戦車道の開会式に向かう水田は、その道中で秋川に「前世でミヨコという言葉に覚えはないか」と尋ねる。
秋川は「前世の引田がそう呼ぼうと言った」と話す。水田には覚えのない話だった。
開会式にて対戦相手を決めるくじ引きで、初戦の対戦相手は『九十九里女子学園』となった。加藤は「去年も初戦で当たり、敗北した」と語る。
開会式が終わった後、水田と秋川は学園艦の出港まで時間を潰すために近くのカフェに立ち寄った。そこで全国的に有名な『西沢姉妹』と対峙する。
妹の西沢麻美から「私たちの敵じゃない。今年も私たちが絶対勝つ」と言われ、水田は「この世に『絶対』という言葉は存在しないものと思った方がいい」と言い返した。
学園艦に戻った水田は、格納庫で休んでいるホリ車の前に立ち寄った。その様子を見ていた『ミヨコ』は、その光景を懐かしみながら、「自分が忘れた過去をいずれ思い出す事になる」と心の中で呟いた・・・
初戦まであと1週間。
水田たちは朝から戦車道の訓練に励んでいた。彼らは各車両に乗り込んで射撃訓練を行っている。目標は500メートル離れた標的だ。ホリ車と戦った4輌の戦車とホリ車は、横1列に並んで演習弾を撃っている。
「目標中戦車!距離500メートル!撃て!」
水田の指示に合わせて神原が撃発ペダルを踏み込む。砲弾は円弧を描いて飛翔していく。水田は測距儀を通して弾道を確認している。
「命中!次は秋川だ!」
副砲から砲弾が撃ち出され、的に向かって飛翔していく。
副砲は46口径37㎜砲で、歩兵の排除や主砲装填中の隙間を埋めるために付けられている。元々口径は小さいので、操作は1人で担当している。
副砲から撃ち出された砲弾は、的に対して300メートル手前に着弾してしまった。水田は「もう少し仰角を上げろ」とアドバイスした。
「良いね良いね。みんな結構当ててるじゃない」
加藤は戦車のハッチを開けて、射撃訓練をしている様子を眺めていた。
「私たちは参加しなくて良いの?あなた一応隊長でしょ?」
「射撃訓練はどうしようもないよ。この戦車の主砲じゃ500メートル先の戦車に当てられても撃破出来ないし」
加藤たちが搭乗しているのはフランスの戦車『ルノーNC型』。この学園の物は1930年(昭和5年)に旧日本陸軍が輸入したもので、『ルノー乙型』と呼称されている。
非武装の状態で約10輌(12輌説もある)が輸入され、日本で改造が出来るようにと砲塔に改修が施されていた。主武装は37㎜改造狙撃砲、6.5㎜改造3年式機銃、もしくは11年式機銃に換装された。このルノー乙型は3年式機銃搭載型である。
戦車の生産能力が不足していたという理由で輸入された戦車だが、前年に仮制式化されていた89式中戦車と比べて、その性能は期待を大きく下回るものだった。
転輪軸が折れたり、車内が加熱しやすく常にエンジンの冷却水を補充し続けなければならなかったり、速度が18㎞弱しか出せない等の問題があった。
フランスから技師を呼んで見てもらったが、「湿気の多い気候や連続運転等、日本側の運用に問題がある」と突き放されてしまった。他国への売却を考えたが実現には至らず、最終的に技術本部で改修を施すことになった。
満州で戦闘を行う部隊へ配備されたが、すぐに89式中戦車に取って変わられたという。満州から引き上げた後は各自戦車学校にて訓練に使用され、展示車両となった。
この学園の中では特に扱いづらいと酷評されている。
現代技術の恩恵で多少が性能は向上しているものの、最高速度は18㎞から24㎞と僅かに増加しただけで、火力の面では歩兵にしか通用しない6.5㎜の機関銃のみ。装甲は最大で20㎜しかなく、他校との試合で使用するには癖のある戦車だった。
「もうっ。整備班から37㎜砲に換えた方がいいって言われてるのに。機関銃じゃ満足に戦えないってこと、分かってるでしょ?」
「分かってるよ。でも37㎜に換装したら即応性に欠けるから避けたいんだよねぇ」
ルノー乙型は2人乗りだ。他の戦車と比べて、乗員が兼任しなければならない作業が多い。特に車長は砲手、装填手、通信手の計4役を兼任しなければならない。
通信手の役割を操縦手が兼任したとしても、車長に掛かる負担は大きいのだ。
「だったらもう少し性能が高い戦車に乗り換えるとかすれば良いじゃない。同じ2人乗りでも、これよりマシな戦車は探せばあると思うけど」
「うんまぁ・・・その内にね」
訓練を終えて格納庫前に戦車を整列させると、加藤が乗員を呼び出した。
「よーし。全員揃ったね。みんな分かってるとは思うけど、試合まで後1週間を切ったわ。みんなの訓練を見させてもらってるけど、良い動きしてる。これなら初戦突破は・・」
加藤の演説を他所に、水田は一番端に停まっている1輌の戦車を見ていた。
先程の訓練で『的』として使用していた中戦車だ。秋川は「パンターですね」と言っていたが、その見た目は普通のパンターとは違って見える。
傾斜している正面装甲は山形に折れている部分の角が丸く、砲塔の装甲は僅かに増設されていた。
加藤か整備班の三吉が動かしているが、一緒に訓練に参加したことは無く、訓練の度に射撃の的として使用されている。
戦車を選ぶ時も「空いているのはカヴェナンターだけ」と言っていた。乗員はいるようだが、それらしい生徒は見たことがない。
「・・と言うわけだから、みんな気合い入れて試合に挑んでね!」
「「「「「はい!!!」」」」」周りの返事でハッと我に返った。
1週間後。
延岡女子高等学校の学園艦は、朝早くに九十九里の港に入港した。
水田たちは戦車を下ろすために左舷に設けられているエレベーターの前に戦車を集合させている。水田が辺りを見渡すが、パンターはいなかった。
「水田さん。前進命令です」秋川が水田に報告する。
「あ、ああ。分かった。織田、誘導員の指示に従い微速前進。エレベーターに載せろ」
「了解」織田は誘導員の手旗信号の合図を見ながら前進させてエレベーターの籠に載せた。
「戦車をエレベーターで降ろせるなんて、すごい時代になりましたねぇ」
伊藤が下がっていく景色を眺めながら言った。
当時は戦車の積み降ろしと言えばワイヤーを繋いでクレーンで降ろすか、輸送船を使って海岸に接岸させて降ろすしかなかった。時代の流れは本当に早いと実感させられる。
籠が下がるにつれて歓声が大きくなり、下から見上げている観客たちの視線がホリ車に集中していく。到着するとゲートが開き、織田がゆっくりと前進させる。
ホリ車が前進していくと、歓声が少し小さくなっていった。水田がキュウポラから上半身を出して外を見る。周りの人たちはヒソヒソと何か話している。
「ここも戦車道に男子が参加するという情報は、曖昧な物だったようだな」
「信じられないのも無理ないと思いますよ。それに、そんな格好してたら余計目立ちますし」
織田がクスッと笑った。
水田は加藤に頼んで戦闘服を用意してもらっていたのだが、その戦闘服と言うのが旧日本陸軍が着用していた軍服に似ていたのだ。
着用している服は上下カーキ色で、ブーツを履いている。頭には戦車兵が被る『戦車帽』を被り、『戦車眼鏡』と呼ばれるゴーグルを付けている。この格好では誰がどう見ても旧日本陸軍の戦車兵にしか見えない。
更にどういうわけか、秋川も同じものを着用すると言い出し、旧日本軍の格好をした生徒が2人いるという奇妙な形になった。秋川も制服では作業がやりづらいと感じたのだろう。
九十九里女子学園の生徒たちは各車両の車長を集め、試合前の打ち合わせを行っていた。
机の上に地図が広げられ、あちこちに印が付いている。打ち合わせも終盤に入った時、歓声が聞こえなくなっていった。何があったのかと外を見ると、戦闘室の側面に何らかの絵を描いている戦車が通りすぎていった。
「あれが例の・・・砲戦車、だったかしら。あの女子高もやけになったのかしら。砲塔がない戦車を追加するなんてね」
九十九里女子学園の隊長を勤めている『
3年生に上がり、隊長を任された。生徒同士の団結力を第一とし、戦闘スタイルも味方同士の連携を優先に考えている。
「この試合は余興と捉えても良い。でも良い?次の試合からは気合い入れて挑むわよ!」
試合開始30分前。
加藤が打ち合わせをするために車長たちを集めていた。この打ち合わせが終わったら、スタート地点に移動しなければならない。あまり時間がないので手短に話していった。
試合形式は『フラッグ戦』。『フラッグ車』と言う旗を掲げる車両を最初に撃破した方が勝利となる。今回そのフラッグ車を任されたのは加藤が搭乗するルノー乙型である。
まず進行するのは森林があるエリア223。カヴェナンターを先行で偵察に出して、状況を確認させる。もし会敵しても攻撃はしない。
カヴェナンターからの情報を確認した後、加藤たちがこのエリアに侵入。互いに視認出来る範囲で広がり、敵を発見次第攻撃に移る。向こう側の方が機動力があるので深追いはせず、常に木と車体が重なるように行動する。木で攻撃を防ぐ作戦だ。
敵の数がある程度減らせたところで機動力のあるカヴェナンターとVK30.01(P)で追い込みに掛かり、最終的には互いに協力してフラッグを叩く。
「・・・と言うのが私の作戦だけど、水田くんは別に立てたんだったよね?聞かせてくれる?」
加藤に質問された水田は、机の上に自分で立てた作戦を記した地図を広げた。
「今回の敵は、ホリ車にとって厄介な相手です。加藤隊長達と共に行動すれば、集中砲火を浴びることになります。そこで試合開始と同時に、小山のようになっているエリア224に移動します。ここは高台のような場所があり、エリア223を見渡すのに適しています。ここから偵察班から受け取った情報を元に敵の位置を捕捉、狙撃します」
「うーん。それだと私たち巻き込まれたりしないかな?木が邪魔して敵か味方か判別しにくくなると思うけど」
「その通りです。そこで加藤隊長達にも協力を願いたいのです。敵が何処から来たのか、何処へ逃げたのか、その情報を教えて欲しいのです。より正確なの情報が得られれば、敵の捕捉もしやすくなりますし、味方を巻き込む心配もありません」
「成る程。私たちから見て、敵がどんな動きをしているか教えて欲しいと言うわけね。概要は分かったけど、あなたたちだけで行動して大丈夫なの?エリア224はかなり離れるし、援護を要請されてもこっちは何も出来ないよ?」
「敵の出方を自分なりに推理しました。敵の火力は遠距離に適してませんし、狙撃をするメリットがありません。裏を取るにしてもわざわざ山越えをするルートを選ぶ可能性は低いと言えます。自分なら、確実に戦闘を遂行するためにエリア223の小路等を使う最短ルートを選びます。敵も同じ考えの筈です」
(味方とどう連携を取るかだけじゃなくて、敵がどう出るかまでちゃんと予測してる。やっぱり、この子凄いわ)
加藤が感心している中、酉沢は見えないように拳を握りしめていた。素人の癖に、自分以上にちゃんとした作戦を立てていることに悔しさを感じていた。
「よし!その作戦で行こうか!」
加藤の快諾が得られ、ホッと胸を撫で下ろした。この学園の中で一番火力が高いのはホリ車だ。その火力を生かして前線で戦えと言われたらどうしようもなかった。
「じゃあ各車両に戻って、スタート地点に移動。その間に作戦伝えておいてね」
スタート地点に到着すると、水田は上半身を出して双眼鏡で遠くを見た。砲撃陣地とした高台が見える。そこから下に向けて視線を持っていくと、エリア223が視認出来る。
「そう言えば、加藤隊長が通信機器を入念にチェックしろと言ってましたよね。何かあったんですか」
秋川が無線のスイッチを入れて周波数を合わせる。無線機は問題なく作動している。
「去年の試合で無線が一時使えなくなるトラブルが起こったらしい。大丈夫だと思うが、確認は怠るな」
『それでは、延岡女子高等学校と九十九里女子学園の試合を開始します』ファンファーレと共にアナウンスが流れる。ファンファーレが終わると、信号弾が空高く打ち上げられる。
『試合、開始!』
両者一斉にスタート地点から走り出す。
予定通りにカヴェナンターは先行して偵察に出発し、ホリ車は本隊を離れて高台へ向かった。
エリア223。
カヴェナンターはエリア内を走りながら偵察していた。エンジンをなるべく絞り、敵が通りそうな道をなるべく避けながら走っていた。
このカヴェナンターも現代技術や整備班の改造のお陰で車内温度の上昇は抑えられているが、それでも車内温度は30℃前後になる。常に暖房を付けながら走っているような状態だ。
「・・・あっつい。もう最悪。これなら日本の戦車の方がまだマシかも」周囲を見張りながら愚痴を溢す。
「車長。何か無線機から雑音が聞こえ始めたけど・・・これって故障かな?」通信手が無線機を弄りながら言った。
「はぁ?何をやったら故障すんのよ」そう言いながらヘッドホンの片方を耳に押し当てた。確かにスピーカーからは雑音が聞こえてくるが、故障ではないだろうと判断した。
「無線は問題ないわ。古い型何だからそれぐらい・・・」
視線を前に戻すと、敵戦車が3輌ほど通りすぎていくところが見えた。停車するように指示し、その場で敵の動きを見た。
先に通りすぎていった3輌の次に、敵が次々と進軍していくところが確認出来る。すぐ報告しなければと、喉元に付けている咽頭マイクのスイッチを入れる。
「こちら酉沢。本隊応答してください」ヘッドホンのスピーカーを押し当てたが、聞こえてくるのは雑音だけだ。
「こちら酉沢。本隊、応答してください!何で?何がどうなってんのよ。通信手!ちゃんと無線の周波数合わせてるんでしょうね!」
「合わせてるわよ!でもどの周波数に調整しても無線が通じないの!」
無線機を叩きながら調整しているが、どの周波数も拾わない。
「・・・一旦戻るしか無さそうね。敵に見つかっても構わないわ。最短ルートで本隊に戻るわよ!」
エリア224。
ホリ車は山道を登っていた。平地を走るより遅いが、これでも昔と比べたらまだ良い方だ。
代表的なチハ車やチハ改は、エンジンは頑丈だったが出力不足が目立つ事が多く、戦車第14連隊にて鹵獲されていたM3に牽引されながら坂道を登ったという逸話が残されている程だ。
「あーぁ・・・高台に着いたら、私は暇になるなぁ」
織田がボソッと言う。「だったら、副砲の装填手でもやります?」
「嫌よ」秋川の提案をあっさり断った。その時、一瞬だけ車体がガクンと揺れた。水田はその微妙な変化を逃さなかった。
「織田。一瞬ガクンと来たぞ。アクセルワークをミスったか?」
「いえ。そんなことは・・・」無いと思いますけど、そう言い掛けた時。車体が揺れ始め、エンジンが停まってしまった。
「えっ!?ちょっ。何で!?」慌ててキーを捻って再始動を試みたが、クランキングするだけで掛かる素振りを見せない。
「落ち着け。加藤隊長に連絡する。秋川、周波数を合わせろ」
インカムのスイッチを入れて呼び掛ける。しかし、加藤から応答が無い。
「こちら水田。加藤隊長、応答してください。加藤隊長、応答してください。・・・ダメか」
ヘッドホンのスピーカーから聞こえてくるのは雑音だけ。無線も通じない状態に違和感を感じた。
「織田、秋川。ちゃんと点検していたよな?」
「ええ。しっかり点検しました」
「私も。スタート直前までエンジンを確認してました」
確認を取ると、水田は車外に出て車体後部に回った。マフラーを外して点検口を開け、エンジンを引っ張り出す。ペンライトを当てながら部品を見ていくが、特に変わった所はない。
車内に戻って無線機を弄ってみたが、こちらも問題なく作動している。
「まさかと思いますが・・・敵が何か細工したのでは?」
神原が囁くように言う。
秋川たちはそんな事はあり得ないという表情だが、水田もその可能性を考えていた。
無線が通じないのは強力な妨害電波が出されているからで、このエンジントラブルはこちらの隙をついて何かしら細工を施したからではないかと。しかし、どちらにしても考えにくい仮説だった。
妨害電波を発信したとすれば、敵も味方も連携が取れない状態になるのでメリットがない。
エンジントラブルを起こす細工を施したとしても、狙うとしたらフラッグ車のルノー乙型だろう。ホリ車を狙う理由がない。
思考を巡らせて仮説を立てていたが、重要なことを思い出して腕時計を見た。予定の狙撃ポイントに到着する時間が迫っている。到着したら加藤に連絡する手筈となっていた。
(マズいな。無線は通じないし、ホリ車はエンジントラブルで動けない・・・今はとにかく、ポイントに移動して状況を確認しなくては)
「全員聞け。これからの動きを説明する」
水田に視線が集まる。
「秋川。無線機を担いで俺と一緒に来い。我々だけでも先に移動して状況を確認する。織田、神原、伊藤の3人はエンジントラブルの原因を探れ。修理が完了次第、予定していた狙撃ポイントに来い」
ホリ車には万が一、車内用の無線が故障した場合に備えて持ち出しが出来る『マンパック型無線機』を載せている。バッテリーや無線機本体が大型なので、背負って持ち運ぶ。
秋川は無線機を探し始め、織田たち3人はエンジンのチェックに入った。水田も個人用装備を整えて出発準備を済ませた。
エリア223。
加藤たちはエリアの境界線で待機していた。そろそろカヴェナンターから連絡があってもいい頃合いなのだが、無線機は味方からの電波を受信しない。
「ねぇ。そろそろ移動した方がいいんじゃない?」原田が痺れを切らし始めた。他の乗員も同じ意見だ。
「うーん・・・何かトラブルに巻き込まれたのかな。仕方ない。エリアに侵入するわ。慎重にね」
重戦車のVK45.02(P)を先に前進させ、他の車両もその後に続いてエリア内に侵入した。
本隊はVK45.02(P)を戦闘に楔型陣形を取って進軍していく。加藤はカヴェナンターからの通信をすぐ受け取れるように無線機の前に張り付いている。エリア223はとても静かだった。この静けさが緊張感を高めていく。
「ねぇ。あれって・・・」原田が加藤を呼ぶ。ハッチを開けて進行方向を見ると、カヴェナンターが全速力で迫っていた。加藤は本隊を停止させ、カヴェナンターはルノー乙型の横についた。
「どうしたのよ!?無線で連絡する手筈だったでしょ?」
「それが、無線機が故障したのか通じなくて。直接報告すべきだと思って戻ったんです」
「敵襲!真正面よ!!」
原田が叫ぶ。加藤と酉沢が反応したが、敵戦車郡が一斉攻撃を仕掛けて来た。
「各自応戦!深追いはしないで!」
加藤の命令で味方が反撃に出る。加藤は片手で機関銃をのトリガーを引き、片手で無線機を手に取った。
「こちら加藤!水田くん応答して!」ヘッドホンから聞こえてくるのは雑音だけだ。「水田くん!?ホリ車、応答して!!」
「無線は通じてない!」原田が回避行動を取りながら叫ぶ。「車内無線も通じてないし、他の戦車からも連絡が来てない!去年と同じ状況よ!」
加藤は一瞬愕然としたが、すぐに切り替えて反撃に転じた。他の戦車の乗員たちも無線が通じないが、他の味方の状況を確認しながら反撃していた。
エリア224。
水田と秋川は到着ポイントの中間点で無線機の電源を入れて加藤に連絡を取っていた。
「こちら水田!加藤隊長、応答してください!本隊どうぞ!誰か聞こえないか!?」
周波数を変えて見るが、応答は一切ない。秋川が不安そうな目で水田と見る。
「完全に孤立しましたね・・・まさか無線が通じないなんて」
「しっかりしろ。とにかく予定のポイントまで急ぐぞ。あそこならエリア223が見渡せるから、本隊がどういう状況に置かれているのか確認できる。行くぞ!」