転校生とバンド少女たち   作:なぁくどはる

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どうも、なぁくどはるです。
そろそろハロハピ回も終わりに近づいてきましたね。この調子で最後まで駆け抜けていきます。


『魔法の言葉』

 

 

あかりちゃんが病室に戻ってからかなりの時間が経過した。こころたちは未だ病院のロビーにいる。ヒーロー作戦失敗によるどんよりとした空気が伝わってくる。

 

「日が暮れちゃったね・・・」

「まあ、ずっと落ち込んでてもしょうがない。一旦場所を移して何か別の案を考えよう」

「え、良哉さんこの状況無視ですか」

実は美咲を除く全員は未だマスクを被ったままだ。

・・・仕方ないだろ。どっからツッコんでいいのかわかんないし。

 

「あと何か・・・何かが足りないのよ・・・」

「はいはい。病院の人にも迷惑かかるしそろそろ帰ろうか」

美咲が解散を促すが全員の腰は重いままだ。

 

「はぐみたちじゃあかりを笑わせられないのかな・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

そうではないと言いたいところだがあの反応の直後ではかける言葉もなかった。

 

「あかりちゃんは私にも笑ってくれないの。とても難しい問題なのよ」

この状況を見かねたのか看護師さんが会話に入ってくる。

 

「あ、あの・・・あかりちゃんは・・・?」

「部屋でハッピーレンジャーのDVDを観てるわ・・・・・・皆さんいつもあかりちゃんのためにありがとう。あれでもかなり話してくれるようになったのよ」

俺は直接あかりちゃんを見たのは今日で数回目なのでここ最近の彼女の様子が分からないから何とも言えないが、変化があったのはきっとこころたちが頑張った成果なのだろう。

この看護師さんはあかりちゃんが事故で運ばれてきた時からの付き合いらしい。

 

(それなりの付き合いだろうに看護師さんにも笑わないのか・・・原因は一体・・・)

看護師さんの話によれば足の怪我自体は順調に良くなっているらしい。だが、事故の時の恐怖でリハビリが始められないのだとか。このままリハビリをしなければ2度と歩けなくなってしまうかもしれないのに・・・

 

「歩きたい気持ちはあるんですよね?」

花音の問いに看護師さんは頷きをもって答える。

 

「けど歩けなかった時のことを思うと動き出せなくなってしまう、ってことか」

「それってかのちゃん先輩が前に言ってたやつだよね。動きたいのに身動きが取れなくなっちゃう、って・・・」

「完全に悪循環ってやつだな・・・」

美咲の言う通りだ。しかし、あかりちゃんの気持ちも分かる。俺は事故に遭った経験がないからその気持ちだけを察することしかできないが、あの幼さで事故に遭うというのはかなりの恐怖だろう。すごく怖かっただろうし痛かったに違いない。

 

「や、やっぱり私、あかりちゃんの気持ち分かります・・・!そういう時って勇気が出なくて・・・・・・でも私にはこころちゃん、それに良哉くんがいてくれた」

「花音・・・」

「ドラムを辞めようと思ってた私に2人が勇気をくれたんだ」

「俺なんて大したことできてないよ。花音が自分で頑張った結果だ」

驚きつつも、ありがとうと答えてくれる。

 

「なら、今度もあたしたちが勇気をあげればいいのね!」

「そうは言うけどさぁ・・・実際、あかりちゃんにはダメだったじゃん」

「だから何かが足りないのよっ。それが分かればあかりに勇気をあげられると思うの」

(足りないもの、か・・・)

こころの言葉に呆れながら美咲は続ける。

 

「確かに花音さんの時は上手くいったのかもしれないけど、基本勇気なんてそうほいほいあげられるものじゃ・・・」

「そうだよなぁ・・・」

「でも、花音にはあげられたのよ!じゃあきっとあかりにもあげられるはずっ。できないことなんてないのよ。自分でできないって思わない限り何だってできるのよ!」

こころの言うことにも一理あるが・・・

 

「はぁ・・・誰しもがあんたみたいに根拠のない自信でやってみようと思えるとは限らないの!もう・・・」

「──────!」

「どうして自信に根拠がいるの?」

「それだよ美咲!」

「え・・・?どれですか?」

「根拠がないなら作ればいいんだよ!」

「・・・・・・!なるほど、そういうことですか!」

美咲の一言がヒントになった。

 

「てことはまずあかりちゃんにリハビリを始めてもらうための勇気をあげれば・・・」

「そう。それで歩きさえすれば、歩けるんだって自信になる」

「──────?君たちは一体何を言っているんだい?」

「はぐみもよく分かんない・・・」

「ってことは私たちは音楽であかりちゃんが勇気をもてるようなライブをすればいいってこと・・・?」

薫とはぐみには伝わっていなかったようだが花音はしっかり理解してくれていた。

 

「そういうこと!」

「問題はどうやってそれをあかりちゃんに伝えるかだけど・・・」

「えーっと・・・こころ」

「何かしら?」

「あんたは何でもできるんだよね。じゃあ、その何でもできるってやつをライブであかりちゃんに伝えられないの?そうすればあかりちゃんの勇気も湧いてくると・・・思うんだけど・・・」

最後の方は自信なさげで尻すぼみになっていたが、それでもしっかりとこころに自身の考えを伝える美咲。それを受け取ったこころは満面の笑みで答える。

 

「もちろん大丈夫よ!!すごく得意だわ!!みんなであかりが勇気の出る曲を作ればいいのね!」

最初は戸惑っていたメンバーだが、あかりちゃんのために何かしてあげたいと思う気持ちは同じなのか全員が覚悟を決めていた。

・・・若干一名不安がっていたが。

 

 


 

 

あれから一ヶ月が経った。

曲作りがかなり難航したようだ。聞くところによると、こころがわけの分からん歌詞を出してきたり薫やはぐみがめちゃくちゃに作曲したのをまとめたりと本当に色々あったらしい。しかし歌詞は花音、作曲は美咲が担当することで何とか形になったらしい。コンセプトは『魔法の言葉』なんだとか。

ひと月という時間が空いたことで病院の子どもたちもライブが始まるのを今か今かと待っている。俺もまだ曲を聴いてないのですごく楽しみだ。

そしてメンバーの挨拶で演奏が始まる。

 

「さあ、みんなもあたしと一緒に歌いましょ!魔法の言葉よっ。言ったら何でもできちゃうんだから!」

こころの言葉通り、その魔法の言葉『ハピネスッ!ハピィーマジカルッ♪』を唱えるとさまざまなことが起こる。ハトが飛び出したり花吹雪が舞ったりステージの色が変わったり、その魔法は実に多種多様だった。

 

(すげぇ・・・これがこころたちの『答え』・・・)

「ほら!できないことなんてこの世に1つもないのよ!みんなそれに気付いてないだけなんだから!」

子どもたちが盛り上がる中、こころがみんなに伝える。自分ができないと思わない限り何だってできるんだと。それを聞いたあかりちゃんの表情が変わる。

 

(こころたちの想いが伝わっていると・・・・・・いいや、きっと伝わってる)

 

このライブを観れば自然とそう思うことができた。

 




ステージを盛り上げる黒服さんたちマジパネェ。
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