「友達が贋作を買わされてる?どうにかしてほしい?逆に聞きますがどうしろと……取り敢えず話は聞かせてもらいますが」
私、
それだけ食べ、ささっとおいとまさせてもらう予定だったのだが、女主人であるさんが相談を持ちかけてきたのだ。
断ればよかったがなにか奢ると言われたら無理だ。男子大学生はタダ飯に弱いのだ。しかもそれが好きな人のものならなおさらだ。
「いやさ、具体的な方法とかじゃなくても、贋作を買っちゃった理由とかでも良いんだけどさ!なんか思いつかない?」
「そんな事言われてましてもね……贋作なんて騙されて買う以外になんかありますかね?」
「そこを君の豊かな知識と推理力でなんとか、今までしてきたみたいにさ」
「おだてても何も出ませんよ……そこまで言うなら一応考えてはみますが、何もわからないかもしれないので過度な期待はしないでくださいね」
そう言って取り敢えず持ってきていたカバンからメモ帳とペンを出す。
頭の中だけで推理をできるのはごく一部の探偵だけだ。
「それじゃお聞きしますけど、その友人さんのプロフィールは?」
メモ帳を広げ聞いた話を羅列し始める。
「私と同じで20代前半、なんか商売で一山当てたらしく小金持ちで高校生の頃からの知り合い」
「ふむ、美術に関心はいつからあったかわかります?」
「高校のときからあったよ。しかもかなり詳しかった」
「なるほど、では少し話を変えますが、なぜ贋作を買ってると思ったんですか?」
「ええっと、その子のお家に行った時に絵がいくつか飾ってあったんだけど、よくわかんなくて。だからスマホで写真撮って画像検索してみたらすごく有名な人の絵らしくてすんごく高かったんだよ。その友達でも買えないくらいに……だから偽物じゃないの?って聞いたらなんか喧嘩みたいになっちゃって……」
「もしかして、問い詰めるような感じで言いました?」
「うん言っちゃった……」
「それは喧嘩になりますよ、私に話を聞くよりも素直に謝った方が良いんでは?」
思わず顔をあげてしまう。
「そうなんだけどさ、その、どうしてもきっかけが欲しくて」
「……そういうことなら良いですが。ただ、その問題を解決できるのは鶴巻さんだけですからね。私ができるのあくまでお手伝いです」
「ん、わかってる。迷惑かけてごめんね」
「辛気臭いのは結構です。寂しそうなのよりも笑顔が鶴巻さんには似合いますよ。取り敢えず考えるので待っててください」
「わかった、励ましてくれてありがとうね」
「いえいえ」
そこで注文が入りちょうど会話が途切れた。私もそろそろ真面目に考えなければならない。
取り敢えず思いつく考えをいくらかメモに書き込む。
そもそもなぜ引っかかった?ある程度の知識があるなら自分では買えないくらいの値段だということは気づきそうなものだが。しかもそれを何回もやらかしたのか?いや、違う。わかってて買ったのか?だとしたら……
姿勢を正す。目を閉じる。耳を塞ぐ。ぐちゃぐちゃな頭の中を整理する。言うべきことを整理する。耳を通す。目を開ける。
いつの間にかカウンターを挟んで向こう側に鶴巻さんがいた
「おっいつもの来たね。なんか思いついた?」
「それ、騙されては無いかもしれません」
「おっ!!」
「あくまで確定ではない事を承知で聞いてくださいね。その友人さんが買ったのおそらく本物ではありません」
「あら?さっき騙されては無いって……」
「ええ、騙されては無いですよ。おそらく鶴巻さんが見たのは
「……そんなことってあるの?」
「ええ、ありますよ。本物よりもかなり安いですし、出来の良いレプリカは見てる分には本物と見分けがつかない程ですから」
「じゃあ、あれって偽物じゃなかったんだ。どうしよう……」
「謝るしか無いと思いますよ。買うほどなので思い入れはあるでしょうがそれを偽物と言われたら怒るのも無理は無いかと」
「そうか、そうだよね。ありがとうこんな時間まで考えてくれてありがとうね」
「いえ、それほどでも、って、っちょっと待ってください。今何時ですか?」
「十二時過ぎだけど、」
考えてる間に閉店時間を過ぎていた。確かに店内に客は私しかいない。いい加減家に帰らなければならなと明日の講義に響く。
「もう帰りますね」
「あ、待って、お礼がまだ出来てない……」
「今度でいいですよ」
「ごめんね〜なんか高いやつを作って上げるからまた来てね。あと……」
「なんです?」
「ちゃんとどうなったかは言うね」
席を立ち、店を出る。
帰り道を歩きながら考える。背中を押すことはできたが、それがどう転ぶかはわからない。もしかしたら悪い方向に向かうかもしれない。人間関係は以外にも脆い。だが……
明日も鶴巻さんが笑えますように、ただそう思った。