貞操観念逆転世界の私の夏休み   作:イルミン

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……前回の投稿から1ヶ月過ぎてますね。言い訳をさせて頂くと、仕事をキャリアチェンジしようと活動している最中で時間が取れませんでした。ちびちび書いてはいるので、気長に待っていただけたらと思います。風呂敷は拡げるつもりはないので何とか気合で完結まで持っていきます。
誤字報告ありがとうございました。
感想、評価もありがとうございます。


陰キャは惚れやすいけど、ここまでスキンシップされたら誰でも惚れるんじゃない?

 けたたましい電子音が耳に鳴り響く。耳障りなその音に私は意識を一瞬で覚醒させると勢いよく上体を起こし、テーブルに置かれた午前7時30分をアピールしている目覚まし時計を停止させた。

 せっかくの夏休みなのに朝早くに起きるなんてと、以前の私であれば理解に苦しむに違いなかった。欲望の赴くままに二度寝を繰り返し、起きているのか寝ているのかもわからない微睡みの中だらだらと徒に時間を浪費する事がもしかしたら人生で一番の幸せだったりするんじゃないかって、過去の私はそんな事が人生の真理だと少しばかり真剣に考えてもいた。

 だけど今の私は、朝の貴重な二度寝なんかよりももっと幸せな事が世の中には存在するんだって知っている。なんとなれば、会いたくて震える某シンガーソングライターの気持ちも理解してしまった。好きな人が居るだけで毎日がこんなにもキラキラと輝いてみえるものなんだって気づいてしまったのだ。

 今日も一日頑張るぞいと、手の指を組んで腕を前に出すと頭の上までゆっくり腕を上げながら全身で伸びをする。どこか遠くで鳴いてる蝉の音に耳を傾けながら、身体中の緊張を解すように息を吐いた。

 私は寝汗で湿った寝間着から淡い青色のワンピースに着替えると扉を開けて洗面所に向かう。寝間着を洗濯籠に入れた後、寝癖の一本すら許さぬように鏡で確認しながら入念に身支度を整えると、「よし」と気合を入れて私は居間に向かう。

 居間の扉を開けると、予想通り満お兄ちゃんが床に座ってテレビを見ていた。私が挨拶をすると、「おはよう」と笑顔で答えてこちらに向けて両手を広げてくる。

 私は頬を熱くしながら後ろ向きに腰を下ろして、満お兄ちゃんが腕と脚で作り出す空間へすぽっと収まると、満お兄ちゃんは両腕を前で交差させて私を抱きしめてくれる。

 こうして満お兄ちゃんに優しく抱きしめられながら居間でテレビを見ることが、私が泣いてしまった日以来の日課になっていた。

 私が泣いた次の日の朝のこと。顔を合わせるのが恥ずかしくて居間の前で何十分も立ち尽くした後、勇気を出して扉を開けた私を今日のように満お兄ちゃんは両手を広げて出迎えてくれた。

 何をされているか理解できない私が床に座った後も、ポーズを変えずにただただ私を見つめてくる満お兄ちゃんの姿に対して、美人の真顔はマジで恐ろしいと感じながらその時の私は無言の圧力にただただ狼狽えていた。

 私が挙動不審に視線をあちこちやりながら、「何かご用ですか」と問うてみても返事は返ってこない。いよいよをもって追い詰められた私は何をトチ狂ったか、これはハグ待ちではないかと考えて満お兄ちゃんに四つ這いで近づいてみる。今思うとキモいと言われてしまいそうな行為だがこれが正解だった。

 何も言わない満お兄ちゃんに対して恐る恐る身体が触れないようにその手の中に収まってみると、そのまま後ろから抱きしめられて「よしよし」と頭を撫でられて、私は身も心も絆されてしまった。

 その日は満お兄ちゃんの腕の中でテレビを見ながら一日を過ごした。次の日も、その次の日も、気づけば満お兄ちゃんの腕の中でテレビを見る事が当たり前になっていた。

 胸のドキドキが伝わったらどうしようとか、へんな所に身体が触れて嫌われたら怖いとか、満お兄ちゃんの匂いを嗅ぐのが好きだとか、感情があちこちから溢れ出てきて胸がいっぱいになってしまって、大好きな男の子に抱きしめられる事がこんなにも幸せなんだって事を私は知ってしまった。

 そして何より満お兄ちゃんの事を異性として好きだという事に気づいてしまった。はっきり言えば私は満お兄ちゃんと結婚したい。毎日満お兄ちゃんとお話したいし、抱きしめて欲しい。もう他の男子なんてどうでも良い。

 一緒に居るだけで心が満たされるようなプラトニックな恋愛感情を持っているのだ。と言いたいけれど、満お兄ちゃんに邪な気持ちを抱いている事を否定できない私もいる。

 それが満お兄ちゃんを汚しているような気がして、私の好きの感情は実は偽物なんじゃないかと悩んだりもする。それでも好き合う女男が肉体関係を持つのは愛情表現の一つだと考えてみたり、女の本能だから仕方がないのだと正当化してみたりもするけれど、本当は満お兄ちゃんが一番悪いのだと思っている私がいる。

 だって、満お兄ちゃんの隙が多すぎるのだ。毎日毎日、露出の多いタンクトップと短パン姿で白い肌と下着をチラチラ見せてくるし、硬い胸や゛男の子゛の感触も何度も体感したし、満お兄ちゃんの吐息が何度も耳にかかって私の頭をクラクラさせる。

 思春期の女子にこれだけの誘惑行為をして襲われても文句を言えないと私は思うし、これで襲わない私は非常に淑女的な事は明らかだった。だけど私もあくまで一人の女の子である。

 だから私はいつも満お兄ちゃんの一挙手一投足に全神経を集中させていたし、それ故に気づいてしまった。その手の動き、布の擦れる音、何よりお尻に感じる゛男の子゛の向きが変わっている……!

 これはもしかしてチンポジ直しなのではと、私は思わず生唾を飲み込んだ。ちょっとエッチな漫画ではサービスシーンとして描写される事がよくあるし、ネット上では同級生のチンポジ直しを目撃した体験談が度々上がってくるほどの人気のフェチの一つだ。

 私も健全な女子の一人であるため、一度で良いから生で見てみたいと思っていたのだが、まさかそれを身体で感じることができるなんてと私は感動と興奮を禁じ得なかった。

 僕エッチな事なんてしりませんと言わんばかりの清純な満お兄ちゃんのその行為は、私に圧倒的なリアルの゛男゛を感じさせた。

 家の中というのはこんなにも男子を開放的にさせるものなのかと驚愕したし、無邪気で優しいと思っていた満お兄ちゃんの性の一面を感じ取ってしまってからは、私は以前よりももっと満お兄ちゃんに夢中になってしまった。

 彼氏いない歴=年齢で人生を終える事を覚悟していた私だが、はっきりいってこの夏休みにワンチャンあるんじゃないかと期待している。

 最初は女の子扱いされていないと感じて幸せながらもやきもきしていた私であるが、ここまで肉体的な接触が多いとなると、もしかして満お兄ちゃんって私の事好きなんじゃという気がしてくる。

 冷静に考えてみて、男子がただの女子にこうまで構ってくれるだろうか?私の経験から考えても好きでもない女子にボディタッチをする男子は居ないはずだ。

 もしかしたら満お兄ちゃんがビッチの可能性もあるかもしれないけど、おじさんが言うには満お兄ちゃんも引きこもりがちらしいから多分、いや絶対違うと思う。白い肌もサラサラの黒髪もギャル男っぽくないし、THE正統派って感じがする。漫画だったらきっと正ヒーローになれる。

 ……とにかく何か言いたいかというと、満お兄ちゃんは私の事をどう考えているかということで。クラスメイトの男子達が女子によって露骨に対応変えることに気づいている私が考察するに、ボディタッチは対上位カースト女子専用技の筈なので少なくとも私のことを嫌いじゃないはずだ。いや、どちらかというと好ましく思っているに違いない!……と思う。

 だから夏休みの間に何とか満お兄ちゃんとの仲を進展させたいと思っているのだが、男の子と仲良くなった経験が乏しい私は何をすれば良いのか皆目検討がつかず、ただ徒に時間を過ごしてしまっていた。

 そして夜に部屋で一人になると夏休みが過ぎ去って行くことに恐怖を感じるようになった。満お兄ちゃんと会えなくなると思うと、心が苦しくて泣いてしまいそうになる。どうすれば私を好きになってくれるのだろうと毎晩考え込んでも解決策は見つからなかった。 

 今日も今日とて全身で満お兄ちゃんの感触を楽しみつつも、何かしなければと焦りだけを覚えていた矢先、唐突に扉が開かれた。顔を向けると、そこにはおじさんが立っていて私達の事をじっと見つめていた。ここで私は思い出す。今日は土曜日だったと。

 おじさんは数瞬立ち止まった後、居間に入ってきてテーブルの斜め隣に座る。そして興味深げに私達をじろじろ見回して口を開いた。

 

「いつの間にそんなに仲良くなったの」

 

 満お兄ちゃんに抱きつかれている状況をおじさんに見られている。恥ずかしさのあまり口が開けないでいる私の代わりに満お兄ちゃんが答えてくれた。

 

「まあね。僕たち相性良いみたいだから」

 

 そう言うと、「ねえ」と私の頭を撫でながら同意を求められた私は恥ずかしさと嬉しさがない混ぜになって無言で頷いた。

 

「ふーん。まあ物心ついた時から妹が欲しい欲しい言ってたもんね」

 

「そうだよ。結局作ってくれなかったしさぁ。だから依子ちゃんを家の子にしようよ」

 

「できるわけないでしょ」

 

「えー、お父さんのケチ」

 

 満お兄ちゃんにギュッって抱きしめられながら、私の目の前で私について話をする状況になんだか居心地の悪さというか、落ち着かなさを感じつつも、満お兄ちゃんに求められているシチュエーションに喜びと、それが妹である事に落胆を覚えつつ、やっぱり嬉しさの方が勝って顔を熱くしてしまう。

 

「馬鹿言わないの。まったく、……それはそうと毎日何をして遊んでいるの?」

 

「こうやって仲良くテレビを見てるよ」

 

「こんな時にも引きこもるなんて。たまには外に遊びに行きなさい」

 

 「えー」と満お兄ちゃんは嫌そうに声を漏らす。いつも笑顔で私の事をからかったり優しくしたりする満お兄ちゃんの子供らしい意外な一面が見れて、なぜだか嬉しくなる。

 

「せっかく依子ちゃんも△△県から来たんだし、外に連れてってあげなさい」

 

 満お兄ちゃんは「うーん」と呻って私を見ると、「依子ちゃんはどうしたい?」と尋ねてきた。

 本心を言うと満お兄ちゃんに触れ合える時間を減らすなんて事は一顧だにしない愚行であるが、かといって家に居たいと言ってしまえば、満お兄ちゃんとくっついていたいと言ってるようなものでそれは恥ずかしい。

 しかも休日なのでおじさんとおばさんの目があるところでとなると、とてつもなく居心地が悪くなる事は想像に難くない。

 何より引きこもってばかりだとおじさんからの評価が悪くなるだろうし、家でテレビを見ているだけでは仲が進展するきっかけも思い浮かばない。それに学校でも外でスポーツをする女子がもてていたとくれば、返事は一つしかない。

 

「私も外で遊んでみたいです」

 

 勿論、満お兄ちゃんと一緒にという前提はつく。満お兄ちゃんは更に悩ましげに頭をひねった後、私の頭を一撫でして立ち上がる。

 

「わかったよ。準備してくるからちょっと待っててね」

 

 そう言うと満お兄ちゃんは居間から出ていった。おじさんが私に目を向ける。

 

「ごめんねぇ。あの子につきあわせちゃって」

 

「いえ、私も仲良くしてもらって嬉しいです」

 

「幼稚園の時から妹が欲しい欲しいってうるさくて、中学生に上がってからはもう言わなくなったと思ってたんだけど、きっと依子ちゃんの事を妹ができたと思って浮かれてるんだよ」

 

 満お兄ちゃんの妹だなんて、何と贅沢な立ち位置だろうか。実の妹であれば、今の私以上に甘えさせてくれるのだろう。膝枕してくれたり、同じお布団で寝たり、もしかしたら一緒にお風呂にも入るのかもしれない。良かった、妹が居なくて。

 

「申し訳ないけど、付き合ってあげてね」

 

「はい」

 

喜んで突き合いたいです。お養父さん。




夏休みらしい事とか色々したいなと思ってたんですけど、書いてみたのを読んだら詰まらなかったです。やっぱりあべこべ作品なので、それをメインにしないといけませんね。カルピスは薄いとマズイです。表現が上手な小説でもないですし。
家の中にいるともうヤルしか無いので、取り敢えず主人公を外に出させましたが何処に行くのかわかりません。何も思いつかなかったらシーン飛ばしそうです。


ちなみにあべこべ作品で私の好きなシーンの一つはプロローグの世界観説明の際に痴漢のニュースが流れてくるシーンです。
何というか妄想を掻き立てられます。どんな風に男性を痴漢するんでしょうか。そこから発展して、どんなフェチが存在するのか考えるのが楽しいです。
チンポジ直しは確実にフェチとして存在すると思います。あと金的フェチはネット上ではメジャーになっているでしょうね。やりすぎるとリョナになりそうで怖いですが。社会の窓はパンチラ並の王道でしょうか。この作品の世界では嫌な顔をされながらおチャック下ろして貰いたいって本が絶賛発売されています。

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