リアルでキャリアチェンジする勉強が個人的に最優先なので、許してください
毎日更新とか何百話も更新してる人ってほんと化物ですね
(非実在青少年は実在していた……!?)
青い帯の麦わら帽子を被った短パンタンクトップの男の子が私の目の前に顕現していた。その男の子は口元に笑み浮かべながらキラキラした瞳を私に真っ直ぐ向けている。そして手には別の麦わら帽子を持ち、足を肩幅以上に開いて自信満々といった感じで立って居る。
その姿は正に快活系ヒーローの様で、きっと平凡な女子学生をあちこち遊びに連れ回して、それに付き合わされる私はその元気さに付いていけないなとボヤきながらも、でもこんな生活も悪くないなってふと心の中で思っちゃいそうで……っと、あぶない!あぶない!一瞬で物語が始まりかけてしまった。
夏✕田舎✕美少年の方程式の解の公式の1つが目の前で証明されてしまい、思わず口を開いて呆けてしまった私に対して
「はい。これ依子ちゃんの分」
満お兄ちゃんは手に持っていた麦わら帽子を私の頭にぐいっと被せてきた。何だか子供扱いされているみたいで恥ずかしい。
それにこれで私は白いワンピースに麦わら帽子という装備になってしまった。
虫取り少女では恋愛作品に登場するのはちょっと厳しい。これでは児童作品にしか出れないぞとモヤモヤ考えている私の気持ちを知らずに満お兄ちゃんは満面の笑みを浮かべていた。
「うん!やっぱり、とっても似合ってるよ!」
そう言うやいなや満お兄ちゃんが私に抱きついてくる。五感で感じる心地良さに私は一瞬にしてアンニュイな気分が吹き飛ばされた。そうやって頭の中がふわふわしている間にいつの間にか私は家の外に出ていて、目の前には満お兄ちゃんと一台の自転車があった。
……どうやらもうお出かけするみたいだ。しかし、これはもしかして、一生縁が無いと思っていた二人乗りのチャンス!?この設定でこのシチュエーションなんて、もうこれは現実じゃなくてファンタジーだ。
本当は満お兄ちゃんも親戚のお家も存在していなくて、夏休みの初めに交通事故にあった寝たきりの私が見ている夢の世界だったと言われた方が納得してしまう。
だけど目をパチパチさせてもやっぱりこれは現実で、だからここは格好良く二人乗りを決めるぞと自転車に私は目を向けた。
買い物カゴのついた男の子らしい淡い水色のカラーリングの自転車だ。ボディは光沢が薄まっており、微妙に擦れたサドルを見た私は男の子が使い込んだ私物を使うのって、何だかとてもドキドキするなぁと思う。そして意を決して自転車に乗ろうとした矢先、何と満お兄ちゃんが先に乗ってしまった。
「さあ依子ちゃん、ぼーっとしてないで後ろに乗って」
一瞬呆気に取られるも、さすがに男の子に乗せてもらうのは女の沽券に関わると思い私は口を開いた。
「私が前に乗りますよ」
「これ、僕の自転車だから」
「いやでも男の子に前に乗ってもらうわけにはいき———」
「いいから乗った乗った!」
チリンチリンとベルを鳴らしながら私の言葉を遮って強弁してくる美少年に抗うすべを持ち合わせていなかった私は、諦めてとぼとぼと自転車の荷台に跨って乗る。男の子のワガママを聞いてやるのも女の甲斐性だ。多分、きっと。
「あーそう乗るのか……」
「え、何かいけませんでした?」
「んー何でもない」
何か粗相をしたのかと思ったけど何でもないみたいだ。最近理解したのだけど、満お兄ちゃんはたまによくわからない事を呟く癖がある。私がやるとただの不審者だけど、美少年がやるとミステリアスで可愛く見える事を私は学びつつあった。
そんな世の不条理さに頭を悩ましつつ、私は満お兄ちゃんに触れないように隙間を空けて、手で荷台を掴んで身体を固定する。無防備な背中を見ていると何だか胸がドキドキする。情けないけど後ろは後ろで有りだった。
「じゃあしっかり僕に掴まっててね」
そう言うと満お兄ちゃんは私の両手を掴んで、無理やり腰に手を回させてきた。手を引っ張るものだから、後ろから抱き着く形になってしまった。これやばい。頭がフットーしそうだよおっっ。
青い空。白い雲。風に靡く青々とした田んぼ。誰もいない田舎の道を美少年と自転車二人乗り。とりとめのない話をしながらゆったりと流れる二人だけの世界。
目の前にある背中に耳をぴっとつけると、満お兄ちゃんの心臓の音がドクンドクンと私の中に入り込んでくる。そうして私の心臓の音と混ざり合って、2つの心臓の音がいつしか重なっていく。まるで満お兄ちゃんと一体になったような感覚になって、このまま私の身体がどっかいっちゃいそうになる。
やっぱりここは夢の世界なのだろうかと現実と夢の狭間で揺蕩う私の耳に、後ろから金属がカタカタする音が聞こえてくる。
満お兄ちゃんに身体をくっつけながら目線だけを後ろに向けると、同い年位の女の子が乗っている自転車がゆっくりと走ってくるのが見えた。
何となしにそのまま見続けていると女の子と目が合った。女の子は口を半開きにしてこちらに近づきながら横を通り過ぎた時に満お兄ちゃんの顔をチラリと覗くと、直ぐに私へ目線を戻して今度は驚愕の顔で私をマジマジと見た後、暫くして顔をそのままにして走り去って行った。
その後もちょくちょくとすれ違う人達はこちらを見て、三者三様のリアクションをしながらも一様にして信じられぬものを見たといった面持ちで走り去っていった。
自転車二人乗りを人に見られる事を、私は想定していなかった。しかも男の子に自転車を漕がせているだなんて、私はどんなプレイガールにみられているんだろう。頭が別の意味でフットーしそうだよおっっ。
そうしていつの間にか街の中に入っていた私に、人々のさらなる好奇の目が突き刺さる。道行く人全てがこちらを見ているように感じるのは恐らく間違いないじゃない。
冷静に考えたら満お兄ちゃんの見た目は某千年に一度のアイドルに勝るとも劣らないレベル。百人居れば百人が振り返る位の美少年が世間から浴びる注目を今私は体感しているのだ。
ただでさえ人から注目を浴びるのに慣れていないのに、しかもどことなく好意的じゃない目線が大量に私に向けられていて、目は口ほどに物を言うどころか物理的に刺さっている気がする。帰りは絶対に私が前に乗ろう。じゃないと身が持たない。
「さあ着いたよ。依子ちゃん」
「ありがとうございます」
胃の痛みに苦しみながら何とか辿り着いた目的地はイ○ンだった。どこに行くんだろうと思ってたけど、やっぱり都会も田舎も行く所は変わらないよね。
残念に思う気持ちと同時に、満お兄ちゃんみたいな美少年でもイ○ンに行くんだという事実に何だか親近感も湧いてくる。可愛い顔をしてても結局同じ人間なんだな。
「適当にお店を見て回ろうか」と言う満お兄ちゃんと一緒にウィンドウショッピングというものに挑戦する。陰キャの私には何をするのか検討もつかない。
普段の私なら玩具売場に行くか本屋で漫画を見る位しかしないのだから。ついていけるだろうか陰キャの居ない世界の遊びに。と、戦々恐々としていたのも初めだけで、私はすっかりウィンドウショッピングという遊びに夢中になっていた。
雑貨店に入っては良く解らないアイテムの使い方を一緒に模索したり、眼鏡屋さんに入っては可愛いメガネっ子属性の満お兄ちゃんを拝見する事ができたり、フードコートで一緒にお昼ごはんを食べたり、服屋さんでは誰得な女の私のファッションショーが満お兄ちゃんの意向で開催されたりして、何故だろうイ○ンなのに、修学旅行で遊んだデ○ズニーランドより楽しい。
「ねえ!ちょっと待って!」
さあ次は何処のお店に寄ろうかと話をしながら通路を歩いていると、後ろから女の呼ぶ声が聞こえた。振り返ってみると、中高生位の年齢の黒髪ショートカットの女の子が立っていた。
びっしりと英文が書かれた黒地のシャツ、黒地のミニスカート。眉毛が薄く、何か 3代目j soul sistersとか好きそうな感じで私が苦手なタイプの女子だった。
変な人に絡まれてしまった。ナンパだと思い、ここは女の私が矢面に立つべきだと勇気を出して前へ出ようとすると、満お兄ちゃんが先に反応した。
「あ、久貝さん」
「やっぱり天江じゃん!いやぁ偶然ね!イ○ンに遊びに来てたの!」
勢いよく喋り出したこの女はどうやら満お兄ちゃんの知り合いのようだ。すぐ側に居る私を無視している事に憤りを感じつつも、文句も言えず離れる事もできず手持ち無沙汰で居辛くなった。
クラスメイトだろうか?ただでさえ3人以上の会話が苦手なタイプの私に対して、知らない人が居る話に加わるのは難易度がVery Hardだ。
最近は満お兄ちゃんに構って貰っていて忘れていたけど、自身がコミュ障だった事を思い出す。光あるところに影があるという言葉通り、こういう場面ではネガティブな考えばかりが頭に浮かんでしまう。私だったらクラスの男子とこんなに会話ができないとか、陰キャの私はやっぱり満お兄ちゃんと相応しくないだとか。
そうして会話をする二人を眺めていると、久貝とかいう女の顔が明らかに赤くなってる事に気づく。さっきから身振り手振りで一生懸命話かけていて、満お兄ちゃんの事が好きなんだろうなという事が何となくわかる。
これだけ頑張らないと彼氏なんて出来ないのだろうと理解できて、私には手が届きそうになくて物悲しくなる。所詮私のような草食系女子は草しか食えないのだ。
そして満お兄ちゃんにも目を向けてみると……あれ?笑ってるけど笑っていない???出会ってからまだ一ヶ月も経っていないけど、満お兄ちゃんは表情豊かな人だ。コロコロ変化する表情に私はいつも翻弄されるがままで、喜怒哀楽がストレートに顔に出る人だった。
だけど今の満お兄ちゃんは何だか張り付いた笑顔をしているみたいだ。それによくよく会話を聞いてみれば、満お兄ちゃんは相槌ばっかりだし、そういえば声がいつもよりトーンが低いような気がする。
もしかしたら満お兄ちゃんは、さっきから一方的に喋りかけているこの女の事が苦手なのかもしれない。多分、結構な確率でそうだと思う。まあ恐らく客観的に見ても正しいと思う。そして、そう考えるとこの女の事が哀れに思えてくる。満お兄ちゃんが嫌がっている事に早く気づけ。引くことを覚えろ。
「そういえば天江と夏休みに会うのってこれが初めてじゃない!?せっかくだから、これから一緒に遊ぼうよ!」
???
お前は何を言ってるんだ?
遊びに行く場所が何も思いつかないのでイ○ンが生えてきました。
川遊びとか色々あると思うんですけど、陰キャはそんな事しないと思うので、とりあえずイ○ン行っときゃ良いっしょと思いました。
外に行ったのは自転車乗せたかっただけなんです。
後は、花火と夏祭りぐらいは書きたいです。
そして変な女が出てきたけど、あまり風呂敷広げずに完結を目指したい。