あの後、リサと別れた俺は本日の晩飯を買いにスーパーに立ち寄り、食材を見立てて、現在は商店街を歩いていた。ふと、芳ばしい香りが鼻をくすぐる。その匂いは空腹には堪らなかったのかお腹もぐぅ〜、と鳴る。
(すっげぇいい匂い。・・・食材買っちゃったけど1個ぐらいならいいよな?)
そんな誰にか分からない言い訳をして、『やまぶきベーカリー』と掲げられた店に立ち入る。
「いらっしゃいませー!」
ウチの女生徒と同じ制服に身を包んだ、赤香髪をポニーテールにした少女が元気に挨拶してくれる。同じ学校の生徒だということに多少驚きつつ、店番をしている彼女に問いかける。
「あの〜、すいません。オススメってなんですか?ここに来たの初めてで・・・」
「そうですね・・・・・・メロンパンはオススメですよ。外はカリッとしてて中はふわふわなんです」
少し考えたあと、彼女は答えてくれる。
「・・・じゃあ、メロンパン1つもらいます」
商売上手だな、と内心苦笑し、プラスチック製のトングでメロンパンを掴み、トレイに載せてレジへと持っていく。
「ありがとうございます!・・・お会計は180円になります♪・・・・・・その制服、花咲川のですよね?もしかして、あなたが2年生に転校してきたっていう・・・」
「そ、そうだけど・・・もしかして、ウワサとかになってる・・・?」
「あはは〜・・・そもそも男の子が少ないですからね。嫌でもウワサされちゃいますよ」
マジか、と彼女からもたらされた情報に肩を落とす。
「あ、いやでも、悪いウワサとかではないですから大丈夫だと思いますよ?」
「ん?・・・ちなみにどんなウワサなの?」
「ん〜・・・2年生にすごいカッコイイ人が転校してきた、とか、あの人は絶対神様が授けてくれた私たちの希望だ、とか・・・」
(え、なんかやばくない?確かに悪い感じではないけど、ベクトルがまた違うというか・・・)
「そ、それは・・・喜ぶべきなのかどうなのか・・・」
「あ、あはは〜・・・」
「・・・とにかく教えてくれてありがとう。えーと・・・」
「あ、すいません、まだ名乗ってませんでしたね。花咲川学園1年の山吹沙綾、っていいます。よろしくお願いします」
「ありがとう、山吹さん。俺は、知ってると思うけど2年の神崎良哉だよ。こちらこそよろしく。・・・で、180円だったよね。はい、200円」
「あ、ありがとうございます!・・・20円のお返しです!またのご来店をお待ちしてます、神崎先輩♪」
「・・・うん、きっとまた来るよ、山吹さん」
彼女の眩しい笑顔とともにパンの入った袋を受け取った俺は、店をあとにした。
(山吹さん、すっげぇ可愛いかったなぁ。この辺には美少女しかいないんだろうか?)
そんなバカなことを考えていたら、いつの間にかアパートへたどり着いていた。
えっ、メロンパンうますぎない?こんなん絶対リピートするわ。
翌日、昨日と同様に朝の準備を終え、学園と向かった。今日も校門で挨拶している紗夜に会った。昨日もそうだったのだが、少し顔が赤かったので、大丈夫?と問いかけたら、だ、大丈夫です!とさらに顔を赤くしていた。・・・風邪でもひいたのだろうか?そう心配になった俺は、紗夜の額に軽く手をのせる。・・・うーん、熱はなさそうだな。
「・・・って!?紗夜!?」
「あ、あの良哉くん・・・!ほ、本当に大丈夫ですから・・・!」
めっちゃ顔赤いけど、熱があるわけでもなさそうだし大丈夫・・・なのか?
「・・・まあ、なにかあったら遠慮なく言ってね」
「は、はい・・・ありがとうございます・・・」
すると、周りがやけに騒がしいことに気づく。あれ、これ、やっちゃった?
(ひどい目にあった・・・)
完全に自業自得なのだが、あの後事態を収拾するのに苦労した。やれあの堅物の氷川さんが・・・!など、あの子ってウワサの転校生じゃない?など軽い騒ぎになった。とりあえず、紗夜には軽率な行いをした、と謝っておいた。すると、・・・つ、次からは一言お願いします・・・。と言われてしまった。一言いえばいいのか・・・と思わなくもなかったが、やぶ蛇な気がしたので深くはつっこまなかった。
「朝からずいぶんお疲れね」
隣の白鷺さんが、話しかけてくる。
「・・・知ってるくせに・・・」
「ふふ、ごめんなさい。神崎くんって、面白いからついからかいたくなっちゃうのよね」
「そんな面白くしてるつもりはないんだけどなぁ・・・」
「面白いわよ、とっても。・・・花音はどう思う?」
「ふ、ふぇぇ・・・!わ、私・・・!?・・・うーん、面白いかどうかは分からないけど、とっても優しくて、あ、あったかい人、って感じかな」
「・・・・・・!?」
花音の急な賞賛に、なんだか身体がむず痒くなってしまう。
「・・・・・・ふふ、そういうところがとても面白いのよ」
「すう〜、はあ〜。・・・ん?白鷺さん、何か言った?」
「いいえ、なんでもないわ」
少しでも気分を落ち着けようと深呼吸していると、白鷺さんになにか言われた気がしたが、気のせいだったようだ。
「と、とにかく・・・その・・・ありがと、花音」
「う、うん・・・」
2人して顔を赤くし、目線を逸らす。
そんな状況にも関わらず、白鷺さんだけは、ふふふ、と楽しそうに笑っていた。
朝の一件からは何事もなくお昼ご飯も済ませ、あとは下校するだけとなった。花音と白鷺さんは今日も2人で出かけるらしい。今回も誘ってもらったが、あいにく今日からバイトだったので今回もお断りさせていただいた。花音の、そ、そっか・・・と沈んだ表情には心がものすごく傷んだ。一言謝罪してから、次こそは一緒に行くよ、と伝えると、勢いよく顔をあげ、ぜ、絶対だよ!?と念押しされてしまった。・・・次も行けなかったらどうなるやら・・・。白鷺さんは少し残念そうにしながら、・・・お仕事なら仕方ないわね、と言ってくれた。・・・次こそは行くから!ホントに!あんまり辛い顔されると、心が・・・。そんな決意を固めて、靴を履き替え、校舎を出ようとした時に、ふと誰かにぶつかる。
「きゃ!」
「ご、ごめん!・・・大丈夫だった、怪我はない?」
「えへへ〜、大丈夫です!・・・私の方こそすみませんでした・・・」
「いや、俺も怪我はないから大丈夫だよ。」
感情表現豊かな子だなぁ、と思っていると少女がズイっ、と近づいてくる。え、ちょ、距離感おかしくない?大丈夫?男はみんなオオカミって言われてるよ?(ド偏見)
「・・・ど、どうしたの?」
クンクンしながら、俺を一回りする彼女に戸惑いながら、彼女の頭部を見て、猫耳・・・なのか?と余計なことを考えていると、少女は勢いよく口を開く。
「さーやとおんなじ匂いだ!」
(え?さーやさん?どちらさまですか?)
なんかやばい人につかまったかも、と二藍色の瞳をした猫耳?少女を見やった。
今回はちょっと長めです。ほんと微、ってかんじですけど。
実は私、EXトライマスター取ったことなくていつも27楽曲で詰みます。すんごいたまたまいけても、次の28楽曲で絶望します。道のりは険しい・・・。
それでは、次回までしばしお待ちを。