転校生とバンド少女たち   作:なぁくどはる

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花音先輩の誕生日ガチャ初回10連爆死しました。
引きたいと思う一方、Roselia3章のために石を残しておきたいと思う今日この頃です。


彼女が抱える何か

「この子はおたえちゃんのお友達なんです」

 

 困惑していた俺に牛込さんが教えてくれる。

 

「おたえん家ってうさぎ飼ってるんだな」

「はい!家にはまだまだたくさんいるんですよ」

「私行ってみたい!」

「それは今度にしろ!」

 

 戸山さんと市ヶ谷さんは仲良いんだなぁ。

 

「つーか、神崎先輩も来てみんな揃ったぞ。早くライブしようぜ」

「うん!みんな、準備しよっ」

 

 市ヶ谷さんの発破で戸山さんもスイッチが入ったのか、メンバーに準備を促して戸山さんが代表で挨拶を行う。

 

「今日はクライブに来てくださってありがとうございます!ドキドキするようなライブにしたいと思ってるので、ドキドキしてくださったら嬉しいです!」

 

 挨拶の後、演奏が始まる。

 お互いがお互いを意識し合って演奏しているように感じた。中には自分の事で精一杯な様子の子もいたが。

 そして、演奏が終了する。

 ライブを終えた戸山さんたちは感想を言い合って、大興奮だ。

 

「どうだった、おたえ!?ドキドキした!?私たち、SPACEに立てるかな!?」

 

 SPACEが何なのかよくわからなかったが、どこかのステージの話をしているならまだまだだろう。

 

「ううん。演奏はまだまだだね」

「ええっ!?」

 

 まあ、そうなるよな。

 

「でも・・・香澄の想い、伝わったよ。バンドに本気で向き合ってるって。だからかな・・・香澄も、みんなも輝いてた。一緒に弾いてるうちに震えてきちゃった」

 

 おたえのこの言葉に感極まったのか、戸山さんがおたえに泣きながら抱きついていた。

 

「・・・・・・これってどういった勝負なんですか?」

 

 明日香ちゃんの疑問には苦笑いを返すしかなかった。

 

 


 

 

(今日は何にしよっかな・・・クロワッサンとか・・・いや、カレーパンも・・・)

 

 放課後、恒例になりつつあるやまぶきベーカリーへ足を運ぶ。どんなパンにしようかと悩みながら扉を開く。カランコロンと音をたて開いた先には沢山のパンとレジを前に立つ一人の少女。いつもなら元気よく挨拶してくれるのだが、今日はそれがなかった。少し気になったし、それなりに話をする間柄だったので彼女に訊いてみる事にした。

 

「山吹さん?」

「・・・・・・・・・・・・」

 

 呼びかけるも返事がない。

 

「おーい、山吹さーん」

 

 俯く彼女の視界に入るように手を左右に振る。すると、ようやく気付いてくれた。

 

「・・・あっ。ごっ、ごめんなさい神崎先輩!いらっしゃいませっ、今日は何にしますか?」

 

 笑顔でおもてなししてくれる山吹さんだが、何かを飲み込んで笑っている顔にしか思えなかった。

 気になっていた事が気のせいではなかったと思い、山吹さんへ問いかける。

 

「・・・何かあったの?」

「・・・・・・いえ、何もないですよ?」

 

 明らかに何もないとは思えない間があったが、それでも彼女は何も話そうとしない。

 

「クライブの事?」

「・・・・・・・・・・・・」

「じゃあ、戸山さんたちの事?」

「─────!・・・・・・・・・・・・」

 

 当たりか。けど、そこまでだな。それ以上はどうにも・・・

 

「・・・・・・香澄たち、文化祭でライブするんです」

「─────!」

 

 山吹さんが話してくれる事に驚いたが、それが伝わらないように抑え込む。

 

「・・・・・・お昼一緒に食べてるんですけど、すごく楽しそうなんです。おたえが作った曲をみんなに発表したり、香澄が歌詞を考えるって言ったり・・・」

「・・・・・・うん」

「こう・・・なんて言うんですかね・・・バンドの仲間ならではの楽しさがちょっと羨ましいなぁって」

「なるほど・・・でも、山吹さんも一緒にバンドやるとかじゃだめなの?まだドラムとかなら──────」

「一緒にやれたらいいんでしょうけど、家の手伝いがあるのでそれはできないんです」

 

 相手の事を慮る彼女にしては珍しいハッキリとした拒絶だった。

 

「・・・・・・そっか」

 

 彼女が申し訳なさそうに微笑む。

 しかし、これだけは言っておきたかった。

 

「・・・・・・ねえ、山吹さん」

 

 彼女がこちらに目線を合わせてくれる。

 

「もし山吹さんが何かを我慢して頑張ってるんだとしたら、もっと別の形で頑張った方がいいと思う。今の山吹さんの笑顔は見ていて辛くなるからさ。きっと俺だけじゃなくて他の人も・・・」

 

 彼女は何も答えてはくれなかったが、片隅にでも留めておいてくれたらいいと思い、店をあとにした。

 

 


 

 

 あの一件の翌日、移動教室の途中で何やら話をしている山吹さんと市ヶ谷さんを発見する。どうやら、市ヶ谷さんが考えたバンド名について話し合っているようだ。

 とりあえず、先日の事もあったので物陰で様子を窺っていたのだが、こうして見ている分には山吹さんに変化は無いように思える。しかし、あの時の山吹さんは確実に何かを抱えていた。

 そんな感じで山吹さんたちを注意深く観察していたのだが、突如おたえが乱入する。俺も割り込むならここしかないと思い、飛び入る。

 

「うん、ポップコーンみたいで楽しい」

「いや、俺はアイスのイメージだな。こう、パチパチ〜って」

「なるほどな〜・・・・・・っていつの間に!?」

 

 そんなこんなでワイワイしていると、戸山さんと牛込さんまで乱入してくる。クライブメンバー勢揃いだ。

 

「・・・ん?その袋は?」

 

 戸山さんたちが持っていたビニール袋が気になったので訊いてみる。

 どうやら、放課後に山吹さんの家でエプロン作りに勤しむらしい。市ヶ谷さんもお誘いを受けて最初は渋っていたが、山吹さんの巧みな?話術に嵌り参加する事になっていた。

 

 市ヶ谷さんチョロくない?

 

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