「へ~ヨウコさんは猟師なんだ?」
「はい・・・・小さいころから狩りをして生活してます」
俺はヨウコさんに連れられ、今ヨウコさんの家に向かっている。俺の目の前にいる彼女の本当の名は、杉谷善住坊。
杉谷善住坊と言えば鉄砲の名手であったという以外の詳細は不明であり、出身についてはかつて織田家に滅ぼされた武家甲賀五十三家の一つである杉谷家の人間で、「忍者」「雑賀衆」「根来衆」「賞金稼ぎ」「猟師」とも言われている非常に謎の多い人物で有名なのは織田信長を火縄銃で狙撃した事だ。
だが結果は信長のマントに穴をあけただけで失敗に終わり、最後は激怒した信長に捕らえられ竹製の鋸で首を時間をかけて斬る」という末恐ろしい処刑にかけられる
「(こんなかわいい子がね・・・・・・)」
俺は彼女を見てると彼女はちらっと俺を見て
「何か私の顔についているの?」
と、きょとんとした表情で軽く首をかしげてそう言う
「ああ。いや。可愛い顔だな~って」
「・・・・」
そう言うとヨウコさんはそっぽを向いて俺に顔を見せないようにする。あれ?怒らせるようなこと言ったかな?若干体が震えているし、
するとヨウコさんは軽く咳ばらいをし、おれの腰をちらっと見る
「それより…あなたの腰に隠している物・・・・見たこともない短筒・・・南蛮製?」
「え?」
俺は服の中に隠しているワルサーP38のことを彼女に訊かれ少し驚く。ワルサーは服で見えにくくなっているのにどうしてわかったんだろうか?
「あの…なんで俺が拳銃持っているの分かったの?」
「拳銃っていうの?」
「う、うん単筒は拳銃って俺は呼んでいるんだけど・・・・・」
「見せてもらってもいい?」
「まあいいけど?」
俺は腰からワルサーを取り出して彼女を見せる
「見たことない形・・・・・南蛮のやつ?」
「まあ、ドイツの拳銃だから南蛮製と言ったらそうかな?」
「そうなんだ・・・・・」
と興味津々の表情でちらちらと俺の拳銃を見ていたが、欲しいとか触りたいとは言わなかった
「そう言えば、ヨウコさんのその鉄砲は?鉄砲って確か高かったはずだろ?」
「昔、熊に襲われていた鉄砲鍛冶の人助けたら、お礼にもらった・・・・弓よりも扱いやすいからそれ以降これ使っている。玉薬はその人から格安で売ってもらってる」
「そうなんだ・・・・」
そう話すうちにとある店・・・多分料亭にたどり着く。そしてその庭には子供たちが一人の女の子の前に集まっていた
「国のまさに起らんとするは民に訊く・・・・これは明国の」
どうやら子供たちに授業をしているようだ。するとヨウコさんはその人に近づき
「美緒。今帰った・・・・・あと悪いけどお客を招待したんだけど、ご飯おごってもいい?」
と、俺に聞こえないように小声で言うとその人は
「あなたも一緒に食べるとなると一か月分の生活費がなくなっちゃう…けど?」
そう言い彼女は俺を見る。俺は軽く頭を下げると、彼女は何かを感じたのか深々と頭を下げ
「なるほど・・・・立派な客人のようね。わかったわ存分におもてなしして」
「ありがとう」
そう言いヨウコさんは彼女にお礼をすると店の中に入り
「おじさん。ご飯・・・お願い」
店の主人にそう言う。そして俺はさっきの人に頭を下げヨウコさんのところに向かう。そして先ほどの女性は子供たちに講義を再び始めるのだった
そして店の中に入った俺とヨウコさんは椅子に座り
「あれがヨウコさんの友達?」
「うん・・・・いいこと言うでしょ?」
「なんていう人なんだ?」
「島清興・・・・・通称は
「島清興・・・・・・あの島左近か・・・」
俺は驚いた。島清興と言えばのちの島左近となる人物だ。生涯主君を持たないことで有名な武将だったが、最後は石田三成の参謀として使え
「三成に過ぎたるもの二つあり、島の左近に佐和山の城」
とまで言われた武将だ
俺が驚く中、ヨウコさんは
「・・・・大きな声で言えないけどなんでも生まれ故郷で役人を斬ってここ美濃に逃げてきたらしい」
「役人を?なんで?」
「なんでもその役人が村人に暴力ばかりふるっているのを見てしたことらしい・・・・・私もつい最近、この店で会ったばかりなんだけど。一緒に食べたり飲んだりするうちに仲良くなって友達になった」
「そうなのか・・・・」
そう話していると、店の主人がおにぎりと焼き魚を持ってきてテーブルに置く
「それで・・・・弘樹さん」
「なんですか?」「弘樹さんはこの現状をどう思っていますか?」
「え?」
「わたしは猟師ですけど、近頃、民を思わない領主や大名にうんざりしています・・・・でも弘樹さん。弘樹さんの目を見ているとなんか大きな思想を掲げているように見える。弘樹さんはただの村の人のようには見えません」
俺の目を見てそう言う彼女。彼女の目はまるで水のように清らかに透き通ていてなんでも見抜いてしまいそうな目だった。
そんな目で俺を見る
「アハハは・・・・・実は俺ある党・・・組織を立ち上げているんですよ。まだ力はないんだけど」
「組織・・・・ですか?」
「うん。国民社会主義労働者党って名前なんだ?まあ通称は那智党って名乗っているんだけど」
「那智党?」
ヨウコさんが首をかしげると
「すまないけど、私も仲間に入っていいかな?」
と、そこへ授業が終わったのか島左近・・・・いいや美緒さんが入ってきた
「あ、どうぞ。断る理由はありませんから」
と、そう言うと
「先生!!」
と、さっき庭で美緒さんの授業を受けていた子たちが入ってきた
「どうしたの。あなたたち?」
「変なお侍が外を囲んでいるよ!」
と、そう言うや否や。鎧を着た侍数名が刀を手に入ってきた
「島清興!役人殺しの罪でお前を捕らえる!覚悟しろ!!」
そう言うと美緒さんは鼻で笑い
「はっ!私の首にかかっている懸賞金目当てにわざわざ美濃までに来た、役人気取りの野党どもだな!私は逃げも隠れもしないが、今は客人と食事をしている。明日の朝出直してきなさい」
落ち着いた声でそう言うがそれに侍の棟梁らしき男は顔を真っ赤にし
「ふ、ふざけるな!いやならこの場で首をはねるぞ!!」
刀を振りそう脅すが、美緒さんは目を吊り上げ
「黙れ!私に恥をかかせると許さないぞ!!」
と、大声で怒鳴る。だが、野党どもは引かずに
「ええい!構うな!そのままたたっ斬れ!!」
「「おう!!」」
そう言い刀を抜き襲い掛かろうとするが、ヨウコさんは空の木製の皿を取り
「えい!!」
と、投げる。すると皿はブーメランのように曲がり二人の野党の目に当たる
「いだっ!!」
「ぐわっ!?」
皿が当たった野党は目を覆いのたうち回る。そして野党の棟梁が下がり、ヨウコさんと美緒さんは店に被害が出ないように外に出ると、そこには十名ほどの刀や槍を持った野党が取り囲んでいた
「かかれー!!」
棟梁の言葉とともに野党たちはいっせいに襲い掛かる。一人の槍手が美緒さんに襲い掛かると、美緒さんはその攻撃をよけ相手の槍を掴み、槍手を投げ飛ばす。そして投げた際に相手の槍を奪い
「さあ!かかってこい!!」
そう言うや否や野党はかかってくるが、美緒さんの槍の一振りに吹き飛ばされる
「くそ!弓を使え!!」
棟梁がそう言うと数名の弓手が弓を引く。するとヨウコが弓手が美緒さんを狙っていることに気づくと数個の石を拾い。それを投げる。構い距離があったのだが、投げた石は見事、弓手の額に直撃し、弓兵たちは倒れる
そして美緒さんの方は襲い来るの武士たちをバッタバッタと倒す。
「強い・・・・さすが島左近だな・・・・ん?」
俺は彼女の強さに驚く。すると、背後からこっそりと忍び寄る槍を持ったの武士が彼女を突き刺そうとしていた
「危ない!」
俺はホルスターからワルサーP38を取り出し、美緒さんに襲い掛かる槍手に向かって発砲する。
「ぐわっ!!」
放たれた弾丸は槍手に肩に当たり倒れる。それに一瞬驚く美緒さんだが
「客人!後ろ!!」
と、そう言い俺は後ろを振り向くと、刀を持った野党が俺に襲い掛かってきた。すると小刀が飛んできて野党の足に刺さり野党は痛みに耐えかね倒れる。すると
「弘樹さん!大丈夫ですか!!」
「桔梗!?」
そこへ桔梗が現れた。
「桔梗なんでここに?」
「予定より収集が終わったので、待ち合わせ場所に向かっていたのですが、途中で鉄砲の音が聞こえましたのでまさかと思い向かったら、弘樹さんがいたのです」
「そうだったのか・・・・ありがと桔梗。助けてくれて」
「いえ、お礼を言われるほどじゃありませんよ」
俺が桔梗に礼を言うと桔梗はにっこりと笑ってそう言う。そんな中、野党どもは
「くそ・・・これじゃ適わない・・・おい、引き上げるぞ!!」
棟梁は分が悪いと感じ、すかさず逃げ出し、怪我をした数名の部下たちも慌てて逃げだすのであった。
すると美緒さんたちがやってきて
「客人。先ほどは助けていただき感謝します。ところでそちらの方は?見たところ草のようですが?」
「ああ、彼女は桔梗という名前で俺の友人であり相棒だよ」
「そうでしたか。それよりも客人。お騒がせして申し訳ありません。そちらのご友人とともに食事をしましょう」
「いや。ここにいるとまた奴らが来ます。私の住んでいる村に来てください。あそこなら奴らもそこにいるとはわからないでしょう」
「そうですか・・・ではお言葉に甘えて」
「世話になります・・・・・」
そう言い俺と桔梗。そして島左近こと美緒さんと杉谷善住坊ことヨウコさんと共に俺と桔梗さんの住んでいる村へと帰るのであった