、ミネルヴァの権能の一部を使い、他の七冠の援助を全てシャットアウト。

 

『やっちゃえ、やっちゃえマーナさま! がんばれがんばれ、マーナさまっ!』

 

「────黙らないとバラバラにしてスクラップにするわよ」

 

『おおう、おっかないなぁ、もう! 黙りますー! もう黙りますので、存分にどうぞぉ』

 

加えて以前よりも遥かに力を増した千里真那の前に、晶……ラビリスタのバックアップもなく孤軍奮闘するユウキたちは成す術もなかった。

 

「真那っ!! もうやめろ!! やめるんだ!!」

 

「そうだよ……どうしても……! どうしても戦わなくちゃいけないの……!?」

 

それにユウキたちは確信していた。

 

────ここで真那を倒したら、今度こそ彼は現実世界に戻れなくなってしまうことを。

 

「ヒヨリ! もうやるしかないんだ!!」

 

悪行を懲りずに続ける彼に、もう救いの余地はないと断ずるレイ。

 

「私は何度でも!! 願いを叶えるためならば、何度だってあなた達と戦ってやるわ!!」

 

「真那さん……!! そ、そんな……! わ、私、いったいどうしたら……!」

 

「戦うんだ、ユイ!! 本気でやらないとみんな死ぬぞ!! ユウキも私たちも……二度と現実世界に戻れなくなる!!」

 

レイの叱咤激励にユウキ、ヒヨリは仲間を守る決意を固める。しかし……ユイは未だに迷っていた。

 

「────さぁっ、死になさい!!!」

 

「う、ぐぁぁ!!!」

「あぁぁぁぁ────っ!!」

 

「絶望しろ! 懇願し、神の前に跪け!!」

 

「ひ、ヒヨリちゃん!! レイちゃん!!」

 

そして────ついに運命の時は訪れる。

 

「────あ」

 

「さようなら、草野優衣ちゃん」

 

千里真那がその魔手をユイへと向ける。

一筋の破滅の光。

 

それがユイへと糸を結ぶように伸びていって。

 

「ユイーーーーッ!!!!」

 

一人の少年の命を、止めた。

 

「きし、くん……?」

 

「────ぁ、が」

 

心臓を貫かれ、アバターと同時に現実世界の身体の心臓も……連動して動きを止める。

 

「あ、あぁぁ……っ」

 

「……あら。まさかあなたが盾になるなんてね。けどこれで、余計な手間が省けたわ」

 

「……ぁ、ぁぁ……ああああっ!! いやーーっ!!!!」

 

「だってこれで……もうあなたを。お姫様を助けてくれる騎士は、もういないのだもの」

 

再び容赦なく、千里真那は笑みと共に指先に力を集める。

 

「あは、あっは! あーっはっはっは!! 実に! 実に痛快だわ!!」

 

絶対的な破壊の力が再び牙を剥こうとしているのだ。

 

「────もういかなる奇跡も、運も。これから起こる結末を変えることはできはしない」

 

 

「きし、くん……うそだよ、ね……きしくん、きし、くん」

 

「っ!! そ、そん、な……!! 騎士くん……!!」

 

「……っ、!!」

 

再び意識を取り戻し、立ち上がるヒヨリは絶句し、レイは真那への憎悪を燃やして考え無しに突っ込んでいく。

 

「彼を……!!! よくもユイから彼を────っっ!!!」

 

千里真那は歪んだ笑みを浮かべる。

 

「じゃあ、あなたたちも彼と同じところに行けばいいだけでしょう?」

 

────ズヒュン。

 

「これで、もうあなた達が怒り必要も嘆く必要もなくなったわ……この私の慈悲に感謝しなさい」

 

そんな風が通り抜けるかのような音が二回消えた時、ユイと真那以外の生命は消えていた。

 

ヒヨリも。レイも。力なく倒れる遺体と化していた。

 

もう二度と────彼女らが現実でも目覚めることはない。

 

「────」

 

ユイは身体を震わしながら言葉を失っていた。目の前で起こっていることが現実であるはずがないと思考が、事実を拒絶していた。

 

「ユイちゃん!! ────!? ユウキくん!! みんな……!! そんな……!! 一体、いったい何が……!?」

 

「あ、あるじ様!!!」

 

「────!! ペコリーヌさん!! コッコロちゃん!! ダメーーーーーーっ!!」

 

反射的にユイは二人へと逃げるように呼びかける。しかし────

 

「あら、まだ他にもいたの? けど────探す手間が省けたわ」

 

冷徹な言葉と共に、真那はペコリーヌとコッコロの命を、アリを踏み潰すように。

 

────その腕で刈りとった。

 

二人の遺体が宙を舞い、壁へと激突する。

息を絶たれた二人は力なく地面に転がるだけだった。

 

「へ、陛下……どうして……!!!」

 

────そして、残った最後の一人がこの場に現れる。

 

「あら、キャル。あなた……私がもう目覚めないと思っていたのね。ふふふ……」

 

「陛下……!! ちがいます!! あたしの話を聞いて!! 聞いてください!!」

 

「けど残念、運命は私に味方した。あれだけ私に媚びを売ってたのに────最後の最後に尻尾を出しちゃったのね……キャル」

 

まさか、よりにもよって晶たちの側につくなんてと真那は冷ややかに笑う。

 

「ちがう……!! ちがうちがうちがうっ!! こいつらは……こいつらはいい奴で……!! あなたを探すのを……ずっと手伝って……! アタシは────アタシは、あなたを見捨てたことなんて……!!」

 

「……耳障りよ」

 

────消えなさい、キャル。

 

真那の一言を最後に、悲鳴をあげる間もなく、キャルの身体は跡形もなく吹き飛んでいた。

 

真那は身体をユイの方へ向ける。

 

「さぁ……最後はあなたよ、草野優衣(くさの ゆい)ちゃん。けれど……あなたには、まだ利用価値があるわね」

 

『え!? ちょ、真那さま!?』

 

真那は己の身体からエリスを引きずり出し、その場へポイ捨てる。

 

「もうあなたは用済みよ、エリス。ミネルヴァを手に入れるのは私だけでいい。全てが終わったら、すぐにあなたを元のスクラップに戻してあげる……♪」

 

『ひ、ひどーい!! 私を利用したのね!? 協力するって言ったのに!! そうやって! そうやって捨てちゃうんだぁ!?』

 

「そうね。けれど────あなたもそうするはずだったでしょうに」

 

次の瞬間、エリスは真那によって握りつぶされた。

 

『────ぴぎぃっ!?』

 

「アカウントの権限は貴方からとっくに取り戻した。もう、あなたが消えても私には何の影響もないわ」

 

『あ、ぁ……あぁぁぁぁぁっ!!』

 

エリスは真那の手によって粉々に砕かれた。

地面に彼女『だった』黒い残骸が音を立ててパラパラと落ちていく。

 

「残骸も後で私が綺麗に片付けてあげる。さぁユイちゃん。あなたには、私とミネルヴァの融合を再び手伝ってもらうわ。もう精神的な支えが無い以上、私の『支配』から逃れることはできないはず……♪」

 

「きしくん……きしくん……!! おねがい……おきて……おねがい……うそだって。ぜんぶゆめなんでしょう……!? ねぇ、きしくんってばぁ……!」

 

「あら、完全に壊れちゃった。これはもう支配する必要すらないかもしれないわね」

 

……さて、他の七冠が干渉してくる前にカタをつけなくては。

 

ユウキの死体に縋るユイを引きずろうと手を伸ばす真那。

 

────その場には死体の山と絶望しか残っていない。

 

だがその絶望は、より深い絶望への序曲に過ぎなかった。

 

「なっ────!? か、身体が……!! 一体、誰が……!! 迷宮女王……それとも、変貌大妃!?」

 

突然真那の身体の自由が失われ、不自然な体勢でその場に時が止まったように固定される。

 

『はっろー!! 呼ばれて飛び出てジャジャジャーン!! 死んだふりの得意なエリスちゃんでーす!!』

 

先ほどまでボロ切れのように転がっていたはずのエリスが何食わぬ顔で二人の目の前に現れる。

 

「!? ば、ばかな……!? あなた、どうやって……!! それに、私のアバターの権限は……!!」

 

『ぷー!! 油断させるためにワザと権限を一時的に返したに決まってんじゃん!! 約束を守ろうともしない悪い子にはお仕置きです!』

 

パチンとエリスは指を鳴らす。

 

『さぁーて! 無垢な少女を絶望の底へ陥れた極悪人には、そこで目的達成のあと一歩で動けない、無力感と罪悪感で苦しんでもらいましょう! まぁ、真那さまには罪悪感とか、そんなもの無さそうですけどネ!!』

 

「な────!! たがが欠陥品のくせに……!! よくも!!」

 

『どうも〜、神の権能をもった、欠陥品でーす☆』

 

さてと、じゃあ仕上げに、とエリスが放心状態のユイにその小さな腕を伸ばす。

 

『ユイちゃんの中に、おっじゃましまーす!』

 

 

「────そこまでよ、ビッチ!! 今すぐにユイから離れなさい!!!」

 

 

ばしん!! と突然エリスの頬に平手打ちが叩き込まれる。

 

『────げふんっ!?』

 

平手打ちを喰らった妖精エリスは蚊蜻蛉のように地面に叩きつけられる。

 

「ごめん、ユイ!! 急に遠くまで弾き飛ばされるもんだから戻るのに時間かかっちゃった!」

 

「ふぃ、お……?」

 

「しっかりして!! いい? 今すぐにアストルムからログアウトして!! ここは危険よ!!」

 

「でも────きし、くん、が……みんなが」

 

フィオはユウキの死体────並んでいる皆の遺体を見て顔を真っ青にする。

 

だがユイの怯えきった表情を見て、冷静を保とうとキッと表情を引き締める。

 

「……っ。残念だけど……。けど、ミネルヴァ様ならなんとかできるかもしれないから……! 私たちを信じて早くここから────!!」

 

今は自身の創造主と奇跡を信じるしかない。わずかな希望を胸にユイと共にその場から逃げようとする。

 

あの謎の妖精が起きないうちに────!!

 

『そーんな大きな声で言ってたら、悪ーい妖精に先手をとられちゃうゾー☆』

 

「!!」

 

フィオが後ろを振り向くと、そこには邪悪な笑みを浮かべる黒い妖精が翼を広げていた。

 

ユイの周囲には結界のような膜が貼られている。

 

『おねぇさま、いったーい。妹に暴力振るうとか姉失格だねぇー?』

 

エリスは叩かれた頬をすりすりと手で擦る。

 

「ふぃ、フィオ……! だめ……! アストルムからログアウトできない……!!」

 

「くっ……!!」

 

ユウキの身体を抱えたまま、ユイは端末をいじる。しかし『error』の文字がビッシリと表示されたまま。

 

「落ち着いて、ユイちゃん! けどこれはミネルヴァ様の────!! あんたはいったい……!?」

 

『ふっふふー♪ ロクな権限も力も持たない雑魚なお姉さまに用なんて無いのだー♪ ────お返しだ!! 消えろ!!』

 

エリスは可愛らしげな表情を憎悪で歪め、その歪な細腕を、腹を抉り抜くような鋭い爪を持つモンスターの巨腕に変化させる。

 

「ぁっ────!?」

 

エリスの巨大化した爪に半身を引き裂かれ、握りつぶされるフィオ。

 

「フィオちゃん!!」

 

『あっはははっ!! ざっこ!! ざっこぉぉ! ざっこいなぁお姉様は!! そのままそこでの垂れ死んじゃえ!』

 

巨大な爪を元に戻し狂笑する妖精エリス。

 

「う……ゆ、ユイ……っ! ユウキ……!!」

 

羽は折れ、瀕死の蝶々のような姿に。あまりのショックに身体が僅かに痙攣している。

 

「フィオ……そんな……フィオちゃんまで……!!」

 

『さぁ、ユイちゃん。私とちょーーっとお話ししよ? 真那さまみたく痛くはしないから。それに────騎士くんと大切なみんなを生き返らせる唯一の方法を教えてあげる』

 

冗談ではないと千里真那は怒りの表情を浮かべる。

 

「ま、待ちなさい────!!! お前、どこまで私の邪魔を────!!」

 

『じゃあねー真那さま! ちょっとだけの間だけど、楽しかったぞ☆』

 

「う、うそ……こんなの、嘘だよ……!」

 

『ううん、嘘じゃないよ、現実だよユイちゃん。残酷なまでの、げ・ん・じ・つ』

 

 

 

────さぁ、これから君の願いを叶えてあげるよ、ユイちゃん♪

 

 

 

そう言って、エリスとユイと融合し、ミネルヴァをも吸収して。世界は再構築された。

 

 

「騎士……クン」

 

 

さぁ繰り返そう。何度でも何度でも。何度でも。望むエンディングにたどり着くまで何度だって。

 

────ユイちゃんと騎士くんが本当に幸せになれる世界になるまで。

 

生き返らそう。殺そう。死なそう。

引き裂こう。結ぼう。

 

何度でも何度でも。何度でも。

 

望みじゃないエンディングを何度でも否定しよう。

 

時間なら、機会ならいくらでも。

もうあなたは私もミネルヴァをも取り込んだのだから。

 

あなたはもう神なのだから。

 

この世界の絶対支配者なのだから。

 

あなたはもう『エリス』なのだから。

 

このアストルムの新たなる管理者にして閉ざされた世界の新しく、そして『唯一』の神なのだから。

 

再生と破壊、上書きを繰り返そう。何度でも。

 

「騎士……クン」

 

そう、何度でも何度でも。何度でも────!!

 

『あぁ……いいわぁ。こうして届くはずのなかった高みから見る人の絶望は。嘘を真実と信じて止まない人間の愚かさは……あはっ……見ていて、なんて……なんて心地いいのかしら……あはっ……! アハハハッ!!』

 

さぁ足掻きなさい、ニンゲンたち。

 

新しくも古い絆を紡ぎなさい。

何度も何度でも。

 

未来も過去も運命も。

何もかもが閉ざされたこの絶望の世界で。私の与えた偽りを真実と信じて。

 

 

────そして最後には、私が絶望で全てを引き裂いてやる。

 

 

産まれてから消える運命しか与えられなかった私のように。

 

 

『アハハハッ、あはは、あははははっ!!』

 

 

それがこの滅びゆくアストルムに残された道。

朽ちゆくバグAI『エリス』が人間たちの記憶の中で、生きる負にして唯一の道なのだ。

 

 

*****

 

 

潰された半身を地べたに擦りつけ、消えかけても尚進む緑のガイド妖精は、ある場所へと向かう。

 

 

「ユイ……ユイ、まってて……あなたは、あなたは悪くない……!! ぜんぶ、全部この事態を察知できなかった私たちのせい……! 待ってて……私は、私は必ず────」

 

 

あなたとみんなを────そしてユウキを救ってみせる……!!

 

「たとえ私がどうなろうとも……!!」

 

欠けたガイド妖精の目の前にあったのは、廃棄された試作型ガイド妖精『アメス』の期待だった。

 

「お願い……! あなただけが頼りなの……! 力を貸して……!! 『お姉ちゃん』……!!」

 

 

*****

 

 

「くっ……おのれぇぇ……!! ユイ……!! エリス……!! ぐぅっ!!」

 

再構成された世界で、真那はボロボロの身体を引きずる。

 

「この程度で……この程度で、この覇瞳皇帝がっ……! この千里真那が諦めるとでも……!! ぁぁぁ!!!」

 

そして目の前に突如として現れたシャドウを喰らい、欠けた肉体を再構成する。

 

「ふふ……はははっ……見ていなさい。この力で……蓄えた圧倒的な力で! 必ず私はこの偽りの世界で……歪んだアストルムで、あなたを始末して! 今度こそミネルヴァを取り込んでやる……!! ────今度こそ……!!」

 




次回の投稿は明日の15時になります!
お楽しみに!
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