転校生とバンド少女たち   作:なぁくどはる

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どうも、なぁくどはるです。
誤字報告してくださった方遅ればせながら確認の後、修正させていただきました。ありがとうございます。


もし笑顔を忘れても

 

 

ハロー、ハッピーワールド!のライブは子どもたちの大歓声で幕を閉じた。

はぐみの締めくくりの挨拶を聞いた後あかりちゃんが車いすを自分で押して前へ出てきてはぐみに声をかける。

 

「ど、どうしたの、あかり?」

「・・・あのボーカルの人が言ってた『何でもできる』って本当?」

「う、うんっ。ほら、『魔法の言葉』を唱えてみてよっ」

 

あかりちゃんは今、前に進もうとしてるのかもしれない。だけどまだ最後の一歩を踏み出すのを躊躇しているようだ。そんなあかりちゃんにはぐみはその一歩を踏み出させる為にさっきの『魔法の言葉』を口にするように促す。

 

「・・・・・・『ハピネスッ!ハピィーマジカル♪』?・・・・・・わっ!」

 

するとはぐみのポケットからハッピーレンジャーのフィギュアが出てくる。

それを見たあかりちゃんは喜びの声をあげる。

 

「ねっ!あかりも、もちろんはぐみだってみんなやろうと思えば何だってできるんだよ!・・・・・・でもみんな時々それを忘れちゃうんだ。そういう時にはこの魔法の言葉を唱えるとそれを思い出せるんだよ!」

「・・・・・・それって何回やってもいいの?」

 

そんなあかりちゃんの不安を纏った問いかけにもちろん構わないと答えるはぐみ。

 

「・・・目を閉じても?」

「うん!ばっちり!」

 

そんな2人をハロハピのメンバーが見守っている。

あかりちゃんは今最後の一歩を踏み出そうとしているのだ。そんなあかりちゃんの踏み出す瞬間をはぐみも沈痛な面持ちで待っている。

 

(頑張れ、あかりちゃん・・・!)

 

みんな気持ちは一つだと確信があった。

 

「『ハピネスッ!ハピィーマジカルッ♪』・・・・・・あっ」

 

その言葉を口にした瞬間みんなが待ち望んだ光景がそこにあった。

あかりちゃんがその足でしっかりと立っているのだ。

 

「あかり!立ってる、立ってるよ!!」

 

あかりちゃん自身も信じられないと言った表情だ。しかし無理をしてしまったのかふらついてしまう。そんなあかりちゃんを助けるべくはぐみが慌てて駆け寄る。

 

「・・・大丈夫だよ。ずっとリハビリしてなかったから、だね・・・」

 

あかりちゃん自身、良くないことだと分かってはいたのか落ち込んだ様子だ。しかしあかりちゃんは続ける。

 

「でも大丈夫だよ。先生も看護師さんもずっとリハビリしたら歩けるようになるって言ってくれてたから」

「じゃ、じゃあ!リハビリできそうってこと・・・!?」

 

あかりちゃんの前向きな言葉を聞いたはぐみはとても嬉しそうだ。

 

「いつもはぐみちゃんが言ってるじゃん。『根性、根性!』って」

「あ、あかり・・・!」

 

そしてこころが2人に近づいていく。

 

「これで分かったかしらっ。できないことはない、って!」

「うん、ありがとう。・・・・・・でも、あかり以外にもあかりみたいな人たちはいっぱいいるよ」

 

あかりちゃんの言う通り、悲しいことにそれが現状だろう。あかりちゃんのその言葉にミッシェルも同意を示している。

しかしあかりちゃんは想像以上に強い子だった。

 

「だからあかり、リハビリ頑張って歩けるようになったら教えてもらった魔法の言葉でその人たちを笑顔にする!」

 

俺は彼女の言葉に心を打たれた。なんて心が強くて優しい子なんだろう。

 

「あかりすごいよ!すごく良い考えだと思う!はぐみも手伝うよ!」

 

あかりちゃんの言葉に応えるはぐみは満面の笑みだった。

 

 


 

 

病院でのライブから一週間が経過した。ハロハピは今日も今日とていつもの場所で集まっていた。

俺がお呼ばれしている理由はよく分からんが・・・

 

「実はハロー、ハッピーワールド!宛に手紙が届いたの。送ってくれたのはあかりとあかりの家族と、あの看護師さんね」

「へぇ・・・ありがたいことだな」

 

こころが机の上に手紙を広げる。

みんなあのライブで思うところがあったみたいで感慨深そうにその手紙を覗き込んでいた。

薫は看護師さんの字が綺麗とかちょっとズレたことを言ってたが・・・

 

「これはあかりちゃんの家族からだね。『娘に勇気と希望を取り戻してくれてありがとう』だって」

「こういうふうに言ってもらえるってすごくいいな」

 

花音が嬉しそうに同意してくれる。

そんな中、はぐみがあかりちゃんの手紙を発見する。

 

「どれどれ・・・『誰かに元気や勇気をあげるために、大きくなったらはぐみちゃんのバンドに入ろうと思いました』って書いてくれてるよ!」

「ちょ!それはだめでしょ!こんな危なげな集団に参加したらあかりちゃんの将来が!」

「うん。あとオブラート3枚くらい包もうか、美咲さん」

 

しかしどうやら手紙には続きがあるようだ。

 

「えっと・・・『だけど、あたしが困ってる子に魔法の言葉を唱えても魔法の力は出せなくて・・・看護師さんに相談したら、人を救う方法は色々あるよって教えてくれました。だからあたしは看護師さんと同じ病院で働けるように頑張ることにしました。はぐみちゃんたちもバンド頑張ってください』だって・・・」

 

その言葉を聞いた美咲が心底安堵していた。

だから、オブラートに包みなさいって・・・

 

「ねぇ・・・・・・はぐみたちってあかりを救えたのかな?」

「そうだな・・・この場合は『救った』って言うより救えるように『手伝った』って感じじゃないか?」

「良哉の言う通りよ!世界の人たちはみんな初めからヒーローなんだからっ!」

 

こころのその言葉に全員がハッとさせられる。

 

「・・・誰だって自分は自分を救える。あかりちゃんはそれを思い出しただけってことか・・・・・・良哉さんの言う通りだけど、なーんかおとぎ話みたいだなぁ」

「おとぎ話じゃないわよ!」

 

こころの言葉にはぐみも同調する。

そんな光景を見ながら美咲が一人苦笑いしながら呟いていたのを俺は聞き逃さなかった。

 

「・・・まあ、そういうの嫌いじゃないけど」

 

 


 

 

手紙が届いたあの日さらに時は流れ。今日も俺はハロハピメンバーに囲まれていた。

 

「ねぇ、なんで俺毎回参加させられてるの?」

「・・・世の中気にしない方がいいこともありますよ。良哉さん」

「え、何そのツッコんじゃいけない感じ」

 

美咲によれば、世の中には触れてはならない禁忌が存在するらしい。

・・・そんな大げさなものではないだろうが。

 

「ボーカルって思ってたより難しいのね!色々な技術が必要なんだわ!」

「ようやくそのことに気付いてくれてあたしは嬉しいよ・・・」

 

こころがようやくボーカルの大変さを理解してくれたようで美咲は感動していた。実際に泣いてはいないが。

 

「こころちゃん、歌は上手なんだけど途中でメロディ変えちゃったりするから・・・」

「それボーカルとしては致命的過ぎない?」

 

花音から乾いた笑い声が聴こえてくる。

 

「そんなこころに振り回される日々・・・ああ・・・儚い・・・」

(薫は通常運転っと)

 

薫が訳の分からんことを言うのはいつものことなので最近では流すことにしている。

 

「音楽で世界を笑顔にするためにCDを作って配る・・・私はとっても良い案だと思うな」

「こころが今まで出した案の中で唯一まともかもね」

「まったくだ」

 

美咲と苦笑しながら花音の発言に同意する。

そして新たに作った曲を覚えたからスタジオに行きたいというこころ。だが、はぐみがまだ来ていない。

 

「はぐみ遅いな・・・」

「確かにちょっと心配かも・・・」

 

花音だけでなく、薫も口では大丈夫だと話しているが内心心配しているようだ。

そこにドアが開く音が聴こえてくる。

 

「ご、ごめーん!遅れちゃって・・・あかりのリハビリ見に寄ってたらこんな時間になっちゃった」

「そうなんだね。あかりちゃんの様子、どうだった?」

 

全員が気にしているであろうことを尋ねる花音。

それに問題はないと笑顔で答えるはぐみ。

 

「ふふっ、あかりちゃんや看護師さんも笑顔だったようだが・・・はぐみ。君の笑顔もそれに負けていないと思うよ」

 

薫の言葉に驚いた顔をするはぐみ。

 

「はぐみ、みんながヒーローってことだけじゃなくて笑顔も忘れちゃってた・・・」

「それよ!!」

「うおっ。びっくりした・・・」

「ほんとだよ・・・」

 

こころがいきなり大声をあげるもんだからびっくりしてしまった。

 

「あたし、あかりのことで気付いたことがもう一つあるのっ。今回のことみたいに、みんな笑顔が好きなはずなのにそれを忘れちゃう人が結構いるってこと。そういう人たちってすごくもったいないと思うの。だって、笑顔になったらこんなに最高なのよっ?」

「もったいない・・・か・・・」

「ふふ、こころちゃんらしい言い方だね」

 

そして薫がいつものやつを披露する。

 

「シェイクスピア曰く、『不幸を治す薬は希望より他にない』」

「意味分かってないのに的を射た引用持ってくるから質が悪いんだよなぁ・・・」

「ほんと同意です」

 

その後も訳分からんこといって美咲にツッコまれていた。

そしてそれをぶった切ってこころが続ける。

 

「とにかくっ。あたしね、そういう人たちに少しでも早く笑顔を思い出してほしいの!」

「はぐみとあかりみたいに、だねっ。それってすごく大事だと思う!」

「確かに。簡単じゃないだろうけど、それができるならすごく素敵なことだと思う」

 

同じ考えだったのが嬉しかったのか、笑顔を浮かべるこころ。

しかし、それに待ったをかける者がいた。

 

「ちょっとちょっと。良哉さんも言ってたけど、それって簡単なことじゃないと思うよ?笑顔になりたがってる人が集まるライブとかならまだしも、そんなのいつも成功ってわけには・・・!」

 

それを聞いたこころは何故成功しないと思うのかを尋ねる。それに美咲は少しの苛立ちを含め答える。

 

「あたしは人生何事もほどほどがいいのっ。だからなんでこんなぶっ飛んだ集団にいるのか分かんないし、正直あんたの言ってることは絵空事にしか聞こえない!」

 

全員が美咲の言葉を黙って聞いている。

 

「・・・けどさ、こうやってみんなでライブしたりあかりちゃんのことで悩んだりしてさ。なんていうか・・・」

「いいよ、ゆっくりで。伝えることが大事なんだから」

 

それを聞いた美咲は少し笑ってありがとうと言ってくれる。

 

「・・・あたしは・・・・・・もしこれから笑顔にするっていう活動が失敗して、みんなが暗い顔したり落ち込んだりするのが嫌なの・・・!」

 

しかしそれをこころは問題ないと笑顔で返す。

 

「・・・なくはないでしょ。落ち込んだりしたらみんな傷つくし・・・」

「それはよく分からないけれど・・・要するに誰かが笑顔を忘れてしまうってことでしょ?だったら残った誰かが思い出させてあげればいいわっ!」

 

それでも美咲の不安は拭えないようだ。

 

「・・・じゃあもし全員忘れたら?」

「決まってるわ!その時はあたしたち以外の誰かが思い出させてくれるわよ!」

 

こころの言葉に何かを感じ取った美咲。

 

「・・・そっか。ははっ、そうだった。何を真剣になってたのか・・・あんたに話なんか通じるわけないんだった!・・・・・・分かった。いーよ。どこまで付き合えるか分かんないけど、その時がくるまではあんたの絵空事に付き合う」

「ありがとっ!ハロー、ハッピーワールド!世界を笑顔にこれからも頑張りましょ!」

 

ここからハロー、ハッピーワールド!は世界を笑顔にするべく行動を開始するのだった。

 




かなり長くなりましたがハロハピ編これにて終了となります。
この後はポピパにいくか、ちょっと最近書き方迷走気味なんで閑話みたいなの挟むかもしれないです。
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