貞操観念逆転世界の私の夏休み   作:イルミン

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貞操逆転なので男側の一人称も書こうと思ったのですが、女の子と同じことしかしていないのでやめました。一応ちゃんと描写で男の子の貞操観念が私達の世界と同じであるとわかるように書いたつもりです。男女ともに相手の欲に気づかず、相手からのリアクションがあると自分の欲を受け入れてもらえているという優しい勘違いがウロボロスのようにループしてお互いを高めあう貞操逆転世界が好きです。実態は欲をぶつけ合ってるだけなのにね。
追記、改行しました。




私の夏休み

(……まだ着かないのかな)

 

 私は身体ごと寄りかかるように車の窓ガラスに頬を押し当てながら、窓越しに映るいつまでも途切れない田んぼの新緑色の稲穂が風にそよぐのを眺めていた。

 背の低い車を欲しがったお母さんの意見を黙殺してお父さんが購入を決めた白いミニバンの乗り心地の良い後部座席に座りながら、私はまるで一個の荷物のように抵抗することなく車の振動に揺られている。

 乗車中の暇つぶしにと起動したスマートフォンはずいぶん前に気分が悪くなってしまったので、隣の座席のカバンの中に数時間もしまいっぱなしだ。地元では見ることができない自然豊かな田舎の風景に心躍らせていたのも束の間、代り映えしない景色にすっかり飽き飽きしていた。

 一面田んぼだらけの景色に疎らに建つ住宅の姿に、ふと住民はどのようにして生活をしているのだろうかと疑問に思った。

 

(こんな田舎で一ヶ月も過ごすのか……)

 

 夏休みは目いっぱい遊び尽くすつもりだったのだ。今の時代は勉強に必要だろうと中学校に進学して初めて自分用のパソコンを買ってもらってからは、両親の思いとは裏腹にすっかりオンラインゲームに夢中になってしまい、学校では部活動にも入らず家に帰ると自室のパソコンの前に噛り付く毎日だった。ゲームでは念願のギルドにも入ることができ、学業を犠牲にしながらも充実した生活を送っていた。

 さらにギルドの主力メンバーに認めて貰えるように夏休みを利用して自キャラのレベリングをする予定だったのだ。そうして夏休みに入って1週間、友達と遊びに行くこともせずご飯とお風呂以外はすべてゲームに費やしていた私に業を煮やした両親は、夏休みが終わるまで私からパソコン取り上げ田舎の親戚の家に預けることにしたのだ。

 ちなみにこのことはギルドメンバーには連絡すらできていないので、家に帰る頃には恐らくギルドから追放されているだろう。少し憂鬱な気分だった。

 

依子(よりこ)。おばさんの家で迷惑をかけるんじゃないよ」

 

 助手席に座るお父さんが不意に後ろへ振り向き口を開いた。私は姿勢を正して返答する。

 

「わかってるよ。お父さん」

「おばさんの家には依子より年が二つ上の(みつる)君っていう男の子が居るんだ。その子と仲良くするんだよ?」

「……はぁい」

 

 お父さんは私をジロジロと見つめた後大きなため息をはきながら身体を前に向けた。車中に沈黙が戻り、しばらくしてから私は姿勢を崩して外の景色に目を向けながらお父さんの言葉を反芻した。

 

(仲良くっていったって、どう仲良くすれば良いのよ)

 

 恥ずかしい話だが私に異性の友達は居ない。何なら男の子とどんな話をすれば良いのかもわからない。PCゲームや深夜アニメの話題がいけないのは理解しているが、少年ジ○ンプならクラスの男子も読んでるしセーフかなと考える。せめて満君が自分と同じような陰キャなら上手く会話できなくても失望されずに済むのではと取り留めもなく思う。

 

(満君……どんな男の子なんだろう)

 

 七三分け黒縁眼鏡委員長、弟系ショタ、やれやれ系お兄さん———優しくて可愛くてちょっぴりエッチな男の子を期待してしまうのは思春期女子である故だろうか。やることがない車の中で今日からはじまる理想の夏休みを悶々と思い描いてしまうのであった。

 

 親戚の家に到着した頃にはもう日が沈みはじめていた。古き良き日本の田園風景によく調和した古びた日本家屋。その家の前に車を止めて、お母さんが呼び鈴を鳴らした。私はお母さんとお父さんの後ろに立ちながらこの家での生活に思いを馳せていた。

 しばらくして引き戸の扉が開かれると、お父さんの面影を感じる女性とその同年代の男性が姿を現した。型通りの挨拶を済ませたあと、おじさんが家の中へ顔向け叫んだ。

 

「満!こっちに来て挨拶しなさい!」

「え!もう来たの!」

 

 若々しい少年の声が聞こえると、少し遅れて家の中から現れた満君の姿に私は目を奪われた。

 果たして、並外れて美しい少年だった。白いタンクトップに膝丈の青い短パンは陶器の様な白くしなやかな肢体を大胆に露出させているものの、溌剌とした装いは堂に入っておりどこか清楚な雰囲気を醸し出している。

 肩まで伸びたふんわりとした美しい黒髪は太陽のかがやくまぶしい光の中でブロンドのようにきらめき、黒々と大きな瞳はガラスのように澄んでいて、垂れ目気味の目尻は優しそうに見えた。すっきりと通った鼻筋に、形の整った薄桃色の唇が開かれると伸びやかなテノールの声が耳に響いた。

 満君が私のお母さんとお父さんに挨拶すると、二言三言会話をした後親同士の雑談が始まった。中々会話が終わる気配はなく、満君はおばさんとおじさんの横に立ちながら退屈そうに髪の毛先をくるくると弄りまわしている。

 私が通う公立中学校では決して見ることができない美しさだった。いや、下手をするとテレビで見るアイドルよりも可愛いのかもしれないと思った。全身がキラキラと輝いて見えるような錯覚を覚え、私は呆気にとられたかのようにその顔を見つめていると、不意に視線が合った。

 満君は一瞬目を丸くしたかと思うと髪の毛を触る手を止めた。そして私の全身を上から下まで品定めをするように視線を何度も往復させながら時折、半分瞳孔が開いたような顔で一点を見つめてきたのだ。

 私の装いにおかしなところがあるのではないかとキョロキョロと慌てて自分の身体を見回すが、何の変哲もないノースリーブの白いワンピースにたすき掛けをした大きな旅行鞄しか見当たらなかった。

 外で遊びなさいと今回のお泊りのために親に買ってもらった真新しい麦わら帽子を頭から取り外して見ても、解れの一つも見当たらなかった。

 恐る恐る視線を前に戻すとまた目が合った。心の中ではあたふたとしながら満君の黒いダイヤのような瞳の中に映る私はまるで蛇に睨まれた蛙のように動けないでいた。

 そんな無様な私を可笑しく思ったのか満君は微笑みを浮かべると、髪を触っていた手を軽く振りながらこちらに近づいてきた。

 

「こんにちは。君が依子ちゃんだね。僕の名前は天江満だよ」

 

 気づけば手を伸ばせば届く距離に満君のアイドルのようなご尊顔があった。好奇心旺盛な子供のように目を輝かせて私をじっと見つめてくる。開けっ放しの玄関を吹き抜ける風が艶々とした髪を撫で、男の子の良い香りがそよぐ風にのって私の鼻をくすぐった。

 

「……っこ、こんにちぁ」

 

 思わず声が上擦り、恥ずかしさで頬が火照るのを感じていると、満君はくすくす笑った。

 

「緊張しているのかな?大丈夫だよお兄ちゃんは怖くないからね」

 

 満君は私の頭をそっと撫でた。お父さんより小さくて、それでも男らしいがっしりとした手の感触に、私は頭の天辺まで顔が熱くなるのを感じながら思わず俯いてしまう。

 

「お父さんたちの話全然終わりそうにないね。……ねえ依子ちゃん。2人で先に抜け出しちゃおっか?」

 

 耳元に心地よい声が聞こえると突然左手を握られ、強く体を引っ張られた。

 

「ちょっと依子ちゃんにお家案内してくる!」

 

 両親たちから苦笑とともに了承の返事を貰いながら、私は満君に天江家の中に引きずり込まれたのだった。

 

 案内早々に私が肩にかけていた大きなカバンを見咎められると先ずは最初に私の部屋を教えてくれた。6畳間の部屋に小さなテーブルと畳まれた布団が置いてあった。殺風景な部屋に暗澹たる思いを抱くもお世話になる身で思いあがるなと気を引き締め、カバンと帽子を部屋の隅に置いた。

 

「何もない部屋でごめんね。丁度良い家具とか置物とか見つからなくて」

「いやいや!とんでもないです!こんなの突然お邪魔する私が悪いんですしぃ……」

 

 自分の口から予想以上に大きな声が出たことに驚き、顔がさらに熱くなるのを感じながら今度は予想以上に尻すぼみに答えてしまった。満君がまたくすくす笑う。

 

「ありがとう。依子ちゃんって優しいんだね」

 

 そう言うと満君は私の手を取りながら美しい顔をそっと近づけた。

 

「寂しくなったら僕の部屋に来ても良いんだよ?」

 

 満君の声は私の耳の中を良く通り、頭の中で何度も繰り返された。私は熱中症になるかと思うぐらい顔が熱くなり、何か返事をしようと口を開くも喉に何か張り付いたかのように声がでなかった。

 満君はそんな私の様子をしばらく見据えると、目を細めて口端で笑った。満君はまるで恋人繋ぎのように指と指を絡めてぎゅっと私の手を握りしめなおすと、私の身体を肩に引き寄せながら家の中を一つずつ案内してくれた。

 男の子のごつごつした手。緊張と興奮による手汗で湿るのにヒヤヒヤしながらも、重なり合った手のひらはマグマの様に熱を持ち満君と手と手の先で溶け合っているかのような感じを覚える。

 ふと私は熱に浮かされたかのようにわざと力を抜いていた手に少しだけ力をいれてしまう。私は咄嗟に怒られると思わず身構えてしまうが、満君は何も言わずに強く握り返してくれた。私は部屋を案内する満君の赤みがかった横顔を惚けて見つめながら心中は安堵と狂喜に包まれたのだった。

 私は気を良くして案内の間に何回も手を握り、その度に満君は手を握り返してくれた。

 

(この手は一生洗わない……)

 

 ちなみに満君の部屋は私の部屋の隣だった。

 

 案内が終わり手を繋ぎながら玄関まで戻るともう両親は帰ってしまおうと車に乗り込んでいるところだった。じゃあねと、ぶっきらぼうに別れの言葉を発する私を尻目にお母さんとお父さんは満君と繋がった私の手を目ざとく見つけた。

 

「満君ごめんね。依子ったら中学生にもなってまだまだ子供なんだから。生意気言ったら遠慮せずに怒ってやってね」

「いえいえ、依子ちゃんってば僕の案内にも素直について来てくれてとっても良い子ですよ。可愛い妹ができたみたいで僕も嬉しいです」

「そうかい?なら良いんだけど」

 

 お母さんとお父さんは依子をよろしくねと満君にお願いすると、満君は胸をはって僕に任せてくださいと答えた。その後おばさんとおじさんに会釈をすると両親は窓ガラスを閉めて車を発進させた。私は恥ずかしくて消えてしまいたかった。

 おじさんとおばさんは直ぐに家の中に戻ってしまったが、私と満君は車が見えなくなるまでその場で見送った。

 

「じゃあお家に戻ろうか」

 

 満君の後に続いて玄関の扉をお邪魔しますと言ってくぐり抜けようとすると、満君がそれは違うと振り向いて言った。夏休みの間は天江家は私の家であると。私は満君の妹であると。ならば言う台詞は違うのでないかと。

 わざとらしく眉間にしわを寄せて私の前に立ち塞がった。美少年の熱い眼差しに私は耐えられなかった。

 

「たぁ、ただいま。満お兄ちゃん」

「うん!お帰り依子ちゃん!」

 

 まっすぐに落ちてくる夕日の光に照らされた満君の笑顔が輝いていた。

 

(白いタンクトップに短パンの田舎の優しいお兄ちゃんなんて……これなんてエロゲ?)

 

―――私の忘れることができない夏休みが始まる。




満君は毎晩のように女の子にもてたいと思っていた陰キャ童貞でした。30歳の誕生日になって魔法使いになっても同じように思っていたので気づいたら貞操逆転世界の田舎に転生しちゃいました。ただ田舎は同年代は少なく美少女が居なくて悶々としているところに麦わら帽子の白いワンピース美少女の依子ちゃんがやってきたのでめっちゃ興奮しています。本来なら陰キャ故に積極的な行動はとれないのですが依子ちゃんの自分以上の陰キャムーブに男性という立場の道徳的優位を感じた満君は、調子にのって陰キャ童貞特有のセクハラをしているという設定です。ちなみにオタクなので妹が好きです。 
依子ちゃんは陰キャなので自分から手出しはできません。
お母さんとお父さんは邪魔なので夜遅いのに直帰させました。
おじさんとおばさんも消したい。

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