転校生とバンド少女たち   作:なぁくどはる

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どうも、なぁくどはるです。
ポピパ編に入る前に日常回を挟もうと思います。ポピパ編を楽しみにしてくださっている方はもう少しお待ちを・・・


幕間
夕陽が形作るのは


 

(今日も山吹さん元気そうだったな)

 

 先程までやまぶきベーカリーにいたのだ。初めてあそこのパンを食べてからもうすっかりリピーターである。

 入店するといつもの笑顔で山吹さんが出迎えてくれた。そして他愛ない話をして、メロンパンと他にいくつかのパンを買って店をあとにした。

 

(モカに全部食べられないように気を付けないと)

 

 実はAfterglowのみんなへの差し入れなのだ。しかしあのグループには大食漢がいる。青葉モカだ。

 彼女は本当によく食べる。見かければいつもパンを食べており、練習後もパンを食べている。

 パンしか食ってねぇな・・・

 そんなことを考えているうちに羽沢珈琲店に着いたようで扉を開けて店内に踏み込む。

 

「いらっしゃ──────あ、良哉さん!」

「こんちは、つぐみ。もうみんな揃ってるのか?」

「蘭ちゃんとモカちゃんがまだです」

 

 苦笑しながらまだ来てないメンバーを教えてくれる。

 

(また遅刻じゃないだろうな・・・)

 

 実は蘭とモカは遅刻常習犯なのだ。ひまりが2人に連絡するのだが蘭は反応がないし、モカに限っては寝てたなんて言いだす始末だ。モカにいたっては間違いなく確信犯だろう。

 

(けど2人とも俺が連絡するとすぐ連絡くれるんだよな。なんでだろ・・・)

 

 初めてそれを経験した時なんかひまりが落ち込んでフォローするのが大変だった。最終的には自分なりに納得したようで小声で何かを呟いていた。・・・なんて言ってたんだろうな、あの時。

 

「お待たせ」

「良哉さん!聞いてくださいよ〜!また蘭とモカが返事くれないんですよ〜」

「またなのか・・・」

「まあ、2人とも筆無精なところありますから」

 

 巴が2人をフォローしている。相変わらずいいやつだなぁ。

 

「てなわけで良哉さん、お願いします!」

「・・・・・・またなのか」

「だって良哉さんからの連絡じゃないと2人とも返事してくれないんですもん・・・・・・・・・・・・気持ちは分かるけどね

「はぁ・・・仕方ないか・・・」

 

 そんなこんなで最近のいつも通りになりつつある2人への連絡を開始する。

 

『も、もしもし!?』

『うおっ。そんな急いで取らなくてもいいんだぞ』

 

 1コールが終わる前で、しかも開口一番慌て気味だったから少し驚いてしまう。

 

『・・・別に慌ててなんか』

(なんか違う気がするがまあ、いいか)

『それならいいんだけど・・・それより、今どのあたりだ?』

『うん?もうすぐつぐみの家に着くところだけど』

『そうなのか。いや、それならいいんだ。気を付けてな』

 

 そう言って電話を切ろうとするのだが・・・

 

『あっ・・・・・・』

『ん?どした?』

『・・・・・・まだ切らなくてもいいじゃん』

(え、なにこの子。めっちゃ可愛くない?)

 

 まさかのおねだりに固まってしまう。こちらが静かになったことに疑問を抱いたのか蘭が声をかけてくる。

 

『・・・良哉さん?どうしたの?』

『あ、いやなんでもない。ちょっと処理落ちしてただけだから』

『──────?よく分かんないけどいいや。あたし以外は全員揃ってるの?』

『いや、モカがまだだな』

『まあ、モカが遅れてくるのはいつも通りだしそれは分かってた』

(モカが聞いたらブーブー言いそうだな)

 

 そんなことを思いながら会話を続けていると店のベルと電話口から同じ音が聴こえてくる。

 

「お、来たか」

「ん」

 

 そして蘭はカウンター奥の端から一つ空けた場所に座る。一番奥は俺が座っていたし、いつもそこに座るから蘭が先に来ていたとしてもそこは空けてくれている。

 みんなへの挨拶を済ませる蘭。

 

「で、モカに連絡したの?」

「いや、まだ。蘭にしてからにしようと思ってたんだ」

「そっか・・・」

 

 なんかちょっと嬉しそうだ。ひまりは私も今度からゆっくり来よっかなぁ・・・なんて言っている。

 頼むからやめてくれ。俺が大変になっちゃうから。

 そんな届くはずもないお祈りをひまりに捧げながらモカへ電話する。ようやっと3コール目ぐらいでモカの声が聴こえる。

 

『もしも〜し、こちらモカちゃんで〜す』

『起きてたのか』

『え〜開口一番ひどくないですか〜』

 

 とは言うけど連絡する時は大体寝てるだろ、お前。

 

『で、今どの辺なんだ?』

『ん〜この柔らかさと暖かさには抗いがたいものが〜』

『お前まだ布団の中だな?そうなんだな?』

『おお〜さすが良哉さん。モカちゃんのことよくお分かりで〜』

(まったくこいつは・・・)

『とにかく今日は練習日なんだから早く来いよ。モカの好きなやまぶきベーカリーのパンも買って──────』

「やっほ〜みんな大好きモカちゃんですよ〜」

「え?なんでここにいんの?早くない?流石に早くない?」

「ふっふっふ〜モカちゃんに不可能はないのですよ〜」

 

 何はともあれ全員集合したのでスタジオに向かうことになった。

 ちなみに俺の分のパンはモカの胃袋に消えていった。・・・ちくしょう。

 

 


 

 

「ほいお疲れ」

 

 ドリンクをみんなに手渡すと、各々お礼を言ってから受け取ってくれる。

 

「今のはかなり良かったな。全員の音が上手く合わさってた」

 

 バンドは全体の調和が大事だと思ってるし、それにもさまざまな形がある。

 例えば、Roseliaのように一人ひとりの音色を織り重ねていくような調和もあればAfterglowのように個性のぶつかり合いで生まれる調和も存在する。

 

「そのままの状態を保てればバッチリだな」

 

 だが、それは簡単なことではない。仲間への信頼がものを言うからだ。

 この仲間たちなら自分の全力に応えてくれる、そういう信頼関係が大事になってくる。

 しかし、こと蘭たちに限って言えばそれは問題ない。彼女たちには今まで一緒に過ごしてきた時間というかけがえのないものがある。嬉しい時も辛い時も共有してきた時間というのは大きな武器だろう。

 ・・・・・・俺は捨ててしまったけれど。

 

「あたしたちならできる。やってみせるよ」

 

 不敵な笑みを浮かべて答えてくれる蘭。本当にどこまでもカッコいいやつだ。

 

「そんじゃ今の感覚忘れないうちにもっかい通すか」

 

 全員の返事を確認してから練習を再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜疲れた〜。良哉さんおんぶ〜」

「いや無理でしょ。そんなことしたら俺に引っ付くことになるんだぞ?」

「ん〜?モカちゃんはのーぷろぶれむですよ〜」

「俺が嫌なの。恥ずかしいし」

「良哉さんのケチ〜」

 

 蘭とひまりも、もの欲しそうな目で見ているが君たちもだめだからね?そもそもおんぶなんてしたら・・・その・・・あれが背中に当たるじゃん。君たちそれを忘れてない?

 俺にその気がないのが分かると渋々ながらも引き下がってくれる。どうやら危機は去ったようだ。

 

「ふふっ、おんぶしてあげないんですか?」

「つぐみまで・・・」

 

 助けてくれないと思ったらからかう機会を伺ってたらしい。果てには巴まで便乗してくる。

 

「ははっ、まあ見てみたかったですけどね。おんぶしてる良哉さん」

「勘弁してくれ・・・」

「え、良哉さんやっぱりおんぶしてくれる気になったの〜?」

「違うし、しないって言ってんだろ!」

 

 引っ付いてくるモカを振り解きながら帰り道を六人で歩いていく。

 その足元には夕陽が作った影が六人分、歩道に伸びていた。




日常回は書いてて安心します。だってシリアスないんだもの。
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