ジョニーです。   作:夜ノとばり

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J「創也さん。良いニュースと悪いニュースがあります」
S「……悪いニュースから聞こう」
J「この作品の一話投稿時点でのPVが13です」
S「少なっwww ……なら、良いニュースは?」
J「……『継続は力なり』という言葉があってですね。連載を続けることが作者の文章力を伸ばす重要な足がかりになると」
S「良いニュースは??」


【二話】創也「散歩でも行くか」

 【S】

 

 冬が終わる。

 

 吐く息はまだほのかに白く染まり、さあっと跡形もなく眩しい朝日に溶けた。時刻は早朝、朝焼けが街をどこか琴線に触れる橙に色づけている。

 

 凍えるような寒さはすでに去り、少し肌寒さを残しながらも暦は春分。そよそよと手に、顔に吹き付ける風は春の温かみを帯びていた。

 

 終わってみれば短いものだ。

 

 嫌で嫌で仕方なかった冬もいざ春を迎えてみると、むしろ懐かしさにも似た、郷愁のような心持ちがする。

 

 「スキーとかに行っておけば良かったな……」そんなことをぼんやりと考えてみたり。

 

 スケートでも雪合戦でもいい。要はなんでもよかった。もっと楽しめばよかった。「あー、俺もう子供じゃないんで」などとニヒルを気取っている場合ではなかったのだ。

 

 不思議なものである。冬は夏が恋しく、夏は冬が恋しい。せっかくの数ある季節の行事を素直に楽しめば良いものを。

 

 「だけどそれが難しいんだよな……」

 

 できた試しがない。恥ずかしいし。だって恥ずかしいし? 恥ずかしいし。

 

 自分でうんうん頷き納得していた。

 

 「恥ずかしがりすぎだろ、俺……」周りの張り切りウォーカーたちに聞こえないよう一人でぼやいた。

 

 

 翌朝、俺は誰よりも早く起き出し、寝ぼけ眼を擦りながら一人散歩に出かけ、家から程近い堤防の斜面に座を占めていた。

 

 やることもなくぼーっと水面を見つめていた。視界の端でぴちょんと魚がはねゆったりと薄く波紋が広がる。ざああ、と草の揺れる音が近づいてきて、ぶおおと風が耳元で鳴る。水面はしゃわしゃわ波立ち、カルガモの親子が微妙に後退している。

 

 身近な自然風景を眺めているうちに、なるほど自然に囲まれて生きるとはこういうことなのかと「モノローグが長いですよ」

 

 凛とした声が俺の脳内一人語りを遮った。抗議するようにそちらを向くと前原さんがかつかつと靴を鳴らして歩いてきていた。朝の散歩からブーツかい。小刻みな足音はやはりというかジョニーのものだ。

 

 薄手のひらひらした白いトップスと長い脚に締まったジーンズが映える服装の前原さんと、緑と黒の市松模様が入ったTシャツを着たジョニーが草ぼうぼうの斜面を下ってくる。

 

 「えぇ……俺のモノローグ見えるの?」

 

 「見えます見えます。全部顔に書いてあります」前原さんはにやにやしている。

 

 「俺の顔面真っ黒じゃん……」

 

 「ブラックホールみたいですよ」

 

 「まじか……光までも吸い込んでやろうか……」

 

 とはいえ流石にそんなことあるまいと思いしかし念のためと頬を拭った手が漆黒に染まり軽く戦慄していると、前原さんがふと思い出したように尋ねてきた。

 

 「そういえば私、読者様に自己紹介しましたっけ? 二度目の出演ですけど」

 

 「……してないかも」

 

 してないな。うん、間違いない。

 

 「そうですか。では、」前原さんは明後日の方向へ向き直ると百点満点の笑顔を振りまき、

 

 「どうも、私、前原と申します。以後お見知りおきを」

 

 そう言い、腰から曲がった完璧な一礼をすると、

 

 「……こんなもんでOKでしょうか」俺に悪い笑顔で囁いてくる。

 

 「わかりません……」

 

 アニメのオフレコ部分が完全に見えてるって体のネタなのか……ややこしすぎるよぉ……。

 

 通じる可能性の少ないギャグを披露するリスクとリターンの関係性について俺がしばし頭を悩ませていると、妙な違和感が横から頭部を貫いた。

 

 おかしい。やけに静かだ。

 

 「ん? ジョニーは?」いつもはせわしなく動き回る騒音モンスターなのに。

 

 違和感の突き刺さった頭を右に左に回転させる。ちょっと重い。

 

 「いますよ」彼女はにべもなく言って捨て、「そこに」河川敷に広がるグラウンドの一点を指さした。

 

 緑色の物体がサッカー少年たちに交じって疾走している。見ず知らずの人について言っちゃいけませんとあれほど言っておいたのに。レモンイエローと紺のユニフォームを着た個性豊かな学生さんたちが只の一般人かどうかなんて分からないのだから。俺にはどうみてもヤバイ集団にしか見えない。髪の色とか体格とか、明らかに常人のそれではない。胸元の校名……なんだろう、雷……うーん遠すぎて見えないや。

 

 やれやれと前原さんが俺の横に腰を下ろす。ブーツで草むらに座って再び立ち上がることはできるのだろうか。もしや三年くらい座り込む気なんじゃ。先が思いやられる。

 

 さて一方グラウンドを俊敏に動く緑色の塊は「サッカーは戦争じゃ、敵も味方も分からんぞ」という風に手当たり次第にプレイヤーからボールを奪い取り無差別にゴールを決めるという暴挙を十五分ほど続け、スコアボードを十四対十二にしたあたりでやっと飽きたらしい。こちらへ一直線にグラウンドを横切り坂を駆けあがってきた。

 

 遠目にも喉ちんこが見えるほどジョニーは大口を何度も開閉し、何か喚いているようだった。

 

 

 「%#$&*?@!!」

 

 

 ううむ、音の羅列のようなものが聞こえる。おそらく気のせいであろう。ふむふむ。

 

 「何か言ってるみたいですね」前原さんが呟いた。

 

 

 「くぁwせdrftgyふじこlp!!」

 

 

 うーむ、日本語ではあるようだなあ。しかしまあ気のせいであろう。ふむふむ。

 

 「何か叫んでるみたいですね」前原さんが呟いた。

 

 

 「私にも自己紹介させてください!!」

 

 

 うむむ、言っていることは完全に理解できたがまあ気のせいであろう。ふむふむ。

 

 「自己紹介がしたいみたいですね」前原さんが呟いた。「さっきの会話が聞こえてたんでしょう」

 

 

 「齊しく、其れを辯疏する亊にも!!」

 

 

 ?……?…?…………??? ふむ…ふむ……?

 

 「…………なんでしょうね?」前原さんが呟いた。

 

 

 「私にも自己紹介させてください!! ジョニーです! ジョニーです! ジョニーです!

 

 

 走ってきた勢いのままジョニーは俺に体当たりをふぐおっ

 

 ジョニーは倒れた俺にどすんと着地し「ふがっ」ボードと化した俺を足蹴にスノボの要領で緑の斜面を滑り降りていった。NOOOOOO!!と斜体で叫ぶ俺と背中で嬌声を上げるジョニー、そして耳を塞ぎ着席状態から微動だにしない薄情な前原さんであった。

 

 川に渡された幾本もの電線はわずかにたわみ、その上で小鳥が列をなしてかわるがわるチュンチュンとさえずっている。朝方の澄んだ空気と爽やかな陽気が辺りに満ちていた。

 

 前原さんが伸びた雑草をしなやかな指ではじきながら一人、ぼそぼそと喋っている。

 

 「……はてさて、『ジョニーです。』と、作品タイトルを回収したところでひとまず第二話としましてはこの辺で幕とさせていただきたいと思います。ただの早朝散歩に二千字以上を費やし、ネットミーム及び某アニメネタオンパレード。まだたった二話ですよ。作者の正気を疑わざるを得ませんね。このままではネタ切れまっしぐらですよ。読者の皆様、暴走する私たちをどうか温かい目でお見守りください……」

 

 ふー、と肩を落とし、腕を回し、彼女は胸の前で不満げに腕を組んだ。

 

 「……私前原、正直に言いますと今、現在進行形である問題を抱えております。端的に言い換えるならピンチを迎えているという表現になりましょう。円満な解決には少々プライドを削る必要があります。ええ、そのくらい重大な問題です……」

 

 顔を半分腕にうずめてもごもごと独り言。頬にほのかに赤みがさしている。

 

 「……ブーツで立ち上がるの難しすぎませんか。種々の雑草が居場所を奪い合うかのように生い茂る斜面では踏ん張るブーツが滑るんですね……。過去の私がどのようにこの位置にたどり着いたのか、今の私には甚だ疑問であります。さてこのことを彼らにどう伝えたものか……悩ましいです」

 

 前原さんは心持ち背を丸め、羽虫も飛ばないくらいのため息をついた。

 

 一方その頃、斜面滑走で草の汁まみれになった俺は河川敷でジョニーを遠投し、肩に激しい痛みを感じていた。




J「話進まなさすぎじゃないですか。今回散歩しただけですよ。良いんですかあれで」
S「ストーリーから会話の端々まで随所にネタをぶっこんでいくスタイルだから仕方ないね」
M「まあ、要は面白ければそれで良いわけです」
S「それが一番難しいんだよなあ……」
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