オンラインゲームにはまった設定とから、家から追い出す口実でしかなかったんだよなぁ。
陰キャの描写も不自然じゃなかったら良いけど。
後タグにあべこべを追加しました。基本検索ワードは揃ったはずかな?
追記、文章改行しました。基本的な事に気づいていなくて恥ずかしい。
天井に吊り下げられた橙色の照明がぼんやりと光る。家の中はしんと水を打ったかのように静まり返り、暗い窓から微かに聞こえるコオロギの音がやけに耳に響く。私は煎餅みたいな薄っぺらい布団の上で横になりながら眠るでもなくただ天井を見ていた。エアコンが着いていないこの部屋は風通しが良くて思っていたより涼しく過ごしやすい。
いつもならオンラインゲームをしている時間であるが、田舎だからだろうか、天江家の夜は我が家より幾分早いようだ。テーブルに置かれたデジタル式の目覚まし時計には午後10時32分と表示されていた。居候先の生活に合わせるためにも私も普段より早く床に就く。
ぼーっと天井を見つめていた私は何と無しに頭を横に向けると、橙色の光に照らされた土壁が見えた。この壁の向こうは、満君の部屋だった。満お兄ちゃんと、不意に声が漏れた私は今日の出来事を思い返し胸中で呻りを上げる。
満君にお家を案内してもらって両親を見送った後、遅れて家の中に入った私達におじさんは夕飯だと声をかけた。居間の四角いテーブルの上に沢山の料理が並んでいたのは覚えているが、どのような味だったのか思い出せない。
食事の席でおばさんとおじさんは色々とこちらへ話を振ってくれたのだが、上手く返せていなかった。会話の間に流れる沈黙に私は居心地の悪さを感じたまま食事を終え、先にお入りと背を押されて風呂をお借りした後、私の寝間着を持ってきたおじさんから今日は疲れているだろうからと部屋へ案内された。
(やってしまった)
見事なバッドコミュニケーション。こんな陰キャの世話を一ヶ月もしなければいけない、おばさんとおじさんに対して私は申し訳なさで胸がいっぱいになる。突然の申し入れを快く引き受けてくれた優しい二人に対して何て仕打ちだろうか。そして何より———
(……満お兄ちゃん……!)
私は心の中でありながらそう呼ぶのに思い切りが必要だった。自慢にはならないが今日の満く———お兄ちゃん———との会話は、私が中学生になってから男子とした会話の総時間に匹敵する長さだった。しかも男子の身体に触れるなんて小学生以来の出来事で、ましてや長時間手を繋ぐなんてことは人生初の快挙だったのだ。しかも年上の綺麗なお兄さん相手に。クラスで人気者の女子だってきっと経験できていない事のはず、だというのに私は気分が沈んでいた。
(ぜったい変な子だと思われてる)
そもそも私のような陰キャが男の子の手を握ったりするなんて許されるだろうか? いや、許されるはずがない。
小学5年生の時の運動会で、皆が男女で仲良く手を繋いでフォークダンスをしている中、大勢の保護者、母姉が見守る前で男側の列で踊り切ったことを今でもはっきりと思いだせる。クラスの男女比が不均一で女子から一人男役を選ばなければいけなかったあの日、クラスの男子達が一人だけ手汗が酷くて気持ち悪いと私を指さした出来事は忘れることができない。
だというのに私の二つ年上の、今まで出会ったどんな男子よりも可愛い顔の、満お兄ちゃんは、私の手をしっかりと握りしめてくれたのだ。人生で一番の手汗をかいた一日だった。繋いでいた手のひらは真っ赤に燃え上がりながら大きな水滴が幾つも張り付いていて、熱くなった手をすぐに冷やしてくれたほどだった。
(気持ち悪かったのかなぁ)
私は自分が惚れやすい性質であることを自覚している。消しゴムを拾ってもらった男子を好きになるのなんて当たり前。
日直の日の黒板の端に私と男子の名前が横並びになるの見て、私の”
クラスの男子委員長が教室を真面目に掃除する私を引き合いにして、遊んでいる女子たちを怒ったときなんて私は真剣に男子委員長に恋をした。まあ恋といっても見つめるだけで、クラスが変わり姿が見えなくなるといつのまにか恋も冷めていたのだが……。
(なんで手を握ってくれたんだろう)
きっと親と離れ離れになる年下の私を可哀想に思って、大丈夫だよと手を繋いでくれたのだろう。
だって普通の男性なら、初対面の女相手に寂しいなら部屋に来ていいよなんて言うはずがないのだ。仲の良い男子同士が肩と肩が触れ合う距離で手を繋いで歩いている姿はたまに見かけるし、面倒見の良いお兄さんが年の離れた兄弟に対して手を引くなんてことは良くあることだった。
年下の子供だと思って接してくれたはずなのに、私は優しい満お兄ちゃんの手を何度も力を入れて握ってしまったのだ。思えば手を握ったときに紅潮したあの横顔は、私からのセクハラを恥ずかしく思っていたに違いない。不快な思いをさせてしまって、ただただ心の中で謝罪するしかなかった。
(かたかったなぁ)
申し訳ない気持ちとは裏腹に、脳裏には男の子の手の感触が焼き付いている。私の手を包み込む細く長い指。薄い肉の手はごつごつと男らしく、力を入れると感じる固い骨。熱くなった手でぎゅっと手を握ると、まるで満お兄ちゃんの手と混じり合ったような気がした。
私は身体を横に向ける。手を伸ばせば届きそうな壁の向こう側に、満お兄ちゃんが居る。私は瞳を閉じて、満お兄ちゃんの姿を思い浮かべた。想像の中の満お兄ちゃんが私に笑いかける。私は自分を抱くように背中を丸めて片手を脚の間に挟む。そして満お兄ちゃんはその男らしい手をこちらに伸ばし———。
翌日、私が目を覚ました時にはもうお昼を過ぎていた。セミの音がジリジリと鳴り響き、窓口から太陽光が部屋の中を明るく照らしていた。寝間着は寝汗で湿り気を帯び肌に張り付いて気持ちわるく、快適だった部屋も日中はジメジメと蒸し暑かった。
私は昨日とは別の白いワンピースに着替えると、脱いだ寝間着を抱えて脱衣所の洗濯籠に放り込み、洗面所で顔を洗った。どうやら案内された事はきっちり覚えていたようだ。
ギシギシと音を鳴らす廊下を歩き居間の扉を横に引くと、昨日と同じような白いタンクトップに短パン姿の満お兄ちゃんがテーブルに肘をつき、顔を手に乗せた姿でテレビを見ていた。満お兄ちゃんは顔を向けて私を見ると、背筋をピンと伸ばし、半身をこちらに向けて私の顔をちゃんと見ながら挨拶をした。
「おはよう、依子ちゃん」
「あ、おはようございます」
私は後ろ手で扉を閉めながら返答する。満お兄ちゃんに近づくにつれて、タンクトップでできた上に覗く隙間から胸を覆う白いインナーと白い肌がちらちら見えた。私は直ぐに目線を逸らして慌ててテーブルの斜め隣に座る。
「昨日はよっぽど疲れていたんだね。今日は目覚まし時計が鳴っていたのに依子ちゃんが全然起きなくてびっくりした」
「はは、お恥ずかしいかぎりで……」
私は昨晩の事を思い出して頬を紅潮させた。他人の家でやってはいけなかったことを暗に指摘された気がして思わず身を縮める。そんな私の姿に満お兄ちゃんは可愛らしく顔を傾ける。私は惚れてまうやろ!と心の中で絶叫した後、そういえばおじさんは何処ですかとぽつぽつと尋ねると
「昨日も説明されたと思うけどお母さんとお父さんは共働きでね、もう家を出ちゃったよ」
「そうなんですか。じゃあ洗濯物はどうすれば……」
思いがけないことを聞いたという風に満お兄ちゃんの眉根が上がると、世界中の女性が見惚れそうなくらいの笑顔を浮かべて口を開いた。
「僕がやっておくから」
「そんな悪いです。私が代わりに」
「良いから良いからお兄ちゃんに任せなさい。洗濯なんて女の子がやらなくて良いんだよ」
耳に入ってくる満お兄ちゃんの声。その言葉を理解した瞬間、顔が沸騰した。今私は何と言ったのだろうか。年頃の男の子の満お兄ちゃんが居る家庭で、親戚とはいえ女の私が洗濯を申し出るということは、つまりその身に纏まった匂いや何やらが染みついた衣服を触りますよと言っているようなもので。
(またやってしまった……)
私は下を向いて項垂れながら、喉から絞り出すように洗濯をお願いするしかなかった。
「……ぉねがいします」
「こちらこそありがとう」
(……ありがとう?)
私が疑問に思い頭を上げると、なぜか満お兄ちゃんは立ち上がっていた。
「じゃあさっそくやってくるね。依子ちゃんの分のお昼ご飯は台所にラップしてあるからチンしてゆっくり食べてね」
「あ、ありがとうございます」
言うやいなや、そそくさと満お兄ちゃんは居間から出て行った。扉が音を立てて閉まった後、廊下がきしむ音がだんだん遠ざかっていく。私は大きなため息をつくと、目の前のテーブルに突っ伏した。まさか昨日の今日でセクハラを繰り返すとは。角が立たないように笑顔で対応してくれた満お兄ちゃんには頭が上がらない。
私はこんな調子で一ヶ月やっていけるのだろうかと、先行きに大きな不安を感じるのであった。
たった一日の出来事を書くのがこんなに大変だなんて、夏休みを書ききれるか不安です。描写するのが難しくて死ぬ。下ネタもこれぐらいなら大丈夫だよね?思春期の男なら絶対やるはずだと思う。ちなみに手汗が酷かったのはお兄ちゃんもかいていたからです。おじさんとおばさんはワーカーホリックになってもらいました。これで兼業農家にすればもう家に出ることはないでしょう。
ところで貞操逆転ものって、男視点で女はガツガツした物語が多い印象ですが、こんな作品に需要あるのでしょうか?私は好きですが。